南鷹狩山から鷹狩山までの稜線を歩く者と林道を歩いて戻る者とに別れて13:05発。3人を見送って、林道からすぐ西の尾根に上がる。そこから正面に見えるはずの爺・鹿島槍は中腹から上が雲に隠れていた。
大町の市街地を俯瞰した後、北に向かう。そこから先は歩いたことのない道だが、尾根沿いにトレースらしいかすかなくぼみを見つけて辿るうちに、先刻歩いたばかりと思える踏み跡を見つける。そう言えば来る途中の林道に『伐採作業中』と言う看板があって、昼ごろ,チェーンソーの音がしていた。それは、この雪の中で伐採作業をしている人の足跡と思われた。
起伏のある曲がりくねった道ではスノーシューが断然有利で、谷地さんが原女史をぐいぐいと引っ張ってくれて先行し、スキーは大きく遅れる。
そのまま北進してやや下ると林道があり、そこから1040mのピークへの登りにかかる。かなりの斜面なのにスキーを平行にしたまま歩いて登れるのに驚く。それはたまたま雪が着雪しやすい状態になっていて、板が雪面に吸いつくようにピタリと止まってくれたお陰と思われた。代わりに板の裏にくっついて歩きにくくもある。この点はスノーシューも同じで数歩ごとに雪を落さなければ進めないくらい重くなった。
13:40,ピークを越えて10mあまり下った鞍部に到達。そこから1147mの南鷹狩山に向けて100mほどの急登となる。
傾斜が次第にきつくなり、雪の質が変わって滑りやすくなってきたことも手伝ってスキーでの登高は無理となり、外してつぼ足で登る。中腹に伐採作業をした跡があり、そこまで辿りついたところで先行する2人もスノーシューを脱いでつぼ足となる。無用の長物となったスキーを抱えて歩くのはしんどい上に靴が滑りやすくて難渋する。
14:26,山頂手前でようやく緩やかな尾根に出てスキーを履き、だらだらとした尾根を進んで山頂らしい高みに立つと前方に黒く聳えるピークが見え、女史が『あれが鷹狩山?』と聞く。そうかもしれないがもっと先のような気もする。
一旦20mほど下って再び登りにかかる頃,先行する女史が『見えたよぉ~』と知らせてくれたが、スキーでの下りは難しくてなかなか追いつけない。
ようやく鷹狩山の展望塔が見える位置まで着いたが、そこから北は断崖のようになっており、右折して薄暗い杉林の急斜面を下る。あまりの斜面に途中からスキーを外して尻セードで滑り降りる。
前方から先行する谷地さんの『林道発見』の声がして、ほぼ同時に、先着していた土岐さんの呼び声が聞こえる。
斜面を下りきって再びスキーを着けようとするとヒンジの部分に氷が詰まってはまらず、無駄な時間を費やした挙句スキーを抱えてズボズボ埋まりながら下ってやっとの思いで林道に転げ出る。
時すでに15:30。南鷹狩山からの下りに1時間を要し、激しく消耗していた。滑って下れなければスキーは絶対的に不利で、スノーシューかワカンなら30分で降りれたと思われる。
15:35発。鷹狩山へ登る時間はすでになく、林道をまっすぐ下って16:10山博に着く。
林道につけられたトレースを滑るのも難しく、また除雪された林道の下りはこわい。羽根のように軽くて登るには快適な歩くスキーだが、今回は林間の下りの技術的な難しさと登高の限界を知らされた。