タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

後方後頭位でも生まれますか

2015-10-05 22:57:38 | 産科


大阪市中央区の侑夏(ゆうか)ちゃん、8月26日生まれ。
「元気で優しい女の子に青だってください。
生まれてきてくれた時の感動は、一生忘れないと思いました。
ご飯がいしくて、のんびり過ごせました。」

里帰りで初めてのお産でしたね。

今日はブログの更新が遅れてしまいました。
今日2人目の赤ちゃんが、先ほど緊急で帝王切開で生まれたからです。
今週は予定の帝王切開も有るので、続きますね。
それでも帝王切開率が5~6%しかない、というのは本当のところです。

最近、お産の状況が変わってきた、という話をよくするので、
産後の方が、先生はたいへんですね、などと言われたのですよ。
いえいえそうではなくて、母親や父親になる皆さんの方がたいへんなのですよ。

それはどういうことかと言うと、
お産に100%の安全を要求される時代になると、
そんなことは無理だということは誰でも分かることなので、
医療者はとにかく帝王切開に逃げるわけです。
帝王切開さえしておけば、とやかく言われることも少なくなるからです。

そうすると、医療者側はお産が定時に有るようになるので、
けっこう楽になるのです。
だってふつう、お産はいつあるか分からないので、
24時間気を抜けないですからね。
それが帝王切開ばかりだと、人手もかからないし、ゆったりとお産に携われるのですよ。

ところが赤ちゃんを産む方からすれば、
陣痛を経験できない、
それは産んだという満足感を得られない、などの不満にもなるわけです。
それでも最近では、帝王切開になったからと言って、卑下する女性も少なくなりましたけれどね。

私が研修医をしている時の指導医は、すばらしい先生だったのです。
今もその先生のスタイルを真似ているところも有りますからね。
「帝王切開しかしないのなら、外科医で十分じゃないか」と。
そう、産婦人科医の使命は無くなってしまうではないですか。

それでは最後に、どんな時に帝王切開になるのか、ということをおさらいしておきましょう。
お産に関する教科書は、けっこう分厚いのですよ。
それも英語の本が多いのです。
そんなもので勉強しても、あまり役には立ちません。
経験がものを言う世界なのですから。

まず予定でする帝王切開で多いのは、
さかごの時と、前回帝王切開の2つです。
この2つが殆どと言ってもいいでしょう。

それでは緊急でする帝王切開の適応は何でしょう?
こちらはただ1つだけ、と言ってもいいでしょう。
へその緒が胎児の首に巻いている時です。
へその緒が巻いているのは3、4人に1人の割合ですから、
多い病院ではそれくらいの割合で帝王切開になります。
タマル産では帝王切開が少ないのは、へその緒が巻いていても、
うまく対応する術を持っているからです、と自画自賛。

へその緒が巻いていると、
直接的に後ろ向けに引っぱられて、ということも有ります。
首のところで圧迫されて血流が悪くなり、低酸素になるというのも有ります。
さらに、引っ張られると、本来回りながらお母さんのお尻を見るように生まれてくるのが、
反対向けに回って、お腹を見るような格好になることが有ります。
これを後方後頭位と呼びます。
こうなると、ネジ穴にネジを逆向けに刺しているようなもので、
お産がストップしてしまうのです。

だから途中で帝王切開になるのは、たいていはこれが原因です。
先ほども助産師さんに指導していたのですが、
教科書的には反対に回ると、頭の骨の縫い目の向きがどうかを診るのですが、
これは非常に判断が難しいのです。
もっと簡単に、内診した時に、子宮の前だけでなく後ろの唇も触れると逆回転なのだと分かるのです。
ですが、こんなこと書いてある教科書は有りませんよ。
そういうところが、世間ではタマル産の真似をできない所以なのでしょう。
ちょっと専門的な話になりました。

それから先日お話ししたように、予定でするより、緊急でする帝王切開の方が、
赤ちゃんが元気に生まれるのでしたね。
それは肺の水が、陣痛が始まった後に引くからでしたね。
忘れられた方は、前回のブログを思い出してくださいよ。

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