Y男の日誌

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『あの戦争から遠く離れて』読了

2012-10-14 06:41:00 | 読書



『あの戦争から遠く離れて』を読み終えた。
著者は、中国留学の間にかつて父親が暮らした牡丹江に親戚(全く血の繋がりは無いのだが)を訪ねて大歓迎を受ける。父親の親友からも歓待される。その後も親戚や父親の親友達との良好な関係は続いていく。
一方、日本人として、残虐な日本人像、歴史を知らない日本人像を植え付けられた中国人達と相対する事態に何度も直面し、中国人達の二面性に戸惑う。著者はその後満軍の軍人だった父の父(祖父)がどのように生きたのか、満州でどのような任務に就いていたのかを調べていく。

留学から帰国後、日本に帰国した中国残留孤児たちの生活実態を知り、その悲惨さを見聞きして国の冷たい態度に憤りを感じる。中国残留孤児の調査・帰国は1980年代から本格化し、帰国した孤児達は40~50代になっていた。彼らがその時点から日本語を習得して日本社会に入り、就職して日本人として充実した人生を送っていくのは非常に困難だった。その過程での国の支援は心もとないもので、彼らを生活保護受給へと向かわせる事になる。彼らは団結して日本政府を相手取り手厚い支援を求めて裁判を行い、その主張が少し認められるようになる。

中国残留孤児の多くは中国で生活している間に中国人と結婚して子供をもうけている。彼らは日本に帰国しても家庭では中国語で会話している。中国にいる間は日本鬼子(リーベンクイズ)という蔑称を投げつけられ、日本に帰国しても日本語が出来ずに中国語を話すので中国人と言われ、アイデンティティの危機にも陥っている人も多い。

著者の父は何百通もの手紙を日本赤十字や厚生省などに出して何年もかかって日本の両親にたどり着いて、日中国交正常化前の1970年に帰国している。自分の運命を自力で切り開いてきた人なのだ。結婚は日本に帰国してから日本人女性としている。だから著者は中国残留孤児二世といっても、他の残留孤児の子女とは全く異なる特殊なケースなのである。



以前読んだ百田尚樹の『永遠のゼロ』は小説だったが、同じ様に子孫が先祖(祖父や父)がどのように生きたのかを調べるという物語だった。まっとうに真剣に生きないといけないなあと思う。子孫が出来るかどうかという問題はさておき、子孫に自分の事を調べられるかもしれない。

学校で現代史って全くやった記憶が無いが、満州、朝鮮半島、台湾などの植民地経営の実態や戦中戦後史、中国の現代史(共産党がいかにして政権を握り、どのような政治を行ってきたか、文化大革命、大躍進とは)、日中関係史を学ぶ必要がある。中国は歴史をねつ造しているだろうが、歴史を知らなければ具体的に反論できない。

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