酒と畑に戯れるオヤジな私

酒を飲み、土を耕し、人と語り、日々に感動しながら楽しく生きるブログ

芙蓉の君

2005年08月01日 | コミュニケーション
猫のひたいほどの庭に 芙蓉の花が咲いた

花を見て思い出したことがある

T区役所のA係長の奥さん なぜか 芙蓉の花を連想させる方だ

ある日 Aさんは久しぶりに定刻に 家に帰った

黙って玄関を開けると 中から奥さんが それこそ泳ぐように出迎えたという

しかも まるポチャの体系をくねらせ 顔には満面の笑みを浮かばせている

”あなた おかえりなさい!”の声と Aさんの”ドキッ!”が交差した

奥さんは 頭をさげている

なんなんだ この出迎えは?

新婚時代ならいざ知らず ここ数年 妻に出迎えられたことなど皆無だった

”あれがバレタか いやこれか” たいした悪いこともしていないAさん

心は千路に乱れたという

しかし そこは永年培ってきた亭主の威厳 貫禄だ

内心の動揺はおくびにも見せず 「うむ!」座敷に入っていった


着替えを済ませ ダイニングキッチンに移って また驚いた

ニコニコ顔の 妻の前 テーブルには冷え冷えのビールが置いてあるではないか

それも 2本! いつにないこの豪華さ 枝豆にヤッコ 塩辛もまぶしい

さらに不安が増幅するAさんに「あなたどうぞ」ビールを注いでくれるではないか

頭を下げながらだ

ほんとに なにがおこったんだ 酒好きなAさん ビールどころでなかった


数分が経過した

奥さんの顔に 変化が生じた 丸顔の頬がふくらんできた

”ソーラ 来たぞ なんだ なんだ こっちにも言い分はあるぞ!”

「あなたが こんなに冷たい人とは 思わなかった」

ぶすっとつぶやいた奥さん

ん?様子が変だ

不審がるAさんに「これよ これ」言いながら 頭を指で指し示す奥さんだった

よくよく見ると 確かにいつもより髪が整っている


この日 子どもの保護者会があり 奥さんは美容院に行った

いつ帰るか分からない亭主のAさんだが ひょっとすると早い帰宅かもしれない

誉めてもらおう ビールなども 揃えておいた

勘があたった だんな様が早く帰った

玄関まで迎えにいった 目立つように わざわざ頭をさげた

玄関作戦は失敗した まるで気づいてくれない

作戦2!ビールをつぐときも 「美容院セット」を前面に押し出した

それも 見事に玉砕した


「そうか 悪かったね ふ~ん いいね」 奥さんの頬がゆるんだ

このセリフで終っていれば この愛すべき夫婦劇は ハッピーエンドだったろう

Aさん最後の 言わずもがなの名セリフが出た

「ところで いくらした?」


芙蓉の花を見ると Aさん夫妻を思い出す

定年生活 芙蓉の君と きっと仲良くやってることでしょう

身近な人 妻にも たまには誉め言葉を・・むつかしいことではあるけれど です