「とら食堂」から戻ってきて、美味しいコーヒーをいただいた後、2階にあるリスニングルームに一行は移動した。
そのリスニングルームには、数年ぶりに対面するアヴァンギャルド・デュオの姿があった。
アバンギャルド・デュオは、中高音域は二つのホーンが担当し、低音域はアクティブウーファーという構成の3ウェイスピーカーである。
巨大なホーンが何といっても印象的で、管楽器そのものを思わせる姿形をしている。
超高能率で、ホーンならではの音の開放感や浸透力が魅力のスピ-カーである。
班目さんのメインジャンルはジャズである。アバンギャルド・デュオが最も得意とするのもきっとジャズであろう。
ホーンのカラーは幾つかの色から選択できたようで、班目さんのデュオは、ディープブルーである。シックで精悍な色合いである。
駆動するアンプはMark LevinsonのNo.20.5が4台。こちらも硬派な面持ちで迫力満点である。天板を触ってみるとかなり熱い。
プリアンプはOCTAVE HP-500。ドイツ製の高性能で武骨なプリアンプである。
送り出しは、CDプレーヤーがPlayback Designsの一体型。
レコードプレーヤーは、THORENSとPIONEERの2台。カートリッジはTHORENSにはシュアのMM型。PIONEERには光カートリッジが装着されていた。
メインジャンルであるジャズの楽曲を中心に、CDやレコードで多くの曲を次々に聴かせていただいた。
ゲストの5名は部屋に置かれたイージーチェアやソファに分散して座っているのであるが、聴く位置が随分と違う。曲が変わるたびに座る場所をローテーションしていって、聴く位置を変えた。
その座る位置によって当然音の聴こえも変わってくる。センター位置に座ると、シャープな音のがズバッと直球で投げこまれる感じである。剛腕のデュオから投げ込まれる球質は重く速い。受け取るミットに瞬間的にかかる衝撃は体にずんとくる感じであった。
意外と良かったのは右側後方の隅の位置であった。長方形の部屋の右後方の角に近い位置に当たるので、壁からの反響が豊かである。「この位置が一番好きかもしれない・・・」と思った私は「壁際族」なのであろうか・・・
OFF会の中では面白い「実験」も二つ行われた。
一つは、美空ひばりの名曲「川の流れのように」のEP盤の再発盤とオリジナル盤の聴き比べであった。「ブラインドで聴いて当てましょう・・・」とのことであったので、「外すと恥ずかしいな・・・」と思いながら身構えたが、聴いてみると、「一目瞭然」ではなく「一聴瞭然」であった。再発盤は音が籠りがちであったが、オリジナル盤は伸びやかで深い味わいがあった。これは皆すぐに分かったようで、ほっとした雰囲気となった。
二つ目は、ディオ以外にも幾つもの小口径のツイーターや小型のコンデンサーユニットがデュオの周囲に追加されていたのであるが、デュオだけの場合と、それらの付加的なユニットがある場合の比較試聴であった。
見た目的には付加的なユニットがない方がすっきりとするので「無い方が良いのでは・・・」と内心思っていたのであるが、聴いてみると「ある方が良い・・・」に変わった。響きが豊かになり音の密度感が上がる。
OFF会の終盤では、ゲストが持ち込んだCDも聴かせてもらった。その中の1枚、マンハッタン・ジャズ・クインテットの「枯葉」からタイトル曲をこの日最大と思われるボリュームで聴かせていただいたのであるが、トランペットの音がまさに「炸裂」していて、肝を冷やした。「これはこのスピーカーでないと出ない音だ・・・この炸裂感は、貴重な経験である・・・」と思えた。
この曲がかかった時、ちょうどリスニング位置は右後方の奥であった。そこで目をつぶりながら、ジャズの実際の演奏をライブハウスで聴いているような感覚にしばし浸った。
「とら食堂」と班目邸のアバンギャルド・デュオを堪能した「白河OFF会」は、終わった。ゲスト5名はお腹も満たされ、心も満たされて帰路につくこととなった。