(前回からの続き)
前述のように、米金融市場ではFRBが次回6/18~19のFOMC(連邦公開市場委員会:FRBの金融政策決定会合)利下げに踏み切るとの観測が強まっているわけですが、現在のFF金利(政策金利)は2.25~2.50%の範囲、そして長期金利は2.11%(13日時点)という水準です(って、長短金利がほぼ同じじゃん!?)。これ、こちらの記事に書いたように、過去FRBが実施した利下げのスタート地点における金利水準と比べ、異様といっても過言ではないほど「低い」といえます。それほどの低金利なのに利下げして景気を刺激しなければマズい、ということは・・・それだけ米経済は金利上昇への耐性を失っている、要するに借金バブル≒資産インフレへの依存度が空前の規模にまで高まっている、というわけなのでしょう・・・
であれば、FRBにはこの先、利下げ以外の道はない・・・っても以前の緩和局面とは違って下げ代はわずか2%あまりですから、当然ながらその程度では上記バブルを維持膨張させるにはまったくパワーが足りません。よって必然的にさらなる緩和すなわちQE第4弾・・・という名のインフレ策に手を染めることになります。これ、本稿の文脈に照らせば、FRBはインフレに屈することを意味するわけで、こうなればFRBは中銀すなわちインフレファイターとしての存在意義を失うことになりますが・・・
さて、このFRBの利下げを先取りしたかのような動きが世界各国、とりわけ新興国で目立ってきています。日経新聞によれば先般、フィリピンがじつに6年半ぶりに利下げに踏み切ったほか、5月にはマレーシアやニュージーランドが2~3年ぶりの利下げに動きました。今月はインドやオーストラリアもこれら諸国に追随して利下げをしています。そしてこれまでのFRBの金融引き締めにともなってアメリカ等に回帰していたマネーが一転、これらの国々に向かい始めたとのこと。実際、国際金融協会によれば、6月1週に36億ドルが新興国に流入したそうな・・・
緩和競争―――上記のように、相手国が金融緩和をするのならウチも、といった流れが強まっています。この動きも上記と同じで、FRBに続いて利下げした各国中銀もまた・・・インフレに負けたことを意味します(?)。つまりアメリカと同じく、新興国も巨額借金でこしらえた資産バブルで経済を回していくしかないということですね。なので、ちょっとリスクオフ(≒金利上昇)になっただけで資金逃避そして資産デフレが起こって金融システムが動揺し・・・みたいな、アメリカと同じような危機に陥ることに・・・って、各国ともにドル圏(アメリカ&新興国)だからまあ当然でしょうね。こうしてインフレに頼れば頼るほど、ドル圏の国々では耐えがたい金利水準がどんどん下がってしまいそうです・・・
以上などのように考えると、緩和競争とは、緩和をしないほうが負け、なのではなく、緩和したほうが負け・・・て、インフレに沈んでいく、という意味と解するべきなのでしょう・・・