吉野山去年の枝折(しおり)の道かへて
まだ見ぬ方の花を尋ねむ 西行法師
吉野山の桜を詠んだ西行の歌は60余を数える。母の名が桜ということも影響したのだろう。歌意は昨年訪ねた道を今年は変えて、まだ見ていない新しい道を歩いて愛でてみようということか。観客として入る吉野山の道は大方限られてしまう。現代は自動車で訪ねるのでなおさらである。
まだ見ぬ方の花を尋ねむ 西行法師
吉野山の桜を詠んだ西行の歌は60余を数える。母の名が桜ということも影響したのだろう。歌意は昨年訪ねた道を今年は変えて、まだ見ていない新しい道を歩いて愛でてみようということか。観客として入る吉野山の道は大方限られてしまう。現代は自動車で訪ねるのでなおさらである。
満開の裾野に仰ぐ天界の
琵琶湖バレイは雪のけのこる 樋田哲仙
比良山系の琵琶湖バレイは冬季スキー場で賑わう。京都・大阪から近いことも便利である。山頂へ行くにはロープウエーがあり容易である。山ろく駅付近には結構桜があり、訪ねた4月11日は満開を迎えて見ごろだが、花見客はほとんどいない。名が知られていないのが残念で、穴場といえよう。
琵琶湖バレイは雪のけのこる 樋田哲仙
比良山系の琵琶湖バレイは冬季スキー場で賑わう。京都・大阪から近いことも便利である。山頂へ行くにはロープウエーがあり容易である。山ろく駅付近には結構桜があり、訪ねた4月11日は満開を迎えて見ごろだが、花見客はほとんどいない。名が知られていないのが残念で、穴場といえよう。
ながむとて花にもいたく馴れぬれば
散る別れこそ悲しかりけれ 西行法師
西行ほど桜をを愛した歌人は珍しい。桜の多い吉野山は自然と足が向くのも道理である。歌意はじっと桜の花を眺めていると親しみが湧いてくる。その桜がやがて散り始めると花との決別がなんとも悲しくなると言い切る。樹木の摂理の無情は避けられないものがあり、1年後の再会を期するほかはない。
散る別れこそ悲しかりけれ 西行法師
西行ほど桜をを愛した歌人は珍しい。桜の多い吉野山は自然と足が向くのも道理である。歌意はじっと桜の花を眺めていると親しみが湧いてくる。その桜がやがて散り始めると花との決別がなんとも悲しくなると言い切る。樹木の摂理の無情は避けられないものがあり、1年後の再会を期するほかはない。
一本の枝垂桜は孤高にも
花の先まで気高くやさし 樋田哲仙
園内に1本のシダレザクラがある。周囲には緑の木立と、まだ季節には早いハナショウブの園があるだけで、一層華やいで見える。枝も長く伸ばし、棚で支えられている。訪ねたときは花も見ごろを迎えて気品が漂い、老木の域にある。ソメイヨシノの華やかさに、シダレザクラは高貴と優雅さ備え、風格がある。
花の先まで気高くやさし 樋田哲仙
園内に1本のシダレザクラがある。周囲には緑の木立と、まだ季節には早いハナショウブの園があるだけで、一層華やいで見える。枝も長く伸ばし、棚で支えられている。訪ねたときは花も見ごろを迎えて気品が漂い、老木の域にある。ソメイヨシノの華やかさに、シダレザクラは高貴と優雅さ備え、風格がある。
よし野山さくらが枝に雲散りて
花おそげなる年にもあるかな 西行法師
吉野山の桜にかかっていた雲が散って晴れてくると、花とばかりに思っていた桜が、まだ、一向に咲いていない。今年は例年より遅い開花となりそうだと、桜の好きな西行は楽しみにしていたが、落胆している和歌である。吉野山の桜はいったん咲き始めると下、中、上、奥と順々に咲いて長く楽しめる。
花おそげなる年にもあるかな 西行法師
吉野山の桜にかかっていた雲が散って晴れてくると、花とばかりに思っていた桜が、まだ、一向に咲いていない。今年は例年より遅い開花となりそうだと、桜の好きな西行は楽しみにしていたが、落胆している和歌である。吉野山の桜はいったん咲き始めると下、中、上、奥と順々に咲いて長く楽しめる。
マナーよき客の花見る奥深さ
京都府立の植物園は 樋田哲仙
京都府立植物園は初めての訪問である。地下鉄烏丸線北山駅から近い。開園は大正13年と古く、240、000㎡と広大で、園内の樹木に歴史を感じる老木も多い。2か所にある満開の桜の下で楽しむ花見客はマナーよく静かでよい。園内であることから酒盛りやカラオケの騒ぎは全然ない。花見はこうありたいものだ。
京都府立の植物園は 樋田哲仙
京都府立植物園は初めての訪問である。地下鉄烏丸線北山駅から近い。開園は大正13年と古く、240、000㎡と広大で、園内の樹木に歴史を感じる老木も多い。2か所にある満開の桜の下で楽しむ花見客はマナーよく静かでよい。園内であることから酒盛りやカラオケの騒ぎは全然ない。花見はこうありたいものだ。
野に出れば人みなやさし桃の花 高野素十
野外に出れば開放的になって、気分はおおらかになるものだ。淡紅色の桃の花は桜より4,5日早く満開となる。果実を目的とするから畑や丘陵地が多い。背丈は3㍍足らず、枝をくぐるように歩かなければならない。桜はござをしいて酒盛りの宴会となり、騒音が伴う。桃の花では静寂の花見となり桜と大きな違いである。
野外に出れば開放的になって、気分はおおらかになるものだ。淡紅色の桃の花は桜より4,5日早く満開となる。果実を目的とするから畑や丘陵地が多い。背丈は3㍍足らず、枝をくぐるように歩かなければならない。桜はござをしいて酒盛りの宴会となり、騒音が伴う。桃の花では静寂の花見となり桜と大きな違いである。
のどけさに花見の客の急に増す
休みならずも根来の寺は 樋田哲仙
和歌山岩出市にある新義真言宗総本山根来寺は桜の名所である。広大な境内の入り口となる山門は豪壮で周囲の桜の木の上に浮かび、最初の見せ場となる。戦国時代、僧兵の勢力増大から、織田信長、秀吉に抵抗し、1585年焼き討ちに合い、多数の堂塔を焼失した。しかし、かっての面影は随所に残る。
休みならずも根来の寺は 樋田哲仙
和歌山岩出市にある新義真言宗総本山根来寺は桜の名所である。広大な境内の入り口となる山門は豪壮で周囲の桜の木の上に浮かび、最初の見せ場となる。戦国時代、僧兵の勢力増大から、織田信長、秀吉に抵抗し、1585年焼き討ちに合い、多数の堂塔を焼失した。しかし、かっての面影は随所に残る。
そのなかに芽の吹く榾(ほた)のまじりけり 室生犀星
シイタケ生産農家は里山の林の中の半日陰を利用しているのを見かける。詳しいことは分からないが、クヌギ、シイ、カシの原木を1㍍足らずの長さに切って、立てて並べる。菌を植えつけた原木は3,4年生み出すという。榾木の中に生々しく芽を吹く勢力を残しているものがあったのだろう。
シイタケ生産農家は里山の林の中の半日陰を利用しているのを見かける。詳しいことは分からないが、クヌギ、シイ、カシの原木を1㍍足らずの長さに切って、立てて並べる。菌を植えつけた原木は3,4年生み出すという。榾木の中に生々しく芽を吹く勢力を残しているものがあったのだろう。
チューリップ花に加へていかやうに
植ゑし模様の美しきかな 樋田哲仙
陽春の先日近くの農業公園を訪ねた。シバザクラの開花の様子を確かめるためであったが、まだ、早すぎて駄目であった。一方、チューリップがもう咲き始めて楽しめるまでになっていた。例年なら、5月の連休のものである。各地で桜の開花がきかれるこのごろと同時期とは意外であった。花の美しさに、植え方による美観も楽しめる。
植ゑし模様の美しきかな 樋田哲仙
陽春の先日近くの農業公園を訪ねた。シバザクラの開花の様子を確かめるためであったが、まだ、早すぎて駄目であった。一方、チューリップがもう咲き始めて楽しめるまでになっていた。例年なら、5月の連休のものである。各地で桜の開花がきかれるこのごろと同時期とは意外であった。花の美しさに、植え方による美観も楽しめる。