ノウゴウイチゴ(能郷苺))
科名:バラ科 オランダイチゴ属
学名:Fragaria iinumae
岐阜県の能郷白山で発見されたことからこの名があり、登山者にはなじみ深いもので、甘い果汁はのどに染みわたる。
栽培種の食用イチゴは、南米と北米原産の2種の野生イチゴが交雑して生まれた8倍体種(※)であるが、日本に自生するイチゴはいずれも2倍体種で、食用のイチゴにくらべるとずっと小振りである。
このうちノウゴウイチゴは主に本州の日本海側と北海道に分布し、亜高山帯の登山道の土がくずれたようなところでよく見られる。
栽培種のイチゴ(オランダイチゴ)の白い花に似ているが、ほとんどのイチゴの花は花弁が5枚であるのに対して、この花は花弁が7~8枚と多く、見分けのポイントとなっている。
北海道、本州の北部・日本海側に分布し、低山~亜高山の湿った草地や林縁に生える多年草で高さは10cmほど。太い根茎を持ち、長いつるを伸ばして一面に広がる。葉は3小葉からなる複葉で葉は緑白色、粗い鋸歯がある。
直径2cmほどの純白の花を咲かせ、8~9月に長さ1cmほどの真っ赤な果実を実らせる。実は円錐形で小振りだが、香り・甘さとも最高で、野生のイチゴとしてはシロバナノヘビイチゴとともに栽培種に劣らぬ美果である。
※8倍体
基本的な数の染色体すなわちゲノムを複数組もつ細胞または個体のこと。生物の細胞はふつう母親と父親に由来する2組のゲノムをもつので2倍体であるが、一部の生物では2組以上のゲノムをもつことがあり、ゲノムの組数に応じて2倍体、3倍体、4倍体、8倍体などとよばれる。
ほとんどの動物は2倍体であるが、少数の動物およびかなりの植物で2組以上のゲノムをもつ倍数体種が知られている。
動物では、ホウネンエビ類の1種(4倍体、8倍体)、ヤブキリ類の1種(4倍体)、メキシコサンショウウオ類の数種(3倍体、4倍体、5倍体)、フナ(3倍体、4倍体)、コンゴウインコ類の1種(3倍体)などである。ただしほとんどは雌個体だけが単為生殖によって繁殖している例外的な存在である。
これに対して、植物の倍数体はごくありふれた現象で、植物の進化にとって重要な役割をはたしている。被子植物の半数近くは倍数体であるといわれており、ひとつの種または近縁種間に染色体数の倍数系列が多くみられる。
倍数体は、通常の2倍体よりも全体の大きさや個々の器官が大きくなりやすい反面、成長はおそくなる傾向がある。こうした特性を利用するためにコルヒチンなどの薬品によって人工的に倍数体をつくり、花の大きな植物や収量の多い作物,種無し果実などをつくる倍数体育種(倍数性育種)がおこなわれている。
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