
(これまでタブー視されてきた台湾有事のリアルを描く台湾ドラマ「零日攻撃 zero day」 台湾では8月2日に放送開始予定。日本などでの配信も予定されている。)
【奇策失敗 想定外の「完封負け」】
7月27日ブログでも取り上げたように、台湾・頼清徳政権が議会での少数与党という逆境を一気に挽回すべく放った奇策・・・親中国派の野党議員を大量にリコールして、そのうち幾つかの議席を与党で奪い返すという策は、思惑とは異なり終盤にかけて失速し、「完封負け」状態になりました。
****台湾リコール、まさかの「完封負け」 頼総統の演説に中間層が反発か****
26日に投開票された台湾の最大野党・国民党立法委員(国会議員に相当)24人に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票は、全ての選挙区で否決されて失敗するという一方的な結果に終わった。一時は推進派に勢いがあったとみられた台湾初の大規模リコールは意外な展開をたどった。
26日夕方、台北市中心部の立法院(国会に相当)そばで開かれた推進派の集会は沈痛な雰囲気に包まれた。開票速報がリコール反対票の優勢を伝えると、「なぜだ」との声が上がった。「まさかこんな結果になるとは誰も考えていなかった」(推進派団体幹部)
同じ頃、リコールの対象となった国民党の王鴻薇(おうこうび)立法委員は否決確実となって報道陣に「苦しい戦いだった」と認め、党などの支援で勝利できたと声を詰まらせた。2024年4月に国民党議員団の一員として訪中し、共産党幹部と会談したことで推進派から「親中派」と批判され、「リコール成立の可能性が高い一人」(台湾メディア)ともされてきた。
2月に始まった大規模リコール運動では、国民党に批判的な住民団体に多くのボランティアが集まり、各地でリコール投票に必要な署名活動を進めた。国民党側も与党・民進党立法委員に対するリコール運動を起こしたが、法定署名数が集まった立法委員は国民党31人に対し、民進党は0人。国民党は守勢に立たされる展開だった。
ただ、本来は個別の議員の資質を理由にするはずのリコールで「親中的」として国民党の立法委員全体を対象にした今回の運動方針は、世論の広い理解を得たとはいえなかった。民間団体「台湾民意基金会」が14日に発表した世論調査ではこうした方針のリコールに賛成しないとした人は48%で、賛成する人の42%を上回った。
さらに頼清徳総統が6月下旬に自らの政治理念を訴える一連の演説の中で「不純物を取り除く」との趣旨の発言をしたことが、台湾内の分断を加速させると野党側からの強い反発を生んだ。
台湾・清華大の小笠原欣幸栄誉講座教授はトランプ米政権との関税問題が浮上する中、野党との政治闘争にこだわる頼政権に対する不満が若者を中心にあったと指摘。世論調査で与野党の支持率が拮抗(きっこう)する中、「頼氏の発言をきっかけに、『頼政権が思い通りに国を動かしていいのか』という国民党の主張に共感する中間派の一部が反対に回ったのが大きい」と分析する。
リコール運動中は与野党関係者などから、強い政党支持のない層の投票動向は通常の選挙以上に読みにくいとの声があがっていた。リコール推進派団体幹部は「ネット空間や街頭で返ってくる反応には確かな手応えを感じていたが、自分たちに近い人しか見えていなかったのかもしれない」と振り返った。【7月27日 毎日】
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【トランプ政権 中国への配慮から台湾総統の「訪米」(立ち寄り)拒否】
このリコール作戦の失敗で窮地にある頼清徳政権を更に苦しめるのが、外交上のアメリカの“つれない”対応。
アメリカと正式国交がない台湾総統は、中国がアメリカに執拗にせまる「一つの中国」という立場から、正式にアメリカを訪問して米指導者と会談するのはできませんが、中南米に行く途中に「立ち寄る」という形でこれまでアメリカとの外交を行ってきました。
そのアメリカとの関係はトランプ関税をめぐって「ヤマ場」にあります。なんとしても米指導部と(その形式は「立ち寄り」だろうが何だろうが)会談を実現したいところ。(これまで米大統領との会談は実現していません)
しかし、「ヤマ場」にあるのは米中の関税交渉も同じ。アメリカ・トランプ政権からすれば重視すべきはおのずから決まっている・・・。
****トランプ政権、台湾総統の「訪米」拒否 対中関税交渉に配慮と英紙***
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は28日、トランプ米政権が台湾の頼清徳総統に対して、中南米訪問の際に経由地としてニューヨークに立ち寄ることを許可しなかったと報じた。トランプ政権が中国との関税交渉への影響に配慮したためだとしている。複数の関係者の話として伝えた。
FTによると、頼氏は8月に国交のあるパラグアイ、グアテマラ、ベリーズの中南米3カ国への訪問を計画。経由地として米東部ニューヨークや南部テキサス州に立ち寄ることを検討していた。台湾側は米国の保守系シンクタンク・ヘリテージ財団に対して、ニューヨークで頼氏が登壇するイベントの開催も働きかけていたという。
しかし、中国は頼氏が米国に立ち寄ることに反対。米政府は、28日にスウェーデンで始まった関税措置を巡る閣僚協議への悪影響を懸念し、ニューヨークへの立ち寄りを認めないと台湾側に伝えた。米側の通告後、台湾側は頼氏の中南米訪問をとりやめた。
台湾側は28日、台風被害や米国との関税交渉への対応などを理由に「近く外国を訪問する予定はない」とする声明を発表した。
FTによると、米国内の親台湾派の間では、関税交渉の妥結や米中首脳会談を模索するトランプ政権が対中姿勢を軟化させているとの懸念が広がっているという。
台湾の蔡英文前総統は、中南米訪問時に中継地として米国に何度も立ち寄った。2023年3〜4月には往路でニューヨーク、復路で西部カリフォルニア州ロサンゼルスを訪問。当時のマッカーシー連邦下院議長と会談したり、米シンクタンクの会合で講演したりした。中国は台湾周辺で軍事演習を実施するなど対抗措置をとった。【7月29日 毎日】
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台湾側は「近く外国を訪問する予定はない」と取り繕ってはいますが、アメリカによる屈辱的対応は明らか。報道が事実なら・・・。
本来は、こういう話は表に出ない水面下で結着する話のはずですが、何故か表に漏れ出てきたようです。
アメリカ側は・・・・形式論で突っぱねた形。
****台湾総統外遊で「立場不変」 米****
米国務省のブルース報道官は29日の記者会見で、台湾の頼清徳総統の中南米訪問時の米本土への立ち寄りをトランプ政権が許可しなかったとする英紙報道に関し、「現時点で総統の外遊計画はなく、結果として何も中止されていない」と述べた。台湾総統に経由地として米国への立ち寄りを認めてきた従来の立場は「何も変わっていない」と強調した。【7月30日 時事】
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【トランプ政権 6月に予定された台湾の国防部長(国防相に相当)の訪米を直前にキャンセル】
台湾側にとって追い打ちの一撃も。
****米国防総省、台湾との高官協議キャンセル 英報道 対中交渉優先か****
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は30日、米国のトランプ政権が、6月に予定された台湾の顧立雄(こりつゆう)国防部長(国防相に相当)の訪米を直前にキャンセルしていたと報じた。顧氏は、首都ワシントンで米国防総省ナンバー3のコルビー国防次官(政策担当)と会談する予定だった。
米側が対中関係の悪化を懸念して取りやめた可能性があるという。トランプ政権が中国との貿易交渉の進展を重視する構えを見せる中、台湾当局者の間では米国の対中姿勢への懸念が高まっていると報じられている。
Advertisement FTによると、米国は台湾に対し、6月22日のイラン核施設攻撃に言及して「タイミングが悪い」と説明したとされる。米台は新たな日程の調整を進めているが、米側は顧氏よりも下位の当局者との会談を求めているという。
複数の米政府関係者は、顧氏の訪米が、米中の貿易交渉や、トランプ米大統領が意欲を示す米中首脳会談の実現に悪影響を与えることに懸念を示したという。
FTは、台湾の頼清徳総統が中南米訪問の際に経由地としてニューヨークに立ち寄ることについて、在米中国大使館が懸念を伝達した後、米政府が許可しなかったとも報じた。【7月31日 毎日】
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【アメリカへの信頼度は急速に低下】
こういうアメリカの中国を忖度する姿勢を見ると、台湾有事の際にアメリカは台湾支援で軍事行動に出られるのか・・・かなり疑問も。
*****最近の世論調査 台湾有事におけるアメリカは信用できるのか?****
①台湾世論調査(2025年3月・中研院「米国肖像」調査)
「中国が台湾を武力侵攻した場合、アメリカが軍事的に協防してくれるか?」
全国民回答:49.9%が「協防すると思う」と回答、42.4%が「しないと思う」と回答
政党支持層別の差異:
民進党支持者:約 73.8% が「アメリカが協防すると思う」と信頼
国民党支持者:わずか 23.8% が同様に信じている
傾向として、2024年調査と比べてどの支持層でも信頼度は約10ポイント下落傾向にあるとされています
②他調査結果(2025年3月・民調)
台湾民意基金会による別の調査では、「米国が出兵して協防する信頼」は39%で、「52%が信頼しない」と回答しています。
この調査は全体数字でやや低い値を示していますが、政党別の内訳は明示されていません。
この調査は全体数字でやや低い値を示していますが、政党別の内訳は明示されていません。
所感
民進党支持層ではアメリカへの信頼が高く、約7割が協防を期待しています。一方、国民党支持層ではその割合が大きく下がり、多数派が協防に懐疑的です。
全体では約5割前後が「協防される可能性がある」と信じている一方で、信頼感は低下傾向にあり、2024年と比べて約10ポイントほど下がった層もあります。
地政学的な緊張、米中関係の変化、台湾の安全保障政策や半導体産業のアメリカへの投資などが影響を与えている模様です。【ChatGPT】
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台湾世論がアメリカの対応に懐疑的になるのもやむを得ないところでしょう。