(前回からの続き)
・・・と綴ってきて、次は日銀について。前回「この手の金融政策(非伝統的金融政策)において聞かれる『異次元』とか『リスクプレミアム』といったカッコ良さげ(?)なワードの本質は、何てことはない、単に中銀がインフレ抑制に失敗したことのスマートな(?)言い訳に過ぎない」と書きました。実際、日銀がいま実施中の「長短金利操作付き量的質的金融緩和」なる金融政策(って、これまたリフレ派の政策名らしく、何だか高尚で専門チックに思えるが、その実体って・・・?)は俗に「異次元」緩和と呼ばれるわけです・・・ってことは、上記に当てはめると、(米FRBなどと同様に)日銀もまたインフレの抑え込みに失敗したって意味?となりますが・・・
・・・って、日本と日銀に限ってはそうではありません。この文脈に沿っていうと、日銀は「インフレ制御に失敗!・・・しよう、そうしよう!」と必死にもがくばかり、ということです。現実にはインフレは起きません。なぜなら、こちらの記事を含めて何度も書いているように、他国の中銀が日銀以上のインフレ(通貨増発)策―――量的質的なスケールで日銀を上回る勢いでマネーをバラマくこと―――を繰り出すしかないためです。であれば、どうしても円に対して市中の外貨の量が増えてしまうから円高、つまりインフレが抑制される方向(物価下落≒デフレ)に進みがち、というわけ。
・・・実は、日本がまだ救われているのはこのため、といえます。要するに、上述、最悪の経済現象としてのインフレが顕在化してはいないということ。たしかに、アベノミクス≒異次元緩和(円安誘導)が始まって以降、わが国は超マイナス成長に転落し、国富も激減してしまいました。けれど不幸中の幸いで、わたしたちの経済はこちらの記事に書いた構造となっていることなどから、そのインフレ圧力は原材料コストの上昇程度に留まり、いっぽうで省エネの進展や企業努力等でもたらされるコストダウン効果が働くため、トータルの物価はそれほど上がることはないし、そうこうしているうちに上記のとおり、必然的に(?)円が強くなってインフレは収まる、といったことになります。これ、何か不都合でも?ありませんよね、だって最悪が起こっていないのですから。
ここで、もしアベノミクスが「成功」(本当の意味はインフレ抑制に失敗)したら・・・悲惨です。というのも、このとき日本は真にインフレ≒マイナス金利状態が現出する状態になるから。つまりアベノミクス目標年率2%達成!で名目金利はほぼ0%と、完全な逆ザヤとなるということです。こうして物価を上げておいて、さらにアベノミクスは消費税率を引き上げようというのですから、こちらの記事等でいう(輸入)インフレ&消費増税の「Wパンチ」で個人消費主体の本邦経済、そして国民生活は・・・アベノミクス各位の狙いのとおり(?)フルボッコにされて・・・
・・・となっていないわけです、アベノミクスがいくら上記成功を目論んでも現実には。それこそ、日本経済の強靭さの証です・・・って、何に対して強いのかといえば、クドいですが(アベノミクスが巻き起こそうとする)インフレの害悪に対して、になります。そして上記に照らすと、それは・・・日銀こそが緩和競争の真の勝者であることを意味します・・・っても、インフレを起こしたくても起こせないってことで、何とも皮肉ではありますが・・・