旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

感性について

2007-01-27 15:37:57 | 時局雑感

 

 久しぶりに高校の同窓会に出席した。集まった20人は既に古希を超えて大半が71歳、高校を卒業して半世紀(53年)が経過している。幾人かが、私がこのたび出版した『旅のプラズマ』に触れてくれた。多くは過分な評価であり、お世辞と分かっていても、同郷で心を許しあって青春を生きた友の評価はうれしいものだ。
 中でもI君のスピーチが心に残った。彼は「首藤、お前はいい感性をしているなあ・・・、いくつもの章で俺は感動したよ」と言ってくれた。しかし、私はむしろそれに続くスピーチに彼の「豊かな感性」を見たのであった。要旨は以下のとおり。

 「・・・毎朝一時間ぐらい散歩をしている。犬を連れている人によく会うが、多くは犬のウンチをきれいに掃除している。中にはそのまま放置しているのを見て怒りを覚えることもあるが、先日美しい光景を見た。連れている犬が電柱にオシッコをかけたところその飼い主は湿したタオルで丁寧にその電柱を拭いていた。すばらしい光景であった・・・・・・」

 私は未だ出くわしたことはないが、もしかしたらウンチだけではなくオシッコも掃除する飼い主もたくさん居るのかもしれない。しかし私は、I君がそのようなことを見逃さず、その行為に深く感動する感性の持主であることがうれしかった。
 実は彼は、高校時代ラグビー部だった。常に泥んこになり体と体をぶっつけあっていた彼しか思い出にない。私はむしろ青白き学徒を気取っていたので、彼と話し合ったことなどほとんどなかった。その彼は私などよりはるかに豊かな感受性を養ってきていたのだ。私の本の隅々にまで感動してくれ、街角のふと見る行為に心を動かしているのである。
 I君は、半世紀前の高校グランドで泥にまみれながら、土のにおい、ぶっかる相手の体温、スクラムを組む敵の息遣いの中で今の感性を築いてきたに違いない。
                           


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