透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「本所おけら長屋 十九」

2022-10-07 | A 読書日記

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 人気シリーズ最新刊『本所おけら長屋 十九』畠山健二(PHP文芸文庫2022年)を読んだ。「ほろにが」「ぜんあく」「せんべい」「はりかえ」収録されている4編のタイトルはすべてひらがな4文字。このシリーズは始めからずっとこだわりの4文字だ。

本の帯に**笑って泣けて元気が出る**とあるけれど、本当にそう。「ほろにが」に笑い、「せんべい」には涙。

「ほろにが」
そそっかしくて早呑み込みの半次と言われている研ぎ屋の半次は長屋暮らし。ある日、半次のところに大店のお嬢様が訪ねてくる。
**「半次さんでしょうか」
「そうですけど・・・・・」
(中略)
「長屋に住んでいる、相生町のとぎやの半次さんでしょうか」
「ですから、そうですけど・・・・・。おたくはどちらさんで」
「静といいます。半次さんの嫁になるかもしれない者です」
(後略)**(16頁)
とんだ思い違いが巻き起こす「騒動」に大笑い。あらすじは省略するけれど、実によく考えられたストーリー。

「せんべい」
おけら長屋の住人、お里さんは仕事帰りに子どもたちのケンカに遭遇。三人の子どもたちが走り去り、一人の子どもが口元から血を流して座り込んでいた。お里さんが血を拭きなと手拭いを差し出すと、**「私は武士の子です。施しは受けません」**(143頁)と子ども。
**「一丁前の口を聞くんじゃないよ。何が施しだい。そんなに大層なもんじゃないだろう。ほら、使いなよ。武士の子がそんな顔をしてたらみっともないだろう」**(143頁)
さらにお里さんと子どもの会話は続く。お里さんは子どもに名前を住んでいる長屋を伝え、手拭いにはせんべいが挟んであるから、後で食べなと言ってその場を後にした・・・。このせんべいがその後、思わぬ展開を招くことに・・・。おけら長屋の住人たちの人情に涙。

「はりかえ」
ついに松吉とお栄さんが所帯を持つことに。僕はお栄さんがこれから結婚するような歳の女性だとは思っていなかった。こうなれば、次に気になるのが、僕が好きなお満さんの結婚話。

このシリーズ、次は2023年の春に発売予定と帯にある。楽しみに待とう。






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