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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ側に譲歩促すクリントン米国務長官 和平交渉進展は望めず

2009-11-03 21:19:10 | 国際情勢

(ガザの今年1月の写真ですが、単にふざけあっているのか、どういう状況の写真かは全くわかりません。
“flickr”より By  freedom!!!!
http://www.flickr.com/photos/free_world/3195551220/

【「市民のことなど考えていない」 パレスチナ分断】
パレスチナでは、ファタハを率いるアッバス自治政府議長が、来年1月に自治政府の選挙を実施すると発表したことにハマスが反発し、エジプトが仲介するファタハとハマスの和解協議が難しくなっていることは、10月25日ブログ「パレスチナ  ハマスの和解案留保にアッバス議長“揺さぶり”、事態は混迷」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20091025)で取り上げたところですが、結局、期限とされていた26日までにハマスがエジプトの仲介に応じず、協議は一旦頓挫した形となっています。

この事態に、パレスチナはヨルダン川西岸とガザの分断状態が固定化しかねない危機にさらされています。
背景として、ハマス内部の意見の分裂、ハマス幹部を保護するシリアの影響も指摘されています。

****パレスチナ和解協議、頓挫 ハマス仲介に応じず*****
「イスラエルに対する抵抗権を明記しない限り、署名には応じない」。ハマスは従来の主張を繰り返すだけで、拒否の理由について詳細を明らかにしていない。
ガザのパレスチナ人記者の間では、ハマス自体が内部分裂し、意見調整ができなかったという見方が出ている。ハニヤ首相を軸としたガザの指導部と、政治部門最高指導者のメシャール氏を中心としたシリアの保護を受けている在外指導部との間で、エジプト提案に対する見解が分かれているというものだ。
07年6月の分裂以降、ハマスが支配するガザはイスラエルの境界封鎖によって経済状況は悪化の一途。昨年末に始まったイスラエル軍による大規模攻撃で、さらに拍車がかかっている。
ガザの指導部は、困窮脱出のためには米欧が支援するファタハと和解し、国際社会からの援助が欠かせないと考える幹部も多い。だが、メシャール氏らはイスラエルへの強硬姿勢を崩さず、意見が割れているという。メシャール氏の意見にはシリアの意向が強く働いているとされる。
一方で、「ガザの指導部も海外から運び込んでくる金のおかげで困っていない。ガザを支配することに執着し、市民のことなど考えていない」といった声もガザでは上がっている。

一方のファタハは、和解案に応じないハマスへの非難を強めている。
「ガザ住民の多くが(イスラエルの攻撃で)ホームレスになり困窮生活を送っているが、彼らは一向に気にしていない」。パレスチナ自治区ラマラで24日に開かれたパレスチナ解放機構(PLO)の中央評議会で、アッバス議長はハマスを激しく批判した。
さらに「ハマス自体に決定権がないことが問題。外部の力の差配によるものだ」とも述べ、間接的な表現ながら強い影響力を行使しているとされるシリアやイランにも批判の矛先を向けた。

そのアッバス議長は23日夜に自治政府の議長(大統領)と評議会(国会に相当)の選挙を当初の予定通り来年1月に実施すると発表。ハマスは選挙が和解協議の重要課題であり、合意なしに実施することは「信義違反だ」と激しく反発した。
ただ、議長が本気で選挙を実施しようとしているのか疑う声は強い。選挙を強行しても、ハマスが実効支配するガザでの実施は、ハマスが同意しない限りは「事実上不可能」(自治政府職員)。ヨルダン川西岸とガザ、(東)エルサレムで実施すると定めている選挙法も骨抜きの形になり、選挙自体の正統性に疑問符がつきかねないからだ。
アッバス議長による選挙実施の発表は、ヨルダン川西岸とガザの「分断固定化」というパレスチナにとって最悪となるシナリオを提示したうえで、ハマスに和解を迫る「危険な賭け」との見方も強い。エジプトの仲介を軸にさらに和解の可能性を探るとみられる。【10月27日 朝日】
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“ガザの指導部は、困窮脱出のためには米欧が支援するファタハと和解し、国際社会からの援助が欠かせないと考える幹部も多い”ということが、唯一の救いでしょうか。
政治目的のためにガザ住民の生活を犠牲にするような姿勢は、1日も早く解消してもらいたいものです。

【アメリカ 入植凍結を求めない方針】
パレスチナ側がこうした分断状況にあっては、イスラエルとの和平交渉などは望むべくも無いところですが、10月31日、ネタニヤフ・イスラエル首相と会談したクリントン米国務長官は、中東和平交渉を無条件で再開すべきだと表明、イスラエルの入植活動凍結を前提とみなすアッバス・パレスチナ自治政府議長と距離を置く姿勢を鮮明にしています。
オバマ米政権はこれまで、イスラエルの入植活動の全面凍結を求めてきていましたので、方針転換が窺われます。

****米国務長官:入植活動凍結「前提でない」 中東和平交渉*****
クリントン米国務長官は31日夜、訪問先のエルサレムでイスラエルのネタニヤフ首相と共同会見し、停滞する中東和平交渉を巡り、パレスチナ自治政府が要求するイスラエルの占領地ヨルダン川西岸での入植活動の凍結は「(交渉再開の)前提でない」と言明した。長官は「重要なのは協議に入ることだ」と述べ、仲介役として、交渉再開を優先する姿勢を明確にした形だ。

オバマ米政権は入植問題について、これまでイスラエルに「完全凍結」を要求。パレスチナはこれを支えに、凍結しない限り交渉再開に応じない姿勢を堅持してきた。一方、イスラエルは既に着工・承認済みの住宅建設を除く「部分凍結」を譲らず、折衝は暗礁に乗り上げていた。
パレスチナは米国が今回、イスラエルに譲歩したと反発を強めており、事態打開にはなお曲折がありそうだ。
クリントン長官は会見でイスラエルの「部分凍結」方針について、入植を制限する「前例のない提案」と評価。さらに、パレスチナが入植凍結を交渉再開の「新条件」にしたと批判するネタニヤフ首相に同意し、「(凍結が)前提になったことはない」と述べた。

一方、クリントン長官はエルサレム訪問に先立ち、アラブ首長国連邦でアッバス・パレスチナ自治政府とも会談した。議長はこの際、入植凍結が交渉再開の前提であるとの考えを改めて強調していた。
クリントン長官はこの後、国際会議出席のためモロッコを訪れ、アラブ諸国とも協議する。【11月1日 毎日】
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【できない譲歩】
アメリカは、住宅の新規着工だけを一定期間凍結するというイスラエルの妥協案によって、交渉の早期再開を目指す方針ということですが、「完全凍結」を交渉再開の前提条件として要求するアッバス議長側に譲歩を促すものです。
しかし、議長選を来年に控え、ハマスとの対立が激化しているアッバス議長サイドは、入植問題で譲歩できる状況にはありません。

国連人権理事会でのガザ攻撃に対するイスラエル非難決議案でも、アメリカに強いられて譲歩したとの猛批判を浴びて、議長側近が「(延期に同意したのは)間違いだった」と釈明する事態に追い込まれ、結局、自治政府は「早期採択」へ翻意するという醜態を演じたばかりですからなおさらです。

それを承知でのクリントン米国務長官の発言ですから、アメリカとしては、中東和平交渉の当面の進展をあきらめた・・・というところではないでしょうか。
もとより、イスラエルは右派のネタニヤフ首相、パレスチナは分裂状況・・・ということで、誰も進展があるとは思っていなかった和平交渉ではありますが。

パレスチナでも、アフガニスタンでも、住民不在の政治が続きます。

コメント
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