(前回からの続き)
本稿では、このたびの「Brexit」(英国のEU離脱)決定を機に、通貨の強さを表す不等式「金>円>ドル>ユーロ>新興国通貨」(実質金利・価値保存力の高い順)が成り立つことがあらためて確認されたといった見方を綴っています。これについて今回は「金」(ゴールド)と「円」の関係について思うところを述べてみます。
再度、Brexit直後(6/24)の金、円、ドル、ユーロ、韓国ウォン、英ポンドの6/23値(100円相当)に対する金額を比べたグラフを表示します。前回は金だけが唯一、円に対してプラス利回り(100.8円と0.8%のリターン)となったことを紹介しました。
で、この金の価格ですが、この日、つまり英国での国民投票でEU離脱派が勝利した日の世界各国のニュースでは「急騰」といったニュアンスで伝えられています。実際、1トロイオンス当たり1256.84ドル(スポット値)だった6/23の価格は6/24には同1315.75ドルと文字どおり4.7%も急騰しています。これと反比例して暴落した英ポンド換算の金価格の上昇率はじつに18%あまりにも達します。なので英国人の目には、金は沈むポンドの海に浮かぶノアの箱舟に映ったことでしょう・・・(円も、ね!)
これに対して円建ての金価格の上昇率は上記のように0.8%に過ぎません。その理由は当然ながら、この間の円がドルやポンド、というよりはスイスフラン(6/23:100→6/24:94.9)を含む主要通貨のすべてに対して上昇したから。そのため円からみた金価格の上昇率は、他通貨からみたそれほど大きくならなかったというわけです。
以前もこちらの記事に書きましたが、世界的な資産バブル崩壊過程が不可逆的に進む(?)この先の局面でも、金と円の両者の価値はともに上がるため、しばらくの間は「金≧円」すなわち円建ての金価格はそれほど上下することなく推移するだろうと予想しています。それはたとえば、1ドル120円・1トロイオンス1200ドルのとき(リスクオン時)の金の円建て価格(消費税込み)は1グラム当たりちょうど5000円ですが、リスクオフ・モードが強まって同80円・1800ドルになっても5000円のまま、といった具合です。
それでも上記で金が円を(わずかとはいえ)上回るパフォーマンスを示したことはとても重要と考えます。わたしたちにとっても、金が資産保全の役割をしっかりと果たしてくれることを証明してくれたからです。べつな言い方をすれば、円のリスクヘッジにふさわしい投資対象はドルなどの外貨ではけっしてなく、金以外にあり得ないことが示唆されたということ。「金>円>ドル>・・・」なのだから、当たり前のことではありますが・・・
このあたりが、こちらの記事等で(国家そして個人としての)日本人の資産ポートフォリオは、円(の預貯金≒日本国債)で50%、金で30~40%、日本株で10~20%が適当、と書き続けている所以でもあります(投資のご判断は自己責任でお願いいたします)。