(前回からの続き)
前回、通貨安(円安ドル高)の進行局面における消費税率の引き上げは、円安インフレおよび増税インフレの双方の痛撃をわが国の経済社会に与える、といったようなことを書きました。そしてこの強烈なインフレWパンチを国民に対して繰り出しているのが「アベノミクス」―――「円安誘導」(≒日銀「異次元緩和」)をテコとした「リフレーション政策」(意図的にインフレを起こそうという政策)ということになります。
そのあたりが読み取れるデータが以下のグラフ。いまからちょうど2年前の2012年11月時点を「100」としたときの今年9月までの「消費者物価指数」(CPI)の月別の推移をみたものです(出典:総務省統計)。同年月を基準としたのは、実質的なアベノミクスがこのときにスタートしたからです(同月中旬、当時の安倍自民党総裁[現首相]がインフレ目標2~3%/年を発表)。
で、これによると、CPIの総合値は現時点(2014/9)で104.7となっています。2012/11から約2年で4.7%もの値上がりです。その内訳ですが、今年4月の消費税率引き上げ(5→8%)にともなう上昇分:約2.9%(=108/105)が入っているので、これ以外の約1.8%の物価上昇はおもに上記の通貨安(円安ドル高)誘導政策によって引き起こされたものと推測されます。何せこの間、1ドル80.7円(2012/11)から同107.2円(2014/9)と、約3割近くも円安ドル高になったわけですからね・・・。こうして、アベノミクス開始以降、税率アップと円安物価高の双方が確実に国民生活に影を落とし始めているようすが窺えるわけです。
ここでとくに指摘しておかなくてはならない重大な問題は、よりによって庶民にとっていちばん上がってほしくない食料品価格や光熱費のインフレ率が上記総合値4.7%を大きく上回っていることです。
まず「食料」は107.0と7%もの値上がりです(なお、上記のグラフには出てきませんが、そのうち生鮮食料品は122.8と23%もの上昇となっています)。そしてもっと大きく上がっているのはエネルギー関係の費用。ガス代9%(109.1)、エネルギー(ガソリン・灯油等)14%(114.1)、最高が電気代の15%(115.1)! 以前から記しているように、やっぱりアベノミクスの優等生でしたね、電気料金が・・・。
上記のように消費増税の影響はプラス2.9%だから、それを除いた食費・光熱費の上昇要因は、安倍政権・黒田日銀が意図的に引き起こした輸入原材料(小麦、大豆、原油・ガス等)円建て価格のインフレであるとともに、これらがCPI総合値を税率上昇分以上に引き上げる原動力となったのは間違いのないところ。つまり、アベノミクスのめざすインフレとは、輸入原材料の円安インフレでCPIを押し上げるという、コストプッシュ型の「悪いインフレ」に過ぎないことが、あらためて確認できたわけで・・・。
そんななかでの今年4月の消費増税がどれほど日本の実体経済と国民の暮らしにネガティブな打撃を与えたか、誰にでも容易に想像がつくというものです。上のグラフですが、前回ご紹介した下記のイメージに似ていると思いませんか・・・?