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銀座のうぐいすから

幸せに暮らす為には、何をどうしたら良い?を追求するのがここの目的です。それも具体的な事実を通じ下世話な言葉を使って表し、

シャルボネ(パリの版画インク店)と、鳩居堂を考える

2025-06-15 21:09:59 | 文化、芸術、書物

 私はね、今入院中で、今、消灯時間が来てしまった。だからね。長い文章を新しく書く事が出来がたいのです。で、以下は、パソコンの整理中に、見つけた2008年の文章です。たぶん、今の読者様に向けて、発表したことはないと思う文章です。どうか、よろしく。

 今日お話しすることの主眼点は、良質なものを丁寧に作っていて、規模を拡大せず、儲けを追及しすぎない・・・・・お店の美しさ・・・・・です。

 私は油絵と版画をやるのですが、美術評論家の方からは版画の方がよいといわれております。特にヘイター方式と言って色を多数使う版画を遣っておりますので、制作は大変ですが、結果として華やかになります。そのために版画インクは、種々持っていて、その組み合わせをノートに詳細につけて、仕事を進行させるのですが、色インクとしては、やはり、パリに本店があるシャルボネのものが一番だと思います。

 そのシャルボネのインクは、日本では神田の文房堂(多分、日本一古い画材店)と、萩原商店(プロの版画家が、電話やファックスで注文をする一種の問屋さん)には、確かにおいてあります。ただ、今現在日本一大きい画材店である、新宿の世界堂においてあるかどうかを、私は知りません。と言うのもほとんどの、版画家は萩原商店で買うので、世界堂がそれをおいても、買いに来るお客がいるかどうか、いてもとても数が少ないから、商売にならないでしょうから。

 世界堂には、アニメの道具、とか、漫画を描く道具は、相当数置いてあります。それを買いたい若い人が大勢いるのでしょう。ワンフロアーが、それに占められているぐらいです。日本のアニメやコミックと言うか、漫画は世界を席捲しているし、それを遣りたいという若い人が多いから、その材料は確実に売れる分野だからです。

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 さて、私はせっかくパリに来ているのだから、シャルボネの本店を訪ねたいと思いました。版画工房のお仲間に住所を聞いて、訪ねてみると、それは、セーヌ河畔にある、瀟洒な一軒家でした。コンクリートのビルではないのです。床はフローリング。北西の二方向にある道路に沿って、フランス式の縦長の窓が大きくとってあり、商品は窓の無い、二つの壁面に、棚を作っておいてあります。その棚の裏側の壁ですが、ウォールナットです。

 その前に、黒いふたのある、白い缶がずらっと、四段ぐらい並べられています。その缶は大体鮭缶程度の大きさですが、そこに茶色の飾りで縁取りされたハート型の窓があり、その窓にインクの色が印刷をされています。棚の幅は狭いです。それらは、大体一つが五千円ぐらいするのですが、もう少し安いものとしてのチューブがあります。

 また、他のスペースにはきれいな木製の引き出しがたくさんあって、その中にはシャルボネ製ではないが、版画家がよく使う刃物類が丁寧に区分けされて入っています。全体がものすごく静かで美しいです。日本で、私が最も頭が痛くなるお店が、ドンキホーテですが(それでも、夜遅くサインペンなどを買いたくなると、よく入るのですが)それの究極の対岸にあるお店だといってよいでしょう。

 売り子としては、中年の誇り高いマダムがひとりです。私は何代も続いた経営者一族だと見ています。雇われた人みたいな感じではない。それで済んでいるのはお客が少ないからです。私が想像するに、日本と同じで、プロはここでは買わないのです。きっと、もう少し値引きをしてくれる問屋風のところがあって、そこで、皆さん、買うのでしょう。

 なら、なぜ、このお店がここにあるかといえば、一種のパイロット店として、世界に冠たる品質を誇示するために置かれているお店だと思うのです。セーヌの河岸と言っても繁華街ではなく、画廊街のはずれで、窓から見えるのは、マロニエの葉ばかり。

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 日本でしいて似たようなお店を探せば、鳩居堂でしょうか? 自社ブランドとしての、便箋や葉書が有名です。それを使う事が中年、日本マダムの品格を現す商品です。銀座の本店は税務署が発表する、地価の日本一高いところして、戦後数十年、きらめいております。そして、本店にしろ、他の街にある支店にしろ、雇われている若いお嬢さん方が制服を着て、一杯居ます。そして、売上高もシャルボネの比ではないでしょう。

 でも、なんともいえず、静かなあのシャルボネ本店の雰囲気を、私は生涯で、出会った素敵な場所のひとつとして、宝物のように、大切にしています。

 会社を経営することは、資本主義の常として拡大を目指すでしょう。シャルボネも裏ではそうかもしれない。だけど、あの本店の、清潔にして慎ましやかで、そして、美しい雰囲気を見ると、それが斜陽に繋がってしまうかもしれないけれど、なんとはない・頑・固・な・節・度・を感じて、『た・よ・り・に・な・る・な・あ』と思うんですよ。

 最後になりました。この版画は日本で作った初期のものです。でも、インクはシャルボネの、カーマインと言う赤です。透明で美しいと思っております。

 ところで、その葉書が手元にないです。で、ただ、文字だけになっていますがお許しください。

     2008年10月20日            川崎 千恵子

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