欧州連合(EU)もまたアメリカと同じく、いやもしかしたらアメリカ以上に・・・インフレに頼り、そしてインフレに沈んでいくのかもしれないですね・・・?
今月2日の臨時首脳会議でEUは、次期の欧州中央銀行(ECB)の総裁にフランスのクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事(IMFのトップ)、欧州委員長(EUのトップ)にドイツのウルズラ・フォンデアライエン国防相を指名しました(いずれも女性)。2人とも今後は議会の承認等を経て今年の秋にそれぞれの役職に就くことになります。これにより、現在のECB総裁であるイタリアのマリオ・ドラギ氏、欧州委員長であるルクセンブルクのジャンクロード・ユンケル氏はそれぞれ今年の10月末に退任することになりました。
こちらの記事等でも書いたように、このあたりの個人的な関心事は次のECB総裁が誰になるのか・・・もそうですが、どこの国の人になるのか?でした。同記事を書いた2017年秋の時点では、同候補の最右翼はドイツのイェンス・ワイトマン独連銀総裁だったように思われます。まあECB総裁ポストは初代(1999~2003)がオランダ人(ドイセンベルク氏)、次(2003~2011)がフランス人(トリシェ氏)、そしていま(2011~2019)がイタリア人、とくれば、EU内のパワーバランスからすれば、次はドイツの順番、と考えられたのでしょうし、それはもっともなことだったと思います。ですが・・・同記事のなかでも予想したとおり、やはりワイトマン氏のドイツはECBトップのポストを取ることはできなかった、ということですね・・・
そのように考えた理由について、あらためて簡単に記しておけば、EU内の各国にとって望ましい政策金利の水準等はまちまちであり、したがってどうしてもそれらの中間くらいのレベルにせざるを得ず、それに照らすとドイツとかワイトマン氏らの政策スタンスは極端に偏り過ぎてしまうので、ドイツ以外のEU加盟国にとってはドイツに金融政策の主導権を握らせたくないという意図が強く働き、結局それが反映されて上記の人事になったということです。だから、エラいけれど象徴的なポストに過ぎない(?)欧州委員長にドイツ人が就くということは、そういうこと---ドイツ人をECBトップに据えることはできないから、その代わりにコチラをあげるよ、だから我慢してね、といった具合でしょう(?)。
もう少し具体的には、すでに過去記事でご紹介済みの、EU諸国を国債価格の高い順(長期金利の低い順)に並べた不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」で説明すれば分かりやすくなります。これを見れば、たとえばイタリアやギリシャのような高金利の国にとっては金融政策は緩和的なものがありがたいだろうと容易に推測できるわけです。他方でドイツ等にとってはそれだと金利が低くなり過ぎ、よけいなバブルを招いて金融システム等が不安定になりかねないからNGでしょう。そんなバラバラな印象のEUでECBがひとつの政策ラインを決定するとしたら、やはり全体の平均くらいで線を引くしかなく、それが上記の式における「フランス」くらいのポジション、といった感じで、実際に次期総裁が現IMFトップのラガルド氏すなわち「フランス」の方になった、というわけです・・・
だからその意味するところは、いまも(?)そして今秋以降もECBの政策スタンスは「ハト」だということでしょうね・・・