極東アジアの真実 Truth in Far East Asia

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〇国は本当に民主主義国家であるか?(フィクション)

2021-12-11 14:34:22 | 日記

以下文は「フィクション」です。

人権とは・・・大統領・再選挙時は国家ぐるみの選挙不正を行い、検閲、情報統制等を堂々と行い、他国にも関与してきた事実はスノーデンの情報公開で細部まで知られてしまい、世界の多くの国々はこれらを知ってしまったと言われています。本当に民主主義国家で世界の人権を守っているのか?!2022年、北京・冬季オリンピック・・・日本は独立国家のはずです!?

素人の人権(主に香港問題等)に対する思いを記しています。「世界と日本」(代表:田中明彦)・日本政治・国際関係データベース・政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所、ウィキペディア等の資料等を参考にしています。シーアイエーとカナで記しているのはAI検閲でヒットしない・・・最後に「中華人民共和国政府とグレートブリテン・北アイルランド連合王国政府の香港問題に関する共同声明・全文」を記しています。

 

アヘン戦争の結果、英国が1842年以来植民地にしていた香港を中国に返還することは1984年に二国間で合意され1997年7月に実現しました。主権は中国に移りましたが50年間、一国二制度が認められ資本主義体制が維持され予定でしたが、国安法に該当する事態が発生し、残された期間の民主化が可笑しくなったと思います。

香港はアヘン戦争後、1842年の南京条約で香港島が割譲、1860年の北京条約で九竜半島の一部が英国に取られ、1898年新界の九竜半島の大部分が99年間の租借地となりました。アヘン戦争敗戦の結果、自国の民は動物並みの権利になってしまった屈辱は、核兵器開発の最大の名目となったと言われています。中国の歴史最大の屈辱として現在も間違いなく生き続け、「アヘン戦争を忘れるな!」が指導層、多くの中国国民の世界観だと思います。アヘン戦争を理解しなくて中国。香港を語ることは不可能だと思います。

過去、問題となっていた香港問題の肝は・・・国安法は中国国家を脅かす行為として、1 国家分裂、2 政権転覆、3 テロ、4 外国勢力と結託(勾結)して国安に危害を及ぼす行為の4つを規定しています。これらの、4に違反したため2010年8月10日、民主活動家である周庭(当時23才)氏が香港国家安全維持法で逮捕されたと言われています。(4項目の細部を最後に記していますが、日本のメディア等々は報道していません。)

2014年に民主的な選挙制度の実現を目指した雨傘運動で、周庭(23歳)氏は学生団体のリーダーの1人として活動していましたが、雨傘運動のような活動には巨額の資金が必要と言われていました。資金源を法倫功等同様、中国側は明確に掴んでいたと言われていますが、中国側は対立を出来るだけ避けるよう処理していたとも言われています。これらの事実は精査すれば、当時は素人でも掴む事が出来ました。当時、私達が接していた欧米メディア報道内容はスポンサー報道でこの情報を素直に鵜呑みにすることは問題があったようにも思います。

香港は英国のアジア貿易拠点、世界の中継貿易地として経済発展しました。第二次世界大戦中は、一時日本軍が占領していましたが、戦後には再び英国植民地となり貿易、金融(世界最大のマネーロンダリング)で世界有数の都市となりました。1898年からの新界の租借期限が1997年に近づくと香港返還が現実問題となり、当時の鄧小平氏とイギリスのサッチャー氏との交渉が功を奏し、1984年の中英共同声明で1997年をもって香港主権を中国に返還する約束が成立しています。

この返還協定では99年年賦の対象となっている新界だけでなく、香港全域の主権を返還するという事で合意、以後、香港基本法制定、英国総督に代わる特別行政区長官の選出、臨時立法議会の組織化などによって返還の準備が進められていました。その過程途中で香港の民主化手法等をめぐり、中国当局とパッテン総督、香港住民との間で深刻な対立が起こりましたが予定通り1997年、江沢民政権の時、150数年ぶりに中国に返還、特別行政区となっています。
やはり当時、問題となったのは共産党一党独裁の中国と資本主義経済と議会制民主主義の香港と如何に統合して行くかだったようです。

英中の大胆な妥協により、主権は中国に返還、香港経済や政治体制は50年間は変更しない、一国二制度を取ることになりました。香港主権は中国にある特別行政区となり、資本主義経済を維持、議会政治(香港立法議会)のもと、政党活動の自由、選挙制度の保障がなされています。更にポルトガル領だったマカオでも返還の声が高まり、1999年返還が実現しています。

 

1984年の英中共同声明の骨子

*返還後の香港は中華人民共和国香港特別行政区とする。

*返還後の香港は一国家二体制を維持する。

*返還後、香港は50年間は資本主義体制を保証する。

*中国の現行憲法では存在しないストライキ権が香港では保証される。

*香港の最高責任者である香港特別行政区長官は、選挙または協議によって選出,中央人民政府が任命する。

21世紀から、香港民主化運動が頻発するようになり、一国二制度が揺らぎはじめました。背景には香港返還後に生まれた世代が成長、香港の未来に不安を抱きはじめていることが上げられるようですが、真相は・・・

 

香港の昨今の歴史

1984年 中英共同声明調印、1997年の返還が決定

1990年 中国全人代、香港基本法の採択

1997年7月1日、英国、香港を中国に返還

2003年 香港政府、国家安全条例案を撤回

2014年6月 中国、香港に対する全面的統制権を明確化、9月~12月 香港行政長官占拠し民主化を求め、学生市民が「雨傘運動」を展開、中国は徹底的に背景を調べ上げ、米国と折衝し、「国安法を適用」したとも言われています。

2017年6月29日~7月1日、香港返還20周年式典で習近平「一国二制度」での「一国」重視を強調

2019年6月 逃亡犯条令改定案反対運動、200万人がデモ

11月 香港区議選で民主派が8割以上を獲得

2020年6月30日 中国全人代常務委員会、香港国家安全維持法が可決成立、即日施行

 

尖閣等々、日中間には理不尽な大きな問題がありますが、昨今の中国指導者等と違う、故・鄧小平氏が生きていたら今日の世界、日本は全く違った歴史が出来ていたかも知れません。故・鄧小平氏は台湾の故李登輝氏と同族(血統的スファラディー・ユダヤ人です。)でこれらの事実が表に出ることは稀でした。英中間の香港返還も故・鄧小平氏に負うところが極めて大きいとも言われ、もし故・鄧小平氏が生きていたら昨今の香港問題も違った対応になっていたでしょう。

 

香港民主化に大きな影響を与えたと言われる、ポール・ダンデス・ウォルフォウィッツ(Paul Dundes Wolfowitz)氏、間接的に香港のデモにも影響を与えてきたとも言われています。(英文はスルーしても問題ありません。)
Paul Dundes Wolfowitz (December 22, 1943)・・・
is a former President of the World Bank, United States Ambassador to Indonesia, U.S. Deputy Secretary of Defense, and former dean of the Paul H. Nitze School of Advanced International Studies at Johns Hopkins University. He is currently a visiting scholar at the American Enterprise Institute, working on issues of international economic development, Africa and public-private partnerships, and chairman of the US-Taiwan Business Council
***「He is a leading neoconservative」*** As Deputy Secretary of Defense, he was "a major architect of President Bush's Iraq policy and ... its most hawkish advocate." In fact, "the Bush Doctrine was largely [his] handiwork." Donald Rumsfeld in his interview with Fox News on February 8, 2011, said that Wolfowitz was the first to bring up Iraq after the 9/11 attacks during a meeting at the presidential retreat at Camp David.
After serving two years, he resigned as president of the World Bank Group due to scandals described by a Reuters report as "a protracted battle over his stewardship, prompted by his involvement in a high-paying promotion for his companion

香港反政府等デモを遡ると香港大学、戴耀廷(ベニー・タイ)副教授等々が、表向き一応発案したと言われます。特に黎智英(ジミー・ライ)氏がリーダーであるオキュパイ・セントラル(佔領中環)運動にはNEDと深く結びついていたようです。

当時、黎智英氏は筆頭ネオコンであると言われるポール・ウォルフォウィッツ氏とも繋がっているのは間違いなさそうで、NEDは1980年代に米国議会承認の、民主主義のための国家基金法に基づいて作られた組織です。

資金は米政府から出ており、国家民主国際問題研究所、国際共和研究所、国際私企業センター、国際労働連帯アメリカン・センターに流れており、使用金は不思議と議会報告無し、資金はシーアイエーの秘密工作に使われていたとも言われています。

NEDはグルジア国(バラ革命)やウクライナ国(オレンジ革命:本当の問題は将来、現イスラエルは本当の血統的ユダヤ人でないため、何れ追い出されることを念頭にしていると言われ、出自・母国でもあるウクライナへの新たな建国地問題がウクライナ問題と言われています。)等々でも使用されていると言われており、見方により対立を作る強力なツールとなっているように思います。香港、佔領中環は資金援助、反政府運動のノウハウ等々を与えたのはシーアイエーと明言しています。

当時の香港の街頭抗議デモの中心的な役割を担っている学生のリーダー等は、米国政府等から支援を受けているという情報が見え隠れしていました。
香港紙「文匯報」は、抗議デモの先頭に立ってシュプレヒコールを上げる17歳のリーダー、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)君が、米中央情報局(シーアイエー)から資金援助を受けていると記されていましたが、当時、ウォン君はそんな事実はないと否定していました。
シーアイエー等が中国の民主化を推進(本当は民主化と言うより国内対立を目指す。)するため、法輪功同様、中国国内の活動家に水面下で接触、資金援助等々することは過去の事案等を調べると珍しいことではないようです。金銭面等だけでなく、反政府運動のノウハウ等などを支援することはシーアイエー等の主要な役割等でもあるようです。

注目を集めているウォン君。13歳位の時に、中国本土と香港を結ぶ高速鉄道の建設計画反対の政治運動に参加していますが、米ウォールストリート・ジャーナルによれば、米国政府はウォン君を親米派の政治活動家に養成する意図があったと報道しています。香港の米領事館等にウォン君が頻繁に実質フリーパス出入り、全米国商工会議所がウォン君家族を接遇、優遇を暴露しています。(Wall Street Journal, 9/25/2014の記事) 

1989年の天安門事件以来、反政府等運動は学生にシフトしたように思います。考えてみれば、当時17歳の若さで1万人以上のデモ参加者をリードするのは、至難の業でノウハウがなければ難しいのでは?某らウォン君を支援等していたと思うのが自然にも思えます。


香港反政府デモについて、当時のオバマ米国大統領は王毅外相に対し、極めて低姿勢で平和的な対応を期待と当たらず障らずのコメント、米国にとって現在も中国は当然重要国であることは万人が認める疑いよう事実のようです。経済的には世界最大の市場、米国財政の一部負担国であり無視できないし、過去は積極的に軍事的にも互恵関係を最強化したようです。
一方で、当時オバマ政権は建前上中国の安全保障政策などには強圧?米国にとって共産国、民主国等であれ自国益があれば問題なしと言うのが本音だったでしょう。

当時、どうしても国務省のみが中国に対し強気なのは、当然NEDが香港のデモに関与?NEDは行政長官候補等々に金銭的、戦略的な支援をしている?17歳のリーダー、ウォン君にNEDの関係者が接するのは当然・・・
過去、アメリカ連邦議会が運営していると言われる「Radio Free Asia」(http://www.rfa.org/english/)が連日香港学生デモを徹底して主報道(参考Wall Street Journal, 9/25/2014、佔領中環、Radio Free Asia等)

世界最大の大国、両政府には大きな隔たりがありますが、現実は間違いなく、米中国民は互いに必要としていると思います。世界から見た場合の米中問題は、米中間の問題では済まされず、間違いなく世界の問題等でもあると思います。

今、世界は中国抜きでは成り立たない現実、日本は独立国として冷静に未来志向することが必要だと思います。香港は返還後50年で完全な共産国中国となります。残された期間は短いです。

歴史的に見ても過去、日中両国の交流史は長く、昨今、報道等はネガティブな問題ばかり取り上げられ・・・勿論、多くの一般中国国民とはかけ離れた現在の中国共産党政府は自国民の幸せを本気で考えているとは思えないし、極一部の共産党一族等のみの利権維持、中華思想のもと、有無を言わせない核を中心とした強い軍事力で将来アジアを支配しようとしているのは間違いないでしょう。
新型コロナ発生以前、日本を訪問する中国人観光客等は、日本に来て実際目にしたものは中国国内の情報とは大きく違い、日本の素晴らしさ、感動をお土産に帰国されていたと言われています。多くの中国人は再度日本に是非旅行したいと言うリピーターが多かったのも間違いない事実のようです。
特に、日中両国の「一般国民」にはマスコミが報道するような大きな隔たりはあまり無いように思える時があります、可笑しな憲法を持ち、首都圏に外国軍が駐留すると言う世界の先進国等では到底考えられない日本ですが、独立国として対中国策は凛とした姿勢で対応をしてもらいたいものです。

世界から見ればアジアの心は、陸象山(南宋の儒学者で宋王朝の官僚)が詠った、「宇宙は便ち是れ吾が心、吾が心は即ちこれ宇宙」が代弁しているかも知れません。日本人は日本人の心(無為無私等)は一部の日本人は理解していると思いますが、アジアの心とはを理解することも必要だと思う昨今です。

 

***参考資料***

「世界と日本」(代表:田中明彦)、日本政治・国際関係データベース・政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所より。

 

文書名

香港問題に関する英中共同声明(中華人民共和国政府とグレートブリテン・北アイルランド連合王国政府の香港問題に関する共同声明)

全文

中華人民共和国政府とグレートブリテン・北アイルランド連合王国政府は満足の意をもって近年の両国政府と両国人民の友好関係を振り返るとともに、歴史的に残された香港問題を協議を通じて妥当に解決することが香港の繁栄と安定の維持に役立ち、新たな基礎に立つ両国関係のいっそうの強化、発展に役立つと見る点で見解の一致を見た。そのため、両国政府代表団は会談をへて、次のように声明することに同意した。

一、中華人民共和国政府は、香港地区(香港島、九竜、「新界」を含む。以下香港と称する)の祖国への復帰が全中国人民の共通の願いであり、中華人民共和国政府が一九九七年七月一日から香港に対し主権行使を回復することを決定したことを声明する。

二、連合王国政府は、連合王国政府が一九九七年七月一日に、香港を中華人民共和国に返還することを声明する。

三、中華人民共和国政府は、中華人民共和国が香港に対し次のような基本的な方針、政策をとることを声明する。

(1)、国家の統一と領土保全を擁護するため、また香港の歴史と現状を考慮して、中華人民共和国は、香港に対し主権行使を回復するにあたり、中華人民共和国憲法第三十一条の規定にもとづき、香港特別行政区を設けることを決定した。

(2)、香港特別行政区は中華人民共和国中央人民政府の直轄下に置かれる。外交と国防が中央人民政府の管理に属するほか、香港特別行政区は高度の自治権を享有する。

(3)、香港特別行政区は行政管理権、立法権、独立した司法権と終審権を享有する。現行の法律は基本的には変わらない。

(4)、香港特別行政区政府は現地人によって構成される。行政長官は現地で選挙または協議を通じて選出され、中央人民政府が任命する。主要公務員は香港特別行政区行政長官が指名し、中央人民政府に報告し、中央人民政府が任命する。香港の政府諸部門にかねてより勤務していた中国籍と外国籍の公務員と警察要員は留用することができる。香港特別行政区の政府諸部門は、イギリス籍またはその他の外国籍にある者を招聘して顧問またはなんらかの公職につかせることができる。

(5)、香港の現行の社会・経済制度は変わらず、生活様式は変わらない。香港特別行政区は法律にもとづき、人身、言論、出版、集会、結社、旅行、移転、通信、罷業、職業選択、学術研究、宗教信仰の諸権利と自由を保障する。個人財産、企業所有権、合法的相続権および外部からの投資は、いずれも法律の保護を受ける。

(6)、香港特別行政区は、自由港と独立関税地区の地位を保持する。

(7)、香港特別行政区は国際金融センターの地位を保持し、ひきつづき外国為替、金、証券、先物取引に市場を開放する。資金の流入、流出は自由である。香港ドルはひきつづき流通し、自由に他の通貨と交換することができる。

(8)、香港特別行政区は財政の独立を保持する。中央人民政府は香港特別行政区から徴税しない。

(9)、香港特別行政区は連合王国その他の諸国と互恵の経済関係を樹立することができる。連合王国その他の諸国の香港における経済的利益は配慮される。

(10)、香港特別行政区は「中国香港」の名称で、独自に各国、各地区および関係国際機構と経済・文化関係を保持し発展させるとともに、関係協定を締結することができる。

 香港特別行政区政府は独自に、出入旅行証を発行することができる。

(11)、香港特別行政区の社会治安は、香港特別行政区政府が責任をもって維持する。

(12)、中華人民共和国の香港に対する前記の基本的な方針、政策および本共同声明の第一付属文書の前記基本方針、政策に対する具体的説明については、中華人民共和国全国人民代表大会が中華人民共和国香港特別行政区基本法において規定するとともに、五十年間は同規定を変えない。

四、中華人民共和国政府と連合王国政府は、本共同声明の発効の日から一九九七年六月三十日までの移行期においては、連合王国政府が香港の行政管理に責任を負い、香港の経済の繁栄と社会の安定を守り、保持すること、中華人民共和国政府がこれに協力することを声明する。

五、中華人民共和国政府と連合王国政府は、本共同声明の効果的実施をはかるとともに、一九九七年における政権の円滑な引き継ぎを保証するため、本共同声明の発効時に中英合同連絡小委員会を発足させること、同合同連絡小委員会は本共同声明の第二付属文書の定めるところにより職責を確定し履行することを声明する。

六、中華人民共和国政府と連合王国政府は、香港の土地契約およびその他の関連事項に関して、本共同声明の第三付属文書の定めるところにもとづいて処理することを声明する。

七、中華人民共和国政府と連合王国政府は、前記の諸声明と本共同声明の付属文書をすべて実施することに同意する。

八、本共同声明は批准を受けなければならず、批准書交換の日から発効する。批准書は一九八五年六月三十日以前に北京で交換されるものとする。本共同声明とその付属文書は同等の拘束力を持つ。

一九八四年十二月十九日、北京で調印、中国語と英語で二部作成され、ともに同等の効力を持つ。

中華人民共和国政府代表

(署名)

グレートブリテン・北アイルランド連合王国政府

(署名)

第一付属文書

中華人民共和国政府の香港に対する基本方針、政策についての具体的説明

 中華人民共和国政府は、中華人民共和国政府とグレートブリテン・北アイルランド連合王国政府の香港問題に関する共同声明第三項に記された中華人民共和国の香港に対する基本的な方針、政策について、次のように具体的に説明する。

 中華人民共和国憲法第三十一条は「国家は、必要ある場合、特別行政区を設けることができる。特別行政区内で実施する制度は、具体的状況に応じて全国人民代表大会がこれを法律で定める」と規定している。この提案にもとづいて、中華人民共和国は一九九七年七月一日から香港に対して主権行使を回復するにあたり、中華人民共和国香港特別行政区を設ける。中華人民共和国全国人民代表大会は中華人民共和国憲法にもとづき中華人民共和国香港特別行政区基本法(以下「基本法」と略称)を制定、発布し、香港特別行政区においてはその成立後も社会主義の制度と政策を実施せず、香港の既存の資本主義制度と生活様式を保持し、五十年間変えないことを規定する。

 香港特別行政区は中華人民共和国中央人民政府の直轄下に置かれ、高度の自治権を享有する。外交と国防が中央人民政府の管理に属するほか、香港特別行政区は行政管理権、立法権、独立した司法権と終審権を享有する。中央人民政府は香港特別行政区に、本付属文書第十一節に定められた各渉外事務を自ら処理する権限を授ける。

 香港特別行政区の政府と立法機関は、現地人によって構成される。香港特別行政区行政長官は現地で選挙または協議を通じて選出され、中央人民政府が任命する。香港特別行政区政府の主要公務員(「司」クラスに相当する公務員)は、香港特別行政区行政長官が指名し、中央人民政府に報告して任命を要請する。香港特別行政区立法機関は選挙を通じて選出される。行政機関は法律を遵守し、立法機関に対し責任を負わなければならない。

 香港特別行政区の政府機関と裁判所は、中国語を使用するほか、英語を使用することもできる。

 香港特別行政区は中華人民共和国の国旗と国章をかかげるほか、区旗と区章を使用することもできる。

 香港特別行政区の成立後、香港の既存の法律(つまり普通法、衡平法、条例、付属立法、慣習法)は,「基本法」に抵触するか、もしくは香港特別行政区の立法機関が改正するものを除き保持する。

 香港特別行政区の立法権は、香港特別行政区の立法機関に属する。立法機関は「基本法」の規定にもとづき、また法的手続きにしたがって法律を制定することができる。その制定した法律は記録に留めるため、中華人民共和国全国人民代表大会常務委員会に報告する。立法機関の制定した法律で「基本法」と法的手続きに合致するものはすべて有効である。

 香港特別行政区で施行される法律は、「基本法」および前記の香港の既存の法律と、香港特別行政区の立法機関が制定した法律である。

 香港特別行政区の成立後、香港特別行政区の裁判所が終審権を享有することにより生じた変化を除き、それまで香港で実施されていた司法体制は保持する。

 香港特別行政区の裁判権は、香港特別行政区の裁判所に属する。裁判所は独立して裁判をおこない、いかなる干渉も受けない。司法要員が裁判の職責を履行する行為は、法律の追及を受けない。裁判所は香港特別行政区の法律にもとづいて案件を審理し、その他の普通法適用地区の司法判例を参考にすることができる。

 香港特別行政区の裁判所の裁判官は、現地の裁判官、法曹界およびその他の分野の知名人からなる独立委員会の推薦にもとづき、行政長官が任命する。裁判官は本人の司法的才能にもとづいて選抜、任用すべきであり、またその他の普通法適用地区から招聘、任用することもできる。裁判官は職務遂行の能力がない場合、または裁判官としてふさわしくない行動をとった場合にのみ、行政長官が終審裁判所首席裁判官の任命する三名以上の現地の裁判官からなる審議法廷の提案にもとづいて免職することができる。主要な裁判官(つまり最高クラスの裁判官)の任命と免職は、さらに行政長官が香港特別行政区立法機関の同意を求めなければならない。この場合は、記録に留めるため、全国人民代表大会常務委員会に報告しなければならない。裁判官を除くその他の司法要員の任免制度はひきつづき保持される。

 香港特別行政区の終審権は、香港特別行政区終審裁判所に属する。終審裁判所は必要な場合、その他の普通法適用地区の裁判官を招聘し、裁判に参加させることができる。

 香港特別行政区の検察機関は刑事検察活動を主管し、いかなる干渉も受けない。

 香港特別行政区政府は、特別行政区政府発足以前に香港で実施されていた方法を参照して、現地および外部の弁護士の香港特別行政区における活動と業務に関する規定を定めることができる。

 中央人民政府は、香港特別行政区政府が外国との司法上の相互援助関係について妥当な措置をとるのを援助し、またはその権限を授ける。

 香港特別行政区の成立後、それまで香港の政府諸部門(警察部門を含む)に勤務していた公務員と司法要員はいずれもその職に留まり、仕事をつづけることができる。その給与、手当て、厚生福利、勤務条件はもとの基準を下回ることはない。一九九七年七月一日以前の定年退職者を含む定年退職者または契約期限の満了による辞職者に対しては、その国籍と居住地をとわず、香港特別行政区政府はもとの基準を下回らない基準で、本人またはその家族にしかるべき年金、謝礼金、手当、厚生福利費を支給する。

 香港特別行政区政府は、もと香港公務員のうちの、または香港特別行政区の永久住民証所有のイギリス籍その他の外国籍の人を、各政府主要部門(「司」クラスに相当する部門で、警察部門を含む)の長と一部主要政府部門の副長を除く政府部門の各級公務員に任用することができる。香港特別行政区政府はまたイギリス籍その他の外国籍所有者を政府部門の顧問に招聘して任用することができ、必要ある場合は香港特別行政区以外から適格者を招聘して政府部門の専門職、技術職を担当させることができる。上記の人びとは個人資格でのみ招聘を受けることができ、他の公務員と同じく香港特別行政区政府に対し責任を負わなければならない。

 公務員の任命と昇進は、本人の資格、経験、才能にもとづいておこなわれるべきである。香港が特別行政区発足までといった公務員の招聘、雇用、考課、規律、養成、管理に関する制度(公務員の任用、給与、勤務条件のための専門機構を含む)は、外国籍公務員の特権待遇に関する規定を除き、保持する。

 香港特別行政区は、財源、予算・決算編成を含む財政事務を自ら管理する。香港特別行政区の予算・決算は、記録に留めるため中央人民政府に報告しなければならない。

 中央人民政府は香港特別行政区から徴税しない。香港特別行政区の財政収入は中央人民政府に上納することなく、全額自らの必要のために使用する。徴税と公共支出は立法機関の承認を必要とする。公共支出は立法機関に対し責任を負う。公共会計は監査を受ける制度は保持する。

 香港特別行政区は、特別行政区発足以前に香港でとられていた資本主義の経済制度と貿易制度を保持する。香港特別行政区政府は自ら経済・貿易政策を制定する。財産の取得、使用、処理、相続の権利を含む財産所有権、および法律にもとづく財産収用による補償(補償は該当財産の実際の価値に相当し、自由に他の通貨と交換することができ、正当な理由なく支払いを遅らせることはない)の権利は、ひきつづき法律の保護を受ける。

 香港特別行政区は自由港の地位を保持するとともに、貨物と資本の自由流動を含む自由貿易政策をひきつづき実行する。香港特別行政区は独自に各国、各地区との経済・貿易関係を保持し、発展させることができる。

 香港特別行政区は、単独の関税地区とする。香港特別行政区は、優遇貿易措置を含めて、ガット(関税と貿易に関する一般協定)、繊維製品の貿易に関する国際取決めなどの関連国際機構、国際貿易協定に参加することができる。香港特別行政区の取得した輸出割当額、関税優遇および合意に達したその他類似の取決めはすべて、香港特別行政区によって享有される。香港特別行政区はその時の原産地規則にしたがって、現地で生産される製品に原産地証明書を発効する権限がある。

 香港特別行政区は必要に応じて、外国に政府または半官の経済・貿易機構を設けることができる。これは記録に留めるため中央人民政府に報告する。

 香港特別行政区は国際金融センターの地位を保持する。特別行政区発足以前に香港で実施された預金受け入れ機構と金融市場管理監督制度を含む通貨金融制度は保持する。

 香港特別行政区政府は通貨金融政策を自ら制定することができ、金融企業の経営の自由および資金の香港特別行政区内の流動と香港特別行政区内外の流出入の自由を保障する。香港特別行政区は為替管理政策をとらない。外国為替・金・証券・先物市場はひきつづき開放する。

 香港ドルは現地の法定通貨として、ひきつづき流通し、自由に他の通貨と交換できる。香港ドルの発行権は香港特別行政区政府に属する。香港特別行政区政府は香港ドルの発行基盤が健全であること、発行措置が香港ドルの安定を保つ目的に合致することを確認した上で、指定の銀行に、法定の権限にもとづき香港通貨の発行または継続発行の権限を授けることができる。中華人民共和国香港特別行政区の地位にふさわしくない標識を持つ香港通貨はすべてちくじ交換し、流通を停止する。

 外貨基金は香港特別行政区政府が管理、支配し、主として香港ドルの為替レート調節に用いる。

 香港特別行政区は、船員についての管理体制を含めて、特別行政区発足以前に香港でとっていた海運経営管理体制を保持する。香港特別行政区政府は、海運面の具体的職能と責任を自ら定めることができる。香港の私営海運業と海運関連企業、私営コンテナー埠頭は、ひきつづき自由に経営することができる。

 香港特別行政区は中央人民政府から権限を授けられてひきつづき船舶登録をおこなうとともに、法律にもとづき「中国香港」の名称で関係証明書を発行することができる。

 外国の軍用船舶が香港特別行政区に入る場合は中央人民政府の特別許可を受けなければならないが、その他の船舶は香港特別行政区の法律にもとづきその港湾を出入することができる。

 香港特別行政区は国際および地域航空センターとしての香港の地位を保持する。香港で登録し香港を主要な営業地とする航空会社および民間航空関連企業は、ひきつづき経営することができる。香港特別行政区は、特別行政区発足以前に香港でとっていた民間航空管理制度をひきつづき沿用するとともに、中央人民政府の航空機国籍標識と登録標識の規定にもとづき、自らの航空機登録薄を設ける。香港特別行政区は、空港管理、香港特別行政区飛行情報区内での空中交通サービス提供、および国際民間航空機構の地域的航行手続きに規定されたその他の職責の履行を含む民間航空の日常業務と技術管理を自ら責任をもっておこなう。

 中央人民政府は香港特別行政区政府と協議した上、香港特別行政区に登録し、香港特別行政区を主要な営業地とする航空会社と中華人民共和国のその他の航空会社のために、香港特別行政区と中華人民共和国のその他の地区との間の往復航空便を提供する措置をとる。中華人民共和国のその他の地区とその他の国、地区の間を往復し、香港特別行政区を経由するすべての航空便、および香港特別行政区と他の国、地区の間を往復し、中華人民共和国の他の地区を経由するすべての航空便の民間航空運輸協定は、中央人民政府がこれを締結する。このため、中央人民政府は香港特別行政区の特殊な事情と経済的利益を考慮するとともに、香港特別行政区政府と協議する。香港特別行政区政府の代表は中央人民政府がこの種の航空便問題について外国政府と協議する際に、中華人民共和国政府代表団のメンバーに加わることができる。

 香港特別行政区政府は中央人民政府から具体的に権限を授けられて、特別行政区発足以前の民間航空運輸協定と取決めをひきつづき締結あるいは改正することができる。これらの協定と取決めは原則的にはすべてひきつづき締結しまたは改正することができる。もとの協定と取決めに定められた権利はできるかぎり保持する。また新しい民間航空運輸協定締結について交渉をおこない、香港特別行政区に登録し香港特別行政区を主要な営業地とする航空会社に航空線およびオーバーフライと技術的着陸の権利を提供することができる。外国その他の地区と、民間航空運輸協定を結んでいない状況の下で、臨時取決め締結について交渉することができる。中国内地を往復、経由せず、ただ香港特別行政区を往復、経由するだけの定期航空便についてはすべて、本節に述べられている民間航空運輸協定または臨時取決めによって定められる。

 中央人民政府は香港特別行政区政府に次の諸権限を与える。その他の当局と前記民間航空運輸協定と臨時取決めを実施するための諸措置について協議、調印する権限、香港特別行政区に登録し香港特別行政区を主要な営業地とする航空会社に許可証を発行する権限、前記民間航空運輸協定と臨時取決めにもとづき航空会社を指定する権限、中国内地を往復、経由する航空便を除く外国航空会社のその他の航空便に許可証を発行する権限。

 香港特別行政区は特別行政区発足以前に香港でとっていた教育制度を保持する。香港特別行政区政府は教育体制と管理、教育使用言語、経費割当、試験制度、学位制度、学歴と技術資格承認などの政策を含む文化、教育、科学技術面の政策を自ら制定する。各種大学と学校は、宗教と社会団体の運営するものを含めて、いずれもその自主性を保持し、ひきつづき香港特別行政区以外から教職員を招聘し、教材を選択、使用することができる。学生は大学、学校を選択し、香港特別行政区以外の地で就学する自由を享有する。

十一

 中央人民政府が外交事務を管理することを原則に、香港特別行政区政府の代表は、中華人民共和国政府代表団のメンバーとして、中央人民政府のすすめる、香港特別行政区と直接関係ある外交交渉に参加することができる。香港特別行政区は「中国香港」の名称で、経済、貿易、金融、海運、通信、観光、文化、スポーツなどの分野において、独自に世界各国、各地区および関連国際機構と関係を保持し、発展させ、関連協定を締結し履行することができる。香港特別行政区政府の代表は、国家を単位として参加する。香港特別行政区と関係のある、適当な分野における国際機構と国際会議に、中華人民共和国政府代表団のメンバーまたは中央人民政府と前記関連国際機構または国際会議の認める資格で参加し、「中国香港」の名称で意見を発表することができる。香港特別行政区は国家を参加単位としない国際機構と国際会議に「中国香港」の名称で参加することができる。

 中華人民共和国の締結した国際協定は、中央人民政府が香港特別行政区の状況と必要にもとづき、香港特別行政区政府の意見を求めてから、香港特別行政区に適用するかどうかを決定する。中華人民共和国のまだ参加していない、香港で適用されている国際協定は、ひきつづき適用することができる。中央人民政府は必要に応じて、香港特別行政区政府に、その他の関係国際協定を香港特別行政区に適用させるため、適当な措置をとる権限を授けるかまたは援助する。中央人民政府は、中華人民共和国がすでに参加し、香港も現在なんらかの形で参加している国際機構に対し、香港特別行政区に適当な形でこれらの機構における地位をひきつづき保持させるために必要な措置をとる。中華人民共和国のまだ参加していない、香港が現在なんらかの形で参加している国際機構に対し、中央人民政府は必要に応じて香港特別行政区を適当な形でひきつづきこれらの機構に参加させる。

 外国が香港特別行政区に領事機構またはその他の政府または半官機構を設ける場合、中央人民政府の許可を受けなければならない。中華人民共和国と正式の外交関係を樹立した国が香港に設けた領事機構その他の政府機構は保持することができる。まだ中華人民共和国と正式の外交関係を樹立していない国の領事機構その他の政府機構は、状況に応じて保持するか半官機構に改めることができる。まだ中華人民共和国に承認されていない国は、民間機構を設けることしかできない。

 連合王国は香港特別行政区に総領事館を設けることができる。

十二

 香港特別行政区の社会治安は、香港特別行政区政府が責任をもって維持する。中央人民政府が香港特別行政区に派遣する防衛担当の部隊は、香港特別行政区の内部問題に干与せず、部隊の駐在費用は中央人民政府が負担する。

十三

 香港特別行政区政府は法律にもとづき香港特別行政区の住民その他の人の権利と自由を保障する。香港特別行政区政府は、香港の既存の法律に定められている、人身、言論、出版、集会、結社、労働組合の組織と参加、通信、旅行、移転、罷業、デモ、職業選択、学術研究、信仰の自由、住宅不可侵、婚姻の自由、自由意思による出産の権利を含む権利と自由を保持する。

 何人も秘密裏の法律相談、裁判所への訴訟、法廷における代理としての弁護士の選択、司法救済の獲得の権利を持ち、行政部門の行為について裁判所に訴える権利を持つ。

 宗教組織と教徒は、他の地方の宗教組織、教徒と関係を保つことができ、宗教組織運営の学校、病院、福祉機構などはいずれもひきつづき存在することができる。香港特別行政区の宗教組織と中華人民共和国の他の地区の宗教組織の関係は相互不隷属、相互不干渉、相互尊重の原則を基礎とする。

 「市民的政治的権利に関する規約」と「経済的、社会的、および文化的権利に関する規約」によって香港に適用されている規定は、ひきつづき有効である。

十四

 香港特別行政区に居留権を所有し、かつ香港特別行政区の法律にもとづき香港特別行政区政府の発行する、この権利を明記した永久住民証を取得できるものは次の通りである。香港特別行政区発足以前と以後に現地で出生したかまたは通常連続七年以上居住した中国公民と香港以外で出生したその中国籍の子女、香港特別行政区発足以前と以後に現地に通常連続七年以上居住するとともに香港を永住地とするその他の人と香港特別行政区発足以前と以後に現地で出生した二十一歳未満のその子女、および香港特別行政区発足以前に香港にのみ居留権を所有していたその他の人。

 中央人民政府は、香港特別行政区政府が法律にもとづき、特別行政区永久住民証をもつ中国公民に中華人民共和国香港特別行政区パスポートを発行するとともに、香港特別行政区のその他の合法的居留者に中華人民共和国香港特別行政区のその他の旅行証明書を発行する権限を、香港特別行政区政府に与える。前記のパスポートと証明書は各国、各地区に対して有効であり、所持者が香港特別行政区に帰る権利があることを明記する。

 香港特別行政区の住民の現地出入域にあたっては、香港特別行政区政府または中華人民共和国のその他の主管部門、あるいはその他の国家主管部門の発行する旅行証明書を使用することができる。香港特別行政区永久住民証をもつ者は、その旅行証明書にその旨の事実を明記して、本人が香港特別行政区に居留権があることを証明することができる。

 中国のその他の地区の人が香港特別行政区に入る場合は、現行の方法で管理する。

 その他の国と地域の人の入国、滞在、出国に対し、香港特別行政区政府は出入国管理を実施することができる。

 有効な旅行証明書をもつ人は、法律で制止される場合を除き、香港特別行政区を自由に離れることができ、特別許可を求める必要はない。

 中央人民政府は、香港特別行政区による各国、各地区との相互ビザ免除協定の締結を援助し、またはそのための権限を特別行政区政府に与える。

第二付属文書

中英合同連絡小委員会について

一、中華人民共和国政府と連合王国政府は共同の目標の実現を促すため、また、一九九七年に政権の円滑な引き継ぎを保証するため、「共同声明」の効果的履行を期して、友好の精神にもとづく討議を続けること、および香港問題における両国政府の既存の協力関係を深めることに同意した。

二、両国政府は連絡、協議、情報交換を行なう必要上、合同連絡小委員会を設置することに同意した。

三、合同連絡小委員会の職責は次の通りである。

(1)、「共同声明」の実施について協議する。

(2)、一九九七年に政権を円滑に引き継ぐ問題に関する事柄を討議する。

(3)、双方の取り決めた事項について情報を交換するとともに、協議を行なう。

 合同連絡小委員会で意見の一致が得られない問題は、両国政府に引き渡し、話し合いによって解決をはかる。

四、合同連絡小委員会の発足から一九九七年七月一日にいたる期間の前半期に審議する事項は次の二点とする。

(1)、香港特別行政区に独立関税地区としての経済関係を維持させるため、とくに香港特別行政区が引き続きガット(関税と貿易に関する一般協定)、各種の繊維協定ならびにその他の国際的措置に参加するのを保証するために両国政府がとる必要のある行動。

(2)、香港と関連のある国際的な権利、義務が引き続き適用されるのを確保するために両国政府がとる必要のある行動。

五、両国政府は合同連絡小委員会の発足から一九九七年七月一日にいたる期間の後半期にさらに緊密に協力する必要のあること、そのためこの時期に協力を強化することに同意した。この第二段階に審議する事項は次の二点である。

(1)、一九九七年へ円滑に移行するためにとられる措置。

(2)、香港特別行政区が各国、各地区および関連国際機構との経済、文化関係を維持、発展させ、これらの事項について協定を結ぶのに協力するためにとる必要のある行動。

六、合同連絡小委員会は権力機関ではなく、連絡機関であって、香港あるいは香港特別行政区の行政管理に参与せず、これを監督する役割も果たさない。合同連絡小委員会の委員と事務要員は合同連絡小委員会の職責の範囲内にかぎって活動する。

七、双方は大使級の首席代表一名およびその他四名の委員をそれぞれ指名、派遣する。双方はそれぞれ二十名以内の事務要員を派遣することができる。

八、合同連絡小委員会は「共同声明」の発効と同時に発足するものとする。合同連絡小委員会は一九八八年七月一日から香港を主たる駐在地とする。合同連絡小委員会は二○○○年一月一日まで活動を継続する。

九、合同連絡小委員会は北京、ロンドン、香港で会議を開く。毎年少なくとも前記三地点でそれぞれ一回開くものとする。それぞれの開催地点は双方の話し合いによって決定する。

十、合同連絡小委員会の委員は前記三地点で相応の外交特権と免責権を享有する。別に取決めのある場合を除き、合同連絡小委員会の討議状況は秘密を守るものとする。

十一、合同連絡小委員会は、双方の話し合いにより、専門家の協力を必要とする具体的事項を処理するために専門家グループを設けることを決定できる。

十二、合同連絡小委員会と専門家グループの会議には、合同連絡小委員会委員以外の専門家も出席できる。双方とも、討議する問題と選定された地点に応じて、合同連絡小委員会あるいは専門家グループの各会議に出席するメンバーを決める。

十三、合同連絡小委員会の実務手続きは双方が本付属文書の規定にもとづいて討議のうえ決定する。

第三付属文書

土地契約について

 中華人民共和国政府と連合王国政府は、「共同声明」発効の日から、下記の規定にもとづいて香港の土地契約に関する事項およびその他の関連事項を処理することに同意した。

一、「共同声明」発効以前に許可された、あるいは決定された、期限が一九九七年六月三十日を超えるすべての土地契約および土地契約と関連するすべての権利、ならびに同声明の発効後に本付属文書第二項もしくは第三項にもとづいて許可された、期限が一九九七年六月三十日を超えるすべての土地契約および土地契約と関連するすべての権利は、香港特別行政区の法律にもとづいて引き続き承認、保護される。

二、短期契約および特殊用途の契約を除き、香港イギリス政府が許可した、期限が一九九七年六月三十日以前で延長権のない土地契約は、借地人が望むならば、二〇四七年六月三十日を限度として、追加借地料を納めることなく期限を延長してもよい。ただし、期限を延長した日から、同日の当該地の土地評価額の三%を、毎年納めるものとする。借地料はその後、土地評価額の変化に応じて調整する。旧契約にもとづく土地、村落内宅地、狭小宅地および類似の農村の土地については、当該地の一九八四年六月三十日当時の借地人、または同日以降許可された狭小宅地の借地人で、その父方が一八九八年当時に香港の既存村落の住民であった者は、当該地の借地人が当人または父方の合法的相続人であるかぎり、借地料を従来のままとする。一九九七年六月三十日以降に期限がきれ、延長権のない土地契約は、香港特別行政区の関連土地法規および政策にもとづいて処理する。

三、香港イギリス政府は、「共同声明」発効の日から一九九七年六月三十日まで、期間が二〇四七年六月三十日以前の新規土地契約を許可することができる。当該地の借地人は追加借地料および名義借地料を一九九七年六月三十日まで納めなければならない。同日以降は、追加借地料を納める必要はない。ただし、同日の当該地の土地評価額の三%を毎年、納めなければならない。その後は、土地評価額の変化に応じて調整する。

四、「共同声明」の発効の日から一九九七年六月三十日まで、本付属文書第三項にもとづいて許可される新規借地は毎年、五十ヘクタールを限度とする。これには香港住宅委員会が建築し、貸し出す公共住宅に要する土地は含まない。

五、一九九七年七月一日までは、香港イギリス政府の許可した土地契約に定められた借地使用条件の修正を引き続き許可することができる。差額納入する追加借地料は従来の条件の場合の土地の価値と条件修正後の土地の価値の差額とする。

六、香港イギリス政府が「共同声明」発効の日から一九九七年六月三十日までに土地取引によって得た追加借地料収入は、土地開発平均コストを差し引いた残額を均等に二分し、香港イギリス政府と将来の香港特別行政区政府の所有とする。香港イギリス政府の得る収入はすべて、上に述べた差し引き額も含め、「基盤施設準備基金」に繰り入れ、香港の土地開発と公共施設に用いるものとする。香港特別行政区政府の所有となる追加借地料収入は、香港登録の銀行に預金し、本付属文書第七項の(4)の規定にもとづいて香港の土地開発と公共施設に用いる以外に流用してはならない。

七、土地委員会は「共同声明」発効と同時に、即日、香港で発足する。土地委員会は中華人民共和国政府と連合王国政府がそれぞれ指名した同数の公務員および必要な補助実務要員によって構成される。双方の公務員はそれぞれの政府に対して責任を負う。土地委員会は一九九七年六月三十日に解散する。

 土地委員会の職権の範囲は次の通りである。

(1)、本付属文書の施行についての協議。

(2)、本付属文書第四項に規定された限度面積、香港住宅委員会が建築し貸し出す公共住宅に要する土地面積、本付属文書第六項の追加借地料収入の配分と使用の監査。

(3)、香港イギリス政府の提案にもとづく、本付属文書第四項に述べた限度面積の拡大の検討と決定。

(4),本付属文書第六項に述べた香港特別行政区政府の追加借地料収入の流用を求める提案の審査と中国側が決定を下すために供する意見の提出。

 土地委員会において意見の一致が得られない問題は、中華人民共和国政府と連合王国政府に決定をゆだねる。

八、土地委員会の設置に関する細則は、双方が別に協議して決定する。

中英間で取り交わされる覚書

覚書(イギリス側)

 本日調印されるグレートブリテン・北アイルランド連合王国政府と中華人民共和国政府の香港問題に関する共同声明に関連して、連合王国政府は次の通り声明する。連合王国の関連法規について必要な修正が完了することを前提として、

一、連合王国の施行する法律にもとづき、一九九七年六月三十日に香港との関係から英国属領公民である者はすべて一九九七年七月一日以降は英国属領公民ではなくなるが、なんらかのしかるべき地位を留保する資格を持ち、連合王国政府の発行したパスポートを引き続き使用することができる。しかし、連合王国の居留権は与えられない。その地位を取得する者は、一九九七年七月一日以前に発行されたこの種の英国パスポートを所持するか、またはこの種のパスポートに記載された者に限られる。ただし、一九九七年一月一日もしくは同日以後、一九九七年七月一日以前に出生した有資格者は、一九九七年十二月三十一日を限度として、この種のパスポートを取得するか、もしくはこの種のパスポートに記載することができる。

二、一九九七年七月一日もしくは同日以降は、いかなる者も香港との関係から英国属領公民の地位を取得することはできない。一九九七年七月一日もしくは同日以降に出生した者はすべて、第一項に述べた、しかるべき地位を取得することができない。

三、香港特別行政区および他地域の連合王国領事館官吏は、第一項に述べた者の所持するパスポートの期限延長あるいは更新、および一九九七年七月一日以前に出生し、両親のパスポートに以前から記載されている者にパスポートを発行することができる。

四、第一項および第三項にもとづいて連合王国政府の発行したパスポートを所持する者またはそのパスポートに記載されている者は、請求すれば第三国における英国の領事事務および保護を受けることができる。

覚書(中国側)

 中華人民共和国政府は一九八四年十二月十九日付けのグレートブリテン・北アイルランド連合王国政府の覚書を受けとった。

 中華人民共和国国籍法により、香港の中国同胞は「英国属領公民パスポート」の所持のいかんを問わず、すべて中国の公民である。

 中華人民共和国政府の主管部門は、香港の歴史的背景と現状を考慮し、「英国属領公民」と称されてきた香港の中国公民が連合王国政府の発行した旅行証によって他の国、地域に旅行することを一九九七年七月一日から認める。

 前記の中国公民は香港特別行政区および中華人民共和国のその他の地域において、前記旅行証の所持を理由に英国の領事保護を受ける権利を享受することはできない。

 

 


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