EU大統領に、イギリスのブレア氏を退けたベルギーの首相ファン・ロンパウ氏が選ばれた。5億人という巨大欧州人の賢明な判断であったと思う。
一時、そのカリスマ性も含めブレア氏の優勢が伝えられていたが、冷静な判断を迫られるにつれ、「ヨーロッパの民意」はブレア氏から離れて行ったのではないか。ブレア氏の行動とEUの目指すところは一致しないことを考えれば当然であろう。
そもそもEUは、アメリカを中心とする新資本主義勢力と距離を置くために生まれたと私は思っている。弱肉強食の競争原理に全てを委ねるアメリカ的資本主義から、北欧三国、デンマーク、オランダなどは、既に100年近く前から舵を切りはじめ、福祉、共存を基本とする新しい資本主義の方向に向かったと思っている。そして徐々に、ヨーロッパ全体がその方向に軸足を移してきたのがEU連合への動きであろう。
その中で、イギリスの動きは異なっていた。レーガンと呼応するサッチャーの政治がそれであり、その反省から生まれたと思われる労働党政権でありながらブレア氏は、結局EUよりアメリカに軸足を置いてきたのではないか。イラク戦争への追随は、その典型的な現われであろう。
EU大統領に選ばれたファン・ロンパウ氏の発言に感銘を受けた。
「結束は私たちの力、多様性は豊かさだ。各国が独自の歴史と文化を持つ。私たちの旅路の目的地は共通だが、荷物は異なる。」(昨日付毎日新聞)
独自の歴史と文化を認め、むしろその多様性を尊重しながら結束しよう、と呼びかける。相当な柔軟性を必要とする難しい課題だ。しかしそれこそ豊かさと力の源泉だ、と呼びかけているのだ。
別々の荷物を持って共通の目的地に向かう旅に出よう・・・。
素晴らしい言葉である。EUの新たな旅立ちを心から祝う。
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