今度の蔵めぐりで初めて米鶴酒造さんを訪ねることが出来た。思えば米鶴さんとのお付き合いは長い。私が酒の勉強を初めたころ、純粋日本酒協会に教わることが多かったからだ。米鶴酒造の梅津伊兵衛氏は、今こそ第一線から退いてご子息の陽一郎氏に社長を任せているが、京都伏見の招徳酒造の木村善美前社長等と共に、同協会でご活躍なさっていた。
私は同協会の催しに参加し、またいろいろな資料をいただきながら純米酒の勉強をしてきたのである。そして当時好きだった酒の一つに「米鶴盗み吟醸」があり、よく飲んだ。また、今はもう出してないようだが「吾妻の白猿」などを、山形県を旅するときは温泉に持ち込んだりして飲んだものだ。音楽好きの前社長が名づけた「ベートーヴェン物語」なども懐かしい。
今度やっと訪問できて、「盗み吟醸」が展示され、白猿の写真が飾ってあるのを見て懐かしく思った。残念ながら伊兵衛前社長は町内の会合に出かけておられ会えなかったが、ご子息の陽一郎社長に蔵を案内していただいた。
また、名杜氏として名高い須貝智氏にお会いでき、酒つくりの話を聞くことが出来た。須貝杜氏の名刺を頂くと、そこには「米作りからの酒造り」と大書されてある。今回の蔵めぐりで感じたこととして書き続けている「酒造りの原点」をここでも見る思いがした。日本酒の原料としての米の性質、その性質を生かした酒造り・・・、そこにこそ、われわれが掲げる「純米酒こそ日本酒」とする原点があるという思いを強くした。
須貝杜氏
試飲の席では、同行のS氏発案の「試験かんすけ(携帯用お燗器)」を使用させていただき、大吟醸造りの様々な酒をお燗でも飲むなど、贅沢な試飲をさせていただいた。このような点からも、この酒蔵めぐりは贅沢な催しであった。蔵元のご配慮があったればこそである。