(前回からの続き)
ところで、万一(?)、先述のシュールな予想―――中国(中国人民銀行:中央銀行)がその通貨「人民元」(元)を1万トン超の金準備に裏付けること―――が実現してしまったら、同国に金準備首位の座を明け渡すことになるアメリカはどうなってしまうのか・・・
同想定では元の対ドルレートが現在の2倍(1元0.145ドルから同0.29ドルへ上昇)、そして1トロイオンス当たりの元建て金価格が34304元(現在の約8倍)になるとしました。これらの数値に基づくと、金1オンスのドル価格は・・・34304×0.29=9948と、ほぼ1万ドルになります。じつは先記の中華シミュレーションは、近い将来、金価格は1万ドル(/オンス)になるだろう、という個人勝手な予測から逆算して作ったものです。
さて、この「金貨1枚1万ドル」の世界―――これ、金をたくさん持つアメリカにとってはけっして悪くはないと思われます。というのは、これによってアメリカ・・・の中銀FRBの資産内容が以下のように劇的に改善するためです。
FRBのバランスシート(7月末時点)によると、その総資産額はご存知のように約4.5兆ドル。そのうち最大のシェアを占めるのが米国債で約2.5兆ドル(54.5%)、次が不動産担保証券(MBS)の約1.8兆ドル(39.3%)で、この両方を合わせると全体の94%になります。で、肝心の(?)金準備(Gold stock)ですが、ここのところずーっと110億ドルあまりと、総資産額のわずか0.2%程度で、ユーロとか円といったアメリカにとっての外貨(約210億ドル)よりも小さな額になっています。ちなみにその1オンス当たりの「簿価」は・・・アメリカが公表している同国の金準備量8133.5トンで計算すると約42ドルで、現時点(8/7)における市場価格(約1260ドル)の1/30に過ぎません・・・
ここで上記のように、この簿価を1万ドルに引き上げると・・・その総額は約2.6兆ドルに急膨張します。FRBの総資産額に変動がないとすると、金準備のそれに占める割合は約58%になるので、ドルはその価値の6割近くが純金によって裏付けられた通貨に変身します。さらに、その評価額がMBSの総額をも上回る規模に膨れ上がることで、これまでの超高値掴みにともなうMBSの巨額含み損もたちどころに消えてなくなります(?)。これらによりドルは世界からの信認を取り戻し、人民元とともに(?)基軸通貨の地位を維持することに・・・(?)
・・・さて、このシナリオが成り立つには、アメリカが8千トンあまりの金塊をIMF等への申告のとおり、ちゃんと持っているという前提が絶対に欠かせないのはいうまでもありません。ですが・・・