タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

不妊治療と仕事、両立困難?

2017-11-17 21:50:45 | 不妊症
少し前の写真になりますが、台風でゴールドクレストたちが倒れてしまったところです。
道路側に倒れなくて良かったですよ。
通行人の方に当たったりしたら、たいへんでしたからね。

最近は、お産された方も、写真を掲載しても良いよ、と言ってくださる方が減ってきたものですから、
これからファミリー写真を載せる機会が減ってきそうです。
違うことを考えないといけませんね。
きっと個人情報保護の概念が拡がってきたせいでしょうね。

それでは今日の話題は、少し前の新聞記事からです。
「不妊治療と仕事、両立困難96%、NPO調査、退職転職41%」という見出しの記事です。
読めばだいたい内容が想像できますね。

不妊治療を経験した人の96%が、仕事との両立に困難を感じているということです。
仕方なく、仕事をやめたり、おそらくパートに変わったりされるのでしょうね。
NPO法人、Fineの5千人以上の調査での結果のようです。
転職や退職の理由は、通院回数の多さ、それに精神的な負担、が有るということです。

職場に不妊治療へのサポートが有る、と答えたのは、わずか6%で、
有っても使わない、とした人が41%で、
治療を知られたくない、制度が使いづらいと答えられたそうです。

この記事を読めば、そうだろうな、と思いますよ。
ただし、この数年で非常に改善されたということも、知っていただきたいのです。
以前は不妊治療と言えば、毎日クリニックに通院するものだったのですよ。
排卵誘発剤という薬は、連日注射する必要が有るからです。

それが今では、自宅で自己注射できるようになり、
月の前半の治療期間で、10日連続で通われていた女性は、3日程度に通院回数が激減したのですからね。
月の後半は、さらに2回程度通院するだけですから、
1ヶ月で5回程度でしょうか。

タマル産では、初診の月は検査が有るので、おそらく週に2回くらい通院していただきます。
翌月からは、1週間に1回、多い週で2回くらいですね。
さらに注射の排卵誘発剤でも先ほど計算した5回、程度ですからね。
それほど多いというほどでもないように思います。
しかもタマル産では、日曜日も診療していますし、
夜だって仕事帰りに来院できるように、遅くまで開けています。

タマル産では一般不妊治療だけだからとお思いでしょう。
たしかに高度不妊治療、いわゆる体外受精では、もっと通院が多くなるかもしれません。
ただしこれも期間を区切って、1年とか2年という目標を持たれると良いです。
それでダメならいさぎよく諦めて、子の無い人生を設計しなおしてみればいかがでしょう。

30年前なんてですね、体外受精をしようとしたら、
1ヶ月間まるまる入院だったのですよ。
人というのは、欲求が止まりませんから、便利になっても結局は不満を抱くものなのです。
もっと前向きに考えられればね。

それから、治療を知られたくないので仕事を休みにくい、という意見は分かります。
ですが今では7カップルに1カップルが不妊です。
10年もすれば、そのうち5カップルに1カップルくらいになるでしょう。
恥ずかしがっている場合では有りませんよ。

高校や中学で、出産適齢期や、不妊治療の知識を教えないといけませんね。
以前、小学校の学習参観日に出かけたら、いきなり小学校の担任の先生に授業を頼まれてしまいました。
ちょうど性教育の時間だったのですよ。
もちろんお断りしましたよ。
だって、仕事で行っているのではありませんからね。
まずは、学校の先生から、教えてあげなくてはいけないのかもしれません。



地域の医療連携

2017-11-15 21:11:42 | 産科
篠山市宮田の杏(あん)ちゃん、10月11日生まれ。
「みんなから愛される、心の優しい子に育ってください。
陣痛中、隣で励ましてくださり、安心して出産できました。
みなさん、とても親切でした。」

お姉ちゃんが人形の赤ちゃんを抱っこしているものだから、
3人姉妹のようですね。

そう、今日は七五三なのですね。
私も篠山に引っ越してきた時に、篠山の春日神社に子供たちを連れていきました。
千歳飴を持った姿がかわいかったのを、今でも覚えていますよ。
産後に授乳が終わって、続けて赤ちゃんを産むと、ちょうどそれくらいの年齢の3人兄弟になりますからね。

今日は、赤ちゃんが3人も生まれて、またたいへんな1日でしたよ。
3人ともへその緒が首に巻いていて、けっこうたいへんでした。
1日に2人も帝王切開したのは、開業以来初めてのことですからね。
夜中からずっとお産に付き合って、もちろん朝と夕の外来もこなしてです。

この秋はお産のラッシュでしたが、この冬はすこしゆったりできそうです。
昨日、三田市民病院の産婦人科部長の神田先生と事務の方が2人、タマル産にやってこられました。
柏原で最初に開業した時は、県立柏原と日赤さんの産婦人科、小児科、
それに丹波市の開業の先生、全員のところに挨拶回りをしたのですよ。

ですが篠山に引っ越ししてからは、とくに挨拶回りはしなかったものだから、
三田市民病院の先生とは、お会いしたことが無かったのです。
もうすぐ20年にもなるというのに。
ですが外来で紹介することはよく有るのですよ。

神田先生は、とても優しそうな先生でした。
私より5つほど年下の先生のようですね。
以前は3人体制だったのですが、若い先生も来られて4人体制のようです。

先月は、県立柏原病院の小児科の先生と事務の方々が、タマル産に来院されたのは報告しましたね。
さらにその前は、済生会兵庫県病院の小児科の先生や事務の方々が来院されました。
理由は、地域医療連携の構築です。
研修病院として若い先生を指導するためには、他院からの紹介を受けている必要が有るからでしょう。
病院の紹介率は、公表されますからね。

紹介されない病院というのは、1次医療機関になってしまいます。
できれば2次、3次医療機関の方がメリットは有ります。
タマル産はもちろん1次医療機関です。
例えば兵庫医大さんも、1次医療機関です。
産婦人科に関しては、紹介を受け入れておられませんからね。

三田市民は2次医療機関でしょう。
県立柏原は2.5次くらいでしょうか。
済生会は3次でしょう。
そうして、患者さんの症状に合わせて、必要が有れば紹介しています。
さらに高次医療機関は、神戸中央市民病院や、こども病院、神戸大学などにも、
救急車で直接搬送することは有りますよ。

1次医療機関のタマル産の仕事と言えば、
手に負えない患者さんは、すぐに適切な医療機関に紹介や搬送することですからね。
そういう意味では、篠山市の救急隊のお世話によくなっているクリニックと言えるでしょうね。

先日、赤ちゃんが仮死で生まれたのです。
開業してから一番たいへんなお産でしたよ。
一晩中お産に付き添って、なんとか明け方に生まれたのですが、
思っていた以上にしんどかったらしく、
すぐに普段から練習しているように、新生児の蘇生術をして、済生会までひとっ飛びです。

済生会では1晩、さらに救急処置をして、
翌日こども病院に転院となり、とっても心配していたのですよ。
新生児の入院は順調でも2週間ほどかかりますからね。
後遺症でも残れば、年単位で入院ということも有るのでしょう。

ですが、わずか2週間で退院となり、こども病院の先生も奇跡だと言われていたそうです。
そして今日、1ヶ月健診で母子ともに来院されたのですが、
すっかり大きく元気な赤ちゃんになられていました。

お母さんは素早い処置に、むしろ感謝されておられて、
私もスタッフも、とても感動したのですよ。
赤ちゃんの生命力は、本当に強いですね。
医療連携の必要性も、とても重要だと感じた次第です。


不育症の原因をご存知?

2017-11-13 21:14:12 | 不妊症
三田市母子の智哉(ともや)くん、10月10日生まれ。
「優しくて、頼りにされる子に育ってください。
とても出産しやすかったです。1人目より陣痛の痛みがましだったように思います。
みなさんとても優しくて、親切にしてくださいました。」

前回のお産は、近くの大きな病院だったのですよね。
2人目だから、タマル産に来院されたのでしょうか。
そういう選択も有りでしょうね。
とかく1人目のお産はたいへんになります。
帝王切開になることも多いので、無事に産んだお母さんは、
2人目はずっと楽なので、クリニックで機動的に産むという選択も有るのでしょう。

それでは、今日は不育症、あるいは習慣性流産のお話をしてみましょう。
何度もお話してはいるのですが、またすぐに忘れてしまいますよね。
それに、不妊症とも関係が有りますからね。

一度も妊娠しなければ、もちろん不妊症です。
1人赤ちゃんを産んだ後で、なかなか妊娠しなくても不妊症です。
流産が2回続けば反復流産。
3回続けば習慣性流産ということになります。
後者をまとめて不育症と呼ぶのです。

流産が続くと、あるいはたった1回でも流産すると、がっかりしてしまいますね。
3回続けば、検査をした方が良いのです。
ですが実際には2回続けば、検査をしたくなるのでしょう。
流産の原因の多くは、胎児側が理由なのですが、
流産が続くと、お母さんやお父さんまで検査をすることになります。

一般的な習慣性流産の検査としては、
子宮の異常や、甲状腺機能の異常、糖尿病が無いか、という女性側の検査。
特殊な抗リン脂質抗体症候群や、凝固異常も女性側の検査です。
それにお母さんとお父さんの染色体の検査もします。

ですが、これだけ検査しても異常無しということも多いのですよ。
それにこれだけでは、原因の40%ほどで、
残りの60%は原因不明と出ます。

抗リン脂質抗体が陽性の場合は、治療が見つかっていて、
アスピリンやヘパリンという抗凝固療法をすることで、
高い確率で、次の流産を回避することができるのです。

けれど原因不明の場合は困りますね。
一番良いのは何もしないことだと言われます。
ですが何かしたいですよね。
それでアスピリンやヘパリンを使用することも有ります。
ひょっとしたら何もしなくても、流産しなかったかもしれませんが。

ここまでが教科書的な話題でした。
でもね、1番重要な原因と、2番目に重要な原因が抜けています。
それは喫煙していることです。
お母さんであることも有るし、お父さんが家で吸っていることでも有ります。
禁煙したのに、と言われるお母さんも居られますが、
たいていは妊娠が発覚してからで、すでにその時は妊娠6週くらいになっていますからね。

2番目に重要な原因は、お母さんの年齢です。
35歳を過ぎていれば、流産してもおかしくはありません。
もちろん35歳未満でも流産をすることは有りますが、
続くことは稀ですからね。

タマル産の不育症外来を受診された方には、一覧表をお渡ししていますよ。
元気な赤ちゃんを産むために、一緒に頑張っていきましょう。

トーラック?ブイバック?

2017-11-10 21:35:51 | 産科
三田市の瑞(すい)ちゃん、10月7日生まれ。
「生き生きと充実した人生を送り、優しくて愛嬌の有る子に育ってください。
下から産んだのが初めてで衝撃的でしたが、とても感動しました。
夕食後のスイーツとハーブティーに癒されました。」

妊娠中は、甘いものは控えていたでしょうからね。
1人目の出産は、他院で、しかも帝王切開だったのですよね。
だから下から産む、と表現されているのですよ。

私はテレビは見ませんが、先週のコウノドリというドラマの主題が、
この既往帝王切開の話題だった、ということは知っていますよ。
大阪の病院の産婦人科医がモデルなのですよね。
前回のお産で帝王切開だったお母さんが、経膣的に産みたいと考えるのに、
どう対応するかという話だったのでしょう?

最近の病院では、前回に帝王切開をしているお母さんは、次もまず帝王切開になります。
みなさんはそれが当たり前だと思われているでしょうが、実はこの20年弱のことなのですよ。
それまではむしろ、帝王切開していたって、下から産む方が当たり前の時代でした。

私は京大病院、天理よろづ相談所病院、兵庫県立塚口病院で働いてきました。
非常勤では10箇所以上の病院でも働いてきましたよ。
だから世の産婦人科のだいたいのことは知っています。

京大と天理では、前回帝王切開でも次は下から、というのが基本でした。
逆に塚口では、次も帝王切開、だったのです。
まったく病院によって方針が違いますね。

では世界的にはどうなっているのでしょうか?
まずWHO(世界保健機構)は、帝王切開していても次は下から産みなさい、ということになっているのですよ。
意外でしたか?
これはアメリカなどでは、帝王切開が非常に多くなっているので、警鐘を鳴らしているという意味合いも有ります。
それに世の中の人は、帝王切開が絶対に安全だと考えがちですが、
帝王切開後に、肺血栓症で、突然亡くなってしまうリスクも有るのですよね。

ただし下から産む場合のデメリットも有ります。
子宮が破裂してしまうことです。
ある報告では、帝王切開した女性が経膣分娩にトライした場合、
100回のうち1回の頻度で子宮破裂が起こるとしています。
私は100回以上はトライしていますが、破裂しなかったのは、単に運が良かっただけかもしれません。
先の塚口病院で経膣分娩にトライしないのは、昔、子宮破裂が有ったからだそうです。

ですから、帝王切開したことの有る女性が、安全だけを考えるなら、
もう赤ちゃんを産まないことです。
これが究極の安全策ですよ。
そんなことを言うと、非難されそうですけれどね。
ですが、妊娠するということは、自分の生命を賭けているということなのです。
それほど決意して妊娠していただきたいものです。
でも、そこまでは考えていませんか?

それでもし妊娠してしまったのなら、迷わず帝王切開すると良いです。
そうすると誰も裁判に巻き込まれません。
裁判に訴えるなど、訴える方も、訴えられる方も無駄な時間を過ごしてしまいますからね。

ですが、どうしても経膣的に産みたい、という女性だけ、産まれてみてはどうでしょうか。
それならば、私も医師生命を賭けて、お手伝いしますよ。


P.S. 報道で知りました。
タイで交通事故で亡くなられたのは、成本先生だったのですね。
しかも愛する娘さんとご一緒に。
旧の石田病院、現在のなりもとレディースホスピタル。
私が体外受精の手技を手取り足取り教えていただいた先生です。
京大で体外受精を始められた先駆的なグループでした。
先生にはたいへんお世話になりました。
ご冥福をお祈りいたします。


臍帯下垂と巻絡の違い

2017-11-08 20:17:22 | 産科
篠山市谷山の志衣(しえ)ちゃん、10月4日生まれ。
「芯の通った、優しい子に育ってください。
みなさんとても優しく接してくださいました。
次も今回同様、リラックスして、ゆったりした気持ちで、お産に臨みたいです。」

初めてのお産も、無事に乗り切ることができたようですね。
初めてのお産がたいへんなのですよ。
2人目からは、案外楽をして産めますけれどね。

中国では1人っ子政策が終わったと思ったら、今年は2人目のお産ラッシュだそうですよ。
だから初産婦さんより経産婦さんの方が多いらしいです。
今までは中国と言えば、1人しか産めないものだから、帝王切開がすごく多かったのですよ。
ところが2人産めるようになれば、帝王切開率も下がっているようですよ。

それに対して、日本では経産婦さんより初産婦さんの方が多いように感じています。
2人目を産むお母さんが減ってきたせいでしょう。
このままでは20年後には、中国の人口はもっと増えているでしょうが、
日本の人口はさらに減って、その差は開いていくばかりでしょう。
そして日本では帝王切開率も、どんどん上がっていくことでしょうね。

どうも日本人は貧乏神に取り憑かれているようで、
子供を産むと自分の生活が台無しになると考えている人たちが多いようです。
子は財産ですから、赤ちゃんを産むことで、自分の財産が増えるというのにね。

さて、今日も昨日の夜中も赤ちゃんが生まれましたよ。
9月からお産ラッシュで、休む暇も有りませんね。
それで最近のお産で、臍帯下垂(さいたいかすい)という異常が有ったのでお話してみましょう。

よく似ている臍帯巻絡(さいたいけんらく)というものは、本当に多いのですよ。
お産の時に心音が下がって、胎児の状態が悪くなると言えば、まず巻絡です。
へその緒がピンと引っ張られて、陣痛の度に、しんどくなるのです。

それに対して、臍帯下垂の方は、陣痛に関わらず、もちろん陣痛に合わせても起こりますが、
ずっとしんどくなるところが違います。
へその緒はピンと引っ張られるのではなく、むしろダランと垂れ下がるのです。

さかごの時にはよく起こります。
さかごはよく、あぐらをかいたようにして生まれてきますから、
股の間からへその緒が垂れ下がることが有るのですよ。
これは怖いのです。

心音が突然大きく下がって、緊急で帝王切開するにも、時間がかかりますからね。
お産では、何が起こるか分かりませんね。
そういう意味では、さかごでは帝王切開、という流れにあります。
タマル産くらいになりましたか?
希望の有るお母さんには、経膣的に産んでもらっているのは。

さかご以外で、臍帯下垂が起こるのは、滅多にありません。
でも稀に有るのですよ。
そうですね、胎児が小さい場合か、逆にお母さんの骨盤が広すぎる場合ですね。
要するに、余裕が有り過ぎる場合に、へその緒が、隙間から下がってくるのです。
この場合も心音が下がって、こちらの心臓も止まりそうになるのですよ。

ひどい場合は、頭より先に、へその緒が出て来ることが有ります。
軽い場合は、生まれた時に、へその緒も一緒に出てきて初めて診断が付くことも有りますよ。
どちらにしても、巻絡以外に下垂も有る、と知っておくくらいで良いでしょう。

このブログも一気に書いているものだから、
誤字脱字だらけだ、と苦情が有りました。
まあ、その方はその前からクレーマーの兆候が有ったのですが。
他にも、切迫早産になったのはクリニックの指導が悪いせいだ、
あるいは乳腺炎になったのは、助産師の指導が悪いせいだ、などというお叱りも。
すごい剣幕で、市に抗議に行くということでしたよ。

こころを尽くしても、尽くしても、喜んでいただける時代は終わりかけているようですね。