海外からやってきたヘッジファンドの運用者に“元気?”と呼び掛けると、返ってくるのは“サバイバル!”という言葉だ。
ここ1年のヘッジファンド業界はパフォーマンスよりも、資金の流失対策に悩まされた。
流失額につてはさまざまな数字が出てきている。2兆ドルにふくれ上がった運用総額が半減したとみる調査会社もあるし、20%減という数字もある。
また運用成績についても-18%とか-25%とさまざまである。
ヘッジファンドは調査会社に報告するところと、まったく応じないところがある。それだけに業界の数字については正確なデータを期待することは無理な話である。
ただ資産の減少率は史上最高であることは確かだ。
ここ2~3年の間にヘッジファンド投資を始めた年金、個人の限界的な資金が流失している。
今回の特色はこれまで業界でも定評のあった大手ファンドのなかに、手持ち資産の流動化が困難になり、解約を制限するところが散見されることだ。
流動性の低い資産を売却すれば、資産の時価評価が大きく下がる。
長年、投資してきた投資家には運用成果の不振以上にショックであった。
ヘッジファンド分析で定評のあるプライベイト・バンクは「解約に備えて資金を用意したかどうかが運用者を評価する基準のひとつ」としている。
こんな時期こそ、これまで新規資金の流入をストップしていたファンドの「買いチャンス」と思うが、引き合っても、すぐれたファンドは相変わらず新規資金は受け付けない。評価が簡単になってきた。
堂々とサバイバルしたファンドと、解約資金の手当てに走るところの格差が大きく開く。市場原理が働き始めた。