歌番号 273 拾遺抄記載
詞書 天暦のみかと四十になりおはしましける時、山しなてらに金泥寿命経四十巻をかき、供養したてまつりて、御巻数つるにくはせてすはまにたてたりけり、そのすはまのしき物にあまたのうた、あしてにかける中に
詠人 かねもり
原文 也万之奈乃 也万乃以者祢尓 万川遠宇部天 止幾八加幾者尓 以乃利川留可奈
和歌 やましなの やまのいはねに まつをうゑて ときはかきはに いのりつるかな
読下 山しなの山のいはねに松をうゑてときはかきはにいのりつるかな
解釈 山科の山の磐根に松を植えて、貴方の齢は常盤堅磐にあって下さいと願います。
歌番号 274 拾遺抄記載
詞書 天暦のみかと四十になりおはしましける時、山しなてらに金泥寿命経四十巻をかき、供養したてまつりて、御巻数つるにくはせてすはまにたてたりけり、そのすはまのしき物にあまたのうた、あしてにかける中に
詠人 仲算法師
原文 己恵多可久 美可左乃也万曽 与者不奈留 安女乃志多己曽 太乃之加留良之
和歌 こゑたかく みかさのやまそ よはふなる あめのしたこそ たのしかるらし
読下 声たかくみかさの山そよはふなるあめのしたこそたのしかるらし
解釈 天からの声も高く、ここは帝います御笠の山ぞ、世は経て行きます、その君が治める御宇は安楽であるはずです。
注意 初句の「こゑたかく」は中国漢武帝の「山呼」の故事を引く、判りにくい歌です。
歌番号 275 拾遺抄記載
詞書 承平四年、中宮の賀し侍りける時の屏風に
詠人 斎宮内侍
原文 以呂加部奴 万川止多个止乃 寸恵乃与遠 以川礼比左之止 幾美乃美曽美武
和歌 いろかへぬ まつとたけとの すゑのよを いつれひさしと きみのみそみむ
読下 色かへぬ松と竹とのすゑの世をいつれひさしと君のみそ見む
解釈 葉の色を変えない松と竹との末の世の姿を、どちらが久しく常緑であるかを、君だけがご覧になるのでしょう。
歌番号 276 拾遺抄記載
詞書 おなし賀に、竹のつゑつくりて侍りけるに
詠人 大中臣頼基
原文 飛止布之尓 千与遠己女多留 川恵奈礼者 徒久止毛川幾之 幾美可与者日八
和歌 ひとふしに ちよをこめたる つゑなれは つくともつきし きみかよはひは
読下 ひとふしに千世をこめたる杖なれはつくともつきじ君かよはひは
解釈 一節毎に千代であることを願い込めた杖ですので、杖を突いても齢は尽きることの無い貴女の齢であります。
歌番号 277 拾遺抄記載
詞書 清慎公、五十の賀し侍りける時の屏風に
詠人 もとすけ
原文 幾美可世遠 奈尓々多止部无 佐々礼以之乃 以者本止奈良无 本止毛安可祢八
和歌 きみかよを なににたとへむ さされいしの いはほとならむ ほともあかねは
読下 君か世をなににたとへんさされいしのいはほとならんほともあかねは
解釈 貴方の生きる世を何に例えましょうか、さざれ石が巌となるでしょう、その長久の時のほどでも例えとして飽き足らないのですから。