孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

気候変動 「(大人には)私たち(若者)が日々恐れていることを感じてほしい。そして、行動してほしいのです」  気候変動は「好機」

2019-03-16 22:01:29 | 環境

(気候変動対策として、マンハッタンを防波堤の役割を果たす高台で囲む「ビッグU」のイメージ図【3月4日 GLOBE+】)

【プラごみ対策 気候変動対策のデジャブ】
これまでもたびたび取り上げてきたように、プラスチックごみによる海洋汚染等に国際的関心が集まっており、日本を含めて各国が使用禁止などの規制を強化する流れにあります。
(3月6日ブログ“プラごみ海洋汚染対策の国際的ルールづくり インドの深刻な大気汚染 韓国は中国との協議を提起”等)

こうした流れを受けて開催された国連環境総会でしたが、アメリカの反対で目標設定が低く抑えられ、更に、そのアメリカは大幅削減に関しては不参加ということに。

****使い捨てプラ、閣僚宣言案が後退 国連環境総会、米が反対****
ナイロビで開催中の第4回国連環境総会(UNEA4)で協議している閣僚宣言案の修正版が12日、判明した。原案にあった、2025年に使い捨てプラスチックを廃絶するとの文言が消え「30年までに大幅に減らす」と表現が大きく後退した。
 
交渉関係者によると、欧州連合(EU)などは「廃絶」の表現を支持したが、米国などが反対し日本も支持しなかった。環境保護団体などからは「野心的な目標が失われた」と批判が出ている。交渉は続いており会期末の15日の採択を目指す。【3月12日 共同】
*******************

****使い捨てプラ、2030年までに大幅削減へ 米国不参加****
深刻化する世界の海洋プラスチックごみ問題について、世界約160カ国が2030年までに使い捨てプラスチック製品を大幅に削減する方向でほぼ合意した。

ケニアの首都ナイロビで開かれている国連環境総会で15日、閣僚宣言を採択した。しかし、米国は閣僚宣言のうち、大幅削減に関しては「特定の製品だけをターゲットにすべきでない」として不参加を表明した。
 
世界経済フォーラム(ダボス会議)は、世界で少なくとも年800万トンのプラスチックごみが海に流出しており、50年には海のプラスチックが魚の重量を上回ると試算している。
 
11~15日に開催された総会では、海洋プラスチックごみや微細化して生きものの体内に入り込む「マイクロプラスチック」について世界各国が協議。30年までに使い捨てプラスチック製品を大幅削減するという文言を閣僚宣言に盛り込むことでほぼ合意した。
 
一方、米国は持続可能な社会を目指す閣僚宣言の方向性には賛成しつつも、使い捨てプラスチック規制には「流出量の多いアジア諸国の廃棄物管理を優先すべきだ」などとして部分的に不参加を表明した。加盟国は今後も議論を続けるという。【3月16日 朝日】
*****************

アメリカ・トランプ政権が気候変動に関するパリ協定からの離脱を決めたことのデジャブを見ているような感じも。

【世界各地で「学校ストライキ」 「私たちが生き残るために、グレーの部分はありません」
一方、気候変動・温暖化に関しては、2月23日ブログ“地球温暖化対策を呼び掛ける16歳少女の訴え、欧州各地に拡大 世界で広がるプラごみ対策”でも取り上げたように、スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16歳)の抗議行動をきっかけに、世界各地の高校生らに「学校ストライキ」などの抗議運動が広がっています。

一番深刻な被害を受けるのが、これから数十年この地球上で生きる若者であることを考えれば、当然の要求でもあります。

****120カ国で授業ボイコット 温暖化止める「学校スト」*****
授業をボイコットして地球温暖化を食い止めるために行動を迫る若者たちの「学校ストライキ」が15日、世界各地で一斉に開かれた。

スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16)の抗議行動をきっかけに昨年から欧州各地で始まった運動は、日本や米国など世界約120カ国2千カ所に広がった。
 
米首都ワシントンでは、連邦議会議事堂前に約1500人が集まった。呼びかけ人の一人、メリーランド州のナディア・ナザールさん(16)は「私たちは温暖化の影響を受ける最初の世代。そして温暖化に対処できる最後の世代だ。政治家は我々の声を聞くべきだ」と訴えた。
 
トゥンベリさんが触発されたのは、銃規制を求めて授業をボイコットした米国の高校生の運動だ。

今回ユタ州でストライキを企画したケイト・デグルートさん(17)は「どうやって運動を起こしたらいいのか知らなかった若者を後押しした。それが米国に戻ってくるのは素晴らしいことだ」と話す。昨年5月には、保守的なユタ州で高校生の運動から温暖化対策を進める決議が成立した。
 
連邦議会には、若者らが後押しして温暖化対策と社会正義を実現する「緑のニューディール」決議が出されている。民主党の大統領選候補も温暖化対策を訴えており、次回選挙の争点になる可能性もある。
 
温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、気温上昇を産業革命前と比べて2度未満、できれば1・5度未満に抑えることを目標に掲げる。国連の報告書は現状のままでは30年にも1・5度に達するという。
 
国連のグテーレス事務総長は英ガーディアン紙への寄稿で、「我々の世代は気候変動に速やかに対応することに失敗した。若い世代が怒るのも無理はない」と述べ、9月に開く温暖化対策の首脳級会合で各国の取り組みの加速を求めた。【3月16日 朝日】
********************

“国連のアントニオ・グテレス事務総長は、この活動に強い支持を表しており、英紙ガーディアンへの寄稿で「野心的な活動なくしては、パリ合意は無意味になる」と指摘した。”【3月16日 AFP】とも。

“日本や米国など”とありますが、日本でも「学校ストライキ」みたいな取り組みが行われたのでしょうか?(多分、未成年者の政治参加を極度に嫌う日本ではそうした行動はないようにも思います。)

トゥンベリさんは1月、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にも招かれ、「やるか、やらないか」と行動を国際社会に迫っています。

****グレタ・トゥンベリさんの世界経済フォーラム年次総会での演説要旨*****
ダボスのような場所で、人々は成功を語りたがります。でも、彼らの経済的な成功は、気候変動について考えられないほどの代償を伴いました。私たちは失敗したということを認めなければなりません。
 
ただ、まだ時間はあります。最大の解決策は、とても単純で、小さな子どもでも理解できることです。温室効果ガスの排出をやめなければなりません。
 
白黒つけられる問題などないと言われますが、それはとても危険なウソです。地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるか、抑えないか、私たちが生き残るために、グレーの部分はありません。
 
大人たちは、こう言い続けています。「自分たちには、若者に希望を与える責任がある」と。でも、そんな希望は望んでいません。大人たちは、私たちが日々恐れていることを感じてほしい。そして、行動してほしいのです。【3月15日 朝日】
*********************

とかくものごとをグレーとして見がちな大人にとっては(そのこと自体は多くの場合、賢明な対応ではありますが)耳の痛い16歳の直言です。確かに、大きな流れを変えるためには、不退転の決意で臨む覚悟が必要であり、白黒をはっきりさせる必要があるでしょう。

【「気候変動は脅威でなく好機」「気候変動で稼ぐ」「よき災害を決して無駄にするな」】
ただ、現実問題として対応を進めていくうえでは“覚悟”だけではなく、具体的な方策が必要です。

そのとき最大の問題となるのが、3月5日ブログ“地球温暖化の進行を止められる新技術となるか? 大気中のCO2除去技術”でも取り上げた、規制強化が経済活動の足かせになるという問題です。

ここを突破するには、気候変動対策が“カネ”になるという道筋をつくり、多くの民間資本や人材がこの分野に流入する枠組みをつくるのが一番効率的です。

気候変動対策を“制約”としてではなく、“ビジネスチャンス”としてとらえる発想です。
更に、その“チャンス”を生かすことで、“”規制を受ける生活ではなく“新たな生活環境”を作っていくという姿勢も重要です。

3月5日ブログでは、大気中のCO2を吸収して新たな燃料に変えていく事業を紹介しましたが、海面上昇や異常気象に対応するための防災都市建設も新たなビジネスチャンスの場となります。

****NY市、マンハッタン洪水対策に560億円 気候変動に備え****
米ニューヨーク市は14日、米国の経済・文化の中心地マンハッタンの一部地域を気候変動による洪水から保護するため、5億ドル(約560億円)を投資すると発表した。
 
投資対象は、洪水リスクの高いマンハッタン南端地域の保護を目的とした4事業。うち一つは、ウォール街の数ブロック先にあるバッテリーパークシティーの南に恒久的な防護壁を建設するもの。
 
民主党のビル・デブラシオ市長が14日に発表したところによると、マンハッタン南部の保護に必要な金額は推定100億ドル(約1兆2000億円)で、今回の投資はそのほんの一部にすぎない。予算の大部分はまだ確保できておらず、連邦政府の支援が必要になる可能性が高い。
 
米政府は気候変動に関する報告書「全米気候評価」で、炭素排出による気候変動がこのまま進めば膨大な経済損失が生じると警鐘を鳴らしているが、共和党のドナルド・トランプ大統領はこの報告書の内容を否定している。
 
マンハッタン南部は、2012年10月の大型ハリケーン「サンディ」で特に深刻な被害を受けた。サンディはニューヨーク市で約40人の死者を出したほか、ニューヨーク、ニュージャージー両州の沿岸部が高さ3メートルの洪水に見舞われ、ニューヨーク州の被害総額は420億ドル(約4兆7000億円)に上った。
 
ニューヨーク市経済開発公社が14日に発表した調査結果によると、マンハッタン南端にある建物の37%が、2050年までに洪水に見舞われる恐れがある。 【3月16日 AFP】AFPBB News
*****************

マンハッタン南部を保護する全体計画は「ビッグU」と呼ばれるもののようです。
いま、そこに多くの企業が参入しようとしているとも。治水対策では歴史的実績があるオランダの企業もそのひとつです。

****水を食い止めろ ニューヨークで進む巨大事業、多国籍企業が治水で稼ぐ****
気候変動対策という巨大ビジネス
東京、ニューヨーク、上海、ジャカルタ……。気候変動に伴い、河口付近の低地に発達した世界中の大都市で大洪水のリスクが高まっている。これらの都市に治水の知恵を売り込むのが、「低地の国」オランダだ。

治水計画の策定・マネジメントを得意とするオランダ発の多国籍エンジニア企業アルカディスは、売上高32億ユーロ(約4千億円)と、この10年で倍増する急成長を遂げている。(中略)

マンハッタンでもっとも低地となる地下鉄駅付近は、2005年にハリケーン「サンディ」が来襲した際、約2メートルの深さの水に覆われて駅は水没。インターネットも長期間使用不能になった。

「10年後にこのあたりに来ると、オランダ式の多機能堤防が見られるはずです」。(アルカディス社の北米部洪水対策担当リーダー)ヴェスターホフは公園の一角を指さして、そう話した。

「低地の国」の知恵の結晶
ニューヨークでは今、アルカディス社も参加する「ビッグU」と呼ばれる気候変動対策が進む。マンハッタンのU字形沿岸部約10マイル(16キロ)を堤防の役割を果たす高台で囲み、洪水や海水面の上昇から守ろうという壮大な計画だ。

見込まれる費用は70億~80億ドルに達する。

高台には商店街やレクリエーション施設、海水面の上昇が観察できる水族館などが設けられ、外観は堤防には見えない。気候変動対策と都市の活性化という「一石二鳥」を狙う。

私はニューヨーク取材の前にオランダのロッテルダムで見た光景を思い返した。一見、ショッピングモールにしか見えない建物は、屋上部分が広い公園になっている。

だが、港から水が押し寄せてきた際には、長さ約1.2キロの施設全体が堤防として機能し、背後にある住宅街を洪水から守る。

国土の多くが海面よりも低く、何百年にもわたって水と闘い続けてきた低地の国、オランダならではの「知恵の結晶」だった。(中略)

「気候変動は脅威でなく好機」
「気候変動と都市化が進む現代にあっては、治水事業は大規模な輸出産業だ」
アルカディスの水管理部門グローバルリーダー、ピート・ディルケは断言する。

米国・ニューオーリンズ市にハリケーン「カトリーナ」来襲した05年の1年前から、ディルケはこの地で治水対策の売り込みに努めていた。

そして、カトリーナ来襲の前日、治水事業を担う米国陸軍工兵隊を相手に、やっと200万ドルで最初の契約を結んだことを、ディルケは「後になって思えば、最も幸運な瞬間だった」と話す。

軍に再び呼ばれ、こう言われたのは、その数日後。「前の契約のことは忘れてくれ。やってもらうことが山ほどできた」。アルカディスが関与する契約の額は、あっという間に2億ドルに膨らんでいた。

そして、最終的に、市の洪水対策事業総額145億ドルの約半分について、プランニングとマネジメントを請け負うことになる。

アルカディスの躍進のもう一つの鍵は、ロッテルダム市にある。

市は05年以降、「気候変動を脅威ではなく、街づくりと経済を活性化させる好機と捉える」というコンセプトを掲げ、気候変動対策で世界中の都市をリードすることをめざしている。

商業施設を備えた堤防はその一環だが、ほかにも大雨に備えた排水施設・貯水池を市民の憩いの場として活用する「ウォーター・プラザ」などのアイデアを民間企業の協力で続々と実現させている。

市でこれらの事業を統括する責任者のアモウド・モレナーは「アルカディスはロッテルダムの成果を世界に伝える大使の役割を果たしている」と話す。一方、アルカディスはロッテルダムを「巨大なショーケース」として、ブラジル・サンパウロ、中国の武漢など、世界の各都市でビジネスを展開する。

コラボという新文化
もう一つ、オランダが米国の治水計画に持ち込んだものとして「コラボレーション」の文化がある。

米国では従来、水害に対して、個々人や各企業が損害保険に加入するなどして自力で備えようとする一方で、統合された対策を講じようとする傾向が乏しかったという。

現在、オランダ政府の国際水資源問題特使を務めるヘンク・オヴィンクは「サンディ」被災後の再建計画についてオバマ政権にアドバイス。デザインコンペによって民間から広くアイディアを募り、合意を形成してゆく手法を確立させた。「ビッグU」はその成果の一つだ。

ヴェスターホフは言う。「治水事業は『AかBか』という単純な選択で成立するものではなく、行政府や企業、地元住民らが協力し、『最適解』を求めて作り上げていくものだ。

オランダには『よき災害を決して無駄にするな』ということわざがある。災害の経験を必ず生かし、次に備えること。この精神を根付かせたい」【3月4日 GLOBE+】
***************

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする