数年前、海外のスポーツイベントで、韓国を応援する人たちがサムスンの名入りのステイックバルーンを打ち鳴らして応援していたことを思い出す。彼らにとって、サムスンは自国の代表的な企業として、誇りに思っている証拠である。その外に対しては誇りに思う企業だが、国内では、政府に癒着して、利益をむさぼる極悪人であるとデモ参加が叫んでいる。ひところ、韓国の10大財閥の一つである現代自動車が世界で売れる理由の一つが、国内価格を高くして、その利益を海外市場での低価格戦略に活用し、シェアを伸ばしているのだという批判が韓国国内で持ち上がったことがある。だが、現代車は韓国国民にとって、外国に対する誇らしさの象徴である。この二面性が韓国の今を表している。韓国のような新興国にとって、特殊産業を育てて、それを突破口に国力を増強し、それによって、国民生活の向上を図るということは一つの選択であった。だが、その最大の失敗は国内に商品を潤沢に供給するのではなく、海外で売りさばき、貿易黒字で国力を高めるという手法であった。当然、選ばれた企業は巨大化するかもしれないが、独占化もする。国内企業を圧迫する。そうなれば、すべての国民の生活向上という大目的から外れていく。それをうまく操縦するのが政治の役目だが、政治家にとっても、自身の権力拡大には、大企業と癒着した方が楽である。一方、長い民主主義の歴史を持つ国々はいくつものチャック機能がある。社会を調和させる力が備わっている。劇的に、ある意味、革命的に変化させる必要はない。韓国の大統領弾劾裁判の結果が迫っている。今月で、捜査は一応終わる。結果がどのようになるかは分からないが、政治家たちは相変わらず、右往左往している。経済をどのようするかという青写真さえ示せない。とにかく乱暴に壊せと言わんばかりである。(2017.2.28)