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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国への配慮が優先するアメリカの台湾対応 台湾の対米信頼度は急速に低下

2025-07-31 22:21:53 | 東アジア
(これまでタブー視されてきた台湾有事のリアルを描く台湾ドラマ「零日攻撃 zero day」 台湾では8月2日に放送開始予定。日本などでの配信も予定されている。)

【奇策失敗 想定外の「完封負け」】
7月27日ブログでも取り上げたように、台湾・頼清徳政権が議会での少数与党という逆境を一気に挽回すべく放った奇策・・・親中国派の野党議員を大量にリコールして、そのうち幾つかの議席を与党で奪い返すという策は、思惑とは異なり終盤にかけて失速し、「完封負け」状態になりました。

****台湾リコール、まさかの「完封負け」 頼総統の演説に中間層が反発か****
26日に投開票された台湾の最大野党・国民党立法委員(国会議員に相当)24人に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票は、全ての選挙区で否決されて失敗するという一方的な結果に終わった。一時は推進派に勢いがあったとみられた台湾初の大規模リコールは意外な展開をたどった。

26日夕方、台北市中心部の立法院(国会に相当)そばで開かれた推進派の集会は沈痛な雰囲気に包まれた。開票速報がリコール反対票の優勢を伝えると、「なぜだ」との声が上がった。「まさかこんな結果になるとは誰も考えていなかった」(推進派団体幹部)

同じ頃、リコールの対象となった国民党の王鴻薇(おうこうび)立法委員は否決確実となって報道陣に「苦しい戦いだった」と認め、党などの支援で勝利できたと声を詰まらせた。2024年4月に国民党議員団の一員として訪中し、共産党幹部と会談したことで推進派から「親中派」と批判され、「リコール成立の可能性が高い一人」(台湾メディア)ともされてきた。

2月に始まった大規模リコール運動では、国民党に批判的な住民団体に多くのボランティアが集まり、各地でリコール投票に必要な署名活動を進めた。国民党側も与党・民進党立法委員に対するリコール運動を起こしたが、法定署名数が集まった立法委員は国民党31人に対し、民進党は0人。国民党は守勢に立たされる展開だった。

ただ、本来は個別の議員の資質を理由にするはずのリコールで「親中的」として国民党の立法委員全体を対象にした今回の運動方針は、世論の広い理解を得たとはいえなかった。民間団体「台湾民意基金会」が14日に発表した世論調査ではこうした方針のリコールに賛成しないとした人は48%で、賛成する人の42%を上回った。
 
さらに頼清徳総統が6月下旬に自らの政治理念を訴える一連の演説の中で「不純物を取り除く」との趣旨の発言をしたことが、台湾内の分断を加速させると野党側からの強い反発を生んだ。

台湾・清華大の小笠原欣幸栄誉講座教授はトランプ米政権との関税問題が浮上する中、野党との政治闘争にこだわる頼政権に対する不満が若者を中心にあったと指摘。世論調査で与野党の支持率が拮抗(きっこう)する中、「頼氏の発言をきっかけに、『頼政権が思い通りに国を動かしていいのか』という国民党の主張に共感する中間派の一部が反対に回ったのが大きい」と分析する。
 
リコール運動中は与野党関係者などから、強い政党支持のない層の投票動向は通常の選挙以上に読みにくいとの声があがっていた。リコール推進派団体幹部は「ネット空間や街頭で返ってくる反応には確かな手応えを感じていたが、自分たちに近い人しか見えていなかったのかもしれない」と振り返った。【7月27日 毎日】
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【トランプ政権 中国への配慮から台湾総統の「訪米」(立ち寄り)拒否】
このリコール作戦の失敗で窮地にある頼清徳政権を更に苦しめるのが、外交上のアメリカの“つれない”対応。

アメリカと正式国交がない台湾総統は、中国がアメリカに執拗にせまる「一つの中国」という立場から、正式にアメリカを訪問して米指導者と会談するのはできませんが、中南米に行く途中に「立ち寄る」という形でこれまでアメリカとの外交を行ってきました。

そのアメリカとの関係はトランプ関税をめぐって「ヤマ場」にあります。なんとしても米指導部と(その形式は「立ち寄り」だろうが何だろうが)会談を実現したいところ。(これまで米大統領との会談は実現していません)

しかし、「ヤマ場」にあるのは米中の関税交渉も同じ。アメリカ・トランプ政権からすれば重視すべきはおのずから決まっている・・・。

****トランプ政権、台湾総統の「訪米」拒否 対中関税交渉に配慮と英紙***
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は28日、トランプ米政権が台湾の頼清徳総統に対して、中南米訪問の際に経由地としてニューヨークに立ち寄ることを許可しなかったと報じた。トランプ政権が中国との関税交渉への影響に配慮したためだとしている。複数の関係者の話として伝えた。

FTによると、頼氏は8月に国交のあるパラグアイ、グアテマラ、ベリーズの中南米3カ国への訪問を計画。経由地として米東部ニューヨークや南部テキサス州に立ち寄ることを検討していた。台湾側は米国の保守系シンクタンク・ヘリテージ財団に対して、ニューヨークで頼氏が登壇するイベントの開催も働きかけていたという。

しかし、中国は頼氏が米国に立ち寄ることに反対。米政府は、28日にスウェーデンで始まった関税措置を巡る閣僚協議への悪影響を懸念し、ニューヨークへの立ち寄りを認めないと台湾側に伝えた。米側の通告後、台湾側は頼氏の中南米訪問をとりやめた。

台湾側は28日、台風被害や米国との関税交渉への対応などを理由に「近く外国を訪問する予定はない」とする声明を発表した。

FTによると、米国内の親台湾派の間では、関税交渉の妥結や米中首脳会談を模索するトランプ政権が対中姿勢を軟化させているとの懸念が広がっているという。

台湾の蔡英文前総統は、中南米訪問時に中継地として米国に何度も立ち寄った。2023年3〜4月には往路でニューヨーク、復路で西部カリフォルニア州ロサンゼルスを訪問。当時のマッカーシー連邦下院議長と会談したり、米シンクタンクの会合で講演したりした。中国は台湾周辺で軍事演習を実施するなど対抗措置をとった。【7月29日 毎日】
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台湾側は「近く外国を訪問する予定はない」と取り繕ってはいますが、アメリカによる屈辱的対応は明らか。報道が事実なら・・・。

本来は、こういう話は表に出ない水面下で結着する話のはずですが、何故か表に漏れ出てきたようです。

アメリカ側は・・・・形式論で突っぱねた形。

****台湾総統外遊で「立場不変」 米****
米国務省のブルース報道官は29日の記者会見で、台湾の頼清徳総統の中南米訪問時の米本土への立ち寄りをトランプ政権が許可しなかったとする英紙報道に関し、「現時点で総統の外遊計画はなく、結果として何も中止されていない」と述べた。台湾総統に経由地として米国への立ち寄りを認めてきた従来の立場は「何も変わっていない」と強調した。【7月30日 時事】
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【トランプ政権 6月に予定された台湾の国防部長(国防相に相当)の訪米を直前にキャンセル】
台湾側にとって追い打ちの一撃も。

****米国防総省、台湾との高官協議キャンセル 英報道 対中交渉優先か****
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は30日、米国のトランプ政権が、6月に予定された台湾の顧立雄(こりつゆう)国防部長(国防相に相当)の訪米を直前にキャンセルしていたと報じた。顧氏は、首都ワシントンで米国防総省ナンバー3のコルビー国防次官(政策担当)と会談する予定だった。

米側が対中関係の悪化を懸念して取りやめた可能性があるという。トランプ政権が中国との貿易交渉の進展を重視する構えを見せる中、台湾当局者の間では米国の対中姿勢への懸念が高まっていると報じられている。

Advertisement FTによると、米国は台湾に対し、6月22日のイラン核施設攻撃に言及して「タイミングが悪い」と説明したとされる。米台は新たな日程の調整を進めているが、米側は顧氏よりも下位の当局者との会談を求めているという。

複数の米政府関係者は、顧氏の訪米が、米中の貿易交渉や、トランプ米大統領が意欲を示す米中首脳会談の実現に悪影響を与えることに懸念を示したという。

FTは、台湾の頼清徳総統が中南米訪問の際に経由地としてニューヨークに立ち寄ることについて、在米中国大使館が懸念を伝達した後、米政府が許可しなかったとも報じた。【7月31日 毎日】
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【アメリカへの信頼度は急速に低下】
こういうアメリカの中国を忖度する姿勢を見ると、台湾有事の際にアメリカは台湾支援で軍事行動に出られるのか・・・かなり疑問も。

*****最近の世論調査 台湾有事におけるアメリカは信用できるのか?****
①台湾世論調査(2025年3月・中研院「米国肖像」調査)
「中国が台湾を武力侵攻した場合、アメリカが軍事的に協防してくれるか?」
全国民回答:49.9%が「協防すると思う」と回答、42.4%が「しないと思う」と回答 

政党支持層別の差異:
民進党支持者:約 73.8% が「アメリカが協防すると思う」と信頼
国民党支持者:わずか 23.8% が同様に信じている 

傾向として、2024年調査と比べてどの支持層でも信頼度は約10ポイント下落傾向にあるとされています 

②他調査結果(2025年3月・民調)
台湾民意基金会による別の調査では、「米国が出兵して協防する信頼」は39%で、「52%が信頼しない」と回答しています。
この調査は全体数字でやや低い値を示していますが、政党別の内訳は明示されていません。

所感
民進党支持層ではアメリカへの信頼が高く、約7割が協防を期待しています。一方、国民党支持層ではその割合が大きく下がり、多数派が協防に懐疑的です。

全体では約5割前後が「協防される可能性がある」と信じている一方で、信頼感は低下傾向にあり、2024年と比べて約10ポイントほど下がった層もあります。

地政学的な緊張、米中関係の変化、台湾の安全保障政策や半導体産業のアメリカへの投資などが影響を与えている模様です。【ChatGPT】
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台湾世論がアメリカの対応に懐疑的になるのもやむを得ないところでしょう。
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パレスチナ・ガザの窮状 米・イスラエル国内の世論の変化 イギリスもパレスチナ国家承認へ

2025-07-30 23:31:13 | 人権 児童
(避難所で栄養失調により痩せ細った息子を抱くパレスチナ人の母親=パレスチナ自治区ガザ地区北部ガザ市で2025年7月24日【7月30日 毎日】)

****飢えに苦しむガザの乳幼児、ミルク代わりの水受け付けず 「どうか助けて」母親が訴え****
パレスチナ自治区ガザ地区で飢えに苦しむ乳幼児の母親たちが、必死になってミルクや食事を手に入れようとして絶望的な状況に追い込まれている。 複数の母親は29日、CNNの取材に対し、子どもたちが生き続けるためにどうしても必要なミルクが手に入らないと訴えた。

 ディアナ・アブ・ジャセムさんの息子は生後1年2カ月で、重度の栄養失調の末期状態にあり、体重は5.4キロしかない。息子のための食事もミルクも手に入らず、ボトルを使って水を飲ませているという。 

生後4カ月の娘がいるアズハル・イマド・アブドゥル・ラーマン・マクダッドさんは、ミルクの代わりにゴマを混ぜた水を飲ませようとしていた。 

「娘に飲ませようとしたけれど、受け付けてくれなかった。この子にあげられるものが何もない。ミルクも、おむつも、ベビーフードもない。仕方なくこうしている。初めて試したけれど、飲んでくれない。何もかも娘の害になっている」 

娘のジョウリ・アブ・ハジャルちゃんは体重わずか3.3キロ。出生時から1キロも増えていない。 「この子が良くなるためにはミルクがいる。娘の発達が著しく阻害されている。海外の国々に訴える。どうか私たちを助けて。子どもたちが必要としている食料を届けて」【7月3日 時事】
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****ガザの集団飢餓 食料を「武器」に使う非道****
母親に抱かれた子は、背中の骨が浮き出るほど痩せ細っている。パレスチナ自治区ガザ地区での飢餓を伝える写真である。
 
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くガザの食料不足は極限状態にある。悲劇を止めるため、イスラエルは直ちに全面的な配給を可能にすべきだ。

パレスチナ保健当局によると、餓死者は100人を超えた。世界保健機関(WHO)は、全人口の4分の1が飢餓に近い状態にあるとの見方を示す。
 
イスラエルがガザを封鎖し、食料搬入を停止したのが原因だ。「兵糧攻め」にすることで、ハマスに対して人質解放の圧力をかける意図があると見られている。

国際社会の批判を受け、イスラエルと米国が後押しするガザ人道財団(GHF)が配給を始めたが、状況改善にはほど遠い。

国際人道法は紛争当事者が、民間人への生活物資配給を妨害することを禁じている。
WHOのテドロス事務局長は「封鎖による人為的な集団飢餓だ」と懸念を表明した。 日本や英仏など30カ国以上が「人間の尊厳を奪っている」とイスラエルを非難したのは当然だ。(中略)

物資搬入の制限解除を求める国際社会の声を踏まえ、イスラエルは戦闘を一時停止し、食料などを運ぶ車両が安全に通行できるルートも設けた。

国連の担当者は決定を歓迎しながらも、「大規模かつ継続的な援助が必要だ」と述べ、搬入の全面再開を求めた。

配給を巡っても悲劇は続く。支援物資を求めてGHFの拠点に集まった住民が相次いで銃撃され、800人以上が死亡した。

イスラエル軍は「警告射撃しかしていない」と民間人への攻撃を否定するが、地区を事実上掌握している以上、安全を確保する責任があるはずだ。

ガザ住民を飢えから救うために残された時間は少ない。イスラエルは食料を「武器」に使ってはならない。国際社会は人道危機回避へ圧力を強化する必要がある。【7月30日 毎日】
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単に「兵糧攻め」にとどまらず、食料を求めて集まる住民に銃弾・砲弾を浴びせて連日大量の死傷者を出している状況は全く理解できません。1,2回ならともかく、連日の状況で「警告射撃」云々では到底説明できません。百歩譲ってイスラエル側の意図したものでなかったとしても、“地区を事実上掌握している以上、安全を確保する責任がある”のは避けられません。

事態の深刻化を受けて、これまで一体となってイスラエルを支援してきたアメリカ・トランプ大統領がガザの飢餓を認める形でネタニヤフ首相と異なる見解を表明し、支援強化に向けた動きも出ていることは昨日ブログでも取り上げたところです。

****トランプ氏、ガザには「本当の飢餓」があると発言 イスラエル首相と食い違い****
パレスチナ・ガザ地区の状況について、ドナルド・トランプ米大統領は28日、「本当の飢餓」があると述べた。そうしたものはないとする、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の主張と食い違いを見せた。

訪英中のトランプ氏はこの日、キア・スターマー英首相とスコットランドで会談した際に、記者団の質問を受けた。
ガザでの飢餓をイスラエルが悪化させているというのは「あからさまなうそ」だとするネタニヤフ氏の主張に同意するかと問われると、トランプ氏は、「わからない。(中略)子どもたちはとても腹を空かせているように見える。(中略)あれは本当の飢餓だ」と述べた。

また、「誰もあそこで素晴らしいことはしていない。全体がめちゃくちゃだ。(中略)私はイスラエルに、違う方法でやる必要があるんじゃないかと伝えた」と話した。

ガザの状況をめぐっては、国連のトム・フレッチャー事務次長(人道問題担当)が前日、飢餓を食い止めるには「膨大な量の」食料が必要だと警告した。

パレスチナ・ガザ地区の状況について、ドナルド・トランプ米大統領は28日、「本当の飢餓」があると述べた。そうしたものはないとする、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の主張と食い違いを見せた。

訪英中のトランプ氏はこの日、キア・スターマー英首相とスコットランドで会談した際に、記者団の質問を受けた。
ガザでの飢餓をイスラエルが悪化させているというのは「あからさまなうそ」だとするネタニヤフ氏の主張に同意するかと問われると、トランプ氏は、「わからない。(中略)子どもたちはとても腹を空かせているように見える。(中略)あれは本当の飢餓だ」と述べた。

また、「誰もあそこで素晴らしいことはしていない。全体がめちゃくちゃだ。(中略)私はイスラエルに、違う方法でやる必要があるんじゃないかと伝えた」と話した。

ガザの状況をめぐっては、国連のトム・フレッチャー事務次長(人道問題担当)が前日、飢餓を食い止めるには「膨大な量の」食料が必要だと警告した。【7月29日 BBC】
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こうしたトランプ大統領の変化の背景には、イスラエルを無条件に支援してきた従来のアメリカの外交姿勢に対する大統領支持基盤である「MAGA」若年層の批判があるようです。

****トランプ氏の支持基盤MAGA派、イスラエル無条件支持に反発****
イスラエルへの無条件支持は長年、米共和党政治の必須条件となってきたが、ドナルド・トランプ米大統領の支持基盤である「米国を再び偉大に(MAGA)」派によって正統性が揺らいでいる。「特別な関係」をいくら唱えようと、聞く耳を持たないからだ。

パレスチナ自治区ガザ地区における飢餓と苦しみの映像は、米国の中東介入はトランプ氏の「米国第一主義」と一致するのかどうかという、MAGA派の中でくすぶっていた議論に弾みをつけた。

トランプ氏が初めてイスラエルと大きく対立したのは28日だった。ガザで「現実の飢餓」が起きていることを認め、イスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争で壊滅的な被害を受けたガザに食料センターを設置すると表明した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がガザの飢餓危機を否定していることに同意するかと問われると、トランプ氏は「テレビを見る限り、あまり同意できない。ガザの子どもたちは本当に飢えているように見えるからだ」と答えた。

これは注目すべき回答で、米国の揺るぎないイスラエル支持も他の保守派の聖域と同様、MAGA派によって破られるのではないかとの臆測が専門家の間で飛び交った。

J・D・バンス副大統領はオハイオ州でのイベントでさらに踏み込み、「明らかに飢え死にしそうな幼い子どもたち」の「胸が張り裂けるような」映像について語り、イスラエルにさらなる人道支援物資の搬入を認めるよう求めた。

政治学者で元米外交官のマイケル・モンゴメリー氏は、このトーンの変化は感情的な側面もあるかもしれないとの見方を示した。飢えに苦しむ子どもたちの映像は、空爆を受けた街の惨状よりも人々の心に深く響くからだ。
モンゴメリー氏は「おそらく、飢餓を正当な戦争の手段と見なす文明人はいないからだろう」と語った。

イスラエルは常に米議会で超党派の幅広い支持を得てきたが、トランプ政権下での孤立主義的なMAGA派の台頭は、「特別な関係」のイデオロギー基盤に疑問を投げかけている。

MAGAの現実政策は外国の戦争への関与について、国益、特にトランプ氏の支持基盤を構成する「取り残された」労働者階級の利益に直接影響を与えるものに限定することを目指している。

■「ほぼ支持なし」
トランプ氏寄りで知られる保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」は3月、米政府に対し、イスラエルとの関係を見直し、「特別な関係」から「対等な戦略的パートナーシップ」に変更するよう求めた。

一部のアナリストによると、イスラエルに対する強い不満の表明は、特に2024年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以降、共和党の考えに反するとの認識から抑制されてきた。

だが、主要NGOからの厳しい警告や、国連世界食糧計画(WFP)によるガザ住民約200万人の約3分の1が「何日も食べていない」との指摘を受けて、MAGA内の議論は緊迫感を帯びている。

新しい考え方の兆候は、極右扇動化のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員のX(旧ツイッター)投稿に見られる。グリーン氏はイスラエルのロケット防衛システムへの5億ドル(約742億円)の資金提供を取り消すよう呼び掛けている。

グリーン氏は今週、イスラエルの行為を「ジェノサイド(集団殺害)」と呼び、「ガザで罪のない人々や子どもたちが飢えている」と非難するなど、これまでのどの共和党議員よりも踏み込んだ発言した。

数多くの陰謀論的なソーシャルメディア投稿をしてきたグリーン氏は信用できない人間かもしれないが、彼女がMAGA派の心情をよく理解していることは否定できない。

CNNの最新世論調査によると、イスラエルの行動は完全に正当化されると考える共和党支持者の割合は、2023年の68%から52%に低下した。

食料不足がまだ人道的大惨事に発展していなかった4月に実施された米調査機関ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、この動きをけん引しているのは若年層のようだ。

50歳以上の共和党支持者の親イスラエル的な見解は2022年以降、ほとんど変わっていないが、若年層における同盟国イスラエルへの不支持率は35%から50%に上昇している。

第1次トランプ政権で大統領首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏はポリティコに対し、「イスラエルは30歳未満のMAGA派にほとんど支持されていないようだ」と語り、トランプ氏のイスラエル非難により支持者たちはイスラエルへの敵意を強固にするだろうと付け加えた。

民主党の戦略家マイク・ネリス氏は、ガザの食糧危機を「危機が通常の党派的な行き詰まりを打破するまれな瞬間の一つ」と表現。 「政治的立場を問わず、人々がもはや我慢できないと感じているのが分かる」と語った。【7月30日 AFP】
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また、イスラエル国内にあってもガザの現状に対し「道徳の崩壊であると認めるときが来たのではないだろうか」との自問がなされるようにもなっています。

****「道徳は崩壊したか」と視聴者に問いかけ、ガザ飢餓でイスラエル人動揺****
イスラエルの主要テレビ局はパレスチナ自治区ガザで飢餓に苦しむ住民の様子を放映した後、アンカーはカメラを見つめて「これは広報の失態ではなく、道徳の崩壊であると認めるときが来たのではないだろうか」と視聴者に問いかけた。
  
1968年に米CBSのウォルター・クロンカイト氏は、ベトナム戦争は米国に勝利をもたらさないとの見解を戦地から視聴者に示した。イスラエル・テレビ局のアンカーによるコメントが、そうした分岐点になるかどうかは不明だが、過去1年10カ月近くにわたりイスラム組織ハマスとの戦争を一貫して支持してきたイスラエルに、重要な転機となり得る発言だった。
  
メッセージアプリ「ワッツアップ」のグループチャットや、人権団体の報告からは、世論が戦争支持から離れつつある兆候が見られる。2023年10月7日にハマスがイスラエルを急襲し、1200人を殺害した上で250人を拉致したことに端を発した戦争で、ガザでは6万人近くが死亡した。国連世界食糧計画(WFP)は200万人余りが「深刻な食料危機」に直面しており、飢餓が広がっていると警告した。

「虐殺の後、ハマスを全力でたたくのは不可避だったし、民間人の犠牲は仕方なかった」と中道派新聞イエディオト・アロハノトのコラムニスト、ナフム・バルネア氏は振り返る。
 
しかし「軍事的な犠牲と国際社会におけるイスラエルの立場、そして民間人の犠牲というダメージは悪化の一途をたどっている。ハマスが原因ではあるが、イスラエルにも責任がある」と主張した。
  
コンサルティンググループを経営するシャーウィン・ポメランツ氏は、保守系新聞エルサレム・ポストに寄稿し「2年前に正義の戦争だったものが、今や不正義の戦争になった。終わらせなくてはならない」と述べた。
  
センチメントの変化は膨大な量の悪いニュースに表れている。イスラエル人留学生の排斥や兵士の戦死を伝える報道に、最近では飢えた子どもの映像も加わった。「ガザに飢餓はない」と言い切るネタニヤフ首相の発言には、熱心なイスラエル支持で知られるトランプ米大統領でさえも「あれは本物の飢餓だ。ごまかしようがない」と発言した。

5月の世論調査では、65%のイスラエル人がガザの人道状況を懸念していないと回答していたが、最近になってイスラエルのメディアでは飢餓問題が大きく扱われるようになった。外国の人権団体は戦争開始時から、イスラエルの対応を非難してきたが、今では国内の人権団体が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」という言葉を用いて自国を批判するようになった。

イスラエル5大学の学長は28日、ネタニヤフ首相に宛てた連名の公開書簡で「ガザの飢餓危機に対する真剣な対応」を訴えた。「ホロコーストの恐怖を経験した民族として、われわれは罪のない男女や子どもたちに残酷な危害が無差別に及ぶのを、何としても防ぐ責任を負う」と記した。

野党指導者のラピド前首相は今週、ハマスとの戦争は災害であり、政府の失策だと演説で非難。ネタニヤフ首相に戦闘停止を訴え、中東諸国との協力を通じてハマスを排除するよう求めた。(中略)

世界中のメディアが掲載した写真について、ネタニヤフ政権はこの子どもがやせているのは遺伝子の病気を患っているせいであり、1カ月余りも前にガザからは退避済みだと主張した。証拠は示していない。イスラエル軍はまた、豊富な食料に囲まれて健康そうに見えるハマス戦闘員の写真を配布した。
  
今のところ、ネタニヤフ首相の言動に方針転換の兆しはない。首相は28日、「これは正義の戦争であり、倫理の戦争、われわれが生存するための戦争だ」との声明を出した。「これまで通り、われわれは責任ある対応を続けていく。人質の返還とハマスの打倒をこれからも求めていく。イスラエル人にとっても、パレスチナ人にとっても、それが唯一、平和を確実にする手段だ」と述べた。【7月30日 Bloomberg】
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国際社会にあってもイスラエルへの圧力が強まっています。 フランスはパレスチナ国家承認を表明し、イスラエルに「2国家共存」の枠組みを迫っていますが、イギリスはアメリカとの違いを鮮明化したくない意向もあってフランスに追随しない姿勢を表明しました。

しかし“労働党内で失望の声が広がった。(中略)25日に同党を含む約220人の国会議員が、首相に国家承認を要求する書簡を発表。スターマー氏は今週に入り、ガザが「破滅的状況」にあると危機を強調するようになった。”【7月30日 時事】ということで、条件付きながらパレスチナ国家承認へ。

****英首相 “イスラエル次第でパレスチナを国家として承認” 表明****
イギリスのスターマー首相は、イスラエルがパレスチナのガザ地区の深刻な状況を終わらせるための措置を取らなければ、ことし9月に行われる国連総会までにパレスチナを国家として承認すると発表しました。G7=主要7か国でパレスチナを国家承認する方針を表明したのは、フランスに続き、2か国目となります。

イギリスの首相官邸は29日、声明で、イスラエルがガザ地区の深刻な状況を終わらせるための措置を取らず、長期的で持続可能な平和に向けて取り組まなければことし9月に行われる国連総会までにパレスチナを国家として承認すると発表しました。痩せ細った子どもの

具体的には国連による人道支援の再開や、停戦に合意すること、それにヨルダン川西岸を併合しないことを明確にすることなどが含まれるとしています。(中略)

理由についてスターマー首相は会見で、「現地の状況を変える一助となり、支援が確実に届けられ、将来的な2国家解決の希望を持つためだ」と強調しました。

イギリスはこれまでパレスチナの国家承認に慎重な姿勢を見せていましたが、ガザ地区の人道危機が深まる中、イスラエルに圧力をかけるねらいがあるものとみられます。(後略)【7月30日 NHK】
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ネタニヤフ首相とトランプ大統領は、イスラム主義組織ハマスに利する行為になるとして批判していますが、マルタも。マルタのアベラ首相は29日、9月にニューヨークで開かれる国連総会でパレスチナを国家として承認すると表明しました。

ロシアはウクライナでの軍事的攻勢で戦局における戦術的優位姓と引きかえに、スウェーデンとフィンランドをNATO加盟に動かすなど、戦略的失敗を犯しています。イスラエルもガザでのハマスに対する激しい攻撃の一方で、国際世論と対立・孤立するという失敗を犯しつつあるようです。

****イスラエルに強まる「2国家共存」圧力 トランプ氏も「飢餓」認め、責任回避も限界に****
パレスチナ自治区ガザの人道危機拡大を受け、フランスに続いて英国がパレスチナ国家承認へと傾き、イスラエルに「2国家共存」を迫る国際的な圧力が強まった。支援物資の搬入を制限してきたネタニヤフ政権は、厳しい立場に置かれている。

トランプ氏も飢餓「深刻」
イスラム原理主義組織ハマスを標的にガザへの攻撃を続けるネタニヤフ政権は、ガザの「飢餓」はハマスが停戦協議などを有利に進めるために作り出した虚構だと主張してきた。しかし、イスラエルの後ろ盾であるトランプ米大統領でさえ、ガザでは「多くの人が深刻に飢えている」と認める事態となった。

仏英が支持を表明した「2国家共存」は、パレスチナがガザとヨルダン川西岸を領土とする独立国家を樹立し、イスラエルとの共存を図る案だ。一般的には1993年のオスロ合意が起点だと解釈される。

対パレスチナ強硬派のネタニヤフ首相は2014年にパレスチナ自治政府との交渉を中断し、2国家共存案は形骸化した。同氏にすれば、棚上げしたはずの構想が人道危機で再び注目を集めている格好だ。

相次ぐ「戦闘継続」論
こうしたなか、ネタニヤフ政権の閣僚からは戦闘と飢餓の問題を区別し、ハマスとの戦闘を続けると強調する声が相次いでいる。ニュースサイトのタイムズ・オブ・イスラエルは今月29日、イスラエルのサール外相が「(国際的な圧力が)どれほど強まっても、(戦闘終結は)あり得ない」と述べたと伝えた。

自衛権に基づく戦いだと改めて主張し、国際的に正当性を求める狙いとみられる。ただ、イスラエルが今年3月以降、戦闘と並行してガザへの物資搬入を厳しく制限してきたことは事実で、飢餓を巡る責任回避には限界がみえる。【7月30日 産経】
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パレスチナ  トランプ大統領、ガザへの食料支援を強化する必要性を強調

2025-07-29 22:11:22 | パレスチナ
(27日、ガザ北部で上空から投下される支援物資【7月29日 沖縄ライムス】)

【トランプ大統領「飢餓が起きている。偽ることはできない」 ネタニヤフ首相も人道支援強化へ】
再三取り上げているように、生きるための食料を求めて集まるパレスチナ住民にイスラエル軍が銃弾・砲弾を浴びせ、毎日多数の死者がでるというパレスチナ・ガザの窮状、イスラエルの非人道的対応について、イスラエルも対応を余儀なくされる形で、ようやく国際批判がイスラエルを動かすに至っています。

****ガザ物資配給へ人道回廊 イスラエル、空中投下も****
イスラエル軍は26日、飢餓が拡大するパレスチナ自治区ガザで人道物資の空中投下を再開すると発表した。食料や医薬品を運ぶ国連の車列が安全に移動できるよう「人道回廊」も設置するという。イスラエル外務省は、人道回廊の周辺などで「人道停戦」を実施すると明らかにした。

ガザで拘束される人質の奪還を目指すイスラエルは、イスラム組織ハマスに圧力をかけるため物資搬入を制限。ガザでは、餓死者が出るほど人道危機が深刻化し、国際社会から非難が高まっている。

イスラエルメディアは、人道停戦はガザ北部を含む数カ所で始まると伝えた。軍の発表によると、投下する物資には小麦粉や缶詰などが含まれるという。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリニ事務局長はX(旧ツイッター)で、空中投下は効率が悪く、飢餓状態を改善できないと指摘した。

米国とイスラエルが主導する「ガザ人道財団」は5月に配給を開始したが、食料を求めて殺到した住民らにイスラエル軍が発砲し、多数の死傷者が出ている。

ガザ保健当局によると、2023年10月の戦闘開始後のガザ側死者数は5万9千人を超えている。【7月27日 日経】
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****ガザ地区 ヨルダンとUAEが上空から支援物資を投下****
人道危機が続くパレスチナのガザ地区で、イスラエル軍が軍事行動の限定的な停止を発表したことを受け、上空からの支援物資の投下が行われました。ただ、イスラエル側は戦闘を続ける構えを示していて、人道状況の改善につながるかは依然不透明な状況です。

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナのガザ地区では、イスラエルが支援物資の搬入を制限していて、人道危機が深刻化しています。

こうした中イスラエルは27日、多くの住民が避難生活を送る地域を中心に軍事行動を限定的に停止し、国連などが使う支援物資の輸送路の安全を確保すると発表しました。

これを受け、27日、ヨルダンはUAE=アラブ首長国連邦と共同で25トンの支援物資を上空から投下したと現地のメディアが伝えました。

また、ガザ地区とエジプトの境界のラファ検問所では支援物資を積んだトラックがガザに向かって動き出していました。

一方で、イスラエルのネタニヤフ首相は27日、「ハマスの壊滅と人質解放のために戦闘と交渉を前進させている」などと述べ、ガザ地区での戦闘を続ける構えを改めて示しました。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは27日もガザ地区北部の住宅が攻撃を受け母親と子ども4人が死亡したと伝えていて、人道状況の改善につながるかは依然不透明な状況です。【7月28日 NHK】
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上空からの支援物資の投下がどのような形で行われるのかはしりませんが、TVニュースでは、住民男性が「集まった住民の3km先に投下され、受け取ることができなかった」と話ていました。 また、物資の奪い合いで流血の事態も懸念されます。

やはり本筋は陸路のトラック輸送であり、国連主導の国際機関による配布でしょう。

イスラエル・ネタニヤフ首相は27日、28日時点では、「ガザに飢餓はない」と述べ、イスラム組織ハマスとの戦いを続けると表明していました。

しかし、トランプ大統領の「飢餓が起きている。偽ることはできない」との発言を受けて、ようやく方針を転換したしたようです。

****トランプ氏「ガザの食料供給急務」、イスラエルの飢餓否定に疑義****
トランプ米大統領は28日、パレスチナ自治区ガザで多くの人々が飢餓状態にあると述べ、飢餓はないとするイスラエルのネタニヤフ首相の主張に疑問を呈した。イスラエルが人道支援のアクセスを強化できるとの見方も示した。

英北部スコットランド・ターンベリーの自身のゴルフリゾートでスターマー英首相と会談し、ガザへの食料支援を強化する必要性を強調した。

ガザの飢餓は現実だとした上で、イスラエルは支援の流入に大きな責任を負っており、多くの人々を救うことができると述べた。

ネタニヤフ氏は27日、「ガザに飢餓はない」と述べ、イスラム組織ハマスとの戦いを続けると表明。28日にもこの発言をXに再投稿していた。

しかしその後、ガザの状況は「困難」と指摘し、イスラエルは支援物資が届くよう取り組んでいると強調。「国際機関や米欧諸国と引き続き協力し、大量の人道支援がガザ地区に届くよう努める」と声明で述べた。

トランプ氏は「食料センターを設置する」とも表明。容易にアクセスできるようフェンスや境界線を設けないとし、他国と協力してガザの人々に食料や衛生用品などより多くの人道支援を提供する考えを示した。【7月29日 ロイター】
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****トランプ氏、ガザには「本当の飢餓」があると発言 イスラエル首相と食い違い****
パレスチナ・ガザ地区の状況について、ドナルド・トランプ米大統領は28日、「本当の飢餓」があると述べた。そうしたものはないとする、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の主張と食い違いを見せた。

訪英中のトランプ氏はこの日、キア・スターマー英首相とスコットランドで会談した際に、記者団の質問を受けた。

ガザでの飢餓をイスラエルが悪化させているというのは「あからさまなうそ」だとするネタニヤフ氏の主張に同意するかと問われると、トランプ氏は、「わからない。(中略)子どもたちはとても腹を空かせているように見える。(中略)あれは本当の飢餓だ」と述べた。

また、「誰もあそこで素晴らしいことはしていない。全体がめちゃくちゃだ。(中略)私はイスラエルに、違う方法でやる必要があるんじゃないかと伝えた」と話した。

ガザの状況をめぐっては、国連のトム・フレッチャー事務次長(人道問題担当)が前日、飢餓を食い止めるには「膨大な量の」食料が必要だと警告した。【7月29日 BBC】
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トランプ大統領のこうした対応でパレスチナ情勢に希望が見えてくるなら、大統領が欲しがっているノーベル平和賞もやや近づいてくるのかも。パレスチナやウクライナでの今後の働き次第ですが。

【「2国家共存」を以前として否定するアメリカ・イスラエル】
一方、パレスチナ問題解決の政治的枠組みである「2国家共存」に関しては、ネタニヤフ首相もトランプ大統領も頑なに反対しています。

****イスラエル・パレスチナの2国家共存へ国連会議 即時停戦求める****
イスラエルとパレスチナの2国家共存による和平への機運を高めようという会議が国連で始まり、各国からはガザ地区での即時停戦を求めるとともに、イスラエルによるヨルダン川西岸での入植活動を和平の障害だと非難する意見が相次ぎました。

この会議はフランスとサウジアラビアが中心となって開催を呼びかけたもので、28日からニューヨークの国連本部で日本など125の国と地域が参加して始まりました。

国連のグテーレス事務総長は冒頭「2国家解決はかつてなく遠い」と述べ、和平交渉の再開が困難な現状を認めたうえで「2国家解決は国際法に根ざし、国連総会で承認され、国際社会によって支持された唯一の枠組みだ」と訴えました。

また、パレスチナ暫定自治政府のムスタファ首相は「この会議は平和への道があるというイスラエルへのメッセージだ。それはパレスチナの破壊ではなく、独立によって実現される」と述べ、2国家共存の原則に立ち戻るようイスラエルに呼びかけました。

その後、おととし10月以降に亡くなったすべての犠牲者を悼んで1分間の黙とうが行われました。

会議では、パレスチナの国家承認とハマスの武装解除などが議題となっていて、各国からは、ガザ地区での即時停戦を求めるとともに、国際法違反とされるヨルダン川西岸でのイスラエルの入植活動について、和平の障害だと非難する意見が相次ぎました。

一方、アメリカとイスラエルは会議を欠席していて、イスラエルのネタニヤフ首相が2国家共存に否定的な立場をとり続けるなか、具体的な成果につなげられるかが焦点です。

サウジ外相 国交正常化は“パレスチナ国家実現が大前提”
フランスとともに会議の共同議長を務めるサウジアラビアのファイサル外相は、28日の記者会見で、イスラエルとの国交正常化の可能性について「ガザで絶え間ない死と苦痛が続いている状況下で国交正常化について議論する理由は無い。パレスチナ国家の樹立が議論され、達成されれば、正常化についても議論できるだろう」と述べ、パレスチナ国家の実現が大前提だという考えを改めて強調しました。

そして、今回の会議を欠席しているアメリカについては「アメリカの関与、特にトランプ大統領の関与がガザの危機の終結と、パレスチナとイスラエルの長期的な紛争解決のきっかけになりうると確信している」と述べ、アメリカが和平の動きをリードすることに期待を示しました。

欠席のイスラエル国連大使「会議は幻想を深めるだけ」
会議を欠席しているイスラエルのダノン国連大使は28日「この会議は解決を促すものでなく、むしろ幻想を深めるだけだ。会議の主催者は現実からかけ離れた議論に没頭している」と非難するコメントを発表しました。

米国務省報道官「パフォーマンスに過ぎない」
アメリカ国務省のブルース報道官は28日、声明を発表し「紛争を終結させるためデリケートな外交努力が続けられている中のパフォーマンスに過ぎない」として、会議に反対する立場を強調しました。

また、この会議は、平和を促進するどころか、ハマスを勢いづかせ、和平実現のための現実的な努力を損なうことになると批判しています。

その上で「アメリカはこのような侮辱的な行動には参加しないが、戦闘の終結と恒久的な平和の実現に向けた現実的な取り組みを引き続き主導していく」として、停戦に向けた取り組みを続けるとしています。(中略)

ガザ地区の死者6万人に迫る 深刻な人道危機つづく
パレスチナのガザ地区では28日もイスラエル軍の攻撃が続き、地元の保健当局はおととし10月以降の死者が5万9921人にのぼったと発表しました。

一方、ガザ地区では深刻な食料不足を受けて27日からイスラエル軍は限定的に軍事行動を停止し、国連などによる支援物資の輸送路の安全を確保する措置を始めたとしています。

これを受け、イスラエル当局は28日、国連などが27日にトラック120台分以上の支援物資を配布したと発表しました。

ただ、ガザ地区の保健当局は28日、過去24時間に栄養失調などで14人が死亡したと発表していて、現地ではいまも深刻な人道状況が続いています。

国連は、さらに多くの支援物資を搬入する必要があるとして、恒久的な停戦の必要性を改めて訴えています。【7月29日 NHK】
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イスラエルはこうした国際社会によるガザ停戦要請や「2国家共存」の推進に対し反発しています。

****イスラエル外相、ガザ停戦への圧力を拒否「歪んだキャンペーン」****
イスラエルのギドン・サール外相は29日、パレスチナ自治区ガザ地区での停戦とパレスチナ国家の承認を求める国際的な圧力を「歪んだキャンペーン」と呼び、これに応じない考えを示した。

サール氏は記者団に対し、イスラム組織ハマスがガザで依然として権力を握り、人質を拘束したままの状況でイスラエルが紛争を停止することは、「イスラエル人とパレスチナ人の双方にとって悲劇だ」と述べ、「どれだけ圧力をかけられても、イスラエルが応じることはない」と強調した。

ガザをめぐっては、国連の支援を受けた監視機関が「進行中」と表現する飢餓を防ぎ、援助機関による食料支援を可能にするため、ここ数週間で停戦を求める国際的な圧力が高まっている。

しかしサール氏はエルサレムでの記者会見で、紛争の責任は全面的にハマスにあると主張し、イスラエルへの圧力はハマスに強硬姿勢を取らせるだけだと訴えた。

「国際社会がこの戦争の終結を求める時、それが本当に意味するのは何か?ハマスがガザで権力を握ったまま戦争を終わらせるということなのか?」と述べた。

またサール氏は、フランスを含む一部の国がイスラエルとパレスチナの「2国家解決」への取り組みを再び進めようとしていることにも反発した。

「フランスの外相が昨日、ヨーロッパはイスラエルに対して2国家解決を受け入れるよう圧力をかけるべきだと発言した」と述べたうえで、「今パレスチナ国家を樹立するということは、ハマス国家、ジハード主義国家をつくることだ。それはあり得ない」と強く反対した。【7月29日 AFP】
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実際、イスラエルはガザでの戦争だけでなく、ヨルダン川西岸地区でのパレスチナ住民社会の破壊を進めています。

****東エルサレムでパレスチナ人の家に破壊命令、16年で2272軒…イスラエル人の入植を加速する思惑か****
イスラエルが占領する東エルサレムで27日、パレスチナ人の自宅が取り壊された。エルサレム市から「無許可建築」として破壊命令が出ていたためで、途方に暮れる一家の姿があった。国連によると、この16年間で東エルサレムで同様に破壊されたパレスチナ人の建物は2272軒に上る。イスラエル人の入植活動を加速する思惑も指摘される。

東エルサレムのバイトハニーナ地区。1台のショベルカーが27日早朝に到着すると、家主のタクシー運転手ジハード・ハルワーニさん(57)ら一家の目の前で、鉄筋コンクリート2階建ての家の解体作業が始まった。大きな音をたてて崩れる我が家を前に、ジハードさんは「思い出の詰まった自宅を壊すのはつらい」とうつむいた。

一家は2000年に550平方メートルの土地を取得し、エルサレム市に家の建築申請を出した。何度も掛け合ったが許可は下りず、床面積400平方メートルの家を無許可で建てた。

市からは05年に取り壊しを求められた。その際は罰金18万シェケルを払って逃れたが、今回は8月1日までに解体しなければ30万シェケル(約1300万円)を請求すると通知された。取り壊しを選択せざるを得なかった。

家には6家族25人が住むが、行き先は未定だ。ジハードさんの長男ミドハットさん(30)は「結婚してこの家に住むつもりだったが、思い描いていた人生が崩れた」と嘆いた。

東エルサレムでは00年代以降、パレスチナ人の建築申請はほぼ許可されない一方で、イスラエル人の入植地が次々と建設されている。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、09年~今年6月末に当局に解体されるか自ら取り壊した建物は2272軒で、今年半期だけで97軒に上る。

ジハードさんは憤りを隠さない。「イスラエル人はパレスチナ人をエルサレムから追い出したいだけだ」【7月28日 読売】
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ウクライナ戦争 止める考えのないプーチン大統領  ロシア軍・プーチン政権の内情

2025-07-28 22:33:39 | ロシア
(モスクワ・タガンスカヤ駅のスターリンのレリーフ【7月23日 Bloomgerg】)

【戦争を止める意思はないプーチン大統領 手のひら返しにロシアへの圧力を強めるトランプ大統領】
プーチン大統領はウクライナの戦争を止める意思はなく、ウクライナの主権を否認するところまで戦争を続けるつもりのようですが、そうしたプーチン大統領の姿勢を改めて認識したトランプ大統領はプーチン大統領への苛立ち・不満を明らかにし、これまでのロシアへの宥和的姿勢からウクライナ支援に「手のひら返し」を見せてはいますが、そもそもウクライナへの関心を失うのではないか・・・との見方も。

****トランプの癇癪を無視するプーチン、いかなる犠牲を払ってでもウクライナの従属を貫く****
 2025年7月11日付のフィナンシャル・タイムズ紙で、シルヴィ・カウフマン(Le Monde コラムニスト)が、トランプ大統領のウクライナ戦争停戦に向けた努力は実らず、プーチン大統領が目標達成のために長期の戦争に腰を据えていることが明らかになっていると指摘し、トランプ大統領はこれに対処する必要があると論じている。 

プーチンはトランプの癇癪にも平然たる様子である。7月8日、「プーチンは数々のでたらめを投げてよこした」と、ウクライナとの停戦が進展しないことに苛立ち、トランプは警告した。

プーチンの答えは明確だった。数時間のうちにロシアはウクライナに対する過去最大のドローン攻撃を行った。 

トランプは24時間以内に戦争を終わらせると言っていたが、今や長期の紛争の可能性を考慮する必要がある。トランプの圧力に動じることなく、プーチンは究極の目標を達成する決意である。  

目標は如何なる犠牲を払ってでも、ウクライナを従属させることである。他方、ウクライナはロシアの支配に抵抗する強靭性と断固たる決意をなお示している。この全面戦争は4年目となるが、双方にとって存亡をかけたものとなっている。 

過去2週間に2度、トランプやマクロンとの長時間の電話で、プーチンは明確なメッセージ、すなわち、如何なる解決といえども、紛争の「根本原因」に対処する必要があると述べた。そのことは、 北大西洋条約機構(NATO)の境界を1977年当時に押し戻し、ウクライナの主権を否認することを意味する。  

100 万人と推定される数の死傷者にかかわらず、プーチンは戦場における優位性は拡大していると信じている。彼にとって、この戦争に勝てないことは考えられない。彼は「ウクライナを非ナチ化する特別軍事作戦」から「NATOの侵略との戦闘」に語り口を変更したことにより、この戦争は彼の生き残りの鍵となる終わりのないプロジェクト、すなわち、永久に続く戦争になっている。  

ウクライナにとっては、敗北はウクライナの終わりを意味する。ウクライナも、破壊的な損失と兵員の不足にかかわらず、戦い続けられると考えている。  

ウクライナ軍は敵に衝撃的な打撃を与える能力をいまだ有している。昨夏のロシアのクルスク州への侵攻、あるいは 6月1日のロシアの戦略爆撃機に深刻な損害を与えた大胆なドローン攻撃(「蜘蛛の巣作戦」)がその例である。  
より重要なことは、ウクライナの防衛産業の生産の拡大である。今や欧州の軍事産業基盤では再軍備に向けて大きな変化が進行中であるが、その重要な部分を成す。

過去6カ月、トランプが最初はプーチンの機嫌を伺い、プーチンの立場に寄り添い、ゼレンスキーを怒鳴りつけたが、その後、調子を変えて、ウクライナへの兵器の輸送を差し止めるペンタゴンの決定を逆転させるに至るのを、欧州の首脳はただ眺めているだけだった。

トランプは今や枢要なパトリオット防空システムをウクライナに提供することを検討中だと言っている。  しかし、トランプは本気か。欧州では多くの人がトランプはウクライナに興味を失いより関心の深い問題に立ち戻ることがあるのではないかと疑っている。  

そうなれば、ロシアの侵略を撃退するのを助けるのは欧州の責務である。欧州にとっても敗北はオプションではあり得ない。どのように終わるにせよ、どのみち長い戦争になるであろう。

長い戦争を覚悟する必要
7月4日、トランプは3日のプーチンとの電話会談について「非常に失望している。プーチンに停戦するつもりがないことは大変残念だ」と述べた。7日には、ウクライナに兵器を送る「その必要がある、彼等は自身を守ることが出来ねばならない」と述べた。  

そして、8日には「真実を言えば、プーチンは我々に数々のでたらめを投げてよこした。彼は常にとても親切だったが、それは意味のないことだった」とプーチンの芝居を指摘するに至った。  

停戦さえ実現すれば、偽りの平和でも欲しい自身の欲求に付け込まれ、プーチンに弄ばれて来たことに、ようやくトランプは気が付いたということであろう。

(中略)トランプはウクライナの戦争を止めさせるための仲介努力を放棄するのではないかと思われる。他方、ロシアもウクライナも引き続き戦い続ける意思と能力を有している。  

どのみち、長い戦争になることを覚悟する必要がある。長い戦争にトランプは対処する必要がある。それが、この論説の趣旨である。(中略)

軋轢を生みかねない新たな制裁
もう一つの注目点は、去る4月にリンゼー・グラム(共・SC)およびリチャード・ブルーメンソール(民・CT)両上院議員が提案した超党派の新たな対露制裁法案(共同提案者は84人)である。

これまでウクライナの和平達成に障害となると見てトランプは留保を付して来たようであるが、トランプも賛成に転じ、議会指導部は夏休み前の可決を目論んでいると報じられている。

この法案は、ロシア起源の「石油、ウラニウム、天然ガス、石油製品、石油化学製品」を購入する国のすべてのモノとサービスに対し米国が最低 500%の関税を課すことを規定している。  

ロシアの継戦能力を削ぐためにエネルギー分野の収益の削減に焦点を当てることは理にかなっている。両上院議員は中国が標的だと言っているようである。

しかし、中国に次ぐロシア産石油の輸入国であるインド、あるいはロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入を大きく減らしているとはいえ、今なお依存度が高い加盟国を抱える欧州連合(EU)も標的とならざるを得ず、そのことの破壊的な影響は明らかである。  LNGの故に日本も標的になりかねない。

現段階での法案の詳細を詳らかにせず、また、ウクライナ支援国の対象からの除外、あるいは一定限度のロシア産エネルギー輸入の容認など、今後どう修正され得るかということもあるが、米国に求められることは関係国との綿密な擦り合わせであり、西側が一致して対応すべき課題に軋轢と混乱を持ち込むことは避けられねばならない。【7月28日 WEDGE】
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【異様な多さ「ロシア軍は今年に入ってから半年で10万人が戦死した」(ルビオ国務長官) 総兵力を上回る数の戦死傷者】
プーチン大統領の「強気」を支えるのは軍事的優位性、あるいは、「大国ロシアがウクライナごときに負けるはずはない」との信念ですが、ロシア軍の被害実態は想像以上のものがあります。

****「50日以内の停戦」要求にも馬耳東風のプーチン、満身創痍のロシア軍と水面下で動く“後継者レース”の内憂****
プーチン大統領が目指すのは「ドンバス地方の完全占領」か
7月14日(ワシントン時間)、アメリカのトランプ大統領はロシアのプーチン大統領に対し、「50日以内にウクライナ戦争の停戦に合意しなければ、ロシアに非常に厳しい関税をかける」と迫った。これまで、プーチン氏にいいように転がされてきたトランプ氏だが、ようやく不信感を抱き始めたようだ。

プーチン氏が要求を守らない場合は、ロシア産の石油・天然ガスを大量輸入する中国やインド、トルコなどに100%の2次関税を課して間接報復する構えで、渋っていたウクライナへの武器供与も再開させた。

だが、プーチン氏は馬耳東風で、全く意に介さない。米ニュースサイト「アクシオス」によれば、さかのぼること7月3日、トランプ氏との電話会談の際にプーチン氏は「60日以内に東部ウクライナで新たな攻勢をかける」と話したらしい。おそらくロシアはドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)の完全占領を目指すと見られる。

「60日」の期限は8月31日で、トランプ氏の「50日」の期限は翌日の9月1日。これは単なる偶然ではないだろう。プーチン氏の計画を聞いたトランプ氏が、攻勢実行のための時間的猶予をあえて与えたのではないかとの観測も一部メディアから出ている。

現にトランプ氏が「50日期限」を宣言した2日後の7月16日深夜~17日未明にかけて、ロシアはウクライナの首都キーウにドローン400機超、ミサイル30発以上による空爆を実施した。キーウへのドローン攻撃では過去最大規模だ。

なぜプーチン氏はここまで強気なのか。主要メディアの多くは「圧倒的に優勢なロシアは、わざわざ停戦に応じる理由がない」と指摘する。

だが本当に「圧倒的に優勢」なのだろうか。実際は満身創痍で、これ以上大規模な攻勢は困難ではないかと筆者は見ている。ロシア軍の消耗は想像以上に激しく、このまま戦争を続けた場合、強大なロシア軍が自壊しかねない。こうなると、世界最大の国土を誇る祖国の防衛どころではない。

特に憂慮すべきは、異常なほど多い将兵の消耗だ。

ルビオ国務長官が言及したロシア軍の戦死者「半年で10万人」は事実か
米ニューヨーク・ポスト紙など一部欧米メディアによれば、7月11日にルビオ米国長官が記者団に対し「ロシア軍は今年に入ってからこれまでに(6月までと推測)10万人が戦死した」と言及したという。
あまりにも非現実的な数のため、多くの大手メディアは懐疑的だが、もし事実ならば、戦死者はひと月約1万7000人にのぼる。

米シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)は2025年6月3日に発表した報告書で、開戦(2022年2月)~2025年5月の40カ月間の死者は最大25万人と報告した。ひと月当たりの戦死者は単純計算で6250人となるが、あくまでも平均値のため、昨今の激戦を考えれば確かに「ひと月1万人超」を記録している可能性もある。

CSISは同時に、戦死者と戦傷病者を合計した「戦死傷者数」を95万人以上と推計する。少なくともひと月で約2万5000人の将兵が、戦死や傷病で戦場から脱落している実態が浮かび上がる。

軍事の世界では、「戦傷病者は戦死者の3~4倍いる」と言われている。前述の「戦死者6000人」に、「戦傷病者は戦死者の3倍=約1万8000人」を加えると「約2万4000人」となり、CSISの数値が「3倍の法則」にほぼ合致することが分かる。

総兵力を上回る数の戦死傷者を出して“崩壊寸前”のロシア軍
一方、欧米主要メディアは、プーチン氏が今年夏に大攻勢を仕掛けるために、ウクライナ東北部に面するクルスク州方面に約16万人の大兵力を集結させていると報じる。

だが、仮にロシア侵略部隊(推計50~60万人)が毎月2万5000人のペースで戦傷病者を出していた場合、半年で約15万人となり、クルスクに展開する約16万人のロシア軍兵力のほぼ全部に匹敵する。

もちろん、傷病者の多くは治癒した後に現役復帰するが、前線の兵力確保のため、無尽蔵に人員を補充できるほど、ロシアに人的資源が豊富だとは考えにくい。

これまでは、囚人や民間軍事会社所属の傭兵、シベリア地方など国内の低所得の少数民族からのリクルートでカバーしていたが、これもすでに限界がきているのではないだろうか。実際、北朝鮮から引き続き数万人規模の派兵を要請し、ラオスなど友好国にも兵員提供を打診していると見られる。

CSISはロシア軍の戦死傷者を「95万人以上」と推測するが、英シンクタンク・国際戦略研究所の『ミリタリーバランス(2025年版)』によれば、2024年の同軍の地上軍(陸軍、海軍歩兵、空挺軍)の合計は約60万人となっている。CSISが分析する戦死者数はこの値を大きく上回り、海・空軍も加えたロシア軍全体の150万人にも迫る勢いだ。

第2次大戦後に、総兵力を上回る数の戦死傷者を出すほどの戦争を経験した先進国の軍隊は、今回のロシア軍以外には見当たらない。

米国立公文書館(NARA)などによると、激戦だったベトナム戦争での米軍の死傷者数は、約36万2000人(1960~1973年)で、ベトナムから完全撤退時の米軍の総兵力は約222万人である。

また、ロシア国防省によれば、アフガニスタン戦争に介入した旧ソ連軍の死傷者は約6.4万人(1979~1989年)で、完全撤退時(1989年)の総兵力は約320万人だった。

さらに、防衛研究所などによれば、太平洋洋戦争(1941~1954年)における日本軍の将兵・軍属(軍隊内で各種業務につく民間人)の死傷者は300万~310万人で、終戦時(1945年)の日本軍の総兵力は約770万人に達した。

これらと比較しても、ロシア軍の戦死者数の異様な多さが際立つ。これでは将兵の士気は下がる一方だろう。祖国防衛ならまだしも、明らかな他国への侵略で、戦う意義すら不明な状況だ。 (後略)【7月28日 深川孝行氏 JBpress】
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【かつての独裁者スターリンが行った弾圧政治の再来を懸念させる「政権変質」】
長引く戦争を維持していくうえで、政権内部に生じる不満に厳しく対処することで政権の揺らぎを防ぐ・・・・「政権変質」が起きているとの指摘も。

****プーチン「停戦どころか、戦争は長期戦」と主張 「アメリカは敵であり続ける」とトランプ仲介に冷水****
(中略)
プーチンが国家改造の到達点として見据えているのは、西側民主主義陣営と対峙する専制的軍事国家の建設。プーチンの現任期は2024年5月から2030年までの6年間。しかし、憲法規定によりさらにもう1期、2036年まで大統領の座にとどまることができる。

政治・社会面で米欧的価値観を排除し、「ロシアの要塞化」とも呼べる国家改造を完遂するつもりだ。  

「要塞」を内側から固めるため、「欧米は伝統的にルッソフォビア(ロシア嫌悪症)である」との欧米主敵論を国民に植え付けながら、世論への締め付けも図ってきた。2022年2月に始まったウクライナ侵攻に象徴される対西側強硬外交と、国内での弾圧強化が車の両輪のようにセットになって要塞化が進められているのだ。

■「要塞化」の急拡大と政権変質  
しかし、今ここへきて、異変が起きつつある。「要塞化」が多方面で急テンポに一気に拡大しており、ロシアの反政権派論客も驚くほどの事態となっている。「政権変質」とも言える。  

この政権変質を象徴する事態が2025年7月初めに起きた。プーチン大統領から運輸相の職を解かれたばかりのロマン・スタロボイト氏の遺体が7日、モスクワ郊外で見つかり、自殺と発表された。

2024年5月の運輸相就任までロシア西部クルスク州で知事を務めたスタロボイト氏をめぐっては、同州でのウクライナ国境防衛施設の建設に絡む汚職捜査が迫っていたとの情報が出ていた。
 
この事件がロシア政界を大きく揺るがしたのには理由がある。従来、閣僚クラスの政権高官に対し、汚職など地位を利用したとの疑惑が出ても、追及しないどころか全く問題にもしないという対応をしてきたプーチンが一転して、厳罰で責任を問う姿勢に転じたからだ。  

これまで何があろうと、クレムリンに忠誠を果たしてさえいれば、安全な「政治的エレベーター」に乗って出世してきた政権エリートたちは今や、「仕事で失敗すれば、死が待っているという匂いを感じ始めている」(反政権派政治アナリスト エカテリーナ・シュリマン氏)のだ。

なぜ、高官への厳罰も辞さない姿勢にプーチンが転じたのか。もちろん、その背景には4年目に入った侵攻の長期化がある。いつになったら、プーチンが約束した「勝利」が来るのか、先が見えない。そんな閉塞感が社会に広がる中、政権を内部から支えるエリートたちの異議申し立ての動きが現出するのを事前に封じ込めようと、クレムリンが一種の予防攻撃として、失敗を犯した高官への厳罰化に踏み切ったのだ。  

政権強権化の背景にはもう1つ、軍事面で別の大きな要因がある。ロシア軍が未だに「戦勝」を予感させる戦略的戦果を上げられない背景には兵力不足がある。軍部や政権内のタカ派からは、国民の総動員態勢の導入を求める声が強まっている。

これまで国民の強い反発を警戒して、その導入に踏み切れなかったプーチンが、ついに総動員令発令を出す覚悟を決め、その前に国民の反対行動を徹底的に封じ込めようとしている可能性があると筆者は見る。
 
上述したスタロボイト事件の直後、クレムリンはこれを予感させる手を打った。侵攻を批判するような「過激主義的な」字句をインターネット上で検索すること自体を、罰金刑の対象にするとの法律だ。

これまでも侵攻への反対を表明する言動に対し厳しく処罰してきたプーチン政権が、侵攻に否定的な考えに触れることすら許さなくなったということだ。  

ロシアでは侵攻に強く反対してきた報道機関やジャーナリストは、すでに国外に移っている。この法律は「一般国民が侵攻への疑問を頭の中で考えることも罰し始めた」と受け止められている。

■戦時経済の終焉と強圧的な財源確保  
経済でもクレムリンの危機感が増している。2025年の国家予算で歳出の約40%が軍事関連費という異例の戦費優先経済が堅調だったロシア。

だが、ここへきて、原油価格の低下もあって、息切れの様相を来しつつある。クレムリンの最高幹部であるマトビエンコ上院議長が2026年の予算編成について「最も厳しい節約が必要になる」との異例の警告を発したほどだ。膨張した戦費をカンフル剤にした戦時経済の「奇跡」は終わりつつあると言える。
 
「厳しい節約」をしながら、今後の戦費をどうやって工面するのか。この問題でもプーチンは極めて強権的な手段に訴え始めた。

かつて政府から国有企業を民有化してもらい、大企業に育ててきたオルガルヒ(新興財閥)だったが、彼らから再び、強引に企業を接収し、再国有化する動きが広がっているのだ。こうした企業資産の政府による没収で、戦費を確保しようとしている。  

この再国有化の動きを象徴するのが、モスクワの主要空港の一つであるドモジェドボ空港会社の再国有化だ。2025年6月、外国人が違法に空港経営陣に加わったとして、突然、国有化された。

こうした有無を言わせぬ再国有化が、プーチン政権の強圧的な措置であることを象徴するのは、再国有化問題を担当するのが経済省庁ではなく、検察当局だという点だ。国有化を取り消す「法的理由」などロシアの検察当局は、いくらでもいとも簡単に作り上げられる。

こうした動きに対し、最近、一部オリガルヒが秘かに国外に出国を図り、空港で逮捕される事態も起き始めている。政権に従順でありさえすれば、ビジネスを保障してきたプーチン政権とオリガルヒたちとの「社会契約」がもはやなくなったことを物語るロシアの新常態(ニューノーマル)なのだ。  

上記したようなプーチン・ロシアでさまざまなニューノーマルの出現を受け、ロシアの反政権派の間で声高に指摘され始めているのは、かつての独裁者スターリンが行った弾圧政治の再来を懸念する声だ。

スターリンの恐怖政治は主に1930年代、政敵や罪もない一般国民数百万人を粛清した。プーチンの場合、弾圧の規模ではさすがにスターリン粛清には及ばないだろうと「ミニ・スターリン化」と呼ばれている。(後略)【7月28日 東洋経済オンライン】
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台湾  野党24議員へのリコール投票が全て否決、頼政権に痛手

2025-07-27 23:41:28 | 東アジア
(リコール投票前日の25日に台北市内で開かれた国民党の大型集会の様子【7月27日 台北中央社】)

【台湾社会の分断は中国に付け入る隙を与える】
少数与党とため議会運営に苦慮する台湾・頼清徳政権は、野党国民党議員を親中派としてリコールし、議会勢力の刷新を図る動きにでました。しかし、24人を対象にしたリコール(解職請求)の是非を問う投票が行われ、全て否決されるという形で失敗に終わりました。

頼清徳政権が野党議員のリコールに出た背景は以下のようにも

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現政権の民進党は「台湾独立派」で、特に頼清徳総統は極端なほど独立志向が強い。対する野党第一党の国民党は「対中融和的」とされ、「統一には慎重であるものの、経済的には中国を切り離すことはすべきではない」と考えているのが現状だ。

立法院では、議員(立法委員)113議席のうち、民進党が51議席しかないのに対して、最大野党の国民党は52議席を占めている。国民党が野党・民衆党や他の野党と連携すれば、少数与党の議案はほぼ否決され、政権運営がうまくいかない。

特にトランプ2.0になってからは、台湾にも同等に厳しく、防衛費の大幅な増額を要求してきた。米国の要求を最重要視した頼清徳政権は、議会で何とか防衛費増額の予算案を通そうとしたのだが、国民党を中心とした野党の反対に遭い、増額の割合を削減あるいは凍結せざるを得ない状況に追い込まれている。

そこで頼清徳総統は、台湾各地の市民団体を支援する形で、「国民党議員は大陸のプロパガンダなどによる浸透工作に加担している」として、「国民党議員24人に対するリコール運動」を展開し、賛否を問う住民投票が26日に行なわれた。結果、24人すべてに対する「リコール反対票」が賛成票を上回り、罷免されなかったというわけだ。【7月27日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】
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台湾社会の分断は中国に付け入る隙を与えることにも。

****「親中」議員の排除失敗 深まる与野党対立―台湾****
台湾最大野党・国民党立法委員(国会議員)の排除を目指したものの、失敗した26日の大規模リコール(解職請求)投票の背景には、「反中」の与党と「親中」とされる野党の深い亀裂がある。

与党・民進党の頼清徳総統は中国に対抗するためオール台湾の「団結」を訴えるが、「民進党は民衆と共に歩む」としてリコール運動支持も表明。今回の投票を機に与野党対立は一層激化している。

リコール投票全て不成立 野党24議員対象、頼政権に逆風―台湾
5月、台北市近郊の新北市の駅前。与党を支援する団体が、一帯を地盤とする国民党立法委員のリコール投票実施に必要な署名を集めていた。

署名に応じた会社員男性(61)は、立法院(国会)で多数派の国民党が主導した今年の防衛予算の削減・凍結を問題視。「国民党は大陸(中国)の独裁政権に寄り添っている」と断じた。
 
頼氏は2月、防衛予算の域内総生産(GDP)比を3%以上に高める方針を発表した。台湾の防衛費増額を迫るトランプ米政権との関係を強化し、頼氏を「台湾独立分子」と敵視する中国をけん制する狙いだ。頼政権が提案した予算が削減・凍結されると目算が狂い、中国を利する結果となる。
 
リコール推進団体は今月24日、台北市中心部で大規模集会を開催。参加した会社員の張佳怡さん(47)は「防衛予算を削減し、台湾の利益を顧みない」と国民党を非難した。
 
一方、国民党が翌25日に同じ場所で主催した大規模集会で、同党の韓国瑜・立法院長(国会議長)は「リコールが成功すれば民進党の一党独裁に後戻りする」と主張。詰め掛けた参加者は「頼清徳は辞めろ」と連呼した。北部・新竹県の会社員女性(52)は「民進党は税金の無駄遣いが多過ぎる」と批判する一方、与野党対立で「社会が引き裂かれており心配だ」と話した。
 
台湾社会の分断は中国に付け入る隙を与える。中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の報道官は6月、台湾のリコール運動に関し「あらゆる方法で野党を弾圧している」と民進党を糾弾し、国民党に加勢した。台湾で対中政策を所管する大陸委員会は「中国共産党はリコール投票に赤裸々に介入している」と警戒感を示す。【7月27日 時事】
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【頼清徳政権の言論弾圧下の強引な手法が反感を買う】
頼清徳政権は“親中国”に関して「言論弾圧」と言ってもいいほどの過度な取り締まりおこなっており、台湾の民主主義そのものが歪められているのではないかいう状況で、“親中国”野党議員をリコールするという強引な手法が国民の反感を勝っているようにも思えます。

***台湾の野党議員リコール投票はなぜ大敗したのか?****
7月26日、台湾で最大野党・国民党立法委員(国会議員に相当)(以後、議員)に対するリコール(解職請求)投票が行われたが、頼清徳政権(民進党)側は大敗を喫した。

その原因を中共のプロパガンダ(浸透工作)のせいにする傾向が強い。そういった要因は否定できないものの、頼清徳政権自身の「言論弾圧」と言ってもいいほどの過度な取り締まりが横行していたという経験をしたばかりだ。
 
実は今年初夏、台湾の「隠された歴史を研究する民間団体」に取材形式のオンライン講演を頼まれたのだが、「長春食糧封鎖という包囲戦から何を学ぶべきか」と聞かれたので、「大陸が台湾統一に際して、長春包囲戦と同様の包囲作戦を実行する可能性がある」と、書面によるQ&Aに回答したところ、真夜中なのに電話が入ってきた。
 
「遠藤先生、それだけは言わないようにしてください!」と切羽詰まった声で訴える。
「えっ!なぜですか?」と聞き返すと「そんな事を言ったら親中だと指摘されて生きていけなくなります!」と言うではないか。

何ごとかと説明を求めると、どうやら頼清徳政権が激しいネット言論の摘発をしていて、少しでも「大陸が台湾を包囲して統一を試みるだろう」と言った者には、「親中のレッテル」を貼り、個人は生きていけないほどのバッシングを受けるし、民間組織などは存続が不可能になるよう経費を遮断する方向で動くという。(中略)

驚いた。 この経験を参考にしながら、リコール大敗の経緯と台湾世論を考察する。

◆野党・国民党議員に対するリコール
(中略) 国民党が中国大陸の浸透工作に加担していると言っても、その証拠が出されたわけではなく、また若者に人気がある民衆党の柯文哲・党首を政治献金の虚偽記載疑惑・汚職疑惑で逮捕したりするなど、頼清徳政権の強硬性が先走っており、台湾の一般民衆の反感を買っている側面は否めない。
 
特に今年6月24日に頼清徳総統は「野党は濾過(ろか)されるべき不純物」という趣旨の発言をしている。この発言は大いに物議を醸し、野党側を勢いづかせた。
 
民進党側は、今回のリコール投票で大敗したのは、中国による激しい妨害に直面したためだと主張しているが、それだけではないことを、「野党は不純物」発言や、冒頭で書いた講演会主催者側の感想などが示している。
 
◆台湾民意教育基金会の最新の世論調査
 今年7月15日、財団法人「台湾民意教育基金会」は<大罷免(=大規模リコール)、国家アイデンティティと台湾民主>というタイトルで世論調査の結果を発表した。 その中からリコールに関係するデータを拾って、ご紹介する。

図表1:「罷免すべき」に賛同するか否か?

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 頼清徳総統が支援する市民団体は「この一年あまり、国民党議員は憲法を踏みにじり行政を乱してきたので罷免すべきである」と主張している。これに対してリコール投票前の段階での調査で、民意はその主張に「同意しない」が「同意する」よりも上回っている。(中略)

図表2:大規模リコールは「反共・台湾防衛」の意識を高めるか?

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 頼清徳総統が支援する市民団体は、国民党議員を罷免することによって「反共・台湾防衛」が果たされると主張しているが、これには無理がある。

頼清徳総統として、何としても議会における最大野党・国民党の議席数を減らし、結果的に「少数与党」である民進党の議席数を相対的に増やそうということが目的なのであって、そのような政争のために選挙で選ばれた国民党議員の特定の議員を意図的に選んで罷免しようということ自体が邪道だ。リコールが「反共・台湾防衛」に役立つと思わない人が53.1%もいるというのは、もっともなことだろう。

図表3:大規模リコールは台湾の存亡に関わるか?

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 図表3に至っては、なおさらだ。国民党議員をリコールすることが「台湾の存亡に関わる」などという大げさなことを主張することに賛同しない人が53.6%もいるのは当然だと言っていいだろう。

むしろトランプ関税を受け、一致団結をして難局に立ち向かっていかなければならないときに、国民党議員を減らすことが「台湾の存亡に関わる」などという主張に賛同する人は少ないに決まっている。

今年4月27日の台湾の「経済日報」は、ワシントンのシンクタンクであるブルッキングス研究所が4月25日、台湾国民の米国に対する信頼度に関する世論調査を発表したと報道している。それによれば、トランプ2.0では、台湾国民の米国に対する信頼度が低下し、中国本土の台湾侵攻に対するワシントンの関与に対する信頼度も低下し、回答者の46.7%が、台湾有事の際に米国が台湾を支援することは「不可能」または「可能性が非常に低い」と考えていることがわかった。

このように少なからぬ台湾の人々が強い対米不信に悩まされ、米国をもはや台湾にとって「信頼できないパートナー」とみなしている時期に、政争のために選挙で選ばれた国民党の議員を恣意的に選んで罷免することに没頭するのは適切ではないと思っていることが判明したのである。
 
台湾の存亡を言うなら、米国が台湾を見捨てるのか否かの方がもっと重要だと、台湾の人々が思っていることが図表3に如実に表れていると解釈される。

図表4:頼清徳総統に対する評価

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 図表4では、頼清徳総統に対する評価を下したようなもので、中国語では「頼清徳の声望」と書いてあるのでそのまま用いたが、「評価が下された」と解釈していいだろう。

これまで頼清徳氏の声望は高かったが、冒頭に書いた、中立的な歴史研究をしている民間団体の主催者が「頼清徳総統による言論弾圧」と言い、弾圧の対象となることをあれだけ恐れているということは、民主主義が歪められていることの証の一つだろうと思われる。それがこの財団法人台湾民意教育基金の世論調査の結果としても、表れているのではないだろうか。

8月23日には別の国民党議員7人を対象としたリコール投票が行われる予定のようだが、このようなことをやればやるほど、頼総統政権は追い詰められていくのではないかと懸念する。なぜなら、国民党議員は再度台湾国民の信任を得たことになり、議会では一層力を発揮することになる可能性が高いからだ。

冒頭に書いた歴史研究をする民間団体は、長春包囲戦(チャーズ)を掘り起こしたいと思っているほどだから、親中であるはずもなく、全くの中立である。長春食糧封鎖では、国民党は長春市内にいる一般庶民を見殺しにしたので、チャーズを掘り下げることは、国民党の味方をする行動でもない。そういった中立の人々が頼清徳政権を「言論弾圧」として恐れるようでは、台湾の民主主義そのものが歪められているのではないかと憂う次第である。【7月27日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】
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【リコール失敗の要因分析】
リコール失敗の要因分析については以下のようにも

*****大規模リコール/台湾のリコール「失敗」 原因は国民党の強い地盤や現金配布政策など=専門家****
26日に投開票が行われた最大野党・国民党の立法委員(国会議員)24人らに対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票は全てが不成立となった。

複数の専門家が27日までに中央社の取材に応じ、リコール失敗の原因などについての分析を語った。国民党の支持基盤の厚さや動員力の強さを指摘する意見が多く上がった他、リコール推進の社会運動全体を肯定する声も聞かれた。

▽陳文甲氏(政治大学国際関係学部非常勤准教授)
リコール運動で国民党に批判的な市民団体と、運動を支援した与党・民進党は「反中護台」(中国に反対し台湾を守る)を訴えて全力で動員した。だが世論調査では多くの有権者がリコール戦略に疑問を感じていると出ていた。

中間層や無党派層は冷静に投票する傾向にあり、一部で情勢を逆転させた。また国民党が第2野党・民衆党と手を組み、支持基盤を固めたことでリコール回避を成功させた。

▽王宏仁氏(成功大学社会科学部政治学科教授)
反対票は政党(野党)の動員で最大限引き出された。市民団体は当初「適任でない立法委員のリコール」を訴えていたが、結果的には与野党対決になった。民進党本部のリコール支援開始が遅かったほか、投票の対象となった選挙区のほとんどが国民党の地盤が強い地域だったため、同党が組織的動員を通じてリコール不成立に持ち込めた。

▽薛化元氏(台湾教授協会会長、政治大学台湾史研究所教授)
民主主義や憲政体制といった議題よりも、(国民党主導で投票の約2週間前に決まった)1人当たり1万台湾元(約5万円)の現金給付の方が関心を集めたことが結果から見て取れる。国民党の動員力がリコール推進派を大きく上回ることから、投票率が(ほぼ全ての選挙区で)5割を超えたことが国民党に有利な結果をもたらした。

リコール推進の過程で、人々の民主主義や憲政への理解が深まった。また従来は政治活動への参加が男性に偏っていたが、今回のリコール運動では女性のボランティアが多数を占め、台湾社会に好影響をもたらした。

▽張嘉尹氏(東呉大学法学部教授)
野党が掲げた生活に直結する政策が効果を発揮した。リコール推進派の市民団体が力を集めたことが、逆に国民党側の危機感をあおった。リコールが民進党主導ではなく社会運動だったため、動員力の違いが顕著に表れた。

現代の選挙はインターネット戦略が大きな鍵となっている。だがSNSは自身と似た考えを持つ人同士だけで交流する「エコーチェンバー現象」を生み、特に(短文投稿サイトの)スレッズでは(アルゴリズムによって)似た意見ばかりが目につくため、異なる言論を持つ人との関わりが生まれにくい。これも今回の結果と事前の予想が異なった原因である可能性がある。

市民団体が外部からの誹謗(ひぼう)中傷にさらされつつも、最終的に31件もの立法委員リコール案を(署名活動を経て)住民投票に持ち込んだのは、台湾における民主主義の成長の一部分だといえる。実を結ぶまでには時間を要するが、今後選挙に出る候補者にとっては無視できない力となるだろう。【7月27日 台北中央社】
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国際社会はいつまでイスラエルの戦争犯罪から目をそらすのか?

2025-07-26 23:32:05 | パレスチナ
(ガザ地区ガザ市西部のアルシャティ難民キャンプで、損傷した自宅に座る栄養失調の2歳の男児ヤザンちゃん(2025年7月23日撮影)【7月26日 AFP】 国連世界食糧計画によると、ガザ地区の住民の約3分の1が「何日も食べていない」とのこと)

【栄養失調で餓死者が続出 食料を求めて配給施設へ行けば銃撃・砲撃、死者は千人超】
これまでも再三取りあげてきたように・ガザ地区の食料配布施設周辺でイスラエル軍による連日の発砲により、毎日何十人もの住民犠牲が出ています。

****ガザ、配給物資求め死者875人 軍発砲拠点が最多****
国連人権高等弁務官事務所は15日、パレスチナ自治区ガザで支援物資を受け取ろうとして殺害された住民が13日までに計875人に上ったと発表した。

ガザでは5月下旬から米国とイスラエルが主導する「ガザ人道財団」の配給拠点周辺でイスラエル軍の発砲が相次いでいる。この拠点周辺の死者が最多で674人に上るという。

ほかに、配給物資を運ぶ国連の車列近くやそのルート上で殺害された人が201人に上った。

国連パレスチナ難民救済事業機関の職員は14日の英BBC放送のラジオ番組で、ガザで戦闘開始後「毎日平均で1クラス(35〜45人)ぐらいの数の子どもたちが殺されている」と指摘した。【7月16日 共同】
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****支援求める市民にイスラエル軍が発砲、73人死亡 ガザ保健省****
パレスチナ自治区ガザ地区で20日、支援物資を求めていた市民がイスラエル軍の銃撃を受け、パレスチナの保健省によれば、少なくとも73人が死亡し、約150人が負傷した。

保健省によれば、ガザ北部で67人が死亡したほか、南部ハンユニスで6人が死亡した。北部の67人全員が同じ場所で犠牲になったのか、複数の場所なのかは不明。支援を求める人々が死亡する事案が繰り返されており、今回の死者数はこれまでで最大規模となった。

イスラエル国防軍(IDF)は、ガザ北部で何千人ものガザ市民が集まっているのを確認し、ただちに脅威を排除するため警告射撃を行ったと説明。死傷者が出たとの報告を把握しており、詳細を調査しているとした。犠牲者の数は明らかにしなかった。

イスラエル軍はまた、ガザ北部のベイトラヒヤやジャバリヤ、ベイトハヌーンなどの住民に退避を警告した。軍のアラビア語の報道官は20日、「これらの地域は戦闘地域で極めて危険だ」とし、軍がこうした地域で軍事作戦を行っており、安全のため立ち入りは禁止すると呼びかけた。

シファ病院のアブサルミヤ院長によると、20日朝、ガザ市北西で支援物資を得ようとしていた人々がイスラエル軍に撃たれた。病院には死傷者や飢えた市民が殺到して壊滅的な状況だという。(中略)

一方、デイルアルバラの住民は20日、IDFがビラを散布し退避を命じたため避難を余儀なくされたと述べた。飛行機からまかれたビラが家や道路一面に落ち、退避を呼び掛けていたという。住民は「眠れず、食べ物も水もなく、小麦粉もない。私たちは飢えている」と訴えた。【7月21日 CNN】
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イスラエル軍は「威嚇射撃」と説明していますが、何故「威嚇射撃」で毎日何十人もの食料を求める住民が銃撃されるのか?まったく理解出来ません。

****ガザで餓死続出、配給所に攻撃 関連死者は千人超に****
パレスチナ自治区ガザの保健当局は21日、食料配給関連の住民の死者が千人を超えたと発表した。栄養失調で餓死者が続出するほどの人道危機だが、食料配給を受けたくても米イスラエル主導の配給拠点ではイスラエル軍の攻撃で死傷者が相次ぐ。

空腹を紛らわそうと腹に石を巻き付けたり、力なく道端で倒れたりする住民も。飢えに苦しむ男性は「いっそ攻撃を受けて死にたい」と訴える。

米国とイスラエルが主導する「ガザ人道財団」は5月27日に食料配給を開始した。食料を求め殺到した住民にイスラエル軍が発砲し、連日のように死傷者が出ている。軍は「威嚇射撃だった」などと強弁する。

財団の配給拠点はガザ中部と南部に計4カ所のみ。従来は国連主体の配給拠点が約400カ所あった。多くの住民は長距離移動しなければ拠点にたどり着けず、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は「女性や子どもら、最も立場の弱い人に支援が届かない」と財団の配給を非難した。【7月22日 共同】
********************

イスラエル国防当局者はガザの食料事情について地元メディアに、「現時点で飢餓は確認されていない」と説明。ハマスが、停戦交渉でイスラエルに圧力をかけるためのプロパガンダだと主張しています。しかし、実態は・・・

****ガザ地区で飢餓拡大、乳児含む15人餓死 推計60万人が栄養失調****
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで飢餓が深刻化している。22日は生後6週間の乳児を含む少なくとも15人が餓死したと確認され、医療関係者は過去数カ月にわたり続いていた食料不足が飢餓という現実に発展していると警告している。

この日に飢餓で死亡したと確認された人のうち、3人は子ども。死亡した生後6週間の乳児の親族によると、粉ミルクがどうしても手に入らなかったという。

ガザ地区の保健当局の報道官によると、ガザ地区で稼働している医療機関は搬送される負傷者の数に圧倒されている上、食料と医薬品が不足しているため、飢餓の症状を訴えている人に支援を提供することができなくなっているという。

同報道官によると、ガザ地区では約60万人が栄養失調に陥っており、このうち少なくとも6万人が妊婦。支援団体や医師によると、支援物資のうち特に粉ミルクが深刻に不足している。(中略)

国連のグテレス事務総長は安全保障理事会で、ガザ地区の状況は「まさに惨劇だ」とし、「人道支援体制が本来の機能を果たすための条件を失われている」と警告。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、支援物資の配給拠点で民間人が殺害されていることは「耐え難い」とし、イスラエルに状況を改善するよう強く求めた。

イスラエル軍の発表によると、1日平均146台の支援物資を積載したトラックがガザ地区に入っている。ただ米国は、最低でも1日600台のトラックによる支援物資の搬入が必要と推計している。【7月23日 ロイター】
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****ガザの子どもたち、天国に行きたがっていると国連事務総長 「食べ物がある」から****
 国連のグテーレス事務総長は、パレスチナ自治区ガザ地区の人道状況について、道徳的危機であり世界の良心が問われているとの認識を示した。また国連の人道支援従事者と、ガザの子どもたちが共に飢えに苦しんでいる現状を指摘した。

「子どもたちは天国に行きたいと話している。少なくとも食べ物があるからだ。私たちは国連の人道支援従事者たちとビデオ通話で話し合っているが、彼らも見るからに飢えている。これは単なる人道的危機ではない。道徳的な危機であり、世界の良心が問われている」と、グテーレス氏は述べた。(後略)【7月26日 CNN】
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【イスラエルに対して高まる国際批判】
こうした状況に、従来イスラエルを支持してきた欧州諸国にも、イスラエルに対する苛立ち・批判が高まっています。

****【戦争か虐殺か】イスラエルの93人射殺に世界激怒、日本含む30カ国が「尊厳を踏みにじった」と非難****
英国など30カ国の外相は21日(現地時間)、食料を求め殺到したガザ地区のパレスチナ住民に対し、戦車や狙撃銃を発砲したイスラエルを「人間の尊厳を踏みにじっている」と厳しく非難し、即時の戦争終結を求めた。

Newsisによると、外相らはイスラエルによるガザ地区への援助物資搬入の方法についても「危険性と不安定さを増幅させ、住民の人間としての尊厳を踏みにじっている」と強く批判した。

英ガーディアン紙によれば、デーヴィッド・キャメロン英外相はオーストラリア、カナダ、フランスなど30カ国の閣僚と共同声明を発表し、「ガザ地区の民間人の苦しみは新たな段階に達した」と述べ、イスラエルに対して援助物資の制限解除を求めた。

また、ラファ地域へのパレスチナ人60万人の強制移住を提案したイスラエルのカッツ国防相の案についても、「断じて容認できない」と強く退けた。(後略)【7月23日 竹内智子氏 江南タイムズ】
*******************

****ガザで積みあがる戦争犯罪の証拠、イスラエルの友好国はどうするのか BBC国際編集長****
(中略)
積みあがる戦争犯罪の証拠
(中略)ハマスは2023年10月7日の攻撃において、戦争犯罪とされる一連の行為を行い、主にイスラエルの民間人1200人を殺害した。また、ハマスは251人を人質として拘束し、そのうち今もガザ地区内で生存しているとみられるのは約20人とされている。

一方で、イスラエルがその後に戦争犯罪を重ねているという明確な証拠も存在している。
イスラエルによる戦争犯罪の疑いには、ガザ地区の民間人を飢餓状態に追い込んでいること、軍事作戦中に数万人の民間人を殺害し、その保護を怠ったこと、そして、軍事的脅威に見合わない形で町全体を無差別に破壊したことなどが含まれている。

ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント前国防相は、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出されている。両者は無実を主張している。

イスラエルは、国際司法裁判所(ICJ)で進行中の法的手続きについても非難している。この手続きでは、イスラエルがパレスチナ人にジェノサイド(集団虐殺)を行っている疑惑がかかっているが、イスラエルはこの主張を否定し、反ユダヤ主義的な「血の中傷」だと反論している。

イスラエルは国際社会で孤立を深めつつある。2023年10月7日のハマスによる攻撃後に支援を表明した友好国も、ガザでのイスラエルの行動に対して次第に忍耐を失っている。

イスラエル最大の同盟者であるドナルド・トランプ米大統領も、ネタニヤフ首相に対する不満を募らせていると報じられている。ネタニヤフ首相がシリアの首都ダマスカスへの爆撃を命じ、トランプ氏が承認・支援していたシリアの新政権を攻撃したことが、トランプ氏を驚かせたとされている。

他の西側友好国は、数カ月前にすでに忍耐の限界に達している。
今月21日には、イギリスや欧州連合(EU)の多くの国々、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本の外相らが共同声明に署名し、イスラエルの行動を非難した。声明は、ガザにおける民間人の苦しみと、イスラエルが設置した「ガザ人道財団(GHF)」による支援体制の失敗と致命的な影響について、強い言葉で批判している。

(中略)「我々は、援助の小出しと、最も基本的な水や食料を求める子どもを含む民間人に対する、非人道的な殺害を非難する。支援を求める中で800人以上のパレスチナ人が殺害されたのは、恐るべきことだ」

「イスラエル政府が、民間人に対する不可欠な人道支援を拒否していることは容認できない。イスラエルは、国際人道法上の義務を順守しなければならない」

イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は、共同声明に続いて英下院で独自の声明を発表し、同様の言葉遣いでイスラエルを非難した。

しかし、与党・労働党の議員らは、強い言葉には強い行動が伴うべきだと主張し、これでは不十分だとしている。ある議員は、政府がより断固とした対応を取らないことに「激怒」していると語った。議員らの最優先課題は、国連加盟国の過半数がすでに済ませている、パレスチナ国家の承認だ。イギリスとフランスは共同で承認する可能性について協議しているが、現時点では時期尚早と認識しているようだ。(後略)【7月24日 BBC】
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イスラエルに対する言葉の批判だけでなく「行動」・・・・パレスチナ国家の承認・・・・フランスが単独で踏み切ったことは報道のとおりですが、イギリスについての動きはまだ見られません。イスラエル支持を国是としてきたドイツは承認しないでしょう。

【「武装していない飢えた民間人」を攻撃するイスラエル軍の戦争犯罪】
イスラエル軍はガザへの外国報道機関の立ち入りを制約しているので、いったい現地で何が起きているのかよくわかりません。どうして毎日食料配布で犠牲者が出るのか?

しかし、現状について漏れ伝えられる話はあります。

****元米特殊部隊将校、ガザの食料配給拠点で戦争犯罪を目撃したとBBCに話す****
ヘダヤ・アル・ムタウィさんの生後1歳半の息子モハメドちゃんは、重度の栄養不良のため、体重はわずか6キロしかなく、立つことも座ることもできなくなっている。

アル・ムタウィさんはBBCに「夫は戦争で殺され、神以外に家族を養ってくれる人がいない」と語った。息子に粉ミルクを与えようと必死だが、自分ひとりのため十分なことができないという。

他方、イスラエル側では展望台に集まり望遠鏡越しにガザの様子を眺めるイスラエル人が、記念撮影をしている。

そして、米軍特殊部隊の退役将校が、アメリカとイスラエルが支援するガザ人道財団(GHF)の支援物資配布センターでなぜ契約警備員として働くのをやめたのか、BBCに明かした。

「私はイスラエル国防軍がパレスチナ人の群衆に向けて発砲するのを目撃した」とアンソニー・アギラー氏はBBCに語った。

国連は、GHFが運営する支援物資配布所で食料を得ようとしたパレスチナ人が、ガザで数百人規模で殺害されていると発表している。

これに対してイスラエルは、自国部隊が民間人を標的にしている事実はないと反論。標的はイスラム組織ハマスであって、ガザでの武力行使は「均衡の取れたもの」だとしている。(後略)【7月26日 BBC】
元米特殊部隊将校、ガザの食料配給拠点で戦争犯罪を目撃したとBBCに話す - BBCニュース
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飢えと爆弾に曝される母子が暮らすガザ地区から上がる爆撃の煙りを国境の高台から眺め、記念撮影に興じるイスラエル国民・・・なんとも歪んだ世界です。

元アメリカ軍特殊部隊(Green Beret)のアギラー氏のインタビューは改めてイスラエル軍の戦争犯罪を明らかにしています。

元アメリカ軍特殊部隊(Green Beret)および25年以上の軍歴を持つ元将校アギラー氏は、「生涯において、これほどの残虐性と無差別かつ不必要な武力の行使を目撃したことはなかった」と語っています。その相手は「武装していない飢えた民間人」だったと述べました

「私のキャリア全体を通じて、民間人、つまり非武装で飢えた人々に対する残虐行為と無差別かつ不必要な武力行使のレベルを目撃したことはありません。私は、ガザにいてイスラエル国防軍と米国の請負業者の手によって派遣されるまで、戦争に派遣されたすべての場所でそれを目撃したことはありません。」

アギラー氏によれば、IDF(イスラエル国防軍)及び米国の契約業者が、以下のような攻撃を行ったとのこと。
戦車(Merkava)の主砲弾を群衆や車両に直接撃ち込んだ。特に、食料現場から離れようとしていた民間人の車が破壊されたといいます。
迫撃砲(モルタル)を飢えた人々の群れに発射し群衆を制圧する目的で使用。
一部には砲弾を用いた砲撃が無防備な人々に対して行われたとの証言もあります

アギラー氏は繰り返し強調しているのが、「Without question, I witnessed war crimes by the Israeli Defense Forces, without a doubt. Using artillery rounds, mortar rounds, tank rounds into unarmed civilians is a war crime.」という言葉です。つまり、民間人を標的とした砲撃は間違いなく戦争犯罪であると断言しています

GHFを運営する組織については、「アマチュア」「経験不足」「訓練を受けておらず、大規模な作戦運営のノウハウがない」とし、組織の運営の不備を指摘していますが、それは“出来るだけ好意的に評価するならそうなります”ということで、“最も率直に評価するなら犯罪的だと言えます。”というのが彼の主張です。

“あなたの知識をもとにすると、目撃したものは戦争犯罪だと思いますか?
・・・・・疑いようもなく、私は戦争犯罪を目撃しました。イスラエル国防軍による戦争犯罪を目撃しました。いようがありません。”

一方、イスラエル閣僚からは・・・
****「ガザに飢餓はない」、イスラエル閣僚が主張 「政府は現地の掃討急ぐ」とも****
イスラエルのエリヤフ遺産相はラジオのインタビューで、「ガザには飢餓など存在しない」と主張し、政府は「急いでガザを掃討している」との見方を示した。この発言はネタニヤフ首相など他のイスラエル当局者から強く非難された。

エリヤフ氏はラジオ番組の中で「友よ、ガザには飢餓など存在しない。だが我々が彼らを殺しているのはその通りだ。怪物どもは殺す。我々を脅かす者は誰であれ殺す」と述べた。

さらにこう続けた。「彼らが空腹の子どもたちの映像を流すとき、いつも隣にはちゃんと食事をしている太った男がいる。男は何の問題もなく食べ物を与えられる。キャンペーンを展開しているだけであって、現状に対処すべきは我々ではなく彼らだ。食料は彼らの手中にある。毎日トラックがガザに入ってくる。(飢餓など)一体どこの話だ?」

ガザから発信される傷ついた子どもたちの映像についてイスラエル人は懸念すべきかと問われると、エリヤフ氏はこう答えた。「懸念は不要だ。敵に食料を与える国民はいない。英国人はナチスに食料を与えなかった。米国人は日本人に食料を与えなかった。ロシア人は現在、ウクライナ人に食料を与えていない。米国人はイラク占領時、イラク人に食料を与えなかった」

その上で「彼らの飢餓に我々が対処すべきなのか? 議論そのものが狂っている。正気とは思えない。我々に対処しろと? まさに狂気の沙汰だ」と続けた。

さらに、今後ガザに囲いのある入植地は建設されず、ガザ全体がユダヤ人の土地になるとも示唆した。

複数の支援団体はガザの飢餓の危機について再三警鐘を鳴らしてきた。援助物資は境界で止められ、ガザに持ち込むことができていないという。22日、ガザ保健省は90万人の子どもが飢えており、7万人が既に栄養失調の兆候を示していると発表した。世界保健機関(WHO)の事務局長も、ガザのパレスチナ人が人為的な「大量飢餓」に苦しんでいると述べた。

イスラエルのネタニヤフ首相はエリヤフ氏の上記の発言にソーシャルメディアで言及。ガザの掃討や飢餓は存在しないとの主張は、イスラエル政府を代表したものではないと強調した。

ネタニヤフ氏はエリヤフ氏について、戦争の遂行方法を決定する安全保障内閣の一員ではないと指摘。「彼の見解は彼自身のものだ。彼は人質解放合意に反対し、辞任を選んだ」「この政府の政策は明確で統一されている。彼の発言はそれを代表するものではない」と述べた。

イスラエルのライター駐米大使もX(旧ツイッター)への投稿で、エリヤフ氏の発言に反発。ガザの掃討や飢餓の軽視に関する認識はネタニヤフ氏並びにイスラエル政府の政策を反映したものではないと語った。【7月25日 CNN】
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ネタニヤフ首相がエリヤフ遺産相の発言に同調していないことは唯一の救いです。

それにしても、敵・味方に分断する発想では「敵」に対してはどこまでも冷淡・残酷になれるのが人間という生き物です。○○ファーストといった表現も、結局そうした残酷・冷淡さをソフトに覆い隠しているだけでしょう。

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ドイツ  メルツ政権、難民・移民対策の厳格化に舵を切る 犯罪歴あるアフガン難民も強制送還

2025-07-25 23:50:30 | 難民・移民

(ドイツの軍用機で、輸送されるアフガニスタンの人々 【2021年8月30日 dot.world】 アフガン難民が歓迎されていた頃の話 時代は変わって今は・・・

【移民・難民が絡んだ事件、世論の難民・移民への不安の高まり、政権の難民・移民対策の厳格化・・・が大きな流れ】
ドイツでは移民・難民が絡んだ事件、世論の難民・移民への不安の高まり、政権の難民・移民対策の厳格化・・・が大きな流れとなっています。

****ドイツ 移民・難民が関与した主な事件・背景・政策対応・世論動向****
◆ 背景:大量受け入れのインパクト(2015年以降)
2015年、シリア内戦などから逃れてきた難民に対し、メルケル政権が「開かれた門」政策を採用 結果、約100万人超の難民がドイツに流入。

当初は寛容的な世論も多かったが、治安や統合問題への懸念が急拡大。

◆ 移民・難民が絡んだ主な事件(抜粋)
● 2016年 ベルリン・クリスマスマーケット襲撃事件
チュニジア出身のアニス・アムリによるテロ。 難民申請が却下されたが強制送還されず、約12人死亡。

● 性的暴行事件(ケルン事件 2015-2016年)
年越しの大晦日にケルンで多数の女性が移民・難民男性らの集団から性被害を受けたと報道。 その後の捜査で被疑者の多くが移民背景を持つことが判明。 

● 2024~2025年にかけた襲撃事件・治安問題の増加
エッセンのジム爆破未遂事件(2024年3月):シリア難民の少年による犯行。
ハンブルクなどでの刃物事件やグループ暴力事件:加害者に移民系が多いと報道。
イスラム過激派による活動への懸念も再燃。

◆ 世論の変化・反応
AfD(ドイツのための選択肢)など極右政党の支持率が急上昇 2024年の地方選で二桁得票。旧東独地域では最大政党に。支持基盤は「治安不安」や「文化的脅威感」。

中道政党も方針転換を余儀なくされる 与党SPDや緑の党も、従来より厳しい対応を容認。 「移民受け入れの上限」や「送還強化」などが議論の中心に。

◆ 政権の移民・難民政策の厳格化(ショルツ政権)
2023年以降、移民政策を大きく転換し、以下のような措置が取られている:
● 難民認定手続の迅速化・却下者の送還強化
「西バルカン諸国」など安全国からの申請却下を迅速化 モロッコ、チュニジア、アルジェリアなどとの送還協定の強化。

● 外国人犯罪への対応強化
犯罪歴がある外国人の送還を容易にする法改正 特に「性犯罪」「テロ関連」の摘発・送還を優先。 

● 難民の受け入れ抑制策
経済的支援(生活保護)から「物品給付」方式への切り替え実験。 難民が一部自治体に集中しないよう配分制度を見直し。【ChatGPT】
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難民・移民対策の厳格化の流れは今現在も続いています。

****ドイツ新政権、非正規移民は国境で入国拒否へ 亡命希望者も****
ドイツのドブリント内相はメルツ新政権の発足初日となる7日、亡命希望者を含め、非正規ルートでの入国を国境で拒否する命令を出した。

ドブリント氏は外国人の非正規ルートでの入国を許可していた2015年の措置を取り消す決定を発表。不法移民の削減が目的だとし、不法移民はなお多すぎると語った。

亡命希望者の受け入れ拒否は法的に議論の余地がある。保守政党連合キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派政党、社会民主党(SPD)の連立合意では、不法移民の削減は近隣諸国と協調して実施されるべきとしている。

独紙ビルトによれば、ドブリント氏は非正規移民を抑制するために国境に最大3000人の警官を追加派遣し、国境警察の数を最大1万4000人に増やす計画という。

2月の総選挙前、メルツ氏は移民が絡む暴力犯罪の頻発と極右支持の高まりを受け、移民の取り締まりを約束していた。【5月8日 ロイター】
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****ドイツ、一部移民の家族呼び寄せを制限 国籍取得も厳格化****
ドイツ政府は28日、一部の移民の家族呼び寄せを制限し、国籍取得の規則を厳格化する計画で合意した。

移民の取り締まりは、保守派のフリードリヒ・メルツ首相が2月の総選挙で掲げた主要公約の一つ。同氏は今月の就任後、速やかに国境管理に着手した。

アレクサンダー・ドブリント内相は28日、記者団に対し、不法移民の削減に向けた「決定的な日」となると述べた。
家族呼び寄せの停止は2年間続き、難民条約上の難民には該当しないが他国での保護を必要とする「補完的保護」を受けている人々が対象となる。

ドブリント内相は、今回の措置は、新規移民の支援と社会統合を担う地方自治体の「負担軽減」に役立つと説明。
欧州移民危機を受けて、2016年〜2018年にも同様の措置が取られたと続けた。

ドブリント内相はまた、中道左派のオラフ・ショルツ首相率いる前政権が実施した改革を撤回すると発表した。この改革では、一部の移民は「社会統合において特に成功した」ことを証明できれば、3年以上の居住で国籍取得を申請できるとされていた。 だが、居住要件は今後、5年以上に引き上げられる。

ドブリント内相によると、この新たな措置は、非合法な手段でドイツに入国しようとする移民を「引き寄せる要因」を減らすのに役立つという。

だが、移民政策の専門家のヘルベルト・ブリュッカー氏は、家族呼び寄せの停止は移民の抑制に「非常に小さい」効果しかなく、「人道的観点から問題がある」可能性があると指摘。

さらに、3年以上の居住で国籍取得を申請できる可能性がなくなることは、ドイツの雇用市場の空白を埋める取り組みの妨げになる可能性があると続けた。

ブリュッカー氏はこの措置について、「難関資格を持ち高収入の、まさにドイツが望む」移民に影響を与えるとの見解を示した。

長年にわたり移民に反対してきた極右政党「ドイツのための選択肢」は2月の総選挙で、20%余りという過去最高の得票率を獲得。同党の幹部は、外国人の大量送還を要求している。

メルツ氏は、AfDに迎合的な言動を批判されているが、移民問題に取り組むことがAfDの支持拡大に対抗する唯一の方法だと主張している。

28日の決定は、7月から始まる夏休みの前に議会で承認される見込み。
今月導入された厳格な国境管理は、難民認定申請者を含むすべての不法移民を強制送還することを目的としており、ドイツの近隣諸国をいら立たせている。

ドブリント内相は「これらの決定が批判を集めているのは当然だ」「しかし、われわれが移民に関する方針を変えたことを明確に示すためには必要だ」と述べた。 【5月29日 AFP】AFPBB News
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政権の難民・移民政策の厳格化については、司法によって違法判断も。

****ドイツ裁判所、難民申請者の入国拒否は違法と判断 政府方針と対立****
ドイツ・ベルリンの裁判所は2日、ポーランドからの難民申請者の入国を拒否した国境警備当局の対応は違法との判断を下した。メルツ首相率いる保守連立政権が掲げる難民の流入に厳しい態度で臨む方針と対立する判決となった。

難民申請をしたのは男性2人、女性1人のソマリア人。国境警備当局は3人が安全な国から入国を申請したとしてポーランドに送り返した。

裁判所はこうした対応について、欧州連合(EU)圏に最初に入国した国が難民認定の責を負うことを定めた「ダブリン協定」に則って処理すべきで、入国拒否は違法だったと指摘した。

公共放送RBBが裁判所の広報担当者の話として伝えたところによると、裁判所が国境警備当局の難民申請者の入国拒否を違法と判断したのは今回が初めて。

ドブリント内相は記者団に「難民申請制度が極めて機能不全に陥っているのは自明だ。難民の数が多すぎる。われわれは自分たちの運用を継続する」と述べ、裁判所に対して入国拒否の正当性を訴えていく考えを示した。(後略)【6月3日 ロイター】
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メルツ首相は、政府による移民取り締まりは「公共の安全を守る」ために不可欠だと強調し、上記司法判断を批判しています。

****ドイツ首相、移民取り締まりを正当化「公共の安全守るのに不可欠」****
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は3日、主要施策の一つが裁判所に違法と判断されたのを受け、政府による移民取り締まりは「公共の安全を守る」ために不可欠だと強調した。

ベルリンの裁判所は2日、欧州連合の規則に基づき、どの国で難民認定の審査をするかを決める前に、ドイツ国境警備隊は難民認定申請者を追い返すことはできないと判断した。

ドイツへの入国を拒否されたソマリア人3人が起こした訴訟に対するこの判決は、メルツ氏が先月の就任後に開始した移民取り締まりへの打撃となった。

だが、メルツ政権は判決に異議を唱える間、難民認定申請者を追い返し続けるのは合法だと主張しており、メルツ氏自身もこの立場を強調した。

メルツ氏はベルリンでの地方自治体関係者らとの会合で、判決によって「われわれの行動の余地が多少制限される可能性がある」と認めた。 しかし、判決は「暫定的なもの」であり、「われわれは難民認定申請者の追い返しを継続できることを知っている」と主張。

「わが国の公共の安全と秩序を守り、都市や自治体が逼迫(ひっぱく)するのを防ぐため、われわれはそうする」と続けた。

メルツ氏は、近隣諸国の一部との緊張を引き起こしているこの政策は、「既存の欧州法の枠組みの中で」実施されると説明。 これらの措置は、EU境界における治安が「大幅に改善される」までの一時的な措置だと強調した。

裁判所は、判決の根拠は他の事件にも適用できると述べたが、アレクサンダー・ドブリント内相は、この判決は訴訟を起こした3人にのみ直接影響すると主張した。

難民認定申請者を含むほぼすべての不法移民をドイツ国境で押し返すことは、2月の総選挙でメルツ氏が掲げた主要公約の一つ。

総選挙では、極右政党「ドイツのための選択肢」は20%余りという過去最高の得票率を獲得した。メルツ氏は、移民問題への対策こそがAfDの勢力拡大を阻止する唯一の方法だと主張している。

しかし、メルツ氏の連立パートナーである中道左派の社会民主党は、この取り締まりを不安視している。 【6月4日 AFP】
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【アフガニスタン難民のうちドイツでの犯罪歴がある者をタリバン支配のアフガニスタンへ強制送還】
難民・移民対策厳格化の流れのひとつとして、ドイツ内務省は18日、ドイツで罪を犯したアフガニスタン人81人を強制送還したと発表しました。タリバンが2021年に実権を握って以降では、昨年8月に続き2回目の強制送還になります。

アフガニスタンで人権侵害の恐れがあるとして難民支援団体などからは強制送還の中止を求める声が上がっていますが、政府は今後も同様措置を続ける方針です。

これに対し、国連は例え犯罪者であっても「国際法の中核原則であるノン・ルフールマン原則(迫害などを受ける恐れのある国に、難民や庇護希望者を強制送還することを禁止する原則)に違反する」と批判しています。

****国連、ドイツのアフガン人強制送還を非難 たとえ犯罪者でも国際法違反****
ドイツがアフガニスタン人犯罪者81人を、イスラム主義組織タリバン暫定政権が統治するアフガンに強制送還したのを受け、国連はたとえ犯罪者であろうとアフガンに送還するべきではないと非難した。 

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、紛争と危機に見舞われたアフガンに、特に地域内、そしてさらに遠方から強制送還されるアフガン人の数が急増していることが「多層的な人権危機」を引き起こしていると警告した。

OHCHRのラビナ・シャムダサニ報道官はスイス・ジュネーブで記者会見し、「ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は、すべてのアフガン難民と庇護希望者、特に帰還後に迫害、恣意(しい)的拘禁、拷問を受ける恐れのある人々の強制送還を即時停止するよう求める」と述べた。 

シャムダサニ氏は、たとえ有罪判決を受けた犯罪者であっても、深刻な人権侵害に直面するリスクのある国に送還することは、「国際法の中核原則であるノン・ルフールマン原則(迫害などを受ける恐れのある国に、難民や庇護希望者を強制送還することを禁止する原則)に違反する」と強調した。 

これに先立ちドイツ政府は、国内で犯罪を犯して有罪判決を受けたアフガン人の男81人を、イスラム主義組織タリバン暫定政権が統治するアフガンに強制送還したと発表した。ドイツからタリバン政権下のアフガンへの強制送還は2度目。 

ドイツは多くの国と同様、2021年にタリバンが政権に復帰した後、強制送還を停止し、在アフガン大使館を閉鎖。タリバン暫定政権とは第三国を通じて間接的にしか接触していない。 

だが、中道左派のオラフ・ショルツ前政権は2024年8月30日、有罪判決を受けたアフガン人28人を強制送還。タリバンの政権復帰後初の措置となった。 

アフガンは今年、イランとパキスタンから190万人以上が帰国し、既に混乱に陥っている。 シャムダサニ氏によると、イランは過去1か月だけでアフガン人約50万人を強制送還した。 国連は先週、年末までに最大300万人がアフガンに帰還する可能性があると警告した。

シャムダサニ氏は「強制であれ、自発的であれ、アフガンに帰還する人々は、深刻な人道・人権危機に直面している国を目の当たりにする」と主張。 「彼らはまた、構造的・制度的な差別、ジェンダーに基づく迫害、民族問題、アフガン社会への完全な再統合への障害、そして低迷する経済による仕事と生計手段の不足にも直面する」と付け加えた。【7月19日 AFP】
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ドイツ・メルツ政権の強制送還はアフガニスタン人だけでなくイラク人にも及んでいます。

****ドイツ、移民の強制送還本格化 アフガンに続きイラク人も****
ドイツ当局は22日、滞在許可のないイラク人43人を同国に強制送還した。18日には犯罪歴のあるアフガニスタン人男性81人を強制送還したばかり。5月に発足したメルツ政権は移民・難民政策の厳格化を掲げており、滞在許可のない移民や難民の強制送還を本格化させている。

ドイツでは今年2月の総選挙で排外主義を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2党に台頭した。メルツ政権はAfDの支持層を取り込み弱体化を図るが、AfDの勢いは持続。最新の世論調査ではメルツ首相の保守、キリスト教民主・社会同盟と並び首位に立っている。【7月23日 共同】
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一方、アフガニスタンでは・・・

****強制帰国の女性らに脅迫や虐待 タリバン暫定政権に、国連報告****
国連人権高等弁務官事務所は24日、帰国を強いられたアフガニスタン人女性らがイスラム主義組織タリバン暫定政権により、脅迫や虐待などの人権侵害を受けたとする報告書を発表した。

イランやパキスタンが不法滞在などを理由に強制帰国を加速させる中、人権侵害の恐れがある国へ帰還させるのは国際法違反だと強調した。

国連アフガン支援団が2024年5〜12月、強制帰国した49人に聞き取り調査した。報告書によると、元政府職員の男性は買い物中にタリバンに拘束され、殴打や水責めに遭った。テレビ局勤務時にタリバンから脅迫された女性は帰国後、軟禁状態で仕事や教育の機会がないと証言した。【7月24日 共同】
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欧州  トランプ関税で期限迫る 高まる強硬論 報復措置も EU首脳は中国訪問 共通利益・対立点も

2025-07-24 22:41:28 | 欧州情勢
(24日、北京で欧州連合(EU)のコスタ大統領(左)、フォンデアライエン欧州委員長(右)と握手する中国の習近平国家主席(ロイター時事)【7月24日 時事】)

【行き詰る関税交渉 EU、米国へ“貿易バズーカ”発動も視野】
トランプ関税について、周知のように日本はアメリカに巨額(約80兆円)の投資をする一方、アメリカは8月1日から発動するとしていた日本への25%の関税を15%に引き下げるとしています。また、自動車関税についても既存の関税率とあわせて15%とするか合意に達しました。その中身・数字の意味合い・影響はこれから検証されるでしょう。

一方、8月1日を控えて未だまとまらないのが欧州(EU)とアメリカの交渉。
欧州側には報復措置をアメリカに課す「強硬論」が強まっているとも。

****和解目前かと思いきや…EU、ついに米国へ“貿易バズーカ”発動? 8月1日が運命の分かれ道に****
欧州連合(EU)内では、ドナルド・トランプ政権による関税圧力に、強硬に対応すべきだという声が高まっている。
ニューシスの報道によれば、EUは米国の10%関税導入を受け入れ、和解合意を目指していたものの、トランプ政権は15%以上を主張し続け、交渉は進展していないという。

対米の強硬姿勢はフランスが主導している。エマニュエル・マクロン大統領は、トランプ大統領がEUに30%関税を課すと発言した直後、X(旧ツイッター)において「欧州の利益を断固として守る必要がある」と表明した。

さらに、8月1日までに和解に至らなければ、「反強制措置(ACI・Anti-Coercion Instrument)」を含むあらゆる手段を講じるべきだと主張している。

「貿易バズーカ」と呼ばれるACIを最初から持ち出し、最高レベルの対応を主張した。ACIは2023年末に発効したEU規則で、ボイコットや貿易制限など第三国からの経済的圧力に対し、当該国企業に金融、投資、知的財産権などの分野で制裁を課すことを規定しているが、現時点で発動例はない。

CNBCによると、ACIが発動されれば、米国が黒字を出しているサービス貿易、特にアマゾン、マイクロソフト、ネットフリックス、ウーバーなどに影響を与える可能性があると説明されている。

WSWSは、(ACI発動時)米国の技術・金融企業への年間4,200億ユーロ(約72兆3,523億5,000万円)以上の支払いの削減に踏み切る可能性があり、さらに米国の銀行が数兆ユーロ規模のEU公共調達へのアクセスを阻止できると予測した。

ポリティコによれば、フランス経済省は21日、記者向け声明で「フランスはEUの交渉方式の改善を望んでおり、たとえ代償を払うことになっても、和解を目的とするべきではない」と述べ、ACI発動の検討を改めて示した。

デンマークのラース・ロッケ・ラスムセン外相も「我々はあらゆる手段を講じる準備をすべきだ」とし、「平和を望むなら戦争の準備をせよ。今、我々はまさにその局面にいる」と強調した。

当初、穏健な対応を主張していた国々も次第に姿勢を変えつつある。対米貿易依存度が高いドイツやイタリアなどは、当初は損失を覚悟した上での早期和解を主張していたが、徐々に報復措置に賛同し始めている。

特に、米国が自動車・自動車部品に課している25%の品目別関税の緩和に応じないため、ドイツの選択肢はさらに狭まっているようだ。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、フランスのACIへの言及に対し、「米政府は、欧州が過度に高い関税負担に対し同様の措置で応じる可能性があることを理解すべきだ」との立場を示した。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、「ドイツの指導者たちは当初、トランプ大統領の『30%課税』という脅威を最後の駆け引きと捉えていましたが、先週、米当局者が『より高い関税を課し、自動車分野では何の措置も取らない』よう圧力をかけたことを知り、激怒した」と伝え、ドイツが報復の扉を開いたと報じた。

メルツ首相は23日、ベルリンでマクロン大統領と会談し、8月1日に30%の相互関税が現実となった場合の対応策について協議する予定だ。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「交渉が決裂すれば、EUはどれほど強く反撃するかを決断する真の瞬間を迎える。武器を手に取らなければ、EUは事実上存在しないに等しい」と述べ、正面からの対抗を強く主張した。

FTは22日の社説で、「トランプが脅した30%関税は貿易を事実上凍結させるため、50%や100%に引き上げても脅威は少ない」と主張し、さらにACIに触れ「トランプ大統領の突発的な判断を考慮すれば、EUは最終交渉で和解に達しても、武器を用意する必要があるだろう」と付け加えた。

これに先立ち、EUは210億ユーロ(約3兆6,174億1,800万円)および720億ユーロ(約12兆4,025億7,600万円)相当の米国産品に報復関税を課す計画を立て、交渉と並行して進めている。第1弾の報復関税は8月6日に発効され、第2弾は最終承認を待っている状況だ。【7月24日 竹内智子氏 江南タイムズ】
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「平和を望むなら戦争の準備をせよ。今、我々はまさにその局面にいる」(デンマーク外相)・・・まさに“開戦前夜”の緊張感です。

「貿易バズーカ」と呼ばれる「反強制措置(ACI)」については、以下のようにも。

*****「反強制措置(ACI:Anti-Coercion Instrument)」とは****
EUが導入を進めている「反強制措置(ACI:Anti-Coercion Instrument)」とは、簡単に言うと、他国がEUに対して経済的な脅し(=強制)を仕掛けてきた場合、EUが“お返し”の制裁を発動できる制度のことです。

背景・なぜ導入?
近年、中国、ロシア、アメリカなどの大国が、政治的な目的で貿易や経済を“武器”にする事例が増えました。
例:中国がリトアニアに経済制裁(台湾代表事務所設置への報復) アメリカが関税引き上げをちらつかせて交渉圧力をかける

こうした行為は「経済的強制(economic coercion)」と呼ばれ、EUにとっては主権や政策決定の自由が脅かされる行為とみなされます。

ACIのしくみ(ざっくり)
EUが「経済的強制」と判断する行為があった場合:欧州委員会が調査 対象国との対話を試みる(外交交渉の猶予あり)

解決が見込めなければ:EU加盟国の過半数が賛成すれば、「反強制措置」を発動

具体的な措置内容(柔軟に選択可能):関税引き上げ 輸入制限 投資の規制 知的財産権の停止 など
つまり「自分たちの意思決定を妨害されたら、経済的にやり返す」ための法的な武器です。

「貿易バズーカ」と呼ばれる理由
EUが1つの経済圏として、対抗手段を“合法的”に発動できるようになるため
強力な“報復カード”を持つことで、抑止力(ディスインセンティブ)にもなると期待されているため 【ChatGPT】
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このツールACIは、関税だけでなく貿易や投資への幅広い制限、EUの公共調達や金融サービスへのアクセス制限も可能にする、まさに「バズーカ砲」のような威力を持つ武器となりますが、それだけにこのツールが発動されれば、対立は一気に激化し、取り返しのつかない事態に発展する可能性が高いとも言われています。

実際に発動することなく相手への“抑止力(ディスインセンティブ)”として機能することが一番ですが・・・・。

これまでは主戦論のフランスに対し、ドイツ・イタリアは協調的な和解重視の姿勢でした。

****これまでの欧州主要国のトランプ関税に対する姿勢****
トランプ大統領の関税攻勢に対して、EU側の対応は複雑かつ困難な状況に置かれている。

ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、報復関税額を最大700億ユーロ規模(約11兆9,000億円)で準備中であると明らかにしたが、その実施は慎重に見極められているのが実情だ。

実際のところ、EU内部では対応をめぐって意見が分かれている状況が続いている。ドイツとイタリアは衝突回避を強く望んでいる一方で、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が率いる少数派グループは、より強硬な姿勢を求めているのである。この温度差は、各国の対米貿易依存度の違いを反映していると考えられるだろう。

イタリア外交の現実路線
イタリアのアントニオ・タヤーニ外相は、これまでの委員会の戦術を「賢明」と評価し、「軽率な反応ではなく強い交渉こそが重要」と述べている。

冷静さと理性を持って「すべての国の利益となる貿易戦争回避のために胸を張って交渉すべきだ」という彼の発言は、イタリアの現実的な立場を示していると言える。

イタリア経済の脆弱性を理解した上での戦略的判断なのだ。
2024年時点で、イタリアの輸出の約48%が米国向けであり、EU外では最大の市場となっている。多くのイタリア産業が米国の需要に深く依存している現実を考えれば、対立の激化は避けるべきだという判断は合理的であろう。

ドイツの協調路線
ドイツのラーズ・クリングベイル財務相も同様の見解を示しており、「今は新たな脅威や挑発は必要ない。EUは真剣かつ的確に米国と交渉を続けるべきだ」と述べている。

ドイツもまた、米国市場への依存度が高い国の一つであり、30%関税が課された場合、ドイツのGDPは0.5%減少するという試算もあるのだ。

このような経済的現実を踏まえれば、ドイツとイタリアが協調して穏健路線を支持するのは当然の帰結と言えるだろう。両国ともに、貿易戦争の激化によって失うものが大きすぎるのである。

フランスの強硬姿勢
一方で、フランスは明確に異なる立場を取っている。
「トランプ氏が仕掛けた力の関係は、EUが反撃の能力を示すべき局面であり、ここでの対応を加速しなければならない」として、より強硬な姿勢を求めているのだ。欧州問題担当大臣のローラン・サン=マルタンは、ブリュッセルで開かれるEU貿易理事会にて、報復措置として何が可能か検討すべきだと訴えている。

マクロン大統領も、欧州委員会に対して「8月1日までに合意が得られなければ、利用可能なあらゆる手段を動員し、信頼できる報復措置を速やかに準備せよ」と促している。ここには後述する「強制反撃ツール」の使用も含まれているという。【7月21日 ヴィズマーラ恵子氏「トランプ30%関税の衝撃:欧州とイタリアが直面する経済的試練」 Newswwek】
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ただ、トランプ大統領の頑な姿勢に対し、苛立つ独伊でも強硬論が強まっているのは前述のとおり。

【EU首脳が北京を訪問、習近平国家主席と2年ぶりの対面会談 中国は長期的な米中対立を見据えて欧州に接近する思惑 EUの対中国貿易赤字やウクライナ戦争での中国のロシア支援では対立・溝も】
こうした欧州とアメリカの交渉が瀬戸際にある状況で、コスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)と欧州委員会のフォンデアライエン委員長のEU首脳が北京を訪問、習近平国家主席と2年ぶりの対面会談を行っています。

****EU首脳、中国の習近平主席と北京で会談-2年ぶりの対面開催****
欧州連合(EU)の首脳は24日、中国の習近平国家主席と会談した。2023年以来の対面開催となったが、これまでの経緯は両者の溝を浮き彫りにしている。
  
中国国営の新華社通信によると、習氏はコスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)と欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談。東京で開かれたEUと日本の首脳会談の翌日に実施された。
  
欧州委員会の発表資料によると、フォンデアライエン氏は習主席に対し、EUと中国の関係が「転換点に達した」と発言。「協力の深化につれ、不均衡も生じている」と指摘し、「関係の均衡を回復させることが重要だ。持続可能な関係にするには双方が利益を得ることが不可欠だ」と述べた。
  
今年はEUと中国が外交関係を樹立してから50年の節目だが、貿易やウクライナでの戦争を巡って両者の緊張が続いている。
  
ブルームバーグ・ニュースは、当初2日間の予定だった会談が中国側の要請で1日に短縮されたと報じている。また、習氏が拒否したため開催地はブリュッセルから北京に変更された。

国営の中央テレビ(CCTV)によると、習主席は会談の冒頭、国際情勢の不確実性が高まる中、中国とEUは協力を深め、信頼関係の強化と対話の継続に努めるべきだと述べた。
  
共同声明の発表は予定されていないが、匿名を条件に話した複数の関係者によると、EUは会談での主要発言をまとめた声明を発表予定だという。
  
また、両者は気候問題への協力に関する声明の準備も進めている。複数の関係者によると、両者の高官は24日、北京で署名に臨む予定。今年ブラジルで開催予定の第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)を前に、温室効果ガスのさらなる排出削減と行動計画が盛り込まれる見通し。【7月24日 Bloomberg】
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アメリカとの関税交渉を抱えて要る点では中国とEUは共通しており、中国は長期的な米中対立を見据えて欧州に接近しようとしています。

ただ、欧州は中国に大きな貿易赤字を抱えているという問題や、ウクライナ問題で中国がロシアを実質的に支援している問題など、欧州・中国間には懸案事項も。

****習氏、欧州に協力呼び掛け 貿易やウクライナ問題では溝―中国・EU首脳会談****
中国の習近平国家主席は24日、欧州連合(EU)のコスタ大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京で会談した。

双方は貿易問題やウクライナ侵攻を続けるロシアへの対応を巡って溝が大きいが、習氏は国際協調に否定的なトランプ米政権を念頭に、連携の必要性を強調。「多国間主義」の堅持や気候変動対策での協力強化で合意した。

中国外務省によると、習氏は「国際情勢が厳しさを増すほど、中国と欧州は協力を深めなければならない」と指摘。「欧州が現在直面している問題は中国由来ではない」とも主張し、通商や投資の拡大を訴えた。EU側は「中国との相違点に建設的に対処する」と応じたとしている。

米国との長期対立を見据える習政権が欧州への接近を図る一方、EUは近年拡大している対中貿易赤字を問題視し、不当な補助金によって安価になっている中国製電気自動車(EV)が市場競争をゆがめているとみている。

中国がロシア産原油の購入や軍民両用品の対ロ輸出を通して侵攻を下支えしていることへの不信感も大きい。EU側はこれらの問題について、会談で改めて対処を求めたとみられる。

EUは18日、暗号資産(仮想通貨)サービスを提供し、ロシアを支援したとして中国の二つの金融機関を制裁対象に指定。中国側は強く反発し、対抗措置を示唆している。【7月24日 時事】
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ウクライナ  腐敗・汚職の改善傾向に昨年から停滞感も 汚職対策当局から独立捜査権を奪う法案も可決

2025-07-23 22:31:36 | 欧州情勢
(世界腐敗認識指数ランキング 【2月12日 ウクルインフォルム】

【腐敗・汚職大国ウクライナ、近年は欧米からの圧力もあり改善傾向に】
ウクライナの対ロシア戦争の話ではなく、ウクライナが以前から抱える国内的な問題の話。

ウクライナは基本的に以前から汚職・腐敗が多い国の一つでもあり、対ロシアの戦争について欧米諸国のウクライナ支援をためらわせる問題ともなっていました。

****汚職に軍との“不協和音”も…ゼレンスキー大統領の内憂外患****
(中略)
英BBC “徴兵逃れで2万人近くが出国”
イギリスの公共放送BBCは17日、ウクライナからこれまでに2万人近くが徴兵を逃れるために国外に出国したことがわかったと伝えました。川を泳いだり、夜間に徒歩で国境を越えたりして隣国のルーマニアなどに出国したとしていて、ほかにおよそ2万1千人が国外に逃れようとしてウクライナ当局に拘束されたということです。

ウクライナではロシアによる軍事侵攻以降、総動員令が出され、18歳から60歳の男性が徴兵の対象となり、原則、出国が禁じられています。しかし、徴兵を逃れるために賄賂を贈るなどの汚職も後を絶たず、兵員の確保も課題となっています。

汚職の問題が次々と…
ウクライナでは、一握りの政治家や実業家が利権を独占する政治構造が続いていて、2019年に行われた大統領選挙で政治経験のなかったゼレンスキー大統領がはじめて当選したのは、汚職に対する国民の不満も背景にあったとみられます。

しかし、ロシアによる侵攻を受けて欧米などからの軍事支援が続くなかでも汚職の問題が次々に明らかになりました。

ことし1月には、大統領府のティモシェンコ副長官など汚職の疑惑やスキャンダルが指摘されていた政府の要人が相次いで解任されました。

また、国防省による制服や食料の調達をめぐる汚職疑惑が伝えられる中、ことし9月、当時のレズニコフ国防相の交代が発表され事実上の更迭とみられています。

さらに、徴兵事務所の責任者が、市民などから賄賂を受け取る見返りに徴兵逃れを認めていたケースが後を絶たないとして、ことし8月、すべての州の徴兵責任者が解任されました。

世界各国の汚職を監視するNGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が発表している世界の汚職に関するランキングでは、ウクライナは、去年(2022)180の国と地域のうち116位で、公的資金の運用などに透明性が求められています。(参考:日本18位・ロシア137位)

欧米諸国 汚職対策の強化を求める
こうした事態を受けてウクライナへの軍事支援を行っている欧米諸国は、ゼレンスキー政権に対して汚職対策の強化を求めています。

スロバキアのフィツォ首相は、先月、支援した資金が適切に使われるという保証が必要だと指摘するなどして、EUによる資金面での支援を支持しない姿勢を示しました。

アメリカのイエレン財務長官も先月、支援を必要な限り続けるとした上で、ゼレンスキー大統領に対し、汚職対策に力を入れるよう求めました。

ゼレンスキー大統領は今月4日、EUのフォンデアライエン委員長と行った会見で「ウクライナは改革を続ける。新たな法律を制定し、汚職防止のシステムを機能させる」と述べ、汚職対策に取り組んでいく姿勢を強調しました。

国防省のクリメンコフ副国防相も、今月開いた会見で「透明性が最も重要だ。欧米の基準に従う形で継続的な改善を進める」と述べました。

ウクライナ政府への信頼度が大幅低下 調査会社
こうした中、ウクライナの調査会社、キーウ国際社会学研究所が先月31日に発表した世論調査では、
▼ゼレンスキー大統領を信頼していると回答した人は76%で、去年5月の91%から下落したほか、
▼ウクライナ政府への信頼度は39%と、同じく74%から大幅に低下したことがわかり、相次ぐ汚職問題の発覚などが影響しているという見方も出ています。

また、ことし9月下旬から先月中旬にかけて行った世論調査で、ロシアとの戦い以外で何が問題か尋ねたところ「汚職」を挙げた人が63%と最も多くなりました。

さらに、別のシンクタンクがことし7月から8月にかけて行った世論調査では、回答した人の78%が「戦時下の政権や軍部の汚職の直接的な責任は大統領にある」と回答しました。

シンクタンクの責任者は地元メディアに対して「この数字は警告であると同時に『汚職対策をやれば支える』という励ましでもある」とコメントしていて、ゼレンスキー大統領にとって汚職との戦いは喫緊の課題となっています。(後略)【2023年11月19日 NHK】
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欧米からの圧力、ゼレンスキー大統領の改革への意思もあって、ここ数年は汚職・腐敗に関して大きく改善する傾向にありました。(逆に言えば、それまでが「ひどかった」ということでもありますが)

***ウクライナ、世界汚職度ランキングで大きく評価改善 約10年で40位上昇****
汚職・腐敗防止活動を行う国際NGO法人「トランスペアレンシー・インターナショナル」(TI)は、2023年の世界腐敗認識指数ランキングを発表した。ウクライナは、前年のTIの評価からポイントを3つ改善し、ランキングでは180か国中104位となった。

(中略)ウクライナは、同ランキングにて、2013年は25ポイントの144位であり、これまでに11ポイント増加し、順位を40位あげている。

同ランキングでの最高点は、デンマークの90ポイント。これに続き、フィンランド(87)、ニュージーランド(85)、ノルウェー(84)が続く。日本は73ポイントで、16位。最も低いのは、ソマリアの11ポイント(180位)。

ロシアは、26ポイントの141位。ロシアの順位は2020年以降低下を続けている。(後略)

なお、2022年のCPIではウクライナの順位は116位、2021年は122位だった。昨年のTIの報告では、ウクライナは2013年から汚職度を8点改善するという著しい改善を示した国の1つだと指摘されていた。【2024年1月3日 ウクルインフォルム】
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【昨年からは改善の停滞も 汚職対策当局から独立捜査権を奪う法案も可決 戦時下では異例の抗議デモも】
ただ、2024年の世界腐敗認識指数ランキング(CPIでは、ウクライナは前年の評価からポイントを1つ落とし、100点中35点。ランキングでは180か国中105位となっており(前年は104位)、やや改善の流れに停滞感も。

そうしたなかで、ウクライナ汚職対策当局から独立捜査権を奪う法案が22日、最高会議(議会)で可決されました。

****法案可決、腐敗撲滅に逆行か=ウクライナで異例の抗議デモ****
ウクライナ汚職対策当局から独立捜査権を奪う法案が22日、最高会議(議会)で可決された。ゼレンスキー大統領が掲げた腐敗撲滅に逆行するものとして世論の目は厳しく、首都キーウや西部リビウではロシアの侵攻下で異例の抗議デモが始まった。

腐敗撲滅は、ウクライナが悲願としてきた欧州連合(EU)加盟に向けた交渉の主要な条件。進展しなければ「戦後復興」に向けた外国からの民間投資にもブレーキがかかる恐れがある。

法案に揺れる当局は、2015年に設置された国家汚職対策局(NABU)と特別汚職対策検察庁(SAP)の二つ。採決に際し、ゼレンスキー政権与党「国民の奉仕者」が賛成した。

これに先立ち、情報機関の保安局(SBU)は21日、「ロシアによる影響力の行使を阻止する」という名目でNABUの関係先を一斉捜索し、高官を拘束。ウクライナ支援を主導する日本を含む先進7カ国(G7)大使団は声明で「深刻な懸念」を示した。【7月23日 時事】
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NABUとSAPOは、2015年のマイダン革命後に設立された、政権や有力者の汚職を独立して追及する機関です。今回の法改正により、これらの機関は検事総長(大統領任命)による統制下に置かれ、「政治的指揮権」「捜査中止」「担当者配置転換」の権限を握られる構造となりました。

****反腐敗機関の独立性を奪う法案成立に戦時下では異例の抗議デモ****
反発と抗議の広がり

— 国内の反発
キーウやリヴィウ、ドニプロ、オデッサなど各地で数千人規模の抗議行動が発生。戦争中の抵抗運動の中、これほど大規模な政府への抗議は非常に異例です。

参加者には徴兵された兵士や退役兵、学生、アーティスト、元政府高官(クリチコ元キエフ市長など)も含まれます。

— 国際的な懸念
EUやG7、Transparency International Ukraineが「EU加盟や西側支援の条件となる汚職改革の後退だ」と強く批判 EU拡大担当コミッショナーのマルタ・コス氏は「重大な後退」「法の支配の核心に影響する」と懸念を表明

米国や英国なども、改革を支持してきた反腐敗構造が弱体化することに懸念を示しています 。

なぜ今、こうした法案が?
ロシア影響排除の名目
ゼレンスキー氏は「NABU・SAPO内部にロシアの影響がある可能性」「透明性強化のため再編が必要」と説明しています。

検事総長の大統領との連携強化
新設された検事総長はゼレンスキー氏の近くにあり、国内外から「大統領権限の集中」「制度的抑制の弱体化」と見られています。

内部調査・権力闘争の一環
先週、NABUやSAPOに対し、国家保安庁(SBU)や検事総局による家宅捜索や幹部の逮捕が行われ、実質的な圧力が強まっていました。

今回の抗議デモは、戦時下にもかかわらず反腐敗機関を弱体化させる政府の動きに対し、ウクライナ市民が強く反発したものです。民主主義やEU加盟のために不可欠な「汚職との闘い」を後戻りさせかねない法改正に対し、「ここは絶対に譲れない」という市民の意思が示されました。【ChatGPT】
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ゼレンスキー政権は初期には汚職対策を進め、一定の成果を上げましたが、戦争の長期化に伴い統治の集中傾向が強まり、2024年以降は制度の独立性や透明性の後退が懸念されています。

対外的な信用維持(EU加盟交渉、軍事支援継続)には汚職対策の持続と制度の信頼性が不可欠であり、国内でも反腐敗を求める世論は強く、政権の姿勢次第で社会的対立が先鋭化する可能性もあります。


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欧州で相次ぐ移民と極右勢力の衝突 極右勢力によるSNSなどでの偽情報を含む煽りで暴動にも

2025-07-22 22:11:24 | 欧州情勢
(参院選の選挙戦最終日、日の丸を掲げながら演説を聞く参政党の支持者ら=東京都港区で2025年7月19日午後6時42分、春増翔太撮影 【7月21日 毎日】)

【町の住民の多くは移民との共生に肯定的な立場 外部から現れた極右系グループによる暴力行為や差別的言動】
後述のように欧州各国で最近相次ぐ移民と極右勢力の衝突・・・その一つがスペインでも。

*****スペインで極右派と移民が衝突 極右政権が情勢に与える影響****
2025年7月中旬、スペイン・ムルシア州に位置する町、トレ パチェコ(Torre Pacheco)で移民を標的にした暴力行為や差別的扇動が相次ぎ、大きな社会的波紋を呼んでいます。

発端となったのは、7月10日に発生した1件の暴行事件でした。地元在住の68歳の男性が、北アフリカ系とされる若者3人に殴打され負傷したことが報じられ、これをきっかけに一部の極右系グループがSNSを通じて抗議活動や移民排斥を扇動しました。

事件から数日後、外部から集まったとされる極右系グループがハンマーやナタを手にトレ パチェコに現れ、北アフリカ系の移民が経営する商店に対する襲撃やガラスの破壊、差別的スローガンの唱和など、移民を標的にした差別的な暴動事件へと発展しました。

一方、地元の北アフリカ系移民の一部もこれに対抗する姿勢を見せ、路上での衝突が複数日にわたり発生しました。現地警察と治安部隊はただちに対応に乗り出し、暴力行為に関与したとみられる少なくとも14人を逮捕、120人以上に対して身元確認を実施しました。

移民に支えられる地域経済
トレ パチェコは、ムルシア州の中でも特に農業が盛んな地域であり、果物や野菜の大規模生産が地元経済を支えています。これらの農業活動において、北アフリカ出身を中心とする移民労働者の存在は不可欠であり、何年にもわたり地域社会との共存が築かれてきました。

町の住民の多くは移民との共生に肯定的な立場をとっており、「移民なしでは町の農業も、経済も、日常も成り立たない」という声が報道を通じて多数紹介されています。

そのため、今回トレ・パチェコに外部から現れた極右系グループによる暴力行為や差別的言動に対しては、町の実情をまったく理解していない行動だとして怒りの声が多数上がっています。
 
極右政党による差別発言
この極右系グループの暴力行為を後押ししたのが極右政党であるVOXの議員らの発言です。VOXの幹部や関係者は地元男性が移民によって殴られた事件について複数の場面で発言を行い、政府と移民政策を強く批判しました。

VOX党首のサンティアゴ・アバスカル氏は、トレ パチェコでの暴力事件に対して「現場で起きた問題よりも、それを引き起こした政策の責任」を主張し、社会労働党(PSOE)と国民党(PP)による移民政策を「移民の犯罪を助長した」と非難しています。

また、ムルシア州VOX代表のホセ・アンヘル・アンテロ氏は「スペインにはこれ以上違法移民を受け入れる余裕はない」とし、「自国民を守るためには違法移民の強制送還が不可欠である」と公然と主張しています。同氏の発言は、ムルシア州検察局によりヘイトクライム(憎悪犯罪)を構成しうる発言として調査対象となっています。

さらにVOX国会議員のペパ・ミラン氏は、トレ パチェコの状況を「かつてETA(バスク独立派武装組織)がテロを行っていた時とまったく同じ」と比較するなど、極めて過激な発言を行い、社会の緊張をさらに高めました。

VOX党首のアバスカル氏は「適応できない外国人は、合法であっても帰国させるべきだ」との主張を繰り返し、「リマイグレーション(再移住)」政策の推進を表明しています。これらの主張がVOXの支持者たちのヘイト感情を奮い立たせ、今回の様な暴動事件に発展されたとされています。

検察による捜査と告発
このような一連の発言や行動に対して、スペインの検察当局はヘイトスピーチと暴力扇動の疑いで正式な調査を開始しました。特にアンテロ氏の発言については、人種的偏見に基づく公共の扇動行為として、刑事責任を問う可能性があるとされています。

左派政党ポデモスは、VOX党首アバスカル氏やアンテロ氏のほか、SNS上で過激なメッセージを拡散した著名インフルエンサー数名をまとめて検察に告発しました。
 
スペインにおける移民問題
スペインは欧州の中でも移民受け入れが多い国の一つであり、ラテンアメリカ諸国や北アフリカからの移民が国内労働力の一端を担ってきました。特に農業・建設・介護分野では移民労働者が不可欠となっており、こういった労働者の多くが適切なビザや滞在資格を有しています。

しかし、経済格差や地域ごとの緊張、治安不安の感情が結びつくことで、「移民=犯罪」といった誤った認識が一部で定着しやすくなっています。

VOXのような極右政党は、こうした不安感を利用し、支持基盤の拡大を図っているとする見方もあります。報道によれば、VOXの言説は一部の有権者には訴求力を持つものの、移民と共存してきた地域社会においては、むしろ強い反発や拒否感を生んでいます。

こうした状況の中で、スペイン国内では移民問題をめぐる立場の違いが際立ち、社会の二極化が進行しています。結果として、移民をめぐる議論の溝は、ますます深まっているのが現状です。【7月21日 松尾彩香氏 Newsweek】
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スペインの極右政党VOXは、フランスのル・ペン党(RN)、イタリアのメローニ党(FdI)、ドイツAfDと並び、EU懐疑・ナショナリズムを掲げる欧州極右の一翼を担っています。

2013年に保守政党・国民党(PP)の離脱組によって設立され、その思想傾向は、スペイン民族主義(中央集権・カタルーニャ独立反対)、反移民・反イスラム、反フェミニズム(「ジェンダー・イデオロギー」批判)、キリスト教的価値観の擁護、U懐疑・グローバリズム批判とされています。

2015年総選挙では「泡沫」(議席ゼロ)に過ぎませんでしたが、2019年4月総選挙で10.3%を獲得し国会に進出(24議席)、さらに同年11月選挙では15.1%に拡大、議席数も52議席に増やし、第3党に躍進。
ただ、2023年7月選挙では12.4%、33議席と「頭打ち」傾向も見られます。

VOXは政権与党に参加したことはありませんが、2023年総選挙後、最大野党の保守政党・人民党(PP)が政権形成のためにVOXの支持を必要とする状況が続いています。

また、VOXの存在により、人民党など中道右派政党は右派票を維持するために強硬姿勢を取らざるを得ない場面が増加しています。

州レベルでは人民党とVOXの連立が組まれ、教育政策や移民対策、女性支援政策に「巻き戻し」の動きが見られるようになっています。

【SNSでの誤情報や煽動による極右の社会動員力が暴動に】
冒頭記事にあるような移民集団と極右勢力の衝突は最近欧州各地で見られます。

****欧州における最近の移民と極右勢力の衝突の事例****
欧州では、近年、移民・難民と極右勢力(または極右支持の集団)との衝突が数多く報告されています。以下、最近の代表的な事例を整理しました。

最近の衝突事例
1. スペイン・トーレ・パチェコ(Torre‑Pacheco の混乱) — 2025年7月
(省略 冒頭記事)

2. 北アイルランド・バリーミーナ(Ballymena の暴動) — 2025年6月
ルーマニア出身とされた未成年者による性的暴行事件(容疑)をきっかけに、極右支持者らが暴徒化。移民が多く住む地域で抗議活動が泥沼化し、レンガ・火炎瓶による警察襲撃、住宅や車両の放火、移民家族の避難などが発生しました。警察は強制的鎮圧を行い、SNS経由での煽り疑惑も浮上しています。

3. イギリス・エセックス州エッピング(Epping) — 2025年7月中旬
アサイラム宿泊施設に対する抗議デモが、British Firstなど極右活動家によって組織され、暴力沙汰に発展。警察や反人種差別団体への襲撃、警察車両への破壊行為が起こり、複数名が逮捕されました。先行する宿泊施設内の警備員襲撃事件や裁判報道(性的暴行容疑等)が緊張を高めていたようです。

4. ベルギー・ブリュッセル(May 2025 クラブ・ブルッヘ vs モレールケンベック地区)
2025年5月、サッカー・クラブブルッヘのサポーター集団がブリュッセルに到着後、モレーンベーク地区のモロッコ系住民を標的にした人種差別的暴行を敢行。マレンベーク店主親子への重傷事件や複数の刺傷事件に発展し、明確な極右暴力行為と見なされました。

5. ドイツ・ベルリンおよび他都市(2024年から2025年)
2024年以降、ベルリンでの難民・移民への暴行件数が急増し、2024年には77件の暴行、8件の住居破損が報告され、被害者34名(女性・男)に上りました。2023年から2024年にかけて、難民施設への政策的または犯罪的攻撃も増加傾向にあり、極右過激派の関与が指摘されています。

また、若年極右組織「Last Defense Wave」による移民施設や文化センターへのテロ計画も摘発されました。

共通の傾向・背景
SNSでの誤情報や煽動:他の出来事や偏向した映像が実際の事件と結びつけられることで、移民排斥感情が拡大し暴動を誘発。

極右の社会動員力:政治的団体、オンラインチャネル、サポーター集団などが連携し、特定地域での緊張を計画的に激化。

コミュニティの脆弱性との重なり:低所得地域や移民集中地区で被害が顕著、国家の対応にも限界が見られることがある。

今後の注目点
各国政府がSNS・メッセージアプリ上の煽動チャネルに対する規制を強化。(例:Telegramチャネル停止など)
移民との共生策、地域ごとの予防対策、教育や対話プロジェクトの推進。
これらの衝突が政治的に利用される兆候(選挙前の感情操作など)に注意。

これらは、2025年6〜7月にかけて特に注目された事件ですが、2024年から続く一連の極右と移民・難民との衝突の一部です。 さらに他の国(オランダ、フランス)でも予防的対処と報道が続いています。【ChatGPT】
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【SNS規制強化が必要とされるも、言論の自由との兼ね合いで難しい対応も】
いずれの事例も各国の固有の社会・政治状況を反映したものではありますが、一方で移民に対する憎悪・暴力が組織的に、SNSなどによって偽情報を含めて煽られる共通性があります。

****偽情報で大規模暴動起きたイギリス SNS運営企業規制強化の方針****
イギリスで反移民感情をあおる偽情報をきっかけにした大規模な暴動が各地で起きてから1か月余りがたち、暴動などに関与したとして逮捕された人は1300人余りにのぼっています。イギリス政府は偽情報が暴動の発端となったことを重くみて、SNSの運営企業への規制を強化する方針です。

イギリスでは、ことし7月29日に中部サウスポートで17歳の少年が子どものダンス教室に侵入してナイフで次々に人を刺し、子ども3人が死亡しました。

事件の直後から、インターネット上には「犯人はイスラム教の移民とみられる」といった偽の情報が拡散され、事件の翌日から各地で「反移民」や「反イスラム」を主張する暴動が起きる事態となりました。

暴動は、先月上旬にはほぼ収束しましたが、これまでに暴動に関与したり偽情報をSNSで発信したりしたとして逮捕された人は1380人にのぼっています。

イギリス政府は、偽情報が暴動の発端となったことを重くみて、SNSの運営会社への規制を強化する方針です。

いまの法律では性暴力など違法なコンテンツの削除を怠った企業に巨額の罰金を科すことになっていますが、欧米のメディアによりますと、誤った情報の拡散を放置しても罰則の対象となるよう見直しを検討しているということです。

ただ、規制の強化には言論の自由を脅かしかねないという批判もあり、イギリス政府は難しい対応を迫られることになります。

発端は 容疑者の偽情報がネット上に投稿されたこと
イギリス各地に急速に広がった暴動は、容疑者に関する偽の情報が、インターネット上に投稿されたことが発端でした。事件があったその日にSNSでは「犯人はイスラム教徒の移民とみられる」とか「ボートで去年イギリスに渡ってきた」といった偽の情報が拡散されました。

こうした情報を広げたアカウントの1つは、およそ50万のフォロワーを持ち、1回の投稿でこれまでに680万回以上閲覧されたものもあります。

地元の警察は、容疑者はイギリスで生まれた17歳の少年だと発表し、移民ではないことを明らかにしていました。しかし、その後も過激な内容の投稿で知られるインフルエンサーが、犯人の顔写真や名前だと主張する誤った内容を投稿したことで偽の情報がさらに拡散しました。

また、こうした偽の情報が拡散すると同時に、「もうたくさんだ」「イギリスの子どもを守ろう」などという文言とともに、デモを行うよう呼びかける投稿が目立つようになり、イギリスの各都市で暴動が発生しました。

イギリスの公共放送BBCによりますと、暴動は事件の翌日、サウスポートで起きたほか、7月31日にはロンドンや中部マンチェスターなど新たに4都市に広がり、8月5日までに北アイルランドの街を含む26都市まで拡大しました。

背景には 反移民感情の高まりがあったか
偽情報が暴動につながった背景には、ここ数年、イギリスで高まる反移民感情があったとみられます。

イギリスは4年前のEU=ヨーロッパ連合からの離脱後、EU域外のアジアやアフリカなどから移住する人が急増しました。経済の低迷やインフレが続く中、標的となったのがこうした移民です。

反移民感情の高まりをあらわすかのように、ことし7月の総選挙では移民に厳しい姿勢をとる右派政党「リフォームUK」が得票率を大幅に増やしました。

また、移民が仕事を奪っているとか治安を悪化させているといった反移民感情をあおるような主張がSNSなどによって拡散しやすくなっていることも、暴動が広がった背景にあると指摘する専門家もいます。

ノースウェスタン大学カタール校で、偽情報の拡散のメカニズムなどについて研究しているマーク・ジョーンズ氏は、「いまのXのようなSNSは偽情報の配信システムのようになりつつあり、大量の誤った情報の拡散を許してしまっている。“反移民”を拡散するための専門の匿名アカウントが存在し閲覧数も多い」として、SNSの運営企業への規制の強化は必要だと強調しています。

そのうえで「イギリスでは右傾化が進み、偽情報が暴動を引き起こすのは時間の問題だった。極右による移民への批判の結果としてイギリスやヨーロッパでさらに暴力が発生する可能性は現実的なリスクとなっている」と述べ、ヨーロッパのほかの国でも極右への支持の広がりが偽情報をきっかけに暴動に結びつくリスクがあると指摘しています。(後略)【2024年9月7日 NHK】
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上記記事にもある移民に厳しい姿勢をとる右派政党「リフォームUK」は、今年に入るとさらに党勢を拡大、支持率で二大政党を抑えてトップに。

5月の補選や市長選でも勢いは止まっていません。

****英・地方選挙 反移民を掲げる右派政党が下院補選で勝利 市長選も初めて制す 議会選挙でも躍進***
イギリスで地方選挙などが行われ、反移民を掲げる右派政党が下院の補欠選挙で勝利したほか、市長選を初めて制すなど躍進しました。

イギリスのイングランドでは1日、下院の補欠選挙や6つの市長選挙、それに24の自治体の議会選挙が行われました。

イギリスメディアによりますと、下院の補選では反移民を掲げる右派政党「リフォームUK」の候補が6票差で労働党の候補に競り勝ちました。

リフォームUK ファラージ党首「我々が労働党政権に対する主要野党となった。率直に言って、保守党に存在価値がない」

また、リフォームUKは、2つの市長選でも勝利したほか、議会選挙でも躍進しました。

リフォームUKが市長選で勝利するのは初めてで、労働党と保守党の二大政党が支持を低迷させるなか、存在感を高めています。【5月3日 TBS NEWS DIG】
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翻って日本における参政党の予想どおりの躍進は・・・という話にもなりますが、そのあたりはまた別機会に。
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