江戸時代に描かれた狩野派の「虎」は画家が実物を見て描いたものではないので、微妙に「虎」ではない。彼らは「虎」の敷物や「虎」と同種の「猫」を見て、想像しながら描いたとされる。なぜ、こんな話をするかと言えば、甲州市在住の矢崎勝巳さん(73)が、源義経と武蔵坊弁慶の身長と体重を推定し、弁慶が151センチ、59キロ、義経が144センチ、43キロと導き出したと報道されているからである。しかも、矢崎さんは平泉の江戸時代に描かれた義経と弁慶の絵をもとに推計値を導き出したと言う。だから、その絵,自体が画家の想像の産物なのである。絵であるから、画家の気持ちのままに、強調したい部分は大きく、はっきりと描いたであろうし、両者の身長さなど、絵枠のバランスの上で、自由に変えていただろう。それをもとに、義経と弁慶の身長などを推定しているので、もともと、無理があるのである。もちろん、矢崎さんはそんなことは承知だろう。私のような意見は笑い飛ばすだろう。しかし、栄養学的に見れば、その頃の日本人が140~150センチほどであったことは確かで、義経が大きな男ではなかったことは伝聞で知られているから、たぶん、さほどの大きな間違いはなかろうとは笑われていると思うのである。戦後の60年間でさえ、日本人の身長は驚くほどに伸びたのであるから、800年もたてば、その様相は大きく変わってきたであろう。しかも、私たちがイメージするその時代は明らかに現代化されたその時代である。その時代をイメージするのは、今の映画やテレビドラマなどのよるものである。俳優は現代人でりりしく、あ~、そうだ。馬はみんなサラブレッドで美しい。でも、馬だって、もっと、背の低い、足の太い、たくましい日本馬であったはずである。
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