タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

さかごと足三里

2016-08-03 20:42:49 | 産科

上の写真は、篠山市味間新の暁子(あかね)ちゃん、7月3日生まれ。
「明けの明星のように、明るい人生を送れますように。
お産は不安も無く、落ち着いてできました。
質問するときちんと教えていただき、安心しました。」

写真の赤ちゃんも女の子で、4人姉妹なんですよ。
さぞ、かしましく育つことでしょう。

さて今日も、さかごのお話をしましょうか。
何度かしているので、あきられてしまうかもしれません。
というのも、今日も初めてのお産で、しかもさかごのお産が有ったからです。
お母さんの希望で、経膣的にお産されたのですよ。

ここ最近では、2人のお母さんが経膣的に、2人のお母さんが帝王切開だったと記憶しています。
以前はさかごの赤ちゃんは、たいてい経膣的に産んでいただいていたのですが、
最近は、リスクのお話をすると、帝王切開を希望されるお母さんの方が増えてきました。

そもそもなぜ、さかごになるのでしょうか?
毎回さかごになるなら、きっと子宮の形がおかしいのでしょう。
中隔子宮や双角子宮と言って、丸くない子宮のことが時に有るからです。
でも滅多に有りませんけれど。

前回は頭から生まれたのに、今回はさかごだとすると、
次に怪しいのは、胎盤の位置です。
胎盤は普通は子宮の上の方に付いているのですが、
下の方に付いていると、それが邪魔して頭が降りてこられないのです。
だからさかごになってしまうのですよ。
先日帝王切開したお母さんも、このパターンでした。

そして今日、普通に産んだお母さんの場合は、
へその緒が首に巻いていたので、さかごになったっきりだったのですよ。
これも多いパターンです。
こういう時は、経膣的に産むと、生まれる直前に心音が下がってくるので、
緊急で帝王切開をできるようにしておかなくてはなりません。
あるいは、へその緒が引っ張れて、常位胎盤早期剥離という状態になって、危険なことも有ります。

だからさかごになるには、それだけの理由が有るのだということも知っておいてください。
タマル産では、さかごを経膣的に産む時には、安全のために、
メトロイリーゼという方法をとります。
子宮に、水の入ったヨーヨーを入れるという方法です。

さかごで困ることは、他に何が有るでしょう?
生まれた赤ちゃんは、通常とは違う頭の形をしていますよ。
でもそんなことは1ヶ月も経てば、分からなくなります。

足の形も違うのですよ。
両足を上げて、妊娠中からVの字になったまま生まれてくるので、
生まれてからも両足を高く挙げた格好をしています。
問題は、股関節が脱臼しやすくて、先天性股関節脱臼でないかどうかを、
整形外科的に診ておいてもらった方がいいですよ。

今日外来を受診した妊婦さんなのですが、
妊娠中のさかごの方なのです。
足三里に、お灸をすえてもらってもいいか、と尋ねられるのですよ。
私は高校の時に、古典の授業で松尾芭蕉を習ったことを今でも覚えているのですが、
足三里にお灸をすえて旅をしていると書いてありましたよ。
きっと足が楽になるのでしょう。

同じような質問をされるお母さんに、たまに出会います。
さかごの大半は、放っておいても自然に治るのですから、
お灸で治ったかどうか、なんて分かりませんね。
ついでにさかご体操も、同じような意味しかありませんよ。

だって、さかごになる原因は、胎盤の位置や、へその緒の巻き具合などでしたね。
それに効くと思われますか?
ですがひょっとすると、子宮を柔らかくする効果が有って、
妊娠中期くらいの、放っておいても治るようなお母さんにとっては、
早めに治りやすくなるのかもしれませんね。
ですが、しなくても治ったのかもしれません。

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