米連銀が音頭とりをして世界的な金融のシステミック・リスクの歯止め政策を発動した。
その副作用が、こんなに短時間に出現するとは思わなかった。ドル安である。
今回の流動性の供給で世界中にドルがバラまかれる。マネーサプライは急増するだろう。ウォール街では「資金は市場にいくらでもある。問題は投資家のセンチメントを改善すること」と、今回の政策をいったんは評価した。われわれもNY株の反騰で東京市場にも好影響をもたらすとみた。
しかしヘッジファンドをはじめ為替の投機筋はドルの過剰流動性のほうに目を向けた。これまでユーロ投機していた資金が、今度は円に向かい始めた。
1995年の再来である。
円相場は12年余ぶりの高値になった。1995年初めも円相場は瞬間的には100円割れがあるとみていたが、ヘッジファンドのなかには早くから80円台があると予想した向きがあった。
本日はヨルダンの政府の要人が「ドル保有を減らす」と公言した。
またカタールも「近く湾岸諸国は会合を開いて通貨の切り上げを行う」というニュースが伝えられた。
中国もドルに偏っているドル保有を円などに移すという観測が広がった。
システミック・リスクがドル不安のほうに向かってきた。
1995年は日米独が共同歩調をとりドル安に歯止めをかけた。ヘッジファンドの脳裏には当時の成功体験がある。サブプライム問題から、市場の焦点はドル安に移ってきた
今回の流動性供給策を出した欧米の中央銀行は、もちろんドル安のリスクを読んでいるはずである。