歌番号 822 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 堂々久止天 也止乃川万止遠 安个多礼者 比止毛己寸恵乃 久比奈々利个利
和歌 たたくとて やとのつまとを あけたれは ひともこすゑの くひななりけり
読下 たたくとてやとのつまとをあけたれは人もこすゑのくひななりけり
解釈 誰かが戸を叩いたと思って屋敷の妻戸を開けみたら、人がやって来たのではなく、梢のクイナの鳴き声でした。
歌番号 823
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 奈川己呂毛 宇寸幾奈可良曽 多乃末留々 飛止部奈留之毛 三尓知可个礼者
和歌 なつころも うすきなからそ たのまるる ひとへなるしも みにちかけれは
読下 夏衣うすきなからそたのまるるひとへなるしも身にちかけれは
解釈 夏衣は薄いではありますが夏には身に十分です、その言葉の響きではありませんが、一重で薄いとは言いますが、信頼を寄せる人になるでしょう、私の身近に居るのですから。
歌番号 824
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 加里天保寸 与止乃満己毛乃 安女布礼者 徒可祢毛安部奴 己日毛寸留可奈
和歌 かりてほす よとのまこもの あめふれは つかぬもあへぬ こひもするかな
読下 かりてほすよとのまこもの雨ふれはつかねもあへぬこひもするかな
解釈 刈り取って干す淀の真菰に雨が降れば束ねることも出来ない、そこ言葉の響きではありませんが、束の間も逢えない、そのような貴女との恋をしたようです。
歌番号 825 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 美奈川幾乃 川知左部左个天 々留比尓毛 和可曽天飛女也 以毛尓安者寸之天
和歌 みなつきの つちさへさけて てるひにも わかそてひめや いもにあはすして
読下 みな月のつちさへさけててる日にもわかそてひめやいもにあはすして
解釈 水無月、六月の土さえ乾ききって裂ける炎天下にも、私の袖は恋の苦しみに流す涙で濡れている、愛しい貴女に逢えなくて。
歌番号 826
詞書 題しらす
詠人 人まろ
原文 奈累加美乃 志波之宇己幾天 曽良久毛利 安女毛布良奈无 幾美止万留部久
和歌 なるかみの しはしうこきて そらくもり あめもふらなむ きみとまるへく
読下 なる神のしはしうこきてそらくもり雨もふらなん君とまるへく
解釈 鳴る神がしばし動いて空が曇り、きっとあめも降るでしょう、貴方が泊まるようにと。