棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

誘惑の絵

2008-10-10 11:15:27 | エッセイ・随筆
イワシ雲がちぎれ、ぼつんぽつんと飛んで行き、それも光の中に溶けていく。
朝から素敵な私の空です。
私のブログを読んでくれる方々、ありがとうございます。
もし、昼間に目を通しておられましたら、素敵な空を見上げてください。
夜でしたら、オッ月様を見てください。
大きく息を吸って、「うれしいなー」と思ってください。
それでは、
誘惑の絵などというと、またまた春画の続きかといわれてしまいますが、同じ誘惑でもズット深刻で、哲学的なテーマの作品のことなのです。
画家ボッシュやブリューゲルの作品は、皆さんがなんとなく見聞きしていると思いますが、なんとも奇怪な画面ともいえます。
作品の意味は日本人にはおよそわからない。
それも当然で、ヨーロッパにおけるタブーごとや民話・寓話などがキリスト教、倫理でこねられている。
当のヨーロッパのキリスト教徒だって、作者の作意はわかっていないといいます。

美術館でボッシュやブリューゲルの本物を観た時は、正直なところ予備知識はすっ飛んでしまった。
細かな描写に、かなりの大サイズの作品とばかり思っていたが、予想よりも小さな画面に、ビッシリト描かれた様にびっくりしてしまった。
なによりも、写実力の確かさと、想像力はすごさを感じた。
ブロック的な画面構成は、物語の意味は図録解説に頼るしかなかったが、全体からのイメージは必ずしも強いものではなかった。
では、なにをテーマにしているかというと「聖アントニーの誘惑」という、苦行事に起きる悪魔の誘惑なのです。

仏教では、ブッタが6年間の苦行中に、様々な悪魔の誘惑に悩まされた末に、克服し降魔した。
仏教美術では数々の名品が生まれてきました。
そうです。キリスト教ではイエスが同じような試練があり、そのテーマの作品もあるのですが、なぜかあまり人気がありません。

聖アントニーは紀元251から356年頃の人で、修道院を創立した元祖らしいのです。
彼の苦行の方がなぜか有名になり、多くの芸術家が、想像の天使を羽ばたかせ、無数の名画を描き出してきたのです。
中でも特異なのが、ボッシュやブリューゲルの作品なのです。

キリストの苦行の作品があまり世にでなくなったのは、神の子を冒涜するという思いもあったのでしょうか。
そこへいくと、仏教は本当に人間本来を追求してゆく宗教かと思います。
   続く

ryusun

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