情報を抜き取るのに、ドキドキ感はない。

２０世紀末から２１世紀の初頭にかけて上映されていた「００７」などのスパイ映画では、大型のコンピューターから情報を抜き取るのに、CDが使われていた。情報の量にもよるが、CDだから、若干の時間がかかる。主役のジェ－ムス・ボンドのような辣腕スパイと言えども、情報がCDに書き込まれる時間に、誰かに気づかれないかと、映画を見る観客とともに落ちつかないのである。その観客の不安感は映画製作者にとって大事だから、現在のスパイ映画でも、ツールはメモリーチップに移ったが、この書き込まれる時間を大事にしている。実際は一瞬だと思うのだが、誰もが多少の時間がかかり、犯罪者はその時間に不安感を持っているはずだと信じているのである。神奈川県庁のハードディスク（ＨＤＤ）がネットオークションを通じて転売された事件は、警視庁が、ＨＤＤの処理を請け負ったブロードリンク社の元社員を６日夜に窃盗の疑いで逮捕したことで詳細が明らかになった。調べによれば、「簡単にできるから、毎日のように盗み出していた。」と犯人は供述している。昔のスパイ映画のようなドキドキ感は今はないのである。（くちなし亭、12月8日）

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