歌番号 162 拾遺抄記載
詞書 八月はかりに、かりのこゑまつうたよみ侍りけるに
詠人 恵慶法師
原文 於幾乃者毛 也々宇知曽与久 保止奈留遠 奈止可利可祢乃 於止奈可留良无
和歌 をきのはも ややうちそよく ほとなるを なとかりかねの おとなかるらむ
読下 荻の葉もややうちそよくほとなるをなとかりかねのおとなかるらん
解釈 萩の葉も秋風にやや打ちそよぐ季節となったのに、どうして、まだ、雁の鳴き声は聞こえて来ないのでしょうか。
歌番号 163
詞書 斎院の屏風に
詠人 よみ人しらす
原文 加里尓止天 久部可利个利也 安幾乃々能 者奈美留本止尓 比毛久礼奴部之
和歌 かりにとて くへかりけりや あきののの はなみるほとに ひもくれぬへし
読下 かりにとて来べかりけりや秋の野の花見るほとに日もくれぬへし
解釈 狩りに来るべき、その言葉の響きではないが、かりそめでもやって来るべきだったのか、秋の野で咲く花を眺めるほどに、時が経ち日も暮れて行くでしょう。
歌番号 164
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 安幾乃々能 者奈乃奈多天尓 於美奈部之 加利尓乃美己武 比止尓於良留奈
和歌 あきののの はなのなたてに をみなへし かりにのみこむ ひとにをらるな
読下 秋の野の花のなたてに女郎花かりにのみ来む人にをらるな
解釈 秋の野の花の名を立てる、その女郎花よ、狩りのために、かりそめにやって来る人に折り取られるな。
歌番号 165
詞書 題しらす
詠人 紀貫之
原文 加利尓止天 和礼者幾川礼止 遠三奈部之 美留尓己々呂曽 於毛飛川幾奴留
和歌 かりにとて われはきつれと をみなへし みるにこころそ おもひつきぬる
読下 かりにとて我はきつれとをみなへし見るに心そ思ひつきぬる
解釈 狩りのためとして私はやってきたが、女郎花を眺めたら、気持ちは狩りの獲物よりも女郎花に向くようになりました。
歌番号 166 拾遺抄記載
詞書 陽成院の御屏風に、こたかかりしたる所
詠人 紀貫之
原文 可里尓乃美 比止乃美由礼者 遠美奈部之 者奈乃多毛止曽 川由个可利个留
和歌 かりにのみ ひとのみゆれは をみなへし はなのたもとそ つゆけかりける
読下 かりにのみ人の見ゆれはをみなへし花のたもとそつゆけかりける
解釈 早朝の小鷹による狩りの場としてばかりに人はこの野を眺めてみると、女郎花のその花の袂は朝露が掛かっていました。
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