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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

DIRK BALTHAUS TRIO / On Children's Ground

2005年04月22日 00時11分22秒 | JAZZ-Piano Trio
 しばらく前に、オランダのトリオということ以外は全く予備知識なしに購入してきた作品です。私はロックにしても、ジャズにしても、クラシックのオケにしたところで、オランダ的な軽快さ、洗練といったものが好きな質なので、これもそういうお国柄を反映したピアノ・トリオだったらいいなと思って購入してきたという訳ですが、内容的には大体当たってました。

 リーダーのDIRK BALTHAUSというピアニストは、高い音域を多用して、ある種の敏捷さを感じさせるピアニスティックなソロを弾く人で、チック・コリアあたりの影響を受けているような感じですが、チック・コリアほど独特なクセはなく、もう少しオーソドックスなタイプだと思います。収録曲の7割方はオリジナル作品ですが、オリジナル曲をやりたがるヨーロッパのピアニストがよくみせる透明感、叙情美、憂愁感のようなものは、例えばラングとかグスタフセンほど徹底していなくて、しっかり持ってはいるようには思いますが、もう少しアメリカの新主流派っぽいオーソドックスさの中にとけ込んでいるという印象です。このあたりはいかにもオランダ的な中庸美なんでしょう。

 曲としては、ミディアム・テンポのタイトル曲は、前述の中庸美が良くでた曲で、アメリカ産ジャズの脂っこさとヨーロッパ・ジャズの温度の低さの中間点をいくような演奏です。どっちつかずという人もいるかもしれませんが、これはこれで個人的には良い落としどころを押さえたくつろげる音だと思います。また、アルバムの額縁となった1曲目の「聖歌」とオーラスの「ジェントル・ジャイアント」は、ビル・エヴァンスをちょっとウォームにしたような曲で、このビアニスとのセンスの良さを伺わせる美しい曲です。
 あと、数曲収められたスタンダード作品では、4曲目の「ソング・イズ・ユー(ジェローム・カーン)」が良かったですかね。おそらくキース・ジャレットの演奏にインスパイアされて選曲したんでしょうが、演奏はキース・ジャレットというよりは、ドラムやベースも含め、チック・コリアのアコースティック・バンドってな感じのスポーティーな爽快感ある演奏で楽しめました。

 ベースとドラムは、両者共にやや腰が重いような気もしましたが、まずまず及第点ではないでしょうか。特にベースの人は時にかなりのソロ・スペースを与えれていますが、ゲイリー・ピーコック風にややエレガントなソロを披露しているのが印象に残りました。ドラムは少々後ノリなデイブ・ウェクルって感じですかね。
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デイブ・ブルーベック/タイム・アウト (SACD)

2005年04月21日 20時34分35秒 | JAZZ-Piano Trio
 なにをかいわんやの名盤です。「テイク・ファイブ」は某CM効果もあって、目下の日本では、「モーニン」とか「枯葉」あたりを抜いて、おそらく一番有名なジャズ・ナンバーなんじゃないですね。かくいう私も、1970年代初頭頃にこれのシングル盤を購入したことがあって、おそらくこれが私が一番最初に購入したジャズ・レコードだったように思います(ちなみに次がマイルスの「フォア&モア」)。今回はこれのSACD盤を購入してきました。

 私がこれまで聴いてきたCDは、80年代前半くらいに購入したもので、さすがに昨今のリマスタリングで音質を上げたものと比べると、カッティング・レベルは低いし、音像はボケ気味という印象を受けるような音質でしたが、このSACDでは1曲目の「トルコ風ブルーロンド」のイントロで聴こえるモレロのシンバルの音のリアルさからして違います。金物っぽく輪郭がくっきり聴こえるというよりは、ライド・シンバル特有の音の減衰が良く聴きとれる感じです。また、デスモンドのサックスはもともと音の角がまるいせいで、なんとなくピアノ・トリオのなかに埋も気味な場面がなくもなかったですが、SACDでは終始その存在感がくっきりしているように感じましたし、ベースやバスドラムもくっきりと聴こえます。まぁ、要は分離が良くなったということなんでしょうが、場の空気のようなものまで感じられるように聴こえるのは、SACDという器のおかげなんでしょうね。

 という訳で実に久々に聴いた「タイム・アウト」ですが、個人的には「テイク・ファイブ」より、「トルコ風ブルーロンド」の変拍子と4ビートが錯綜する部分とか、5曲目「キャシーズ・ワルツ」のリズムとピアノが複音楽風になるあたりのおもしろさが好きですね。そうそう、あと改めて再認識したのは、デスモンドのアルト・サックスの歌心。ブルーベックのつくるテクニカルな仕掛けを、この人が吹いたからこそ、このカルテットは単なるテクニカルな実験ジャズではなく、ジャズ的リラクゼーションに満ちた音楽になったってこと。まっ、このあたりの理屈はともかく、オッサンになってくると、とにかくこういうサックスは沁みます。

 余談ですが、アルバム聴きながら、今回またしても「えっと、「アンスクウェア・ダンス」は何曲目だっけ?」と探してしまいました。LPも、CDも必ず間違えて探してたんですよね。もちろん、この曲が入っているのは、「タイム・アウト」じゃなくて「タイム・ファーザー・アウト」なんですけど、実は前述のシングル「テイク・ファイブ」のB面が「アンスクウェア・ダンス」だったもんで、その時の印象が強烈で未だに混同しちゃうようです。きっと、もう直らんだろうなぁ。
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マンハッタン・トリニティ/ミスティー

2005年04月21日 02時03分04秒 | JAZZ-Piano Trio
 マンハッタン・トリニティについては、「ラブ・レターズ」という2枚目を既に聴いていますが、これは多分それに続く第3作。前作同様、本作なんともオシャレなジャケや大スタンダードを中心にした選曲など、いかにも日本初の舶来ジャズという感じですがすから、ひょっとするとスクウェアなジャズ・ファンからは非難の嵐か、完全無視状態なのかもしれませんが(笑)、やっつけ仕事であれ、商業主義であれ、ひとときの寛ぎをもらせてくれるものであれば、ジャズとして満点でなくとも、とりあえずは歓迎ではあります。

 ピアノのサイラス・チェスナットは、ウィントレン・マルサリス絡みで有名になった人のようですが、美音、軽快なスウィング感、メロディアスで洗練されたスタンダード解釈といった点に特徴があると思います。同様にマルサリス絡みで知名度を上げたケニー・カークランドやマーカス・ロバーツといった割と求道的な人達に比べると、ジャズ的な愉悦感のようなものを強く感じさせるのも、彼の特徴のひとつといえるかもしれません。その意味では、この人割と「21世紀のハンク・ジョーンズ」みたいな印象があります(ちょっと褒めすぎですが-笑)。
で、このピアノを支えるのが、ルイス・ナッシュとジョージ・ムラーツが刻む小気味よくてスティディなリズム。これがチェスナットのスタイリッシュなピアノと実によくマッチして、ある種の小気味良さだとか、きりっとしたプロポーションのようなものを、このトリオに与えているんですね。そこがいい。

 今回の作品も基本的な路線は前作と不変ですが、これまでの作品と変化を出すためか、ややブルージーでアーシーばかり作品を選んでいるようです。私としては前作のようなメロディックなスタンダードばかり集めた方が、このトリオに素性にあっていると思いますし、個人的に好みでもあるんで、今回はちょい不満がない訳でもないですが、まぁ、前作の「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」の路線で「ミスティ」や「テンダリー」をやったり、ちょいとコンテポラリーなボサ・ノヴァ風アレンジの「スルー・ザ・ファイアー」が楽しかったから、許すとしましょう(笑)。
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B.HERRMANN, F.WAXMAN, A.NORTH / Paradine Case

2005年04月20日 00時38分59秒 | サウンドトラック
 KOCHというクラシックのマイナー・レーベルから出た、バーナード・ハーマン、フランツ・ワックス、アレックス・ノースという黄金時代のハリウッド映画音楽家達のかなりレアな作品を集めたマニアックなアルバムです。KOCHはよくこういアルバム出して来るんで、見逃せないレーベルなのですが、今回はピアノ協奏曲的な作品を集めているところがミソ。内容が内容なので、自分のために曲ごとにメモしておくことにします。


 01.ワックスマン/ピアノと管弦楽のための狂詩曲
 ヒッチコックの「パラダイン夫人の恋」のスコアを基にフランツ・ワックスマン自身がピアノ協奏曲風に編曲したもので、そもそも「パラダイン夫人の恋」自体サントラとしても、かなり珍しい部類となると思いますが、その編曲版といえばレア度はかなり高いと思います。テーマは同じヒッチコックの「断崖」とか「レベッカ」あたりと共通するワックスマンらしい田園風なムードをもったもので、前半はロマン派の緩徐楽章風に進行。やや怪しげなムードを織り交ぜつつ、半音階風にテーマを展開していくあたりはワックス節ですかね。中間部のロマンティックさも、いささか古式ゆかしい感じはしますが、とても美しい音楽です。全体にピアノはオブリガート風で、むしろウィーン風なヴァイオリン・ソロの方が目立ちます。

 02.ハーマン/ピアノと管弦楽のための協奏的マカブレ 
 これも映画の素材(「戦慄の調べ(Hagover Squre)」)を基にピアノ協奏曲風に編曲した作品で、おそらくアルバム中一番有名な作品で、私のコレクションでもこれで3種目となります。本編ですが、リスト風な冒頭はさておくとして、その後現れるテーマの方は、ちょっと「幽霊と未亡人」を思わせる壮麗でロマンティックなバーナード・ハーマンらしいもの。前半はこのテーマを基に時折ラフマニノフ的な憂愁さを感じさせつつラブソディックに進行。中間部はバルトーク風にリズミックな展開で、名技性の高いパッセージも登場して盛り上がり、後半ではお約束通りテーマを再現という構成です。

 03.アレックス・ノース/トランペットのオブリガート付きビアノ協奏曲
 これは素材が映画にあるのかどうかわかりませんが、全3楽章で総演奏時間も20分近い、堂々たる協奏曲です。内容的にはジャズや現代音楽的音響を取り入れた、かなりモダンな仕上がりであり、トランペットのオブリガート付きというのも珍しいといえるでしょう。第一楽章は「ジャズ」と名付けられている通り、かなりジャズ的な響きに満ち満ちでいて、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」を、オネゲル風にしたような雰囲気などといったら、ノースに怒られるでしょうか。第2楽章は非常にちょっと退廃的なムードもあるロマンティックな音楽。時に無調風、ブルージーになったりもしますが、このあたりは演出の内でしょう。第3楽章は案の定バルトーク風で(笑)、全体にオケコンの最終楽章を思わせるムードです。この時代のバルトークの影響力を大きさを感じさせずにはおかない楽章ですね。

 04 ワックスマン/The Charm Bracelet
 ピアノ独奏による5つの小品集といった感じの作品。これも多分映画には関係なく独立した作品と思われます。新古典派風の乾いたユーモアを感じさせるような作品で、ワックスマンとしては意外な表情かもしれません。また、時にドイツ・ウィーン風の表情を見せ、ちょっとレーガーの小品集あたりに接近するのも、彼のルーツを感じさせます。

 05.ハーマン/ピアノのための前奏曲
 世界初録音とのことですが、わずか2分のピアノ・ソロで、新ウィーン風に退廃的な香りもする、ちょっと無調っぽい曲になっています。いったいどういう目的で書いたのでしょうね?。これも多分映画とは関係ないはずですから....。


ちなみに演奏ですが、ピアノはデビッド・ブキャナンで、オケはジェームス・セダレス指揮ニュージーランド交響楽団という組み合わせです。ほとんど無名かと思われますが、今時のピアニストやオケは、メジャーでなくとも本当にうまいので、やや軽量級な感じは散見しますが、全編に渡り安心して楽しめる演奏です。
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私家版 ZARDベスト

2005年04月19日 17時44分12秒 | JAPANESE POP
 4月2日にZARDのこと書いた古い文章ひっぱりだしてきたのが、きっかけにけっこうZARD聴いてます。やっぱこの時期のZARDは良いです。ただし、私の好きな曲は10年前の時点でも、ほとんど限定されていたんですが、今回、いろいろアルバムを聴き返してみて、かなり時も流れていることもあり、あの時とは違った印象があるかなとも思ったんですが、やっぱり同じでした(笑)。とりあえず、アルバムとっかえひっかえするのも面倒なので、自分流のベスト盤を作ってみました。以下の構成、選曲です。

 曲としては、「あなたを感じていたい」「ハイヒール脱ぎ捨てて」「突然」がベスト3。以下、「Oh my love」「今すぐ 会いにきて」「この愛に泳ぎ疲れても」が続いて、残り4曲が第三位って感じですかね。こうやって聴くと、ZARDのちょっぴり生活感がにじんだ乙女心満載の詩って、男が聴くとちょっと恥ずかしいものもありますが(笑)、坂井泉が歌うと不思議と説得力とある種の切なさながでてくるのがいいです。


※ 私家版 ZARDベスト
 01.Oh my love(OH MY LOVE)
 02.今すぐ 会いにきて(FOREVER YOU)
 03.ハイヒール 脱ぎ捨てて(FOREVER YOU)
 04.あなたを感じていたい(FOREVER YOU)
 05.マイ フレンド(TODAY IS ANOTHER DAY)
 06.この愛に泳ぎ疲れても(OH MY LOVE)
 07.突然(TODAY IS ANOTHER DAY)
 08.眠れない夜を抱いて(HOLD ME)
 09.負けないで(揺れる想い)
 10.揺れる想い(揺れる想い)
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ワーグナー管弦楽曲集/ティーレマン&フィラデルフィア管弦楽団

2005年04月18日 22時57分25秒 | クラシック(一般)
 初めて聴く指揮者です。1959年生まれの45才、カラヤンやバレンボイムの助手として下積みして、小屋を主体に修行をしてきたようで、既にバイロイト・デビューもしているようですから、きっと久々に出た独欧系の大型新人指揮者なんでしょう。なるほど、なかなか素晴らしい演奏です。実はコレ、中古盤で購入してきたのですがも大当たりでした。
 曲目は派手な演奏効果を持つ「タンホイザー」だとか「オランダ人」、あと「リエンツィ」あたりを避けて、「マイスタージンガー」、「ローエングリン(2曲)」、「パルシファル(2曲)」、「トリスタンとイゾルデ(2曲)」で構成しているのも、ティーレマンのワーグナーに対するそこはかとない自信が感じられたりする選曲といえるかもしれません。

 最近聴いた、シノーポリやレヴァインのワーグナー集(といってもこれらも大分前になってしまいましたが-笑)は、一聴すると、確かにおもしろかったり、新鮮だったりはしたんですが、何回か聴くと妙に分析的なところが鼻についたり、変なところでダイナミズムを強調して作為性を感じさせたりして、結局はベームやカラヤン、ショルティといったいにしえの大指揮者の演奏に戻ってしまったりしたものですが、ティーレマンの演奏は気をてらうことなく、ストレートにワーグナー的な世界を開陳しているのに好感がもてます。また、ワーグナーだからといって、ことさらいきり立つことなく、むしろ淡々としつつも、単調にならず随所に瑞々しさを感じさせるあたりもポイント高いです。

 特に素晴らしいのは「トリスタン」。旋律の歌わせ方は、主旋律とそれにからみつく副旋律のバランスなどよくよく聴けばけっこうモダンなところもありますが、全体からすればオーソドックスそのもの。濃密であり、ドラマ性も充分でワーグナー的世界を堪能させます。「愛の死」などハイライト直前で、かみにめるように旋律を歌わせるあたりの芸も細かい、思わず聴き惚れてしまいました。他の曲もほとんどなんの違和感もなく、「これがワーグナーだ」といわんばかりの演奏で、とても楽しめました。前述の通り、こういう当たり前に良いワーグナーって、最近出会ってなかったもので、個人的には収穫でしたね。

 そうそう、最後にオケのフィラデルフィアについてですが、ザヴァリッシュの薫陶なんでしょうか、このアメリカらしいとしかいいようがないオケが、けっこうドイツっぽい音を出しているのは意外でした。ホールトーン重視な録音のせいもあろうかと思いますが、ちょっとくすんだようだ落ち着きあるトーンは、ムーティやオーマンディの頃と比べると、オケそのものが様変わりしていることを感じさせました。

PS:さっき調べてみたら、この人シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」録音してるじゃないですか、このワーグナーからすると、かなり期待できそうなんで、さっきアマゾンで、思わずワン・クリックしちゃいました(笑)。
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ストラヴィンスキー「春の祭典」「ペトルーシュカ」/小澤&CSO,BSO

2005年04月17日 18時04分31秒 | クラシック(一般)
 小澤征爾 が60年代終盤に、シカゴ響やボストン響を振った若き日のストラヴィスンスキー集です。近くのショップに置いてあったので、音質目当てという不純な動機(後述)で購入してきました。収録曲は「ペトルーシュカ」と「春の祭典」、そして「花火」の3曲。「花火」はちょっと珍しいですかね。

 これが録音されたころの小澤は、ボストン響の常任になる前でアメリカを舞台に売り出し中、年齢も確か30代中盤くらいで、まさに絵に描いたようなフレッシュな新進指揮者だったハズです。演奏の方はといえば、まさにそのとおりの颯爽したリズムのキレや、ぐいぐい進んでいく推進力を持つものといえます、記憶によればボストン常任後に録音した演奏はちょい優等生っぽかったですから、まぁ、一本調子という批判はあるかもしれませんが、全体に表情が溌剌としている分、こっちの方が聴いていて楽しいくらいです。
 「春祭」の複雑に錯綜するリズムを縦横に乗り切っていく様や、「ペトルーシュカ」での賑々しさや情感にはおまり拘らず、もっぱらオケの推進力にまかせて自然とドライブさせていくあたり、いささか旧式ではあるが、高性能なスポーツカーでドライブしているみたいでけっこう快感です(ちなみに「ペトルーシュカ」でピアノを弾いているのは、若き日のティルソン・トーマス!)。

 ところでこのCD、リマスタリングの効果なんでしょうが、私がもっている10年前くらいに出たRCAのクラシカル・ナビゲイター・シリーズという廉価盤(もっともこちらは「春祭」と「火の鳥:組曲」等の組み合わせ)の音質と比べて、もうまるで別物かと思うくらい劇的に音が良くなってます。RCAのクラシカル・ナビゲイター・シリーズは、いかなる意図かはわかりませんが、どれも収録レベルが低い上に、ノイズ・リダクションをかけ過ぎがたたって、音が小さい上にぼやけているという....私にとっては到底満足できない音質だったもので、今回の充分な解像度と深々とした低域を復活させたリマスターはまさに念願かなったというところです。

 ついでにいえば、この調子で「火の鳥:組曲」もリマスターしてくれないですかねぇ。若き日の小澤によるストラヴィンスキーの三大バレーでは「火の鳥:組曲」が一番できがいいと思いますから....(パリ管との全曲演奏あんまりおもしろくなかったし)。
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ウェーベルン管弦楽作品集湯/湯浅&アルスターO

2005年04月17日 17時15分25秒 | マーラー+新ウィーン
 ウェーベルンは新ウィーン楽派のひとりです。新ウィーン楽派というのは、シェーンベルク、ベルク、そしてこのウェーベルンあたりの人脈を中心とした人達のことを指していると思われますが、彼らは無調だとか、12音だとかいう、その後の現代音楽にとって重要な方法論を生み出したこともあって、その音楽はとにかく難解さで知られる現代音楽の始祖みたいな扱いを長らく受けていました。

 ところが、ここ四半世紀くらいですか、現代音楽の始祖と思われたていた彼らの音楽も、どちらかといえば「ロマン派の最終ステージの人達」みたいなタームで語られたり、聴かれるようになってきたと思います。まぁ、シェーンベルクはマーラーの弟子でしたし、ベルクとウェーベルンはシェーンベルクの弟子ですから、人脈的に自明ではあったんでしょう。また、作曲家や演奏者らとっては常識ではあったのかもしれませんが、素人クラシック愛好家には、なかなか理屈通りに音楽を体感できなかった。
 しかし、時の流れとはおもしろいもので、この四半世紀、彼らの音楽については、様々な演奏が登場したり、彼らの影響下にあった作曲家の音楽などがそれなりに一般化するのと時を併せるようにして、我々のようなリスナーにとっても彼らの音楽は、けっこう普通に聴こえるようになってきたんですね。

 さて、今、聴いているのはNAXOSから出た1~2年前に出た、ウェーベルン管弦楽曲集で、演奏は湯浅卓雄とアルスター管弦楽団のものです。ウェーベルンという人の作品は、総じて新ウィーンの3人の中では一番ロマン派的な体臭の薄い、いってみれば未来志向の強い非常に凝縮された音楽が多いのですが、その分、一音一音に込められた集中度が強い分、異常に緊張感が高く、じっくり聴くと、CD1枚でもぐったり来ることも多かったのですが、このアルバムの演奏は時代の流れというべきなんでしよう。あっけないくらいにリラックスしています。
 1曲目の「パッサカリア」など往年のハリウッド映画のサントラのようにロマンティックな情緒を全面に出して、ごくごく普通な管弦楽曲として演奏しているを筆頭に、鋭利な緊張度という点では随一な「弦楽四重奏のための5つの楽章」なども、ここまであっけなくやりますか!的にさらりと流れるように演奏していますし、わずか7分にまとめた「交響曲」など、この曲につきまとう観念論的難解さをきれいさっばり洗い流し、極端にいえばニュー・エイジ・ミュージックのように音の感触を素直に楽しむ....みたいなものになっているあたり新鮮です。

 最後に、音楽にもあれこれうるさかったコリン・ウィルソンはその名著「音楽を語る」の中で、ウェーベルンの音楽をイエーツの詩の一節、『足ながアメンボウのように/彼の心は、沈黙の上を歩く』を引用して、彼の音楽のストイックさやその寡黙ぶりについて蘊蓄をかたむけていましたが、私はこれほど的確な、ウェーベルン評をこれまで読んだことありません。けだし名言だと思います。もっとも、今回の湯浅の演奏は、「沈黙の上を歩く」というよりは、滑走する....って感じですけど(笑)。
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スウィング・アウト・シスター/アナザー・ノン・ストップ・シスター

2005年04月16日 23時09分46秒 | ROCK-POP
 スウィング・アウト・シスターといえば、バブル華やかなりし頃登場した、いわゆる「オシャレな音楽」をやる洋楽バンドとして登場したバンドですが、個人的にこのグルーブで一番好きなのは、やっぱ大ヒット曲「ブレイクアウト」を含むデビュウ作です。
 彼らはご存じのとおり現在でも活動中ではありますし、むしろ日本で人気が定着したのはむしろ2作目以降という言い方もできるとは思いますが、2作目以降はバカラック、ソウル、映画音楽といった彼らの好きな音楽を、自分たち流に翻訳することにばかりに埋没してしまい、デビュウ作にあったきらびやかなポップ性だとか、緊張感のようなものがなくなってしまったような気がするんですね。

 実際このアルバムは、80年代初頭頃のテクノ・ポップの方法を上手にポップに応用したエレクトロ・ポップの傑作だと思います。昔、某音楽雑誌にこのアルバムを称して、スクリッティ・ポリッティとプロパガンタのデビュウ作と並んで80年代のエレポップ3大傑作....みたいな記事ありましたけど、同じこと考えている人いたのかとうれしくなりました。
 で、前述のエレポップ的にこのアルバムを考えると、マーティン・ジャクソンのドラムスと随所に仕掛けられたテクノ風なリズムの対比がまずおもしろいです。元々彼はマガジンというニュー・ウェイブ系のバンドでバンクなドラムを叩いて訳ですが、その彼がこうしたジャジーでソウルっぽい音楽指向するバンドで、ばりばりにシーケンスパターンを張り巡らせたアレンジの中、ドラムを叩いていること自体、そもそもミスマッチングだった訳ですけど、逆に言えばミスマッチングであるが故にこのアルバムには独特の緊張感とポップさが出たともいえる訳で....とまぁ、屁理屈はこのくらいにしておきますが、ともあれ、そのあたりは「ブレイクアウト」のイントロで聴けるパンクなドラムを聴けば、一聴?瞭然ですよね。

 ところで、これまで書いてきた彼らのデビュウ作はもちろん「It's Better To Travel」のことですが、実は私が好んで聴くのは、これをアルバムごと別ヴァージョン化した「Another Non-Stop Sister」の方。このアルバムはおそらく「It's Better To Travel」からシングル・カットされた曲の12インチ・シングル・ヴァージョン等ばかりで構成されていると思うんですが、全体にリズムが表に出したダンサンブルなものが多く、現在の感覚からするとこちらの方が楽しめます。「Blue Mood」をダブっぽいテクノ・アレンジで再構成してみたり、「Surrender」の途中でアート・オブ・ノイズっぽいロマンティックなアコピを入れてみたりと、オリジナルよりおもしろいくらい....
....と、ここまで書いて、ものはついでとばかりに、この2枚のデビュウ作のおいしいところを抜き出して、私好みのアルバムをでっちあげてみました。今、CDR化したものを聴いているところですが、いゃぁサイコーです。もうこれで2枚をとっかえひっかえしなくて済みます(ちなみに曲目は以下のとおり)。

01. Breakout (A New Rockin' Version) / 02. Twilight World (Superb, Superb Mix)* / 03. After Hours* / 04. Blue Mood (Dubbed Up Version) / 05. Surrender (Stuff Gun Mix)*

06. Fooled By A Smile (Ralph Mix) / 07. Another Lost Weekend (Long Version) / 08. Communion (Instrumental)* / 09. Surrender (Road Runner Mix) / 11. Twilight World (Remix)* / 12. Breakout (Horney Version)

*=It's Better To Travel
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エレック・アレキサンダー/ジェントル・バラッズ

2005年04月15日 23時48分17秒 | JAZZ
 昨夜、コルトレーンの「バラード」を聴いたので、今夜はこれを取り出してきました....ってーか、実は2,3ヶ月前にこれ買いこんきて聴いた時、コルトレーンの「バラード」とか「ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン」をそこはかとなく思い出して、それからなんとなく頭にひっかかっていたのをここ数日で消化したという訳ですから、順番としては逆なんですけど....。

 エリック・アレキサンダーのプレイっていうと、ワン・フォー・オール絡みの諸作を聴いてるくらいですが、とにかく天衣無縫に朗々とサックスを鳴らしきる人、もしくは淀みないフレージングでジャズ的語彙を次々に繰り出してくる秀才みたいなイメージがあったんですけど、このアルバムはそうした彼がコルトレーンの「バラード」をリスペクトしたアルバムです。

 もちろん、かのアルバムのような大傑作、マスターピースという訳にはいきません。昨夜、本家の方を聴いてしまうと、このアルバムはエレック・アレキサンダーの表現意欲がそのまま出過ぎというか、早い話が明らかに吹きすぎ。いかなる理由があったにせよ、日頃吹きまくっていたコルトレーンが最少の音の伝統的なジャズのエッセンスや情緒を余すことなく表現したのに比べると、こちらはやや手練手管の次元にとどまってるかなという感がなくもないからです。

 とはいえ、「バラード」なんぞという、いにしえの金字塔を比較対象にもってこられたら、エリックさんも「そりゃ、ずるいぜ!」って困惑するだけでしょう。今時のジャズなどというと軽薄に聴こえますが、2005年にリアルタイムで体験するジャズとしては、かなり聴かせる作品であることは確か。前述のとおり、淀みないフレージングでもってスロー~ミディアム・テンポのバラードを太い音色で朗々と歌う様は、まず感覚的に気持ち良いものがありますし、ジャズ的王道を行くかのようなスタンダード解釈も、私のようなスタンダード大好きおじさんにはうれしいものがありますから。曲としては、「ミッドナイト・サン」「ヒアズ・トゥ・ライフ」「アンダー・ア・ブランケット・オブ・ブルー」みたいな、明るくも暗くもない、陰陽の境目みたいな曲が良かったです。

 ちなみにサイドメンですが、不変のパートナー?である、ドラムスのジョン・ファンズワース以外は、テクニック集団ワン・フォー・オールのメンツが絡まなかったのも、エリック・サンダーをフィーチャーするという意味で、効を呈していると思いました。
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MIT フリーク

2005年04月15日 18時00分00秒 | PC+AUDIO
 2月16日に「不治の病か?電線病! -MIT OracleAC-1-」という記事を書かせてもらいましたが、以来、電線病はぴたりと止みました。一応満足したというか、いくらなんでもこれ以上金がねぇというか....(笑)。

 で、最近物忘れが激しいので、試しに6月からこの2月までの私が入手したMITのケーブルを思い出しつつ、リストアップしたところ、なんと9ケ月間で21本購入していることに気がつきました。ここにはサブ・システムで使っているZ-CORD1,2やTerninatorなんかは含んでいませんから、それを入れれば多分30本は超えているでしょう。マジで病気です。四半世紀かけてコレクションしたレコードをオークションでレコード売ったおかげで、あぶく銭が潤沢にあったおかげで、可能であったこととはいえ、これに費やした金額は数えたくないですね(笑)。

 そんな訳で、これまで気がついた点などを書いてみると、SHOTGUNとMAGNUMについては、前者がメリハリ調で元気が良くロックやフュージョン向き、後者はレンジが広く、低音も沈むものの、落ち着いた音でクラシックやモダン・ジャズがお似合いといった印象を受けました。最上位となるORACLEはACケーブルしか使っていませんが、怒濤の低音パワーをベースに、Magnumの繊細さ、SHOTGUNのメリハリすら持ち合わせるという感じで、ひとつの究極ですね。ただし、SHOTGUN->MAGNUM->ORACLEとグレードアップを続けていく、やはり最初にMITをつなげた時に感じた驚きのようなものは、グレード上げても段々と感じなくなってくるのもまた事実。ORACLE AC1-の3連打で、私のMITフリークも一息ついたというところでしょうか。

・ スピーカー・ケーブル
  MAGNUM S1 Bi-Wire(Pwr-Spk)
   [remove]....SHOTGUN S1 Bi-Wire(Pwr-Spk)

・ XLR&RCAケーブル
  MAGNUM S1 XLR x2(CDP-Pre,UDP-Pre)
  MAGNUM S2 RCA (Pre-SpkAmp)
  MAGNUM S3 XLR (Pre-Pwr)
   [remove]....SHOTGUN S3 XLR(Pre-Pwr), SHOTGUN S2 RCA(Pre-SpkAmp), SHOTGUN S1 XLR x2(UDP-Pre,CDP-Pre
  
・ ACケーブル
  Z-CORD 3 x3(Tap)
  MAGNUM AC1(Pre->HpAmp)
  MAGNUM AC2(Pwr)
  ORACLE AC1-Z-CORD AC1 X3(UDP,CDP,Pre)
   [remove]....SHOTGUN AC1(Pre), SHOTGUN AC2(Pwr->HpkAmp), MAGNUM AC1 x2 (UDP,UDP)
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ジョン・コルトレーン/バラード

2005年04月14日 23時53分49秒 | JAZZ
 先日、ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマンのアルバムを久しぶりにしみじみ聴いたので、今夜はこっちをひっばり出して聴いてます。うーん、やっぱこちらも最高としかいいようがない出来ですね。リラクゼーションという点ではジョニー・ハートマンとのアルバムの方がより寛ろげますが、このアルバムに漂うほんの少しばかりの緊張感のようなものも悪くないです。おそらくこれは、前述のアルバムでのジョニー・ハートマンの役をコルトレーン、コルトレーン役はマッコイ・タイナーが演じているところから来ているんでしょう。

 選曲的にはお馴染みのものばかりで、「オール・オア・ナッシング・アット・オール」のみ、コルトレーン流の疾走感がちらりと顔を出しますが、あとは絵に描いたようなバラード演奏で、1曲目の「セイ・イット」からコルトレーンの歌心に魅了されます。また、マッコイ・タイナーが実にエレガントなフレーズでコルトレーンと絡んでいて、これがまた絶妙なリラクゼーションの中にほどよい緊張感をもたらしていているとも思います。個人的には最後の3曲が好き。どれも原曲から、ほんのちょいとフェイクしているくらいなんだけど、その崩し具合が、もうジャズというしかない....という感じで、けだし形容する言葉を失います。うーん、やっぱ素晴らしい!。

 ついでにいうと、これは誰もが云うことですが、このアルバム夜聴くと、バーボンでもウィスキーでも、焼酎でもなんでもいいですが、とにかく酒が進んでしまいますね。あと、こういう音楽って、いやおうなく追憶と後悔とを想いおこさせてくれるんで、時に半ば強制的にセンチな気分に追い込まれたりすることもあって、たまに困ったりもするんですが(笑)。


PS:ちなみに私の持っているのは、デラックス版でディスク2がボーナス・トラック集になってまして、アウトテイクの他、未発表曲が入ってます。個人的には本編に未発表曲「ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル」と「グリーンスリーブス」の2曲を入れるて再構成すると、アルバム本体が40分くらいになって、幸せな時間が10分伸びると思うんですが、どうでしょうか。
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ただ今、アクセスが集中しているため....その後

2005年04月14日 21時30分10秒 | others
 昨夜あたりから、画面の更新やTBなど大分良好になりましたね。ただ、時に画像と文章が見事にズレたり、例の更新が反映されないなどの症状が出ないこともないですが、まぁ、このくらいなら許容範囲ですかね。昨日はトラぶった昼間も、本日はいたって快調です。サーバ増強したのかな?。
 スタッフ側では今後、「記事を分割して管理できるようにプログラムを改修する作業を進めています。この改修により、今後記事が増加しても恒久的に対応できる仕組みが出来上がります」とのことですから、もう心配は無用かもしれませんけど、ここのブログって、この調子でまだまだユーザーさんが増加していくんだろうから、今後何が起こるか、正直いって未知数ですよね。心配というより、個人的には興味津々だな。
 ほら、近い将来、「ブログってさぁ、最初の頃はユーザー17万人しかいなかったのに、××××みたいなトラブルがよく起こってさぁ」みたいな回顧できるでしょ。ちょうど今、いろいろなところで、ベテランのネット・ユーザーさんが「そういえば、初期の頃のパソ通ってさ、モデムがの速度がぁ....」なんて、やってるみたいにね(笑)。

 
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斉藤由貴/BEST

2005年04月13日 21時41分16秒 | JAPANESE POP
 斉藤由貴のアルバムを8年ぶりに購入した。

 とはいっても、もちろん新作ではない、私の記憶によれば、彼女の最新作は8年前の "Moi" というアルバムなハズだから、この「斉藤由貴・BEST」というアルバムは当然のことながらコンピレーションである。しかも、彼女の歴代シングルを要領良くまとめた....といった体の典型的ベスト盤となっている。
 彼女はデビュウ直後はともかく、女優とアイドル業の二足のわらじを履いていた頃、つまり黄金時代の作品は、ヒット・シングルと自ら歌詞を手がけるなどアーティスティックな作品(と本人は思っていたのだろう、私もそう思っていたが-笑)と明確に区別していたきらいがあって、あくまで「アイドルのお仕事」であったシングルを主体としたこのようなアルバムともなれば、いきおい彼女の真価は感じ取られないだろうとも思っていたのだが、実際、聴いてみるとこれがなかなか良い。

 まず、前半を飾る「卒業」から「初恋」「情熱」の3曲からして、「作詞:松本隆&作詞:筒見恭平+編曲:武部聡志」という鉄壁の布陣の演出による「究極のアイドル歌謡」のハイクウォリティさひしひしと感じられる出来で(これに匹敵するアイテムといったら松田聖子の「制服」しかないだろう)、久々に魅了されてしまったし、「悲しみよこんにちは」から彼女の最後のヒット・シングルとなった89年の「夢の中へ」までのアイドルのお仕事的作品群も、「土曜のタマネギ」はネルソン・リドルばりの大仰なスタンダード・アレンジがフィーチャーされた12インチ・ヴァージョンだし、「MYA」だとか、「さよなら」なんかは、「こんなに良い曲だったけか?」と再発見があったりして、これはこれで大いに楽しかったりするのである。アイドル斉藤由貴の歌も意外と良い....というか、これはやっぱブランドだったんだろうな。

 などと、楽しく聴いてきて、突如、13~14曲目で様相が一変するのは劇的だ。90年代に入ってからの2作品から1曲づつ選ばれているのだが、特に「なぜ」で見せる、絶望的なまでに美しま抑圧された情念のようなものには圧倒される。「アイドルと女優業を見事に両立させ、何から何まで成功したハズなのに、その果ての28歳に到達した境地がこんなにも厳しい寂寥感だったとは....やっぱ人様の人生はわからねぇ」などと、下世話ではあるが、妙に人生論的な感慨を感じさせたりするのだ。
 そんなワケで、意外とレトロスペクティブできた1枚。(2002年3月3日)


※ 斉藤由貴といえば、最近アイドル時代のアルバムを集大成したボックス・セットが2組も出ましたが、こんなのがリリースされてるところを見ると、意外と根強い人気があるんですかね。ともあれ、この時期の斉藤由貴といえば、他のアイドルとは全く異なる、なんか神々しいようなオーラがあって、もうほんとうに惚れ込んでました。最近は歌手の方はすっかり休業で、たまに女優さんとしてTVに出たりしているようですが、アイドル時代のオーラからして、もっと巨大な存在感を持つ大女優となるとばかり思ってましたが。
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ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン

2005年04月13日 00時01分23秒 | JAZZ
 ジャズとは何か....答えは人それぞれでしょうが、私の場合、ジャズとは「夜の音楽」もしくは「酒場の音楽」です。夜、酒飲みながら聴いて、緊張感とリラクゼーションがほどよく入り交じった心地良い音楽というのをジャズに求めてしまう。

 私はジャズの歴史をあんまり知っているわけではありませんが、ジャズってのは酒場とか夜とかともかくそういうところから、そもそも発展してきた音楽だと思うし、それがひとつの重要な要素ではあることは間違っていないと思います。その意味からすると、芸術性ばかりを追い求めたり、音楽的にあまりに求道的だったりするジャズは、それはそれで優れているものが沢山あることは知りつつも、私のジャズ観からハズれてしまうんですね。

 で、そういう私のジャズ観からハズれてしまう代表例がジョン・コルトレーン。この人のやる音楽はまるで星一徹みたいな頑固で求道的、自らの哲学を有無を言わさずごり押しするみたいなところが、どうもダメなんですね。晩年のフリー時代の作品はいわずもがなですし、名作といわれる「至上の愛」や「インプレッション」などですら、私にとってはその典型。実はマイルスのコンポに居た時のプレイですらそうなんですから、もう始末に負えません(笑)。

 ところが、苦手なコルトレーンでも例外的に愛聴しているのが、ジョニー・ハートマンと共演したアルバムです。このアルバムが作られたエピソード(新調したマウスピースがうまくフィットしななかったので吹きまくることができず、スタティックなアルバムの制作が提案された)は有名ですが、いわばタガのはめられたコルトレーンがジャズ的なオーソドキシーを忠実に守って作ったところが、私のような者には幸いしてるんでしょう。とにかく私の考える最良のジャズがここにあるという感じなのです。

 ここでのコルトレーンのプレイはストイックですが決して厳しくなく、甘くはないがく辛口過ぎもしない....という絶妙なところで歌心を発揮しているのが素晴らしく、ハートマンの深いヴァイブレーションを感じさせるベルベットのようなヴォーカルとの組み合わせは極上という他はありません。テーマは大体ハートマンが歌い、コルトレーンはテーマのオブリガートや中間部のソロを担当していて、どれも素晴らしいものですが、「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」ではこれと逆のパターンでやっていて、訥々とテーマを奏でるコルトレーンはいつもの饒舌さとは無縁ですが、そこに込められた歌心は、まさに豊穣と呼ぶしかないものでしょう。

 収録されているのは、たった6曲、時間にして30分です。短い!。ないものねだりでしょうが、10曲入れて50分くらいのアルバムだったらもっと良かったんではないでしょうか。とはいえ、この30分はまさに「ジャズ的に至福に満ちた時」という他はありません。
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