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大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

パイロットになりたくて(3)

2007-04-23 17:36:41 | Angel ☆ knight
    

 ネプチューン・シティで航空テロ
11日未明、ネプチューン・シティに機籍不明のアロー型戦闘機が飛来し、海上都市間連絡橋第一ブリッジをミサイルで破壊した。
不明機はレーダーに探知されない海面すれすれの低空域を飛行してシティに接近。スクランブル発進した連邦空軍機の迎撃をかわしてミサイルを発射し、逃げ去った。当局は航空テロの可能性ありとして捜査を進めているが、現在までに犯行声明は出されていない。

 「ねー、感じ悪いでしょ。ぼく、今でも思い出すとムカムカするんだよ」
その日、ウルフは非番だったので、カムイとミアイルをドライブに連れて行ってくれた。
カムイは車の中で、いつか河川敷で出会ったラジコン男の話をした。不愉快な話なのでミアイルにも黙っていたのだが、一度吐き出してしまわないことにはどうにも胸のむかむかがおさまらなかった。
もちろん、「堕ちたイカロス」のくだりは、ウルフの前なので伏せておいた。まるでアンドレアス選手になれたようなゲームをさせてくれたのはいいが、カムイがゲームを貰い受けないでいると、不快な捨て台詞を投げられたと話したのだ。
「そら、きっと『サイバー・ブルー』だな」 
ウルフが言った。カムイがその時にしたゲームの名前である。16歳のサッカー少年が、偶然ある組織の陰謀を知り、世界を救うために立ち向かうという筋書きなのだそうだ。
なるほど、それでサッカーの試合が出てきたのか、とカムイは思った。男との出会いは全体として嫌な思い出だが、あのゲームをしていた間だけは至福といっていい時間だった。
「そんなに本当っぽいんなら、ぼくもサッカーのところだけしてみたいな」
と、ミアイルも少々羨ましそうだ。
「だが、ゲームを貰わなかったのは正解だったと思うぜ。ちゃんと断って、えらかったぞ」
ウルフに誉められて、カムイはいっぺんに胸が晴れた。
車は郊外の住宅地に入っていった。カムイとミアイルが友人達の間で話題になっている「お化け屋敷」を見たいとせがんだからだ。邸宅の一つが無惨に破壊されており、カムイ達は「悪魔の巨人が一足で踏みつぶした」と言っているのだが、ウルフはその原因を知っていた。
「夢を壊すようで悪いが、これは飛行機が墜落したんだ」
空軍機が訓練飛行中に落雷に遭い、計器も無線も使用不能になった。タイミング悪く濃霧が発生して視界を塞ぎ、自機の位置を完全に見失ったパイロットは恐怖にかられて射出シートで脱出した。操縦士を失った機体はこの家に落下。幸い、死傷者はなかったが、パイロットは懲戒免職になった。
カムイは、「かわいそうだね」と言った。濃霧や落雷は不可抗力なのに、と思ったのだ。
しかし、ウルフはこう言った。
「パイロットはいったん飛び立ったら、どんなことがあっても絶対に操縦を投げ出しちゃいけねえんだ。最終的にどんな結果になったにしろ、そいつが最後までベストを尽くしてたら除隊にはならなかったと思うぜ」

その晩から、お化け屋敷の話は次のように内容が変わった。
悪魔の巨人が両目から雷を、口からは霧を発して飛行機を襲い、機体をつかんで家に叩きつけたんだって…

 エースの本業は、航空宇宙開発局スペシャル・タスク・フォース、通称NUTS(ナッツ)の研究員だ。ヤードでの授業を終えてナッツの分室に戻ると、シミュレーター・ルームが騒がしい。覗いてみると、案の定、シルフィード・マークⅡの周りにナッツのメンバーが集まって、さかんに囃したてている。
「沙京(サキョウ)?」
エースが訊ねると、ナッツのメンバーの一人、セフィリアが微笑みながら頷いた。シミュレーターは盛大に揺れており、中から沙京の悲鳴のような声が聞こえる。
「しょうがないなあ」
エースは揺れ動くシミュレーターに乗り込むと、教官席に座った。コックピット中に赤ランプがついて、とりどりの警報音が鳴り響いている。
「ほら、背中が丸まってるよ。シートの背もたれに背中をつけて、視野を広くとって」
沙京の両肩に手をかけて姿勢を正させ、高度計と速度計を見るように言った。完全に失速しているが、高度はまだ雲の上だ。
「操縦桿(スティック)をそんなに握りしめないで。今は指一本触れているだけでいいよ。もうちょっと高度が下がったら位置エネルギーが速度に変換されるから、コントロールが戻ってきた瞬間を感じ取るんだ」
「それって、どんな感じがするのん?」
「自然にわかるよ」
「あ、今のそう?」
「そうだよ。さあ、これで機体がいうことをきくようになったから、まず速度を十分に回復しよう。スロットル・レバーを引いて」
沙京の小さな手が二本のレバーを引く。赤ん坊のように小作りだと、エースはいつも思う。
「レバーを凝視しでちゃだめだよ。速度計も見て。もう高度を上げても大丈夫かな?」
「ええっと…エース! 山が出てきた」
眼前のスクリーンに山脈が映し出されている。
「落ち着いて、レーダーで距離を確認。何分後に到達する? それまでにあの山より高く上らないと」
「そんなん、とっさに計算できへんー!」
「いいから、とにかく高度を上げて」
失速が恐いのか、沙京の操作はおっかなびっくりだ。
「もっと思い切って上げても大丈夫だよ。そのペースじゃ山にぶつかる。1秒間に何キロ進むと思ってるの」
手を出したいのをこらえて、エースは言った。計器を見ると、真正面の山はもう越えられそうにない。旋回してより低い頂の上を飛ばなければ。
「そんな難しいこと、いきなり言わんといて」
沙京が叫び終わる前に、機は山腹に激突した。ゲームオーバー。
汗だくになってシミュレーターを降りる彼女に、
「沙京、これで死ぬの何回目?」と、クライストがからかうように声をかけた。
ナッツのメンバーは全員パイロットの資格を持っている。新しく加わった沙京だけがずぶの素人だった。
沙京がなぜナッツにスカウトされたのかは、本人も含めて誰にも謎だった。これまで、全く畑違いの分野を歩いてきた人間なのだ。
ナッツにくる前の彼女は、公設法律事務所という、社会的弱者の法律相談を専門に受ける事務所で働いていた。任期は二年で持ち回り。低所得層が対象なので一定の補助金が出るが、自ら希望する者は少なく、彼女も、「補助金貰って楽々経験が積めるって、甘い言葉でハメられた!」と言っていた。
ナッツのヘッドハンティングに心が動いたのも、そこで過酷な現実に直面し続けたせいらしい。
―わたし、自慢じゃないですけど、理数系は全然ダメですよ。
それでも、さすがに何かの間違いかと思ってそう確認した彼女に、
―航空と宇宙に少しでも興味がある人なら大丈夫です。
と、ヘッドハンターは言ったそうだ。
それならば、沙京は子供の頃、宇宙飛行士になりたいと憧れたことがあった。その夢を作文に書いたところ、担任の教師から、
―数学と体育が得意でなければ、宇宙飛行士にはなれない。
と言われ、三日間泣いてあきらめたという。
―別に、そんなことはないんだけどなあ。
その話を聞いた時に、エースは言った。教師の中には、時々自分の勝手な思い込みで生徒の夢の芽をつんでしまう者がいる。エースも、「きみは耳が悪いんだから、パイロットにはなれないよ」と言われたことがあった。
だが、調べてみると、矯正聴力が一定レベルに達していればライセンスは取れるという。エースは大学時代に自家用機の免許を取った。
後に、ナッツがシルフィード・マークⅡの設計を担当した時、このライセンスが、テストパイロットの資格を取る下地になった。主任設計士は彼だったので、万一飛行中に欠陥が露呈した場合、他人を危険にさらすのは耐えられなかった。航空宇宙局にはパイロット・コースが設置されているので、マークⅡ開発のかたわら、自分でテスト飛行ができるようライセンスを取った。
沙京も今、仕事の合間にパイロット・コースを受講している。
「でも、わたしは向いてへんみたい」
まだ吹き出し続けている汗を拭きながら、沙京は言った。
「昨日や今日プロペラ機に触ったところなのに、シルフィードでクロスカントリーなんかできたらおかしいよ」
エースは笑ったが、沙京は口をへの字に曲げたままだ。
「プロペラ機の実技も全然なんだってば」
エースは教官から漏れ聞いた評価を思い出した。
「学科はいつもトップクラスだって聞いたよ」
「学科の成績なんか、実技ができな意味ないやん」
「そんなことはないよ」 エースは言った。
「頭できちんと理解できているなら、あとはそれを身体に伝えるだけだ」
「簡単に言うなあ」 沙京はため息をついた。
分室に戻ったのは、二人が一番最後だった。准リーダーのエドバーグが、
「昼休みは一分前に終わっているぞ」と声を投げる。ふちなし眼鏡の下の瞳は冷徹で、滅多に感情を表さない。
「すみません」と頭を下げて、二人はそれぞれの席に着いた。机の上に、緊急案件の資料が入ったクリアファイルが置いてある。
「軍から、ネプチューン・シティで起きた航空テロの解析を依頼してきた」
エドバーグの言葉に、エースをはじめ、メンバーは皆怪訝な顔をした。彼らは戦闘のプロではない。
「まずは映像を見てほしい。各自モニターをONにしてくれ」
デスクにセットしたモニターのスイッチを入れると、間もなく画面に映像が流れ出した。スクランブル発進した空軍機が撮影した未確認機の機影である。
(あれ…?)
エースはすぐに不審を感じた。未確認機の飛び方が奇妙だ。ロールを打ったり背面飛行をしたり、高度な技術を駆使しているのに、どこかぎこちない。
(どういうことだ? どこか故障でもあるのか?)
カメラを搭載した空軍機が、未確認機に接近した。未確認機は反転してロックオンを逃れる。その瞬間、カメラがコックピットの中を捉えた。エースの指は反射的にパネルを操作して、その画面を静止させていた。
それは異様な映像だった。パイロットの顔の上にもう一つ顔がある。ヘルメットから突き出すズームレンズのような二つの突起物。両側面には水かきのような「耳」。ヘルメットの裾からは、髪の毛のようなコードが何本もパイロットスーツの中へ伸びていた。
(何だ…これは?)
画像を見つめるエースの背に、悪寒に似たものが走った。

(続く)


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4 コメント

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え?? (めめ)
2007-04-23 18:35:24
こんにちは!

テロは宇宙人ですか??
顔がふたつ??
え~~~っ!!
どうなっちゃうんですか??

あ、なんか?ばっかりですいません。
今までと違う展開に、さらにドキドキです!!
返信する
めめさん (アンジー)
2007-04-23 20:48:59
はてさて一体どんなテロリストなのか。
私もここを書きながら急に思いついたんで(笑)
どんな奴か、次回に画像をのせますね。
返信する
あああああ! (kimera25)
2007-04-23 21:48:06
ようやく ようやく
事件で~すね!

さあ!うなるアンジーの腕!
展開は急転直下!
進む!アンジーのペン!
君は次を読まずにいられない!

そうしてアンジー・ザ・ワールドは
今夜も銀河を翔る!
空を来てご覧!
そう!あれがアンジーの☆だよ!

※ 腕がうなるとラリアートか?
  アンジーの☆はシリウスかなあ・・。
  どうも選挙ぼけしている頭!
  ごめんなさい!(キメ)
返信する
kimera25さん (アンジー)
2007-04-23 22:03:12
コメントありがとうございます。
同じ「~ぼけ」でも、「選挙ぼけ」とは高尚ですね。私は休みぼけしか…
別館の選挙情報すごいですね。あれだけまとめるの大変だったんじゃないですか?
私の投票した人は当選してました
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