みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

(周回遅れ)睦月俳句、そらみみ選

2006年02月07日 | 俳句・短歌
 寒昴オリオンのそのちょっと先
 (甲府市 内藤 研象)

 湯気たててなんかないのという裸
 (肩甲)

 雑煮食ぶ迂闊に古希を迎へゐる
 (札幌市 江田 三峰)

 山小屋の深山流儀の雑煮かな
 (長野市 木原 登)

 すこやかな老妻ありて雑煮膳
 (岡崎市 浅いしげじ)

 七色を一色にして冬入日
 (宇治市 柴田 忠男)

 子や孫と顔くっつけて雑煮食ぶ
 (熊本市 坂田淑子)

 うぶすなにあまえて旅ぞ春の花
 (向井去来)

 高熱の鶴青空に漂へり
 (日野草城)
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
「寒昴」の句。「かんすばる」のりんとした響きがいいし、大宇宙を「ちょっと先」とひょいっと言ってのける、痛快なことよ。
「湯気」の句。肩甲は芥川賞作家、長嶋有氏の俳号。裸は彼女の裸なのだそうだ。彼女が投げ掛ける「なんかないの」は、なんだか、ぞんざいな感じだけど、不思議と悪い風景じゃない。
「迂闊に古希」の句。迂闊という、気負いがなく年を重ねる感じがいい。
「山小屋」の句。山贔屓なので。昔ながらのランプの灯かりが揺れる山小屋だろうか?外は白銀の世界。雑煮、さぞかし美味しいんだろうな。「みやま」ってきれいな言葉だ。
「すこやかな」の句。とても気持ちのいい「老」だと思った。長年連れ添った妻へのあたたかい眼差しがいい。
「七色を」の句。すべてがオレンジに染まる光景。山頂で迎える御来光の光景も頭を過ぎっていた。
「子や孫と」の句。「くっつける」がいい。温かい。何のかんの言いつつ、こういう老境が理想かな?改めて保守的な我、再発見。
「うぶすな」の句。「うぶすな」は「人の生まれた土地」。新しい言葉を一つ覚えました。
「高熱の」の句。草城が病の床で詠んだ句だそうな。熱にうなされて鶴と化した作者。草城の結婚初夜をテーマにした連作「ミヤコホテル」、自分はけっこう好き。

(1月のNHK俳句で気に入った句でした。)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする