ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領が、ご夫人同伴で日本を訪問した。さりげなく京都などを訪れ、さりげなく帰って行った。一部を除いてマスコミなどが大きく採り上げることもなかった。しかし、日本人に痛烈な言葉をいくつも残した。たとえば…、「江戸時代の日本人は午前中働き午後は芝居を見るなど文化を楽しんだ。今の日本人は、何か重大なことを見失って生きているのではないか?」など。
この、ブラジルとアルゼンチンに挟まれた小国ウルグアイの大統領を有名にしたのは、「世界一貧しい大統領」(給与の90%を社会に寄付し10%で生活していた)という呼び名と、「国連持続可能な開発会議」における演説である。同演説は、大要つぎのようなことを提起している。
「世界の貧困をなくすということは、今ある裕福な国々の発展と消費モデルを真似ることだろうか? しかし、ドイツ人が車を持つレベルでインド人がそれを持ったら、この世に生きていくための酸素がどれくらい残るだろうか? 同じことだが、欧州の裕福な消費を世界80億の人ができる原料が、この地球にあるだろうか?」
「市場経済は無限の消費と発展を求める世界、つまり大量生産と大量消費の世界をつくり、しかもそれをグローバリゼイションの名で世界の原料を探し求める社会にした。私たちは、その市場経済をコントロールできているか? いや、そのグローバリゼーションこそが私たちをコントロールしている。とすれば、資源や貧困など現下の問題は、環境問題ではなく政治問題である」
その上に立って、「貧乏人とは物を持っていない人のことを言うではなく、無限の欲望に駆られていくら物を持っても満足しない人のことだ」というセネカの言葉を引用し、また、「私の国は人口300万だが1300万頭の牛や1000万頭のヤギがいる。食料輸出国で、国の90%に資源が豊富だ。国民は8時間労働を闘いとり、6時間労働の人もいる」と豊かさを強調した。
そして次のように結論付けている。
「私たちは発展するために生きているのではない。幸せになるためにこの地球にやってきたのだ。発展は人類が幸せになるためのものでなければならない。それは、子供を育て、友情や愛情をはぐくみ、そして必要最小限の物を持つこと、に役立たねばならない」
並み居る大国の首脳たちは、この演説をどう聞いたのであろうか? オバマ、キャメロン、メルケル、プーチン,習近平…、一人づつ、十分に聴いてみたい。何よりも、安倍晋三は何か考えを持っているだろうか、聞いてみたい。