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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

斉藤由貴/BEST

2005年04月13日 21時41分16秒 | JAPANESE POP
 斉藤由貴のアルバムを8年ぶりに購入した。

 とはいっても、もちろん新作ではない、私の記憶によれば、彼女の最新作は8年前の "Moi" というアルバムなハズだから、この「斉藤由貴・BEST」というアルバムは当然のことながらコンピレーションである。しかも、彼女の歴代シングルを要領良くまとめた....といった体の典型的ベスト盤となっている。
 彼女はデビュウ直後はともかく、女優とアイドル業の二足のわらじを履いていた頃、つまり黄金時代の作品は、ヒット・シングルと自ら歌詞を手がけるなどアーティスティックな作品(と本人は思っていたのだろう、私もそう思っていたが-笑)と明確に区別していたきらいがあって、あくまで「アイドルのお仕事」であったシングルを主体としたこのようなアルバムともなれば、いきおい彼女の真価は感じ取られないだろうとも思っていたのだが、実際、聴いてみるとこれがなかなか良い。

 まず、前半を飾る「卒業」から「初恋」「情熱」の3曲からして、「作詞:松本隆&作詞:筒見恭平+編曲:武部聡志」という鉄壁の布陣の演出による「究極のアイドル歌謡」のハイクウォリティさひしひしと感じられる出来で(これに匹敵するアイテムといったら松田聖子の「制服」しかないだろう)、久々に魅了されてしまったし、「悲しみよこんにちは」から彼女の最後のヒット・シングルとなった89年の「夢の中へ」までのアイドルのお仕事的作品群も、「土曜のタマネギ」はネルソン・リドルばりの大仰なスタンダード・アレンジがフィーチャーされた12インチ・ヴァージョンだし、「MYA」だとか、「さよなら」なんかは、「こんなに良い曲だったけか?」と再発見があったりして、これはこれで大いに楽しかったりするのである。アイドル斉藤由貴の歌も意外と良い....というか、これはやっぱブランドだったんだろうな。

 などと、楽しく聴いてきて、突如、13~14曲目で様相が一変するのは劇的だ。90年代に入ってからの2作品から1曲づつ選ばれているのだが、特に「なぜ」で見せる、絶望的なまでに美しま抑圧された情念のようなものには圧倒される。「アイドルと女優業を見事に両立させ、何から何まで成功したハズなのに、その果ての28歳に到達した境地がこんなにも厳しい寂寥感だったとは....やっぱ人様の人生はわからねぇ」などと、下世話ではあるが、妙に人生論的な感慨を感じさせたりするのだ。
 そんなワケで、意外とレトロスペクティブできた1枚。(2002年3月3日)


※ 斉藤由貴といえば、最近アイドル時代のアルバムを集大成したボックス・セットが2組も出ましたが、こんなのがリリースされてるところを見ると、意外と根強い人気があるんですかね。ともあれ、この時期の斉藤由貴といえば、他のアイドルとは全く異なる、なんか神々しいようなオーラがあって、もうほんとうに惚れ込んでました。最近は歌手の方はすっかり休業で、たまに女優さんとしてTVに出たりしているようですが、アイドル時代のオーラからして、もっと巨大な存在感を持つ大女優となるとばかり思ってましたが。
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ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン

2005年04月13日 00時01分23秒 | JAZZ
 ジャズとは何か....答えは人それぞれでしょうが、私の場合、ジャズとは「夜の音楽」もしくは「酒場の音楽」です。夜、酒飲みながら聴いて、緊張感とリラクゼーションがほどよく入り交じった心地良い音楽というのをジャズに求めてしまう。

 私はジャズの歴史をあんまり知っているわけではありませんが、ジャズってのは酒場とか夜とかともかくそういうところから、そもそも発展してきた音楽だと思うし、それがひとつの重要な要素ではあることは間違っていないと思います。その意味からすると、芸術性ばかりを追い求めたり、音楽的にあまりに求道的だったりするジャズは、それはそれで優れているものが沢山あることは知りつつも、私のジャズ観からハズれてしまうんですね。

 で、そういう私のジャズ観からハズれてしまう代表例がジョン・コルトレーン。この人のやる音楽はまるで星一徹みたいな頑固で求道的、自らの哲学を有無を言わさずごり押しするみたいなところが、どうもダメなんですね。晩年のフリー時代の作品はいわずもがなですし、名作といわれる「至上の愛」や「インプレッション」などですら、私にとってはその典型。実はマイルスのコンポに居た時のプレイですらそうなんですから、もう始末に負えません(笑)。

 ところが、苦手なコルトレーンでも例外的に愛聴しているのが、ジョニー・ハートマンと共演したアルバムです。このアルバムが作られたエピソード(新調したマウスピースがうまくフィットしななかったので吹きまくることができず、スタティックなアルバムの制作が提案された)は有名ですが、いわばタガのはめられたコルトレーンがジャズ的なオーソドキシーを忠実に守って作ったところが、私のような者には幸いしてるんでしょう。とにかく私の考える最良のジャズがここにあるという感じなのです。

 ここでのコルトレーンのプレイはストイックですが決して厳しくなく、甘くはないがく辛口過ぎもしない....という絶妙なところで歌心を発揮しているのが素晴らしく、ハートマンの深いヴァイブレーションを感じさせるベルベットのようなヴォーカルとの組み合わせは極上という他はありません。テーマは大体ハートマンが歌い、コルトレーンはテーマのオブリガートや中間部のソロを担当していて、どれも素晴らしいものですが、「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」ではこれと逆のパターンでやっていて、訥々とテーマを奏でるコルトレーンはいつもの饒舌さとは無縁ですが、そこに込められた歌心は、まさに豊穣と呼ぶしかないものでしょう。

 収録されているのは、たった6曲、時間にして30分です。短い!。ないものねだりでしょうが、10曲入れて50分くらいのアルバムだったらもっと良かったんではないでしょうか。とはいえ、この30分はまさに「ジャズ的に至福に満ちた時」という他はありません。
コメント (1)
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