AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

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2024年07月31日 | ノンジャンル

 この店にあるオーディオ装置が変わっている。「昭和」の時代の日本製の古いオーディオ機器が使われているのである。

 スピーカーはPIONEER CS-E700。薄い色合いの茶色のサランネットに覆われていてユニットの様子はわからないが、3ウェイスピーカーである。エンクロージャーは密閉式で、キャビネットは天然木を活かしたウォールナットのオイル仕上げである。その色合いもあり、外観がとても落ち着いている。特注と思われる木製スタンドによって、床から持ち上げられている。

 レコードプレーヤとプリメインアンプは、ともにYAMAHAである。レコードプレーヤーはYP-400、プリメインアンプはA7である。YAMAHAのオーディオ機器はとても美しいデザインをしている。デザインに対する意識の高さがしっかりと感じられる。決して高級な機器ではないが、その外観の美しさはとても価値のあるものであろう。

 YAMAHA A7は1981年の発売である。発売当時の定価は89,000円であった。その当時としてはプリメインアンプの中級機というポジションであったようである。

 YAMAHAらしい繊細さに溢れたデザインは今見ても古臭さを感じさせないバランスの良さを感じる。

 店に入った時には、ちょうどベームの指揮によるブラームスの交響曲第1番が流れていた。

 第1楽章は、分厚い響きの中で音楽が展開されていく。

 PIONEER CS-E700は30cmコーン型ウーファーを搭載している。そのウーファーの性能が良いからであろうか、分厚い響きを上手く表現している。

 中域には12cmコーン型ミッドレンジを搭載している。高域にはマルチセラータイプのホーン型トゥイーターを採用しいる。かなり気合の入ったユニット構成である。

 ドイツ音楽の本流を感じさせる盤石さで大河の流れのように音楽は進んでいき、第1楽章は幕を閉じた。

 しばしの無音の間合いの後、第2楽章が始まった。第2楽章は静かに流れ出した。ゆっくりと揺蕩うように始まり、静かで穏やかな川の流れを思わせるように展開する。その川面は陽光に照らされているようにきらきらと光っているかのようである。

 この店にあるオーディオ機器は特別高級なものではない。しかし、しっかりとしたメンテナンスが長きにわたって行われているのであろう。聴きごたえのある音と音楽をレコードから上手く引き出している。

 ベームの演奏は、極端にテンポが動いたり表現の強調などはない。自然体で音楽が朗々と流れていく様は聴いていて安心感がある。

 繊細で軽やかですらある第2楽章が終わって、A面は終了した。

 出されたアイスコーヒも飲み終わったので、私は席を立って会計を済ませた。

 ほんのひと時の憩いの時間を過ごした後は、「無限歌」の扉を開けて、灼熱の余熱がまだまだ残っている夕刻の街中に再び出ていった。

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