Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

B.HERRMANN, F.WAXMAN, A.NORTH / Paradine Case

2005年04月20日 00時38分59秒 | サウンドトラック
 KOCHというクラシックのマイナー・レーベルから出た、バーナード・ハーマン、フランツ・ワックス、アレックス・ノースという黄金時代のハリウッド映画音楽家達のかなりレアな作品を集めたマニアックなアルバムです。KOCHはよくこういアルバム出して来るんで、見逃せないレーベルなのですが、今回はピアノ協奏曲的な作品を集めているところがミソ。内容が内容なので、自分のために曲ごとにメモしておくことにします。


 01.ワックスマン/ピアノと管弦楽のための狂詩曲
 ヒッチコックの「パラダイン夫人の恋」のスコアを基にフランツ・ワックスマン自身がピアノ協奏曲風に編曲したもので、そもそも「パラダイン夫人の恋」自体サントラとしても、かなり珍しい部類となると思いますが、その編曲版といえばレア度はかなり高いと思います。テーマは同じヒッチコックの「断崖」とか「レベッカ」あたりと共通するワックスマンらしい田園風なムードをもったもので、前半はロマン派の緩徐楽章風に進行。やや怪しげなムードを織り交ぜつつ、半音階風にテーマを展開していくあたりはワックス節ですかね。中間部のロマンティックさも、いささか古式ゆかしい感じはしますが、とても美しい音楽です。全体にピアノはオブリガート風で、むしろウィーン風なヴァイオリン・ソロの方が目立ちます。

 02.ハーマン/ピアノと管弦楽のための協奏的マカブレ 
 これも映画の素材(「戦慄の調べ(Hagover Squre)」)を基にピアノ協奏曲風に編曲した作品で、おそらくアルバム中一番有名な作品で、私のコレクションでもこれで3種目となります。本編ですが、リスト風な冒頭はさておくとして、その後現れるテーマの方は、ちょっと「幽霊と未亡人」を思わせる壮麗でロマンティックなバーナード・ハーマンらしいもの。前半はこのテーマを基に時折ラフマニノフ的な憂愁さを感じさせつつラブソディックに進行。中間部はバルトーク風にリズミックな展開で、名技性の高いパッセージも登場して盛り上がり、後半ではお約束通りテーマを再現という構成です。

 03.アレックス・ノース/トランペットのオブリガート付きビアノ協奏曲
 これは素材が映画にあるのかどうかわかりませんが、全3楽章で総演奏時間も20分近い、堂々たる協奏曲です。内容的にはジャズや現代音楽的音響を取り入れた、かなりモダンな仕上がりであり、トランペットのオブリガート付きというのも珍しいといえるでしょう。第一楽章は「ジャズ」と名付けられている通り、かなりジャズ的な響きに満ち満ちでいて、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」を、オネゲル風にしたような雰囲気などといったら、ノースに怒られるでしょうか。第2楽章は非常にちょっと退廃的なムードもあるロマンティックな音楽。時に無調風、ブルージーになったりもしますが、このあたりは演出の内でしょう。第3楽章は案の定バルトーク風で(笑)、全体にオケコンの最終楽章を思わせるムードです。この時代のバルトークの影響力を大きさを感じさせずにはおかない楽章ですね。

 04 ワックスマン/The Charm Bracelet
 ピアノ独奏による5つの小品集といった感じの作品。これも多分映画には関係なく独立した作品と思われます。新古典派風の乾いたユーモアを感じさせるような作品で、ワックスマンとしては意外な表情かもしれません。また、時にドイツ・ウィーン風の表情を見せ、ちょっとレーガーの小品集あたりに接近するのも、彼のルーツを感じさせます。

 05.ハーマン/ピアノのための前奏曲
 世界初録音とのことですが、わずか2分のピアノ・ソロで、新ウィーン風に退廃的な香りもする、ちょっと無調っぽい曲になっています。いったいどういう目的で書いたのでしょうね?。これも多分映画とは関係ないはずですから....。


ちなみに演奏ですが、ピアノはデビッド・ブキャナンで、オケはジェームス・セダレス指揮ニュージーランド交響楽団という組み合わせです。ほとんど無名かと思われますが、今時のピアニストやオケは、メジャーでなくとも本当にうまいので、やや軽量級な感じは散見しますが、全編に渡り安心して楽しめる演奏です。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする