AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

未知なるカダスをテクノに求めて

2013年10月14日 | まったり邦楽
もはや、私にとって5年前みたいにレンタルでは済まされない存在となってしまったPerfumeの最新作『LEVEL3』。
今回の初回限定盤は、3色のケースがあってAmazonから届けられたのは、見事第3希望の蛍光ピンクケースで残念な気分に陥ったが、そんな気分など、本作から叩きだされるドープなビートにより一気に払拭されてしまった。

中田ヤスタカ氏はやはりキッチリ結果を出してくれる。
ますます研ぎ澄まされ洗練されたサウンドミックスの妙。前作『JPN』では、シングル曲の詰め合わせ感が否めなく、ドリーム・シアターのアルバムのごとく食傷感を禁じえなかったのに対し、今回は既出のシングル曲にも大胆なミックスが施され、攻めるところでは攻め、退くところでは退くという、絶妙な駆け引きが展開されている。絶対浮くであろうと懸念されていたドラえもんの主題歌“未来のミュージアム ”ですら、リフレッシュ効果的にうまく溶け込んでおり(これは配置の妙だな)、一枚を通して見事なダンスアルバムとして完結している。

まず、1曲目の“Enter the Sphere”で、全国のPerfumeファンは歓喜したことだろう。 昨年のアジアツアーのオープニングで限定使用されていた“Global Site Project”のテーマ曲を、歌入りでグレードアップさせて冒頭に持ってくるという、このニクい心意気。中間のまさかのELP展開に、プログレファンの方はドキっとさせられたのではないだろうか。

“Perfume Global Site Project”
Perfumeがアジアツアーで実際に踊っていた振り付けをグラフィック化して、その骨組データをグローバルサイトで配布。各クリエータがそれに肉付けを施して遊ぶという、画期的にして冒涜的なプロジェクト。


そして間髪いれずに挙げ挙げのアタック音で始まる“Spring of Life (Album-mix)” 。正直このシングルヴァージョンはたいして好きではなかったのだが、中間のキーボードソロに入る前のフレーズ展開でテンション上がってたんだけど、アルバムミックスではそのフレーズがいきなり冒頭で展開した時のゾクゾク感ときたらハンパなかった!
で、次の“Magic of Love”のシングルを聴いた時も、「おい、なんやまた“Spring of Life”とよー似た曲ほりこんできたなぁ。そろそろヤスタカ氏もネタ尽きたか」と、寂しい思いにかられていたが、メランコリックなミックスを加えるとこうも違って聴こえるものだろうか?と、またしてもヤスタカマジックにしてやられたという感じ。
イエスの“ロンリー・ハート”のような軽やかポップなテンポと、3人のハーモニーが心地よい“Clockwork”などは、J-POPと呼ぶには洗練されすぎている名ナンバー。いまだにアイドルの曲などと偏見持っているネームバリューをやたら気にする連中に「この曲トレヴァー・ホーンプロデュースやぞ」っていったらどんな反応を示すだろうか。もっと純粋に音を楽しむ心を持てばよいものを・・・・
“1mm ”のイントロにしても、クリムゾンの“Fallen Angel”を彷彿とさせる神秘的なギター・シンセのような音色が聴く者をハッとさせる。
“Party Maker ”は、露骨にライブ構成を想定したダンスフロアナンバーであるが、12月のドームではどんなイリュージョンが待ち受けているのであろうかと、期待を膨らませずにはいられない。だから、京セラドームの抽選はずれたら私はどうなってしまうかわからない。




アルバムのラストを飾るのは、ジブリアニメのようなメルヘンチックで幻想的なヤスタカサウンドが美しい“Dream Land”。
私はこのタイトルとサウンドを聴いて、ハっとさせられたのであった。
この曲は・・・・もしかして、クトゥルー?
そういえばヤスタカ氏は確かジブリ音楽を手掛けた経歴も持っていたと思う。『となりのトトロ』や『崖の上のポニョ』などの宮崎駿諸作品は、明らかにクトゥルー神話がベースとなっていると、多くの暗黒神話論者の間でほのめかされており、そのことは本ブログでも書いたことがある(でもアホと思われそうなので読まないでね)。
で、駿引退宣言と同時期にヤスタカ氏がこの曲を世に出したことは、何か意味があるのではないか?

それにしても、この胸を締めつけるような切ない3人のハーモニーは、まるで夢の国へといざなう大地の神々からの託宣のような響きがあり、ランドルフ・カーターのように、凍てつく荒野の未知なるカダスを夢に求めて旅立ってしまいたい気分になる。
浅い眠りの中で巨大な階段を70段下り、そこからさらに700段の階段を下っていくと「深き眠りの門」に到達する。その門を越えた先に広がっているのが、「Dream Land(幻夢郷)」である。
そこには、すりガラスをひっかくような声で啼き、霜と硝石にまみれた翼とたてがみの生えた馬のような頭部を持つ、羽毛ではなく鱗に覆われたシャンタク鳥が、インクアノクの採掘場で待ちうけており、ダイラス=リーンでは夢の国の月から黒いガレー船に乗ってやってくる、瘤のある頭にターバンを巻き付けた商人どもが跋扈しており、そなたはこの夢の国の果ての凍てつく荒野にある未知なるカダスの頂の縞瑪瑙の城に棲まう大地の神々の前でツーステップを踏んで、彼らの恩恵を授かるであろう。

ヘイ!カモーン!アア=シャンタ、ナイグ!旅立つがよい!


なお、夢の国(Dream Land)のことに関しては、『ラヴクラフト全集 6』(創元推理文庫)に収録されている長編「未知なるカダスを夢に求めて」にその全貌がイヤというほど鮮明に描写されておりますので、同書に収録されているダンセイニ風諸作品「白い帆船」「ウルタールの猫」「セレファイス」「蕃神」「銀の鍵」「銀の鍵の門を越えて」なども合わせて読まれることをオススメしておきます。

ランドルフ・カーター
        


今日の1曲:『ふりかえるといるよ』/ Perfume
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