5月16日付日経新聞夕刊に、次の記事が載っていた。
「ローレライ伝説で知られるドイツ西部のライン渓谷に橋を建設する計画が浮上し、一帯がユネスコの世界遺産登録を抹消されるのではないかと懸念されている」
これにはいささかがっかりした。というのは、一昨年ドイツを訪問してライン下りをやり、その景観もさることながら、ラインという大河の観光メイン部分に、橋が架けられていないことに感動すら覚えたからである。
ライン下りのメインは「ロマンティック・ライン」と呼ばれる“マインツ――コブレンツ”間である。ライン川とマイン川の合流点マインツと、モーゼル川の合流点コブレンツはいずれも大都市で、ここには当然橋が架けられている。しかし両市の間を流れる約90kmに及ぶライン川には、どこにも橋は架けられてない。川幅は狭いところでも100m、広い川幅は300mを越すが、一本の橋もない。それは景観を守るためと聞いて、さすがドイツ、と感動していたのである。
私は、ライン川にせり出した“ローレライの岸壁”を仰ぎながら、頭上に橋の架かった情景は想像もしなかった。それは、何千年前からこの様であったであろう、と思わせる情景であった。もし橋が架かれば、別のローレライを見ることになるのであろう。
ただ、両岸に住む人たちの経済的要求からするならば、橋を望む声は大きいであろう。このロマンティック・ラインと呼ばれる90km間でも、ライン川の両岸に鉄道が走っており次々と町が並ぶ。しかもその後背には大きな経済圏を控えているのだから、それらの経済人たちは橋を期待しつづけているだろう。前掲新聞記事も、「橋による経済活性化がその背景にある」と記している。
経済的発展をとるか、世界遺産としての大自然をそのまま残すか・・・ドイツ人はそのいずれを選ぶのだろうか?
私などは、「これまで橋をかけることなく、ドイツは戦後の世界をリードする経済発展を遂げたのだから、今更これ以上の経済を求めなくてもいいではないか」と言いたいのだが、「よそ者に何がわかる」と一喝されれば、それ以上は黙るしかないのであろうか。
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