世の中、金があればよいというものでもない。

貧乏であることと社会的な名誉や権力を得ていないこととは別だというのが私の理想だ。人生をおくる上で、必要最低限のお金があれば、それでよいではないか。金がなくて、他人に迷惑をかけるのはいただけないが、その最低限の生活で、満足できれば、人間として、誰にでも立ち向かっていける勇気を持てる。人生の向かい風に立ち向かう冒険者であり続けることができるのである。さて、世の中は、どうもそうなっていない。昨年度に世界の企業家の中で、最も高い収入を得たのはイギリス人の　デニース・コーテス氏だという。デニース・コーテス氏と聞いても、誰もその人物について思い浮かばないと思うが、2000年、わずか十数人の従業員と共にブックメーカー「Bet365」を創業し、その後、同社は年商31億ポンドの事業へと成長を遂げた。この会社は非上場で、2019年3月までの1年で自らに2億7700万英ポンド（約397億円）の給料を支払ったのだ。世の中、金があれば楽しいという面もあるかもしれないが、金があれば失うものも多い。まあ、金があればよいというものでもない。要はその金の使い方である。（くちなし亭、12月19日）


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