孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

同性婚  ホワイトハウスに無視された「ファーストジェントルマン」? 台湾司法の踏み込んだ判決

2017-05-29 22:57:50 | 人権 児童

(後列左端がルクセンブルクの「ファーストジェントルマン」ゴーティエ・デストネ氏 【5月28日 CNN】)

記念撮影説明で、ルクセンブル首相の同性婚パートナーの名前だけがない ミス? 意図的?】
イタリア南部シチリア島で開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)に先立って、25日ベルギー・ブリュッセルで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、全員集合の記念撮影の際、トランプ米大統領がモンテネグロのマルコビッチ首相を押しのけるようにして最前列に出る動画が話題となりました。

こういう場合の各自の立ち位置は事前に事務方によって決められているのではないでしょうか?よくわかりませんが、トランプ大統領ならずとも微妙な問題を引き起こしかねませんので。対立する国の首脳がセンターをめぐってにらみ合う・・・なんてことが起こると大変ですし。

それとも、そんな子供じみた首脳なんていない・・・ということで、勝手に立ち位置を決めるようになっているのでしょうか?

実際のところがどうだったかはともかく、モンテネグロ首相を押しのけるようにして前に出たトランプ大統領がふんぞり返ってスーツを直す様子は、いかにも・・・という感で、“人間性が出ている”と勝手に思ってしまいます。日頃の言動がなせるところです。

NATO首脳会議の際の記念撮影で話題になった、もう1枚の写真が冒頭のもの。

****ファーストジェントルマン」登場、NATO首脳会議****
ブリュッセルで先に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせて行われた各国首脳の夫人やパートナーが集った記念撮影にルクセンブルクの「ファーストジェントルマン」が加わり、注目を集める一幕があった。

女性9人と一緒に笑顔と共に写真に収まったのは、ルクセンブルクのグザビエ・ベッテル首相と2015年に結婚したゴーティエ・デストネ氏。

結婚は同国で同性結婚が合法化されたことを受けたものだった。

ベッテル氏が首相就任を決めた13年当時、2人は男女の夫婦とほぼ同等の権利が認められる市民パートナーシップの関係にあった。

同性愛を認めた首相はベッテル氏が初めてではない。ベルギーのディルポ、アイスランドのシグルザルドッティル両元首相も同性愛を隠していなかった。

デストネ氏が臨んだ写真撮影には、メラニア・トランプ米大統領夫人、フランスのブリジット・マクロン夫人やNATO事務総長夫人らも入っていた。【5月28日 CNN】
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同性婚の社会的広がり、認知という意味で興味深い話題でもあるのですが、この話には“おまけ”がついています。

ホワイトハウスの公式写真としてfacebookに投稿された際の説明文において、各国首脳夫人の名前が列挙されているにもかかわらず、同性婚男性であるデストネ氏だけが省かれている・・・・ということです。

その後の訂正版ではデストネ氏の名前も付け加えられましたが、この件に関してのコメント要求にホワイトハウスは答えなかったとか。【5月27日 The Guardian(https://www.theguardian.com/us-news/2017/may/27/white-house-photo-caption-same-sex-spouse-luxembourg-pm?CMP=fb_us)より】

意図的にベッテル氏を無視したのか、単純ミスで落としたのか・・・そこらはわかりません。

同性婚を認めた憲法判断「オバーゲフェル判決」】
アメリカの同姓婚に関しては、2015年6月にアメリカ最高裁によって「オバーゲフェル判決」が下され、「容認」ということでその位置づけが確定しています。

****オバーゲフェル判決を振り返る****
2015年6.月、合衆国最高裁は同性婚を認容する歴史的な判決(オバーゲフェル判決)を下した。本稿は、オバーゲフェル判決の意義と課題について、憲法学の観点から考察するものである。
 
アメリカ合衆国では、婚姻に関する広範な裁量が行にあるため、本件が提起された時点で、同性婚を認めている州と認めていない州|が混在していた。

加えて、同性婚を認めている州または他国)で同性婚をしたカップルの法的効力を認める州|と認めない州も存在していた。

そして、本件では、明文で同性婚を禁止している州の規定や他州で認められている同性婚の効力を白州で認めないことの憲法適合性が問題となった。

本件は、合衆国最高我が、ケンタッキー、オハイオ、テネシー、ミシガンの4州|の訴訟をまとめて統合審理した上で、同性婚の禁止及び他州|での効力を否定する諸規定を合衆国憲法第14修正に定めるデュー・プロセス及び平等保護に反し、違憲であると判示したものである。(後略)【白水隆氏 https://www.rikkyo.ac.jp/research/laboratory/IAS/ras/38/shirouzu.pdf
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*****米国における同性婚― その経緯と展望*****
・・・・2015年6月26日、連邦最高裁はオバーゲフェル裁判の判決を下した。その判断は5対4で、米国の各州が同性愛カップルに結婚許可証を発行するよう求めるものだった。

この判決については後述するが、この結果、同性婚は米国全土で実質的に合法化され、特に法廷で同性婚の合法化に抵抗していた13州に受け入れを認めさせるものとなった。
 
想像に難くないが、同性婚賛成派は連邦最高裁の判決に歓喜した。ジェームズ・オバーゲフェルや他の原告たちは「公民権の英雄」と呼ばれ、この裁判で勝訴した弁護士たちは法の「チャンピオン」と賞賛され、全米で祝賀イベントが催された。

オバマ大統領は、この判決を「アメリカの勝利だ」と述べ、大統領府はその夜ホワイトハウスを照明で虹色に照らして大々的に祝意を表したほどだった。

また、この判決が下ったのは大規模な「ゲイ・パレード」がいくつかの都市で行われる直前だったため、シカゴ、ニューヨーク、シアトル、サンフランシスコなどではその週末、大がかりな祝典が催された。(後略)【平和政策研究所】
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中絶問題同様の“文化戦争”も
オバマ前政権時代のレガシーを否定することに躍起となっているトランプ大統領も同性婚問題に関しては、昨年11月に「最高裁で決着済みだ。もう終わった話だ。」と発言し、改めて蒸し返すような姿勢は見せていません。

ただ、決着したのは「法律」に関する話で(同性婚反対派は「決着」したとは思っていませんが)、「文化」の面ではいまだ厳しい対立が残っています。

ケンタッキー州のある熱心なキリスト教徒の書記官が、連邦最高裁より上位だと彼女が信じる「神の権威」を根拠として、同性カップルに対する結婚許可証の発行を拒否して5日間拘束された事件については、2015年9月13日ブログ“アメリカにおける「性的少数者」「LGBT」に関する動き”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150913でも取り上げました。

また、種々の問題でリベラルな立場を示しているローマ法王ですが、上記事件に関しては、「良心に従って異議を唱えることは、あらゆる人権に通じる権利のひとつである」と、同姓婚を拒否した女性書記官を強く擁護し、彼女に面会したうえで、その勇気を讃えています。(2015年10月18日ブログ“キリスト教会弾圧を続ける中国 バチカンと接近の動きも”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151018

****新たな終わりなき文化戦争****
では現在、米国では何が起き、同性婚反対派は何をしようとしているのか。同性婚は事実上、米国のあらゆる場所に広がりつつある。一方で、さまざまな場所で抵抗も起きている。(中略)

なぜ米国には同性婚に対する抵抗があるのか。アラバマ州の判事らは憲法上の理由を挙げている。すなわち、結婚法のように家族に関わる政策の権限は連邦政府ではなく州政府にあり、したがって連邦最高裁には諸州の結婚法に干渉する権利はない。(中略)

もちろん、同性婚の支持者らはこのような見方を否定しており、声明に署名した法学者たちを「往生際の悪い敗者」と非難したり、フランシスコ法王は騙されてキム・デービス夫妻に面会したのだと主張する人々もいる。
 
こうした出来事は、同性婚の合法化が米国で新たに終わりなき文化戦争を引き起こそうとしている根本的原因が、宗教的信条に関わる問題にあることを示している。

多くの篤実なアメリカ人は、旧約・新約聖書に書かれているとおり、結婚とは一人の男性と一人の女性の合一として神に定められたものだと信じている。

したがって、何百万人もの信者、とりわけ福音派キリスト教徒、伝統的なカトリック信者、正統派ユダヤ教徒、イスラム教徒、モルモン教徒を始めとする伝統的価値観を持つ人々にとって、同性婚は偽りであり、神の嫌悪の対象ですらあるのだ。
 
この状況は、米国における中絶をめぐる文化戦争とも類似する。中絶をめぐっては、生命が受胎によって始まると信じる宗教的な人々が、人工妊娠中絶は生命を破壊する邪悪な行為であり、殺人とみなす傾向があるからだ。
 
彼らのような「プロ・ライフ派」(中絶反対派)は、憲法修正第14条を適用して中絶を制限する州法を一掃した連邦最高裁のロー対ウェイド裁判およびドウ対ボルトン裁判の判決を覆すことを目指し、1973年から闘争を続けてきた。

プロ・ライフ派は中絶支持派―その多くは同性婚の権利も支持している―の激しい抵抗を受け、中絶は米国国内の長年にわたる政治問題となってきた。【前出 平和政策研究所】
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台湾司法 予想外に明快な容認判断
同性婚に関して最近話題になったのは、台湾がアジアで初めて同性婚を法的に認めたということです。

****台湾で同性婚が実現へ「すさまじい」司法判断はどうして下ったのか****
台湾の憲法を解釈する役割を担う司法院大法官会議が5月24日、同性婚を認めない現行民法について「違憲だ」と判断した。

2年以内の立法を求め、もし立法がなされなければ、現行の法律のままでも同性婚を受け付ける。司法として、非常に強いメッセージを発した。

この判断は、日本の台湾法研究者にとっても衝撃だった。BuzzFeed Newsの取材に対し、明治大学の鈴木賢教授(法学)は驚きを隠さなかった。

「これはすさまじい。とても大胆な憲法解釈でした。もっと曖昧な形で、ボールを立法府にパスする可能性もあると思っていましたが……驚きました」

出てきたのは、非常にハッキリした判断だった。
現行民法のもとでは、同性カップルは、共に人生を送るための、親密で他人の立ち入る余地がない人間関係を結ぶ事ができない。これは婚姻の自由を保障した憲法22条と、法の下の平等を保障した憲法7条に反している……。

なぜ、同性婚を認めるべきなのかについては、たとえば次のような理由が挙げられている。

・同性間で婚姻を認めたとしても、それが異性間での婚姻に影響することはない。社会秩序への悪影響もない。
・生殖と結婚とは関係がない。現行民法では、生殖能力がない人も結婚できる。結婚後に生殖できなくなったら離婚というわけでもない。
・「結婚するかどうか」や、「誰と結婚するか」を選ぶ権利は、誰もが持っているものだ。こうした自己決定権は、人格を健全に発展させ、人の尊厳を守るもので、憲法22条で保障された基本的人権の一つだ。
・同性間で結婚できないのは、不合理な差別である。

鈴木教授は言う。
「明快です。このような判断には、2015年に出たアメリカの最高裁判例の影響が及んでいるとみるべきかもしれません。台湾の司法院には15人の大法官がいますが、留学経験者が多く、海外の動向にも敏感ですから」

「さらに、普通の事件も裁く日本の最高裁判所と違って、台湾の司法院大法官は憲法解釈だけをするので、学者の割合が多い。いまは実務家8人、学者7人で、大胆な判断もしやすくなっています」

台湾の世論はどうなっていたのか。
「同性婚に反対の声は、まだ台湾でもあります。しかし、同性婚を求める運動は何十年も続いていて、立法府に法案が出始めてからでも10年以上が経っています。議論の蓄積は、相当なものになっている。社会的には、大方の合意が得られているという判断を、大法官はしたのでしょう」

政治的にも、実現に向けたハードルは低くなっていた。
「現在の台湾は、同性婚を認めようと主張した蔡英文総統が当選し、彼女が主席を務める民主進歩党(民進党)が完全与党になり、大法官のトップも民進党の意を酌んだ人が任命されている、という状況です」

ただ、台湾は最後の一歩が踏み出せていなかった。
「蔡総統は選挙中、同性婚を支持すると言っておきながら、当選すると煮え切らない対応をしていました。与党内や選挙民にも反対の声がありますし、どういう形で法律を作るのかについても意見対立があるので、強いリーダーシップを発揮しないでいました」

今回の司法判断は、そのような状況で踏み出された、最後の一歩だった。
「台湾らしい判断だった」
「まだ強い反対論が渦巻いている中で、司法という立場で、この問題に決着を付けてしまったのは、大胆でした。台湾らしいといえば、台湾らしいですが……」

台湾らしいというのは、どういう意味なのか?
「台湾の司法院大法官は戦後、古い法律を違憲にすることで廃止させ、それによって民主化推進の一翼を担ってきました。そうした長い歴史があるのです」

その司法院大法官の判断によって、アジアとしては初めて、同性婚が法制化されることになった。
司法という存在が、これほどまでに重大な判断を示すことを、どう考えるのか。

「マイノリティの人権保障は、司法で決着を付けるべき問題だ、という議論があります。それは、少数派の権利の問題は、多数決には馴染まない側面があるからです」

基本的人権の保障や法の下の平等をうたっている以上、多数派が反対しているからといって、少数派の人権を守らないでいいわけがない。

台湾の議論は、他国へも波及するだろうか。
「そうですね。今回の判断は、今後アジア各国が、同性婚をどう扱うかについて、大きな影響を与えるでしょう」
鈴木教授はそう予想していた。【5月24日 BuzzFeed News】
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台湾では同性婚に対する社会的認知が広まっていることが、上記司法判断の背景にあります。

“2015年の世論調査で、「婚姻の平等化」を支持すると回答した人が約70%に上るなど、台湾ではLGBTへの理解が進んでいる。LGBTらが街頭で人権を訴えるイベントも2016年には8万人が参加するなどアジア最大級だ。
2015年には、同性のカップルを結婚に準ずる関係と公的に認める「パートナーシップ制度」も始まり、現在1000組以上のカップルがこの制度を利用しているが、今回法律を改正することでより結婚を平等化するよう求めていた。”【5月24日 Satoko Yasuda 氏 HuffPost Japan】

なお、“日本でも同様の制度があるのは、6月1日にスタートする札幌市を入れて6自治体にとどまる。今回の判決が日本を含め他国にどう影響を及ぼすか、注目される。”【同上】とも。

ただ、日本は家族に関する伝統的価値観を重視する立場の政権であり、若い人たちの間でも、そうした考えを支持する声が根強くありますので、どうでしょうか・・・・?
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