先週の日経新聞に「米ヘッジファンド巨額の損失」という記事があった。ヘッジファンド投資に経験の浅い日本の投資家には少なからず懸念の材料になった。
それに「またか!」という感じをうけた人もおられたと思う。1998年のLTCM破綻が起こったのが9月であったからだ。当時はロシア危機が発生し大物ジョージ・ソロスやジュリアン・ロバートンの第一線からの退場をもたらすきっかけのひとつになった。
今回はアマランスという商品相場に力をいれるヘッジファンドが天然ガスへの投機で失敗し50億ドルの損失を出した。結論を先に言えば現在のヘッジファンドの世界では例外的な事件である。
1998年のLTCM破綻をきっかけにしてヘッジファンドの設立は雨後の筍のように成長しいまや世界での規模は1兆7000億ドルにまでふくれあがった。新しい運用者たちの、なによりもの問題意識は「リスク・コントロール」にある。
われわれも国際商品市況関連のヘッジファンドに投資しているが2003年の設立以来、1年もマイナスはない。ことしも8月末で+10.16%である。先行きが不透明なだけに、8月末のポートフォイオは株式はロング38.4%、ショート-5.8%。先物はロング40.6%、ショート-30.3%。両者のロングとショートを合計し差し引けば全体のエキスポジャーは42.9%と低姿勢だ。
国際商品市況という株式市場よりもはるかにボラテリティーの高い世界で運用するだけにリスクを意識するのを第1にしている。
現在のヘッジファンドには、この種の運用哲学が主流になっている。日経新聞が報じた記事はヘッジファンドの世界での例外的なケースだけに、その影響を考えることはない。