孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  停戦合意したとはいうものの・・・・「民族浄化」の犠牲となる子供たち

2017-12-25 21:46:27 | アフリカ

(南スーダンで空から無数に落ちてくるパラシュート その正体は・・・【12月12日 ハフポスト】)

停戦合意発行直後にも武力衝突
「トム・ソーヤーの冒険」の著者マーク・トウェインの有名な言葉に「Quitting smoking is easy. I’ve done it a thousand times.(禁煙なんて簡単さ。私はもう何千回もやめてきたのだから。)」というのがあります。

そんな言葉を思い起こさせるのが、内戦状態が続く南スーダンでの停戦合意です。

****<南スーダン>停戦合意24日発効 和平実現へ曲折も****
内戦状態の南スーダン政府と反政府勢力の停戦合意が24日に発効する。4年間に及ぶ内戦終結に向けた大きな一歩だが、和平の実現には今後も紆余(うよ)曲折が予想される。
 
交渉は東アフリカの地域機構、政府間開発機構(IGAD)が仲介。エチオピアの首都アディスアベバで21日夜、双方が合意文書に署名した。全土で人道支援の実施を認めることも確認した。
 
南スーダンでは2013年12月にキール大統領とマシャール副大統領(当時)の権力闘争から武力衝突に発展。政府と反政府勢力は15年8月に和平協定に署名し、16年4月には暫定政権が発足したが、同年7月に首都ジュバで戦闘が再燃した。
 
南アフリカで軟禁状態に置かれているマシャール氏は22日、配下の部隊に合意順守を指示する一方、マシャール派の報道官は合意後も政府軍の攻撃が続いていると非難声明を出した。
 
外交筋によると、年明けに交渉を再開し、権力分担や選挙の実施時期について話し合う見込みだという。
 
IGADは破綻状態にある和平協定の「再活性化」を掲げているが、現行の和平協定の履行を主張する政府と、見直しを求めるマシャール派の間には解釈に隔たりがあるとされる。内戦下で乱立した反政府勢力をどう組み込むかも課題だ。【12月23日 毎日】
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単に停戦を“合意”するだけなら簡単なことです。難しいのはそれを実効化し、維持することです。
そんなこから、上記ニュースについても「フーン・・・」というぐらいの印象しかなかったのですが、案の定とも言うべき報道も。

****停戦発効直後に「攻撃」 政府と反政府勢力が非難の応酬 南スーダン****
内戦状態にある南スーダンで、政府と主要反政府勢力による停戦が現地時間の24日午前0時(日本時間午前6時)過ぎに発効したが、直後に停戦合意が破られたとして互いに非難の応酬を展開している。
 
今回の停戦合意は、サルバ・キール大統領とリヤク・マシャール前副大統領(当時)の対立を機に2013年12月に始まった、4年に及ぶ内戦の終結に向けた取り組み。
 
停戦合意を発効した24日、マシャール氏が率いる反政府勢力「SPLA-IO」は声明を発表し、政府軍が北部ビエーと南部イェイを「激しく攻撃」していると非難した。

SPLA-IOのラム・ポール・ガブリエル報道官は、「ジュバを拠点とする政府軍はSPLA-IOが応戦して内戦が継続し、また国の資源を略奪し続けることを狙っており、これらの行為は停戦合意に違反する」と主張した。
 
一方、政府軍のルル・ルアイ・コアング報道官は攻撃を否定し、反政府軍が国中で停戦合意の「深刻な違反」をしていると非難。

コアング氏によると、南部アマディでは反政府勢力がクリスマスのための食料や賃金を運んでいた当局の車両の列に待ち伏せ攻撃を行ったという。

「われわれは反政府勢力と交戦しているのではなく、防衛しているのであり、路上で攻撃を受けたときには戦ってきた」と、コアング氏はAFPに語った。
 
停戦合意は、全部隊の進軍を即時凍結するほか、衝突につながる行為の停止、政治的拘束者の釈放、拉致した女性や子供たちの解放を条件としている。【12月25日 AFP】
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内部対立で副大統領を解任され、“南アフリカで軟禁状態に置かれている”【前出 毎日】とされるマシャール氏が現在どういう立場にあるのか、反政府派をコントロールできる状況にあるのかは、よく知りません。

マシャール氏出国後も、新たな武装勢力が結成されたとの報道もあります。

****南スーダンで続く衝突、新たな武装勢力も****
日本政府が国連平和維持活動(PKO)からの撤収を決めた南スーダンでは、キール大統領派とマシャール元第1副大統領派との対立が続き、政治的・軍事的に極めて流動的な状況にある。

今月には、国軍の元幹部がキール氏の退陣を求めて新たな武装勢力を結成するなど、さらなる不安定化も懸念されている。
 
南スーダンは2011年、米国などの後押しを受けてスーダンから分離独立した。しかし、主要民族であるディンカ人のキール氏派と、ヌエル人のマシャール氏派が権力配分などをめぐって対立。13年末ごろから戦闘が激化し、内戦状態に陥った。
 
15年夏には周辺国の仲介で和平合意が成立したものの、ほどなくして戦闘が再燃した。国内各地で食料や水、医薬品が不足する人道危機が深刻化している。
 
また国連などは、南スーダンで「民族浄化」が進行しているとも警告。各地での両派による住民殺害や、女性への性的暴力の実態を調査する必要があるとしている。
 
そうした情勢の下、今月6日にはスワカ元副参謀長が武装勢力「国民救済戦線」を結成した。スワカ氏は、「あらゆる手段でキール氏を排除する必要がある」と主張して住民に蜂起を求めており、国内の治安が今後、さらに悪化する恐れは強い。【3月10日 産経】
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根深い部族対立と暴力に訴える風土
一方で、部族間の襲撃事件で60人が死亡するといった報道も。

****南スーダンで家畜をめぐる部族間襲撃 60人死亡、数十人負傷****
南スーダンで家畜をめぐるライバル部族間の襲撃事件が発生し、少なくとも60人が死亡し、数十人が負傷した。地元当局者が9日、明らかにした。
 
戦闘は6日、首都ジュバから北西に約250キロ離れた同国中部の西レイク州で、いずれもディンカ族のルプ一族とパカム一族の間で勃発したもの。
 
同州選出の国会議員でもあるアコル・ポール・コーディット情報副大臣は声明で、戦闘により「60人以上が死亡し、数十人が負傷した」と述べ、8日早朝にも襲撃が発生し戦闘が続いていると付け加えた。
 
南スーダンでは敵対する牧畜コミュニティー間で報復襲撃を繰り返す長く血なまぐさい歴史があり、その際に家畜や家財が略奪されてきた。また女性のレイプや子供の誘拐なども頻繁に発生し、報復襲撃を助長しているという。【12月9日 AFP】
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キール大統領とマシャール副大統領(当時)の権力闘争から武力衝突に発展した内戦も、背景には部族対立があるとされています。家畜をめぐる襲撃の拡大版です。

部族間の根深い対立、すぐに虐殺・レイプを含む暴力に訴える風潮・・・・そうした社会風土があっての南スーダンの“終わらない混乱”なのでしょう。

進行する人道危機 最大の犠牲者は子供たち
こうした混乱状態が続くなかで、深刻な人道危機が進行していることは国連等がかねてより警告しているところです。全人口の半分にあたる約600万人が、深刻な食料不足に苦しんでいるとも指摘されています。

日本・自衛隊がPKO参加していた首都ジュバの難民キャンプさえ絶望的な状況にあることが報じられています。

****南スーダン避難民 届かぬ支援、募る絶望感****
食料もなければ、きれいな水も手に入らない。学校も病院もない。9月中旬に訪れた南スーダンの首都ジュバにある国内避難民キャンプでは、絶望的な状況の下、人々が懸命に暮らしていた。

人生を一変させ、いつ終わるとも知れぬ内戦。市民生活が好転する兆しはなく、疲弊した人々が何らかのきっかけで一瞬にして暴発しそうな危険な雰囲気も漂っていた。((後略)【9月28日 産経】
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どこの紛争・混乱でも、一番の犠牲者は子供たちです。

****南スーダン 内戦で子ども2300人以上死傷 ユニセフ発表****
ユニセフ=国連児童基金は、アフリカの南スーダンで、激しさを増す政府軍と反政府勢力の武力衝突から、子どもたちが敵対する民族の出身だという理由で学校が襲撃されるなどして、これまでに2300人以上が死傷したと発表しました。

アフリカの南スーダンでは、ことし5月に国連のPKO=平和維持活動に参加してきた日本の陸上自衛隊の施設部隊が現地から撤収したあとも、各地で政府軍と反政府勢力の間で武力衝突が激しさを増しています。

こうした中、ユニセフは15日、南スーダンの子どもたちの現状についてまとめた報告書を発表しました。

それによりますと、子どもたちが敵対する民族の出身であることなどを理由に、子どもたちが通う学校への襲撃が293件あったほか、2300人以上の子どもが死傷したということです。

また、人道支援に従事する国連機関やNGOなどの関係者がこれまでに95人殺害されるなど、国際社会の支援が届きにくい状況が続いていて、栄養失調に陥っている子どもたちは100万人以上に上るということです。

ユニセフは、「子どもたちがこのような経験をすることがあってはならず、直ちに保護しなければいけない」として支援の強化を訴えています。【12月15日 NHK】
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届けられる“世界からの「思い」”も
暗いニュースはいくらでもある南スーダンですが、今日はクリスマスでもありますので、少しでも希望の持てるニュースを。

****何コレ? 南スーダンに落下する無数のパラシュート。その意外な正体とは・・・・****
世界からの「思い」が紛争地帯に住む人々に届いた

空から無数に落ちてくるパラシュート。一体これは何だ?
場所は内戦が続くアフリカの南スーダン。自衛隊もPKO活動のために派遣されていたが、治安情勢が悪化を辿る中で5月に撤退している。
まさか爆弾......?いや、そうではない。

■パラシュートで届けられたのは、世界からの「思い」だった
パラシュートの下にあるのは、世界中から寄せられた資金で調達された食用油だ。世界中から寄せられた寄付金で運営されている国際連合世界食糧計画(国連WFP)が、南スーダンの人々を飢餓から救うために投下したのだった。

国連WFPのデイビッド・ビーズリー事務局長は、12月11日に都内で開かれたトークイベントで以下のように明かした。

「南スーダンでは、私たちのチームは僻地にも食料を届けました。戦闘地域のため陸路で食料を届けることができません。そこで飛行機から食料を落として100万人に食料を届けました。食用油も空から落としています」

「しかし、2000フィート(約600メートル)以上の高さからは食用油を落とすことはできません。そこで、パラシュートを改善して、食用油をこれまで以上に高い数千フィートの高さから落とすことに成功しました。新しいパラシュートの開発という戦略的なイノベーションによって、食用油をピンポイントでジェット機から落とすことができるようになりました」

2016年の世界の飢餓人口が10年ぶりに増加に転じた。ビーズリー事務局長はその要因について「紛争という人災だ」として以下のように訴えた。

「私たちの経費のうち82%は、シリアやスーダンなど人災による戦闘地域で使われています。世界中で7割の子供が発育不良で、その多くは戦闘地域の子供なんです。紛争が終わらせることとで、世界から飢餓をなくすことが出来ます」(後略)【12月12日 安藤健二氏 ハフポスト】
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子供たち・犠牲者の苦しみや悲しみ、世界からの「思い」・・・・それらが戦闘に明け暮れる指導者・兵士たちにも届けばいいのですが・・・。
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