前回、土の匂いのする電話と題して投稿したら、今度は、土の匂いがいっぱいする贈り物が届いた。新潟県は頚城(くびき)平野の旧吉川町(現上越市吉川区)に住むIさんからだ。
もう21年も前のこととなるが、私は、この吉川町にあった吉川高校を題材に、『高校生が酒を造る町』を書いた。吉川高校はすでに廃校になり、町は上越市に合併され、当時大変お世話になった吉川高校同窓会長の市村幸男さんも4年前に亡くなった。いまやIさんだけとつながっており、時折、四季の便りを交わしている。
贈り物を開けると、お酒、酒かす、お米(5k袋)、はちみつ2瓶と、すべてIさん手作りの品ばかりだ。
添えられた手紙に、それぞれの品を作る苦労話が書かれてあった。読むうちに、泥だらけになって米を育て、打ち続くれんげ草畑でミツバチ追うIさんの姿が目に浮かんだ。冬にはその米で酒を醸す。全て土と共にある。
手紙の最後は次の言葉で結ばれてあった。
「ウクライナのことを論じても何の助けにもなりませんが、たった一人の独裁者とそれを許す人々。…(中略)…人を殺戮している人はどんな酒をどう思って飲んでいるのでしょうか。その酒はどんな味がするのでしょうか。私は家族と共に質素ながらもお酒を飲めることに感謝しています。ウクライナの方々に一日も早くゆっくりとご家族でお酒を飲める日が来ることを祈っています」
彼の優しい心根が紙面に沁みていた。
我が家の玄関に咲くかいどう