歌番号 797 拾遺抄記載
詞書 春宮左近
原文 布良奴世乃 己々呂遠志良天 於保曽良乃 安女遠徒良之止 於毛飛个留可奈
和歌 ふらぬよの こころをしらて おほそらの あめをつらしと おもひけるかな
読下 ふらぬ夜の心をしらておほそらの雨をつらしと思ひけるかな
解釈 (女が通って来るはずの男を待つ、その)雨が降らない夜の気持ちを気付かないのでしょうか、大空からの雨だけを(通うことが)辛いことだと貴方は思っているようです。
注意 新日本古典文学大系の解釈とは大きく違います。これは独善です。
歌番号 798 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 己呂毛多尓 奈可尓安利之者 宇止可利幾 安者奴与遠左部 々多天川留可奈
和歌 ころもたに なかにありしは うとかりき あはぬよをさへ へたてつるかな
読下 衣たになかに有りしはうとかりきあはぬ夜をさへへたてつるかな
解釈 衣さえも二人の間にあれば邪魔なものだと思っていましたが、今は、貴方と逢わない夜さえも、幾夜も二人の間を隔てているようです。
歌番号 799
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 奈可幾世毛 比止遠川良之止 於毛不尓八 祢奈久尓安久留 毛乃尓曽安利个留
和歌 なかきよも ひとをつらしと おもふには ねなくにあくる ものにそありける
読下 なかき夜も人をつらしと思ふにはねなくにあくる物にそ有りける
解釈 長い夜、その泣いた夜もあの人の振る舞いが辛いと思うので、寝ることも無く、音を上げて泣く、その夜が明ける、そのようなことであります。
歌番号 800 拾遺抄記載
詞書 今はとはしといひ侍りける女のもとにつかはしける
詠人 よみ人しらす
原文 和春礼奈无 以満者止者之止 於毛飛徒々 奴累与之毛己曽 由女尓美恵个礼
和歌 わすれなむ いまはとはしと おもひつつ ぬるよしもこそ ゆめにみえけれ
読下 わすれなん今はとはしと思ひつつぬる夜しもこそゆめに見えけれ
解釈 もう、忘れてしまおう、今は貴女の許へ問うこともしませんと、思いながら寝るときに限り、貴女の姿が夢に現れます。
歌番号 801
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 与累止天毛 祢良礼左利个利 比止之礼寸 祢左女乃己比尓 於止呂可礼川々
和歌 よるとても ねられさりけり ひとしれす ねさめのこひに おとろかれつつ
読下 よるとてもねられさりけり人しれすねさめのこひにおとろかれつつ
解釈 夜だからと言っても寝ることが出来ません、人知れず寝ることも出来ない貴女への恋心に、今更ながらに気付かされます。