タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

不妊治療はストレスフルです

2016-08-05 21:03:52 | 不妊症

上の写真は篠山市住山の心珀(こはく)ちゃん、6月29日生まれ。
「キレイな心、思いやりのある優しい子になってください。
久しぶりのお産は痛かったですが、とてーも幸せでした。
お兄ちゃんも一緒に泊まることができて良かったです。」

そうですよね、退院前からお母さんと赤ちゃんと一緒に、上の子もお泊まりするのは、
帰ってからの練習になるかもしれませんね。
どうしても赤ちゃんが生まれると、上の子がやきもちをやいてしまいますからね。
それには上の子にお手伝いをさせて、手伝ってくれたら褒めてあげるといいのかもしれませんよ。

このところ、毎日1人ずつ赤ちゃんが生まれています。
こんなことはめずらしく、いつも固まってお産が有るのですけれど。
今年は8月が一番、お産が多い月になりそうです。

もうすぐお盆です。我が家では、4番目の子が生まれる時、
兵庫県立柏原でなく、兵庫県立塚口病院に勤務していて、篠山から通っていたのです。
夜中に呼ばれることも多くて、日に2往復したり、泊まりこんだりすることも多かったのです。
予定日がお盆だったので夏休みを取りたかったのですが、
一番若手だったので、お盆の8月15日も仕事をしていました。
そんな時に、カミさんから電話がかかってきて、破水したと言うのですよ。
あわてて飛んで帰った覚えが有ります。
この子も自宅で産んだのですからね。いえいえ産んだのは私でなく、介助しただけでした。

不妊外来では、今週は3人の女性に妊娠反応が陽性に出ましたよ。
不妊外来は、お産と違って、治療する方もとてもストレスが溜まります。
唯一の救いが、この妊娠反応が陽性に出た時なのです。
私がもしエッセイや本を書くとしたら、そうですね、「不妊うつ病」という題にしたい気持ちです。

そんな用語は無いので、これでは世の女性に叱られるかもしれませんが、
純粋に不妊治療は医師にとっても、患者さんカップルにとっても、
とてもストレスフルなものだ、ということが言いたいのですよ。
婦人科医としてよりも、この心の病の部分を治すことの方がこれからの課題でしょうね。

それで1つ今週は、興味深いことが有りましたよ。
この妊娠されたカップルの1組は男性不妊症で、
数ヶ月前から、ご主人にホルモン注射を受けていただいていたのです。
週に3度、自分で自分に注射するのですよ。
どうも男性は痛みに弱いようですね。

目に見えないくらいの針なのですが、とても怖がる男性が多いのです。
ですが、これを続けるだけで9割の男性に精子が増えるというのですから、
是非おすすめなのですよ。
保険が通るようになって1年ほどで、何人かの男性に注射してもらいましたが、
すでに2組目だったと記憶していますよ、うまく妊娠されたのが。

先日は、殆ど精子が居なかった男性に、ホルモン注射を勧めてみたのですよ。
ですが拒否されましたから、おそらく数ヶ月後には、
奥さんが顕微受精をしなくてはならない羽目になるでしょうね。
どうすれば、男性にも治療に参加してもらえるようになるのでしょうか。
これも悩みの種ですよ。






さかごと足三里

2016-08-03 20:42:49 | 産科

上の写真は、篠山市味間新の暁子(あかね)ちゃん、7月3日生まれ。
「明けの明星のように、明るい人生を送れますように。
お産は不安も無く、落ち着いてできました。
質問するときちんと教えていただき、安心しました。」

写真の赤ちゃんも女の子で、4人姉妹なんですよ。
さぞ、かしましく育つことでしょう。

さて今日も、さかごのお話をしましょうか。
何度かしているので、あきられてしまうかもしれません。
というのも、今日も初めてのお産で、しかもさかごのお産が有ったからです。
お母さんの希望で、経膣的にお産されたのですよ。

ここ最近では、2人のお母さんが経膣的に、2人のお母さんが帝王切開だったと記憶しています。
以前はさかごの赤ちゃんは、たいてい経膣的に産んでいただいていたのですが、
最近は、リスクのお話をすると、帝王切開を希望されるお母さんの方が増えてきました。

そもそもなぜ、さかごになるのでしょうか?
毎回さかごになるなら、きっと子宮の形がおかしいのでしょう。
中隔子宮や双角子宮と言って、丸くない子宮のことが時に有るからです。
でも滅多に有りませんけれど。

前回は頭から生まれたのに、今回はさかごだとすると、
次に怪しいのは、胎盤の位置です。
胎盤は普通は子宮の上の方に付いているのですが、
下の方に付いていると、それが邪魔して頭が降りてこられないのです。
だからさかごになってしまうのですよ。
先日帝王切開したお母さんも、このパターンでした。

そして今日、普通に産んだお母さんの場合は、
へその緒が首に巻いていたので、さかごになったっきりだったのですよ。
これも多いパターンです。
こういう時は、経膣的に産むと、生まれる直前に心音が下がってくるので、
緊急で帝王切開をできるようにしておかなくてはなりません。
あるいは、へその緒が引っ張れて、常位胎盤早期剥離という状態になって、危険なことも有ります。

だからさかごになるには、それだけの理由が有るのだということも知っておいてください。
タマル産では、さかごを経膣的に産む時には、安全のために、
メトロイリーゼという方法をとります。
子宮に、水の入ったヨーヨーを入れるという方法です。

さかごで困ることは、他に何が有るでしょう?
生まれた赤ちゃんは、通常とは違う頭の形をしていますよ。
でもそんなことは1ヶ月も経てば、分からなくなります。

足の形も違うのですよ。
両足を上げて、妊娠中からVの字になったまま生まれてくるので、
生まれてからも両足を高く挙げた格好をしています。
問題は、股関節が脱臼しやすくて、先天性股関節脱臼でないかどうかを、
整形外科的に診ておいてもらった方がいいですよ。

今日外来を受診した妊婦さんなのですが、
妊娠中のさかごの方なのです。
足三里に、お灸をすえてもらってもいいか、と尋ねられるのですよ。
私は高校の時に、古典の授業で松尾芭蕉を習ったことを今でも覚えているのですが、
足三里にお灸をすえて旅をしていると書いてありましたよ。
きっと足が楽になるのでしょう。

同じような質問をされるお母さんに、たまに出会います。
さかごの大半は、放っておいても自然に治るのですから、
お灸で治ったかどうか、なんて分かりませんね。
ついでにさかご体操も、同じような意味しかありませんよ。

だって、さかごになる原因は、胎盤の位置や、へその緒の巻き具合などでしたね。
それに効くと思われますか?
ですがひょっとすると、子宮を柔らかくする効果が有って、
妊娠中期くらいの、放っておいても治るようなお母さんにとっては、
早めに治りやすくなるのかもしれませんね。
ですが、しなくても治ったのかもしれません。

交感神経と産婦人科の関係

2016-08-01 20:59:05 | 産科

上の写真は、篠山市北の麗羽(れいは)ちゃん、6月27日生まれ。
「かわいらしい女の子に育ってください。
3人目なので、一番上手にお産できました。
入院中はリラックスして過ごせました。」

綺麗に羽ばたくという意味だそうですよ。
将来が楽しみですね。

今日のお話は、ちょっとおもしろいお話です。
今も切迫早産で長期入院中の妊婦さんが居られます。
切迫早産に使う薬は主に、ベーター2(ツー)刺激剤という薬です。
逆に高血圧症などで使用するのは、ベーターブロッカー(抑制剤)というものです。
それにはベータ2(ツー)ブロッカーや、
ベーターワンも有るし、アルファブロッカーというのも有ります。

人間の体の恒常性を保っているのは、この神経系統の命令によるものが1つです。
交感神経と副交換神経のバランスによるのですよね。
先日なんて血圧が低いので血圧を調節する薬を内科で処方されたら、
フラフラすると言って来院された方が居られました。
交感神経は血圧を上げる方、副交換神経は下げる方です。

婦人科でよく使う使い方は、この切迫早産に対して、交感神経刺激剤として使うのですよ。
すると心臓はバクバクします。
手には汗をかきます。
便秘にもなりますね。
でも、子宮は柔らかくなるからです。

もう1つ、よく使う使い方は、帝王切開や流産の手術の前に、
副交換神経遮断薬というのを使います。
そうするとツバが出るのを抑えることができるので、手術のときに喉が詰まらないでしょう?
その代わり、逆に交感神経が優勢になるので、手術前に血圧が上がったりするわけですけれど。
でも脊椎麻酔では血圧がドンと下がるので、それも愛嬌かもしれません。

そして最近、もう1つ、大きな期待がかけられている使い方が有るのですよ。
それは赤ちゃんによく有る、イチゴ状血管腫というアザに使うとよくなるというのですね。
交感神経ブロッカーの、とくにベータ1(ワン)ブロッカーで、
商品名で言うと、プロプラノロールという薬です。
もともと抹消の血管の収縮を解放して血圧を下げる降圧剤なのですが、
これを内服すると、95%の確率で血管腫が目立たなくなるようです。
まだ保険の適応は無いので、これから治験も行われるのですよ。

これまではイチゴ状血管腫は、放っておいても小学校に上がるくらいには自然消滅するので、
様子を見るだけでよいと言われていたものです。
ですが目の近くにできると、目がみえにくくなったり、
喉にできると呼吸がしにくくなったりと、悪さをするので、
でき場所によっては、積極的にレーザーで焼却するという方法も取られていました。
タマル産にも有るような炭酸ガスレーザーではなくて、
色素レーザーという、赤い色に効果的なレーザーなのですけれど。

あるいは切除したり、ステロイドを内服したりする方法も取られていたのですが、
飲み薬だけでよくなるのだとすれば、ちょっと興味の有るお話ですね。
ただし血圧を下げる薬ですから、子供に使うとすれば、副作用などもデータが揃ってからが良いでしょうね。

最後に、身体のバランスをとっているのは、この神経系統の他にも、
内分泌系と言って、ホルモンによるものも有りますね。
さらに言えば、免疫系というのも、身体もバランスを取っているのですよ。
抗がん剤の研究でも、この分野が大流行りですからね。
ついでに言うと、神経内分泌と言って、神経からホルモンが直接出たりして、
みんな繋がっているのですよ。
とくに女性は、周期的に生きているでしょから。