AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

火の鳥 音楽・自由編

2019年11月17日 | まったり邦楽
もう一年過ぎたというのに、まだまだ進行中の手塚治虫生誕90周年企画。

今回は、話題になっているのか?売れているのか?誰が買うのか?
大いに疑問を感じるこんな大胆な一品が出ちゃいました。


火の鳥コンピレーションアルバム『NEW GENE,Inspirilated from Phoenix』。




まぁ手塚生誕90周年つっても、だいたいがアトム、ジャングル大帝のレオ、ブラック・ジャック、リボンの騎士のサファイア・・・などの割と一般的に知られてる無難な手塚キャラしかフィーチャーされてない画の企画モノが多い中、手塚治虫のライフワークでもあった壮大なテーマとスケールで描かれた超大作『火の鳥』のみにスポットを当てたこのようなコンセプトのコンピレーションアルバムが企画されたのは、手塚ファンとしては大変心騒がされるものだった。
なんつっても各編に登場する個性的で雑多な登場人物、そしてサイケデリックな風景画がコラージュされてるジャケットが秀逸。
もうこれはジャケ買いするしかないでしょ!


『火の鳥』とロックとの相性の良さは、2017年のフジロックコラボTシャツですでに立証済みである。



私がこのコンピCDを、わざわざ大阪のタワーレコードNU茶屋町店まで買いに行ったのは、店舗限定特典の7ページにもおよぶ超小作『火の鳥 NEW GENE 誕生編』(つのがい画)が欲しかったからにほかならない。




参加アーティストは以下の錚々たる面子。



まぁ名前も知らなかったアーティストが約半分もいて、正直どれも私の趣味とはちょっとズレたアーティストばかりで、音的にはそれほど期待はしてなかった。
ギリベンジーくらいだったかな。

さて、アニメのサントラとかではないマンガ作品のイメージアルバムとしては、人間椅子が手掛けた『無限の住人』、そして手塚るみ子さんが20年前発起人として企画したコンピアルバム『ATOM KIDS』とかがある(10年くらい前に手塚プロダクションがAべックスと癒着した黒歴史的コンピ作品に関してはなかったことにさせていただく)。

    


こういったものは、その作品に寄せた歌詞内容と音で攻めるのか、自分なりの解釈であくまで自流の言葉の表現でいくのか、二通りあるかと思う。
前者でいくと「マンガそのままなぞっとるだけやんけ!」みたいなアーティストとしてはちょっと恥ずかしい仕上がりになる危険性もあるし、後者の感覚が過ぎると「この曲のどこが火の鳥やねん!」みたいな手塚ファンから吊るし上げにされる危険性がある。
『火の鳥』なんていう壮大で宇宙的なテーマのマンガを題材にするとなると、それはもう相当難しい作業であるかと。まぁこんなサイケでプログレッシヴなマンガを音像化できるのは、おそらくピンク・フロイドか、日本でならコーネリアスくらいのものだろう。




アーティストさん達も、最初依頼されたときはこの仏師茜丸のように苦悩したことかと思う。



なので、今回参加の各アーティストのほとんどがそれほど気負いせず、けっこう自分流にサラっと作った感じがする。企画側もそれほどプレッシャーをかけず、自分なりの『火の鳥』を自由な発想で作ってくださいって感じで依頼したっぽい。
だから、「あ、これめっさ火の鳥!」って感じれた曲はせいせい3曲くらい。あとは音的にも歌詞的にも(まぁ私歌詞の読解力あまりないからね)コスモゾーンを感じ取ることはできなかった。
一応『火の鳥』あるいは手塚マンガをこよなくリスペクトするアーティストばかりを選出したとは謳っているが、これもいささか疑わしい。

ベンジーなんて45年ぶりに『火の鳥』読み返したって言ってる時点で手塚マンガにたいして思い入れがないんだろうなってことが窺い知れる。
まぁこれはるみ子さんのゴリ押しだろう。

この対談を読んでもそんな感じ。
『浅井健一 火の鳥とロックを語る』

うん、今回収録の「HONESTY GOBLIN」て曲も全然コスモゾーンなんて感じられない。
そもそも『ゴブリン公爵』ていう手塚作品があるってことも知らなかったんじゃねべが?
ただ、普通にカッコいい。いつものベンジーのカッコいい楽曲だ。やっぱギターの音色が秀逸。
まぁ作りかけの曲があって「この歌詞ちょっと火の鳥に通じるんじゃね?」ってなノリで提供したんだと思う。


過去から未来、繰り返される歴史、輪廻転生、一即多/多即一、ニューエイジなど、火の鳥のテーマみたいなのをほんのりと感じさすものとしては、佐藤タイジ氏の「賢者のダンスフロア」、ドレスコーズの「循環進行/逆循環進行」の歌詞なんかがコスモゾーンにわりと近づけた楽曲であったかと。
ドレスコーズのは、なんか子供たち歌わせた曲で、坂本慎太郎っぽくてめっさ好み。





逆に火の鳥にめちゃめちゃ寄せてくれてる楽曲も数曲ある。

Shing02 & Sauce81の「藝術編 (The Artist) 」なんかがそうで、これはなかなかの変わり種。
いわゆる手塚治虫を主人公とした新たな火の鳥の物語を綴ったもので、手塚の苦悩と驚異の創作人生を前半で物語っており、後半は火の鳥がその気負いから手塚を解き放ち導くという、感動的な邂逅ストーリーをラップで捲し立てるという、メチャクチャ作りこんでくれたのがわかる楽曲。バックサウンドも秀逸。
まぁただ、後半能書きが過ぎるのがちょっと聞いてて恥ずかしいかな。


あと、七尾旅人、森山直太郎などの、自分の趣味的にまず聴くことはないだろうアーティストの楽曲なんかもかなり原作に寄せていて、なかなか好感が持てた。

最近犬のために音楽をやっているという七尾旅人氏の曲なんて、「火の鳥のうた」というストレートなものですからね。
何編のどの場面とかじゃなく、全体的に火の鳥のことを自分なりの言葉でほっこりと歌ったもので、歌詞うんぬんより歌い方や曲調に場面の風景や郷愁、生き物の儚さみたいなものを感じ取れて、「ああ、この人火の鳥好きなんだな」ってのがなんとなくわかる。
まぁ犬が好きなら『太陽編』のテーマで歌ってくれてもよかったのにとは思ったけど。




どちらかというと苦手な森山直太郎氏の楽曲も案外よかった。
つーか曲が「速魚」っていう、もう『鳳凰編』好きとしてはニヤっとせずにはいられないタイトルやし。
これがもう恥ずかしいくらいにそのまま『鳳凰編』をなぞったような曲で、これはいささか「寄せすぎやろ!」と思ったが、森山氏が我王の気持ちになって、恋人を偲んでもう触れることのできない速魚に捧げた歌っていう設定の曲であることを理解した瞬間、もう涙なしでは聴けない感涙の鎮魂歌となっている。
森山氏も多分『鳳凰編』が一番好きなんやと思う。 いや、いい曲だ。




本作を聴いてひとつ言えるのは、どれも楽曲のクオリティが高いこと。
なんせ普段自分が聴かんようなアーティストばっかやからなぁ、逆に新鮮で楽しめた。
この1週間車でずっと聴いてる。


私の場合、『火の鳥』が好きな故、知らなかったアーティストの楽曲に触れることができたが、この作品の参加アーティストのファンの方は、逆に手塚治虫の超傑作『火の鳥』を読むいいキッカケになればなと。

『火の鳥』は、日本史の勉強にもなるよ!

『NEW GENE, inspired from Phoenix 』Lyric Movie Trailer

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 兄ちゃんチケットあまってへ... | トップ | ロボット編(シカシダンナサマ) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

まったり邦楽」カテゴリの最新記事